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スクールランブルIF11

1 :ゾリンヴァ:04/07/19 21:34 ID:uRupIwYc
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週10ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】

SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。

≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫

SS保管庫
http://www13.ocn.ne.jp/~reason/

【過去スレ】
スクールランブルIF10【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1088764346/
スクールランブルIF09【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1087097681/
スクールランブルIf08【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1084117367/
スクールランブルIf07【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1082299496/
スクールランブルIf06【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1078844925/
スクールランブルIf05【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1076661969/
スクールランブルIf04【脳内補完】(スレスト)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1076127601/

624 :洋芥子ラゴンPW,N「\f」:04/08/04 17:21 ID:of5HbQ8M
いずれにしてもフタをあけてみなけりゃわかりゃないと
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 


625 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

626 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

627 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

628 ::04/08/04 18:52 ID:R06xiNEU
何これ?

629 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

630 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

631 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

632 :Classical名無しさん:04/08/04 19:29 ID:rukTX7OU
>>628
なんだかよく解かりませんがNGワードは便利ですよ

633 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

634 :Classical名無しさん:04/08/04 20:13 ID:UDuhbRRw
FF11とか言ってるからIF11になんかひっかかってんのかと思った

635 :Classical名無しさん:04/08/04 20:15 ID:iWY3xgYs
>>628
夏特有の現象。
まぁ、夕立みたいなものです。

636 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

637 :Classical名無しさん:04/08/04 20:30 ID:ZAx/nGFQ
>635
そう言うと俄然風流に思えてくるな。

638 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

639 :Classical名無しさん:04/08/04 20:58 ID:n7zyK1jY
>>617
GJ!
change the world 自体も大好きです。

640 :Classical名無しさん:04/08/04 20:59 ID:OAA5JufY
>567
絃子さんがイロッポイヨー。相変わらず素晴らしいSSでした。
時代劇SS、楽しみにしています。
(にしても資料に苦労する時代劇物って…平安物か?)

>569
純粋におもしろいし、楽しめました。また期待しています。

>617
すべてを見通す女、晶がいい風味でした。
あと、地の文章が上手いですね。見習いたいです。

641 :Classical名無しさん:04/08/04 21:35 ID:OAA5JufY
こんばんわ、>>618改め午後の抹茶です。
昼間に予告したSSを投下します。
重ねまして茶々木涙氏にはお礼を申し上げます。
なお、萌えは少ないです。たぶん。ではどうぞ。

642 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:36 ID:OAA5JufY
「浴衣〜、浴衣〜、夏祭り〜」
「姉さん、動かないで…」
 塚本家、居間。そこでは浴衣を着付けられ中で浮かれている塚本天満と
四苦八苦しながら姉に着付ける塚本八雲、そして一足先に浴衣を
着付けられ二人の様子をくすくす笑いながら見守るサラ・アディマエスの姿があった。
「はい、姉さんできたよ…。着崩さないように気をつけて…」
「ありがとう、八雲。ゆ〜か〜た〜、くるくるゆ〜か〜た〜」
 ほっと一息つく八雲とさっそく変な歌を歌いながらくるくると踊る天満。
天満の山吹色の地に赤い花花模様の浴衣に草色の帯が目にもまばゆい。
 八雲の青の縞地に紫の花模様の浴衣、サラのピンクの大輪の花模様と3人が並ぶと華やかなことこの上なかった。
「おつかれさま、八雲。にしても浴衣ってほんと素敵よね。イギリスに
持って帰りたいな」
 でも自分では着れないから八雲も持って帰らなくちゃならない
けどね、とニッコリと笑うサラ。なにを隠そう三人の浴衣は八雲の
お手製なのだ。
 特にサラの浴衣は二人が仲良くなった記念にと一緒に生地を
選びにいった特別な品だった。

643 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:37 ID:OAA5JufY
「じゃ、早速でかけよー!」
「姉さん、部長と沢近先輩と周防先輩は…」
「晶ちゃんと愛理ちゃんは現地集合、美琴ちゃんは用事があって
これないんだって」
「あら、残念ですね」
 わいのわいのいいながら出発する天満たち。今日は矢神神社の
夏祭りの夜。花火大会ほど大きくないながらも、テキ屋の出す
出店のほかに町内の人たちの手作りのお店などもあり、この街の
夏の風物詩だと言えた。

「わー、まだ5時だっていうのに人がいっぱいだ〜」
「ほんとですねー」
「姉さん、はぐれないように気をつけて…」
 祭りの夜は早い。矢神神社を中心に放射状に広がった出店の
群れは早くも賑わいを見せはじめていた。
「で、塚本先輩。待ち合わせ場所ってどこなんですか?」
「んー、お祭りの夜はどこも混むから美琴ちゃんのうちにいこうって
ことになっているんだけど。美琴ちゃんのうちは神社から近いし」
「じゃ、いきましょうか」
 からころと美琴の家への道を歩く三人。しばらくすると美琴の家が見えてきた。
ピンポーン、とチャイムを鳴らす天満。
「はーい」
「あ、美琴ちゃん、こんばんわー」
「こんばんわー」
「おーっす」
「お邪魔します…」
 三人を出迎えたのはシンプルなデニムのワンピースに身を包んだ
周防美琴だった。

644 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:38 ID:OAA5JufY
「あー、浴衣じゃないんだねー。残念ー」
 美琴ちゃんの浴衣姿が見たかったのに、とぷーっと膨れる天満。
「なんで今日はこれないんですか?」
とサラ。
「んーと、あたし花井んとこの道場で子供たちに稽古つけてるだろ?
その子供たちを花井と二人で夏祭りにつれていくことになっちまってな。
悪いな、天満。期待に添えなくて」
 片手で謝る美琴。その時、再び玄関のチャイムが鳴った。出迎えにいく天満たち。
「きたわよ」
「…こんばんわ」
 周防家の玄関に立っていたのは薄紅のレースの夏着物に身を
包んだ沢近愛理と藍の絞りの生地に紫の帯の浴衣を着た高野晶だった。
 愛理は普段二つに結んでいる髪を下ろして結い上げ、さらに
うっすらと化粧をしているので一見誰なのかわからない。ただで
白い肌に薄紅色が映え、うなじが美しい。和服を着慣れた浴衣姿の
晶も当然のように似合ってた。

645 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:39 ID:OAA5JufY
「わ〜、二人とも綺麗〜」
「ほんとですね」
「本当にお綺麗です…」
 それぞれに賞賛の言葉を述べる天満とサラと八雲。が、しかし。
「なー、沢近だけなんで夏着物なんだ?」
 当然のようにつっこみをいれる美琴。言われてみれば、単衣に
裸足の面々と比べると襦袢に足袋を着込んだ愛理は一人浮いている。
「こ、これは昼間に叔父様の画廊のオープニングパーティがあって
その帰りだから…それにうちでは夏といえばこれで…」
 もごもごと口ごもる愛理。本当の理由は他にあったようだと察しは
ついたが晶と八雲はあえてつっこまなかった。
「でも愛理ちゃん、それじゃ暑くない?」
「で、でも着替えもないし…」
「大丈夫、あたしの浴衣貸すから着替えていったら?丈は…ちょっと長いかもしれないけれど調節きくし、下駄もまあ履けないことはないだろ」
「ちょ、ちょっと…」
「そうと決まったら着替えだね…」
 晶はすっくと立ち上がり、愛理をずるずると隣室へひっぱっていった。
「だからこのままでもいいってば…ぁ、ぁん、晶くすぐったいわよ!
どこ触っているのよ!」
「こうしないと脱げないでしょう…ほら髪が乱れるから暴れない」
………10分後。
 紺地に黄色のトンボ柄に赤い帯の愛理が出来上がった。
「可愛いよ、愛理ちゃん!」
「う〜ん、意外に似合っているな」
「なによ、意外にって」
「ちなみに最近はミニスカ浴衣、ゴスロリ浴衣もあるらしいよ」
「ミニスカ浴衣の沢近先輩って見てみたいかも」
 口々に愛理の品評会を始める5人とこそばゆくて落ち着かない愛理。
無理もない。彼女の人生において他人の服を借りて着る機会など
めったにないのだから。しかしこういう庶民的な柄も案外いい、と
口には出さないが密かに気に入ってた愛理だった。

646 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:40 ID:OAA5JufY
「姉さん、そろそろ出かけないと…」
「あ、もう5時40分?美琴ちゃん、待ち合わせ時間平気?」
「うちらの待ち合わせは花井の道場に6時だから、まだ大丈夫かな。
でもそろそろ出かける準備しようか」
「ごめんなさい、周防先輩。ばたばた騒いじゃって」
「いーっていーって。そっちこそ早く出かけないとお祭り終わっちゃうぞ」
「じゃ、そろそろでかけましょうか…」
「…いってくるわね、美琴」
「…いってらっしゃい」
 あの花火大会の後だ。愛理と美琴の間に複雑な視線が交差する。
それでも気持ちよく送り出してくれる美琴を愛理は尊敬の意を込めて
眺めた。そしてくるっと4人の元へと振り返る。からころと下駄の音が
耳に涼しい。
 さあ、行こう。

        ―― 祭 り の 夜 が 始 ま る ――

647 :午後の抹茶:04/08/04 21:48 ID:OAA5JufY
と、いうわけでイントロダクションでした。
祭りSSではなく浴衣SSという異色なものになってしまいました。
それでいいのか、自分。
(個人的に水着より浴衣に萌えるたちなので…)
本編は考えていたら思っていた以上に長くなりそうなので、
連作、という形でぽちぽち投下したいと思います。
第一弾、天満編は茶々木様に捧ぐべく待機して
いますので明日の晩にでも投下できるかと。
どうぞお待ち下さい。

648 :Classical名無しさん:04/08/04 22:38 ID:v/YCvD9w
花井なら子供の世話より八雲を選ぶと思うのは自分だけか…?

何はともあれGJ! 

649 :Classical名無しさん:04/08/04 23:57 ID:PLcor/jo
浴衣SS乙w
本編のほう、楽しみに待ってます。
ゴスロリ浴衣って初めて聞いた。そんなもんあるのか・・・。

650 :Classical名無しさん:04/08/05 00:29 ID:2jKxYbNk
こんなんですな
ttp://www.rakuten.co.jp/bodyline/515854/516253/594644/

651 :Classical名無しさん:04/08/05 00:55 ID:MSEFQ4/U
GJ浴衣SS!

……私も近日中に投下予定ですが、パクリではないのでご容赦を。

652 :Classical名無しさん:04/08/05 02:43 ID:LdPcornU
明けてからにするつもりだったんですが、蒸し暑くて眠れないので今投下します。
時系列としてはお姉さん抱きつきと体育祭の間くらいとお考えください。

653 :Ritalin 202:04/08/05 02:47 ID:LdPcornU
「……とゆーワケで、コレは新作の下書きなんだ。毎度悪いがよろしく頼む!」
「わかりました……では…」
「うん? 妹さん、なんか顔色良くねえな。大丈夫か?」
「え……そうですか?」
「無理はいけねえよ。なんなら今日はやめても──」
「いえ……大丈夫です。……原稿、いいですか?」
「あ、ああ。……それじゃせめて座ろうや。立ちんぼよりかマシだろ」

そう言って、播磨拳児はガクランを脱いで床に敷き、
困惑する女子生徒──塚本八雲を、そこへなかば強引に座らせた。
播磨はその隣に直に腰を下ろす。秋の屋上のコンクリート床は、予想以上に冷えていた。
無言で原稿を読み進める八雲をちらちらと盗み見しながら、

(フッ……今回はギャグマンガに初挑戦してみたが、我ながら会心の出来だ。
 ページをめくる度に腹を抱えて笑い転げる妹さんの姿が目に浮かぶぜ……)

などと相も変わらず勝手な妄想に浸っていた播磨だったが、ふと異変に気づいた。
いつのまにかページをめくる音がやんでいる。いつもなら読み終わるとすぐに意見を出してくれるのだが───
何かつまらないミスでもやっちまったんだろうか……?

「……えっと、妹さん?」

恐る恐る横を向いた播磨が見たものは───原稿を持ったまま、静かに寝息を立てている八雲の姿だった。

「な!? か、完全熟睡!? ま…まさか……このマンガ、寝るほどつまらねえってコトなのか!?」

654 :Ritalin 202:04/08/05 02:52 ID:LdPcornU
自信作をまるごとスルーされた衝撃に、播磨は完膚なきまでに打ちのめされた。
なんだ?ナニがいけなかったんだ?徹夜で生み出したギャグがことごとく滑るなんてあり
えねえいやしかし最初に見てもらったときもやっぱり自信のあったぺーじがかんぜんスル
ーされたしだんこうしゃのたんとうにはダメだしされたしやっぱりおれみてえなはんぱもの

「────っ!いやちょっと待て!」

無限ループに落ちかけた意識を引き戻したのは、八雲が腰を下ろしている自分のガクランだった。

「そういえば今日の妹さんは調子悪そうだったじゃねえか!
 大丈夫なんて言ってたが、それは俺に気をつかって……くっ、すまねえ妹さん!」

またしても自分の中で事態を都合よく完結させる播磨。
もっとも、彼は八雲の癖───『いつでもどこでも寝てしまう』癖など知る由もなかった。

「そうと判ればこうしちゃいられねえ。妹さん!起きてくれ!保健室に行くぞ!」

播磨は八雲の肩をゆすった。が、起きる気配は全くない。
仕方なしに、頬を軽く叩いてみる。やはり反応はなく、八雲の寝息は規則正しいままだった。

「参ったな……こうなりゃ抱えていくしかねえか。妹さん、ちっとガマンしててくれよ」

八雲の肩と膝を抱え、抱き上げようとした、その時。

「!?」

視界が180度回転した。かつて想い人に投げられた時のような、宙に浮く感覚。
実戦で鍛えた反射神経が、腕に後頭部を庇わせる動作を命じたが───
右腕は手首を抑えられ、左腕は奥襟を取った相手の腕に邪魔された。
播磨は瞬間的に顎を引き───ほぼ同時に背中が床に叩きつけられた。衝撃で瞬時、呼吸が止まる。

「な……なァにィィィ!?」

655 :Ritalin 202:04/08/05 02:59 ID:LdPcornU
まさに一瞬だった。抱き上げようとした次の瞬間、播磨は八雲の袈裟固めで完璧に押さえ込まれていた。

「い…妹さん、コレは一体どういう……って寝てるよオイ!」

八雲は先ほどと全く様子が変わることなく、静かに寝息を立てていた。
言うまでもなく彼は八雲のもうひとつの癖───『寝てる間に近寄った者を投げ飛ばす』癖など知る由もなかった。

「と、とにかくこの体勢を何とかしねえと……ム、ムネが……ってあれ?……外れねえ……」

寝技が完璧にきまってしまえば、脱出は極めて困難になる。おまけに八雲の両腕からは何故か力が抜けていなかった。
目と鼻の先にある顔は実に安らかな寝顔であるのに。そう、文字通り目と鼻のすぐ近くに…!?

「う、うわっ!やべえ!いっ妹さん、起きてくれーっ!」
「う……んん……」

播磨は自由になる左腕で八雲の上着を掴み、何とか顔を離そうとした。
が、上着がずれて肩口まで脱げた状態になってしまい、八雲の首が下に少し傾いた。
吐息が頬に直接かかり、播磨の唇のすぐ横には八雲の小さな唇が───

「そっそれはマズイ!いくらなんでもマズイ!こうなったらムリヤリにでも外し───!?」

656 :Ritalin 202:04/08/05 03:01 ID:LdPcornU
ひたすら暴れる播磨の耳に、その音は唐突に飛び込んできた。
ドアの向こうから響くのは、複数人と思しき足音と、聞き覚えのある声また声。

「……八雲君が屋上にいるというのは本当かね?」
「ええ、用事があるからってお昼を早めに切り上げてましたから」
「ホント懲りねえ色ボケだよ、まったく」
「そろそろ1-Dも花井禁止にすべきかしら…」
「英理ちゃんも八雲に何か用事?」
「私はヒゲに話があるのよ……って何よその笑い!」

播磨の脳はかつてないほどのスピードで回転し、現在の状況を正確に把握した。

床に敷かれたガクラン。
その上で折り重なる、着衣の乱れた二人の男女。
男の腕は女の背中に回され、女の腕は男の首に巻きついている。
互いの顔と顔はくっつきそうなほど接近して……

自分の顔から血の気が引いていく音を、播磨は確かに耳にした。        

ガゴン

金属製の重い扉がゆっくりと開く。
秋のやわらかい日差しが天満たちの目を一瞬眩ませた後、皆の視界に映ったものは───

(了)

657 :Classical名無しさん:04/08/05 03:05 ID:LdPcornU
以上です。最近本誌での播磨があまりに悲惨なので、
播磨救済シリーズと銘打って書き始めたのですが……何か本編と同じようなノリに。

658 :Classical名無しさん:04/08/05 03:11 ID:Ur5yrgpw
一番最初の行

>「……とゆーワケで、コレは新作の下書きなんだ。毎度悪いがよろしく頼む!」

"下書き"が"下着"に見えた OTZ
播磨デザインの下着を試着するヤクモン('A`)マンセー

ところ投げはわかるとしても寝技に持ち込むとはw
ヤクモンなかなかやるな

659 :Classical名無しさん:04/08/05 07:04 ID:RFXPsMDw
本編でありそうな展開GJ!

660 :Classical名無しさん:04/08/05 09:37 ID:X.lI2CdI
>>657
(*´Д`)GJハァハァ

起きた時の八雲の反応が見たいw

661 :Classical名無しさん:04/08/05 09:39 ID:PLcor/jo
床がコンクリのときの柔道は最凶ですよ。
播磨vs天満のときは畳、花井vs八雲のときは土
だったから、これは一番痛かっただろうなw
と言って見る。
しかし、お姉さんのときと同じく見た目には八雲から抱きついている
のがせめてもの救いか・・・。てか、毎度播磨は受けなんだな。
面白かったです。GJ!

662 :Classical名無しさん:04/08/05 10:53 ID:6sGlLixk
>>656沢近の名前が違うな正しくは愛理だ

663 :Classical名無しさん:04/08/05 12:06 ID:FwDYcPAg
八雲の寝技って……
ヤヴァイ、はなぢが出てきますた
グッジョブ!

664 :Classical名無しさん:04/08/05 13:00 ID:Wa45xBg6
その後が非常に気になる!
良い作品でした!GJ!

665 :午後の抹茶:04/08/05 15:12 ID:BkR2NNmE
こんにちは。午後の抹茶です。
予告していた祭りSS天満編、投下しようと思います。
なおこのSSは「夏祭りの夜に -a beginning- 」>642-646の
続編になっていますのでそちらもあわせてご覧下さい。
分校のスクランお絵描き掲示板のNo.2398 暑中見舞申上げ候 』で
インスピレーションを与えてくださった茶々木涙氏に重ねてお礼申し上げます。

666 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:13 ID:BkR2NNmE
 矢神神社、夏祭り。花火大会の後のこの小さな祭りは地元の人々の
ささやかな潤いの場として年々賑わいをみせていた。子供は親と、
恋人は恋人と、共に出かけさざめく。そして、祭りの夜に祈るのだ。
 いつまでも、一緒にいられますように、と――。

   【夏祭りの夜に -tenma side-】

「たこ焼き、焼きそば、今川焼き、いか焼き、あんず飴、やきもろこし〜」
「ってほんと、よくそんなに胃袋に入るわね」
 生まれて初めてあんず飴を食べるという難題をクリアし終えたばかり
の沢近愛理は、りんご飴を舐めながらけったいな歌を歌う塚本天満に
つっこみをいれた。もちろん当の天満は柳に風だ。天満の妹、
塚本八雲は八雲で姉がおろして2年目の浴衣に染みを作りはしないか
はらはらしながら見守っていた。天満の浴衣は彼女が知っている
だけで4枚目だ。そのほとんどは破る、染みを作るなど姉の粗相に
よる失態で浴衣としての役目を終えていた。高野晶は涼しい顔で
かき氷を食べている。サラ・アディマエスはとある事情により焼きそばの
ところでそうそうにリタイアしていた。
「ね〜、愛理ちゃん。次はどこへいく?」
「お腹もふくらんだし、境内にむかってみたいかな…」
「じゃ、いきましょうか…」
いつもは長い境内の階段も祭りの夜ともなれば足が軽い。4人は
裾捌きも鮮やかに階段を上っていった。

667 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:15 ID:BkR2NNmE
 矢神神社、境内。いつもは深閑としたこの境内も夏のこの日ばかりはと
賑わっている。狛犬には子供が登り、屋台では恋人たちが興にはしゃぐ。
そんな光景が矢神神社をいつもとは違う景色に見せていた。
「なにから回ろうかな〜。ね、八雲」
「う、うん。そうだね…」
「金魚すくいに亀すくい、ヨーヨーつり、くじ引き、輪投げに射的…あれは?」
と、晶が指を指した方向には『怪奇!へび女』の文字もおどろおどろ
しい見せ物小屋の姿が。3人は一様にぶんぶんぶん、と首を振る。
そう、好きなのに…とつぶやく晶。そこへ
「やあ、塚本君たちじゃないかね?」
と聞き慣れた声が話しかけてきた。

668 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:16 ID:BkR2NNmE
「あ、刑部先生…」
「笹倉先生もいらしていたんですか?」
 そこには景品でいっぱいになった紙袋を抱えた刑部絃子と大きな
ピンクのビニール人形を抱えた笹倉葉子の姿があった。
「うわ〜、笹倉先生大きな人形ですね〜」
「うふふ、くじ引きで当たったのよ」
「運がお強いんですね…」
「刑部先生、この景品の山はどうされたんですか?」
「あそこの射的でとった。あそこは穴場だぞ。とりやすい」
「部長、後で行こうと考えているでしょう…?」
「…わかる?」
 夏休みという長期休暇であわなかった者同士。加えて祭りという
環境。話も弾む。
「で、君たちはどこへいこうとしていたんだ?」
「えっと、決まっていなくって…」
「なら、あそこはどうだ?」
と絃子の指を指した先には『恐怖!お化け屋敷』の文字が。
くるっと後ろを振り向く天満。ひくっとひきつる愛理。心持ち眉毛の
下がる八雲。あくまで無表情の晶。
「大丈夫よ、そんなに怖くないから」
「そうそう、私たちも行ったし。それにあそこなら…ただだぞ?」

669 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:15 ID:BkR2NNmE
「…本当ですか?」
 ここへきて初めて目の色を変える晶。心持ち生き生きとしている。
「本当だ。受付のミイラ男に『刑部絃子より伝言。この4人は君の
つけにして入れてやりたまえ』と言ってみたまえ。入れるから」
「行きましょう」
「ええっ、ほんとうにいくのー!」
行く気まんまんの晶とすでに半泣きの天満。そこへ
「ねぇ、おばけ屋敷って…そんなに怖いの?」
と愛理がいささかまぬけなことを聞いてきた。
「愛理ちゃん、知らないの?お化け屋敷はね、すごーくすごーく
怖いところなんだよー!」
「し、失礼ね、私だって知っているわよ!ただ、日本のお化け屋敷には
入ったことがないだけで…」
「先輩、姉さんの言っていることは多少オーバーですから…」
ムキになる愛理とフォローにならないフォローをする八雲。それを
見つめてくすくすと笑う絃子と葉子。
「ま、行っても行かなくてもいいが楽しめることだけは確実だと思うぞ?」
「それじゃ、皆さんまた秋にね」
そういって二人は祭りの雑踏に消えていった。そして残された四人は
「い、行くの…?」
「行くわよ!」
「八雲も行くわよね?」
「は、はい…」
と、結局行くことになった。

670 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:16 ID:BkR2NNmE
 決戦の地、お化け屋敷前。という風情の美女四人組。が、楽し
そうなのは一人だけ。あとは三者三様に浮かない顔をしている。
「あら、愛理…いまさらおじけづいた?」
「そ、そんなわけないでしょ!」
「姉さん、そんなに怖くないから…」
「そんなことないよー、ちっちゃいとき入ったときすっごく怖かったもん!」
どうやら天満は小さかったときの体験が多少トラウマになっているようだ。
だが受付にいるのは…やたら体格のいいミイラ男。
「なんかあの人怖いよ〜。そう思わない、愛理ちゃん?」
「こ、怖いと思うから怖いのよ!ほら、天満行きなさいよ!」
「え〜、私が行くの〜!」
「お化け屋敷はすでに始まっている…」
と晶はあくまでマイペース。
おそるおそる受付に近づく天満。なるべくミイラ男を見ないようにしながら
絃子にいわれた台詞を思い出す。
「え、えーっと…『刑部先生より伝言。私たちを貴方のこねで入れてください』!」
するとミイラ男は無言でこくっと頷き、入り口のカーテンを開けた。
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、入るわよ」
「れっつ、ごー」

671 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:18 ID:BkR2NNmE
 お化け屋敷内部。そこは未知なる領域。何者かが現れても
おかしくない魔界。だが迷路になったその空間にはいまだなにも
現れていなかった。
「なにもあらわれないね…」
「なーんだ、拍子抜け」
「これなら怖くないですね…」
「油断は禁物…」
ほっと安堵する三人。ただ一人晶だけはあくまでも冷静だった。
「だいたいこういうのって恋人同士で入るものじゃない?女四人で
入ってなにが楽しいんだか…」
「私は結構楽しいです…」
「えー、そうだなー。でも私も烏丸君と入れたらもっと楽しいかも…」
暗がりの中で照れ笑いする天満。すると突然
『ドゴンッ』
となにかを殴ったような音が聞こえてきた。

672 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:19 ID:BkR2NNmE
「え…?」
「なに、いまの」
「き、気のせいよ、気のせい」
が、立て続けに
『ゴスッ』『バキィッ』『ガスッ』
という音が続けざまに聞こえ
てくるにつれ、、四人の(正確には三人の)恐怖は徐々にふくれあがっていった。
「な、なによ、あれ…」
「なんでしょう…」
「だんだん音がちがづいでぐるよ〜」
「いや、あれはたぶん恐らく…」
「恐らくって、なに!」
「いわないで〜、あぎらぢゃ〜ん」
「姉さん、しっかり…」
『ドバヴギャァー!』
「「キャー!」」
カシャッ。閃く閃光。その中には朦朧とした姿の男がうかび上がった。
『や、や〜め〜ろ〜』
「「キャー、キャー、キャー!!!」」
カシャッ、カシャッ。再び閃く閃光。
「いやー!胸さ〜わ〜ら〜れ〜た〜!」
ばりばりばりっ!相手の顔面をここぞとばかりに引っ掻く天満。
「ね、姉さんしっかり…」
「キャー、キャー、キャー!!!」
壊れた機械のように叫び続ける愛理。
「もう嫌だ、出る〜!」
「あっ、姉さん!」
一人脱兎のごとく駆け出す天満。そしてお化け屋敷にはパニくる
愛理、愛理にしがみつかれて戸惑う八雲、そして晶の三人が残された。

673 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:20 ID:BkR2NNmE
「はぁはぁはぁ…。どうしよう…、勢いで階段駆け下りちゃったよぅ…。
でも戻ったらお化け屋敷が目に入るし…ううっ」
 化け屋敷での恐怖から三人とはぐれてしまった天満。
 境内に戻れば見つけてもらえる可能性も高くなるし、なによりお化け屋敷の
前まで戻れば三人が天満を待っていることもあり得るのだが、あれだけ
怖い思いをした後とあってか目に入る範囲ですら近づきたくないらしい。
「しかたない、八雲に電話してむかえに…って携帯落としてるー!
はぁっ…。なんだか踏んだり蹴ったりだよ…」
 肩を落としてため息をつく。人間ついてないときはとことんついて
いないものであるが、それにしても今夜の天満は報われていなかった。
「どうしようかなぁ、この後…ってあれ?あの人だかりなんだろう?」
 彼女のピコピコ髪がぴょこぴょこと動く。参道の真ん中あたり、町内会の本部の隣にその人だかりはできていた。天満は持ち前の
小さな体を生かしてすいすいと人だかりの前に出る。
「はいはい、ちょっとごめんなさいよっと…って、あー!烏丸君!」
「あ、塚本さん…」
そこには『二条丈似顔絵会』と書かれたのぼりと、少女漫画風から
写実風、浮世絵風から北○の拳風まで様々な似顔絵に囲まれた
烏丸大路の姿があった。


674 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:21 ID:BkR2NNmE
「烏丸君、なにしているの…?」
「似顔絵会…。町内会の人に頼まれて先着20名に描くことになった…」
 話しつつも烏丸はシャッ、シャッと目の前の相手の特徴を捉え、
それを線にする動きをやめることがない。だがちょうど一人描き
あがったようだ。絵を目の前の青年に手渡す烏丸。
「塚本さん、あと一人で描き終わるからちょっと待ってて」
「うん…」
 最後に描かれるのは10歳ほどの髪の長い少女だった。夏なのに
白の長袖のワンピースを着て、とても不思議な瞳の色をしていた。
二人はなにか会話をしている。でも天満は二人の会話が耳に
入らないほど夢中になって烏丸を見つめていた。
(烏丸君、きれい…。烏丸君って夜が似合うんだな。美術の時間は
見つめられるのが恥ずかしくて見つめることなんてできなかったから
嬉しい…。そういえば、私夜に烏丸君と会うの初めてだ…。あーん、
私の浴衣変じゃないかなー。ちょっと着崩れているかも…。こんな
ことなら八雲の言うとおりにして、踊ったりするんじゃなかったよー…)
「…かもとさん、塚本さん。終わったよ…」
「は、はいっ!」


675 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:23 ID:BkR2NNmE
 目を上げると烏丸がそこに立って、ただ立っているだけなのに
天満は心がときめいた。
「で、どうしたの?お祭りなのに一人でいるなんて…」
「え、えっとね、妹や愛理ちゃんたちとはぐれちゃって、
携帯も落としちゃって連絡がつかなくて途方にくれてたの…」
「そう…。なら、一緒に探してあげようか?この人混みの中で女の子が
一人で出歩くのは危ない…」
「えっ…ほんとに?」
「うん…。僕のお店はもう終わったから」
と振り返る烏丸。天満が肩越しにお店のほうを覗くと、町内会の
人たちの手によってすでに片づけが始められていた。
「じゃ、じゃあオネガイシマス」
どことなく緊張しつつぺこっと会釈する天満。なぜか口調まで不自然に
なってしまう。
「じゃあ、手を貸して」
右手を差し出す烏丸と意味がわからず首をかしげる天満。
「またはぐれるといけない…」
「………!!!」
天満がその意味に気がつくのと顔が火を噴いたように赤くなるのが
同時だった。
「どうしたの?」
(ごめん、八雲、愛理ちゃん、晶ちゃん。今日は私の人生で最良の日だ…)
差し出された右手に震えていることを気取られないように左手を
載せると烏丸の暖かい指にそっと包み込まれる感触がした。
(この時間が、いつまでもいつまでも続きますように…)
天満は心の内で星に祈ると、山吹色の浴衣の袖を翻して烏丸と歩き始めた。

676 :午後の抹茶:04/08/05 15:30 ID:BkR2NNmE
以上です。さて私の天満に萌えられるという人はどれだけいるのかっ!
それ以前に天満SSというのは需要があるのかぁっー!
なんだか踏み絵を踏んでいる気分です。
烏丸は難しいし、天満は動きすぎるし、女の子4人+女性2人の
会話に至っては死ぬかと思いました。
SS通算3作目なのにもう死にそうになっている自分っていったい…。
SS作家さんってほんとすごいよ…。気軽に書き始めるんじゃなかった…。
とりあえず美琴編、晶編が書けるまで生き残りたいと思います。

677 :Classical名無しさん:04/08/05 15:45 ID:6sGlLixk
>>676まあまあ  天満はもともと範疇外なので萌えれない

678 :Classical名無しさん:04/08/05 16:20 ID:2eCujtKI
天満ルートはそこで終わってもまあ良いとして、
お化け屋敷残留組のその後と、サラの事情とやらが知りたいな。

679 :Classical名無しさん:04/08/05 20:30 ID:ZCGTAP1c
やっぱミイラ男はあの男だろ?

680 :Classical名無しさん:04/08/05 20:54 ID:qojWfj5U
連載なんだよな、じゃあストーリーの感想はまた今度で…。

烏丸の出るSSひさびさに見ました、
でも播磨が出ないと寂しいですね。
続きもがんばってください。

681 :Classical名無しさん:04/08/05 21:16 ID:T748BThI
SS2作目投下します。
怪談物書いたつもりですがあんまり怖くないかもしれないです

682 :IF肝試し:04/08/05 21:17 ID:T748BThI
肝試しの時間。それぞれペアを組み廃校の前に集まった面々
「しかしよくこんなとこ見つけたな」
「うん、昼に八雲探しに行ったとき見かけて覘いてみたんだ。肝試しにピッタリだと
思ってね」
「天満にしてはイイチョイスね」
「ひどーい」
などとワイワイ話しをしていた。今鳥などはコワーイなどと言って美琴に抱きつこうとし肘を喰らっている。
八雲くーんと恨めしそうに呟く花井をよそに一人思案顔の晶
「どうかしたんですか? 高野先輩」
「うーん。何か引っ掛る」
「晶でもこうゆうのは苦手なのね」
「いや、まー嫌な感じはするけど、何かを思い出せないだけ。でも思い出せない位だから大したことじゃ
無いだろうけど」
「んじゃそろそろルール説明するね。って言っても口の字型の校舎を右回りに回ってここに戻って来るだけなんだけど。
それじゃー1組目行ってみよー」
「沢近先輩震えてません?」
「そ、そんなわけないでしょ! あなたこそ大丈夫でしょうね?」
沢近×八雲ペアが出発しその他の面々もあとに続いた。残ったのは播磨×天満ペア
「さて、播磨君勝負の時よ! 私たちのルールは先に叫び声を上げた方が負けよ! わかった?」
「オーケーだ。天……塚本も怖くなったら遠慮せずに俺に頼ってくれ」
「むぅーバカにしてー」
「いや、あの、そんなつもりじゃ……ってか雲行き変わってきたな」
 今まで闇を裂いていた月の光は漂う暗雲に隠れていた。
「こりゃひと雨くるかもな」
「えー、んじゃ急いで行こうか」
「おう」
 勝負なのにとことん軽いノリで2人は廃校に入った。


683 :IF肝試し:04/08/05 21:18 ID:T748BThI
――こりゃホントに真っ暗だな。しかもグラサンのせいで余計に視界が悪いぜ
と考えていると後ろの方でドターンと派手に天満がコケた。
慌てて駆け寄ろうとした播磨だったが
「――こっちよ……」
先ほどまで後ろに居たはずの天満が播磨のすぐ隣にいて右手を手を引いた。
「あれ、塚本。いつの間に……」
疑問も一瞬持ったが天満ちゃんと手を繋いだ! という快挙に気付いてニヘラ顔で引かれるまま廊下を右に進んでいった。


684 :IF肝試し:04/08/05 21:19 ID:T748BThI
痛た、スノコに躓いちゃった。懐中電灯点けないとこ危ないねこりゃ」
返事はない。パッと懐中電灯を点けて周囲を見回すもそこに播磨の姿はなかった。
「逸れちゃった? いや、そういえば今は勝負の真っ最中。脅かそうとしてるんだな播磨君。そうはいかないよ!」
叫ぶも全く反応がない。外はとうとう雨が降り出したのか、窓ガラスに雨粒の当たる音だけが響く。
――うぅ、怖い。考えてみたら私ってこうゆうの凄く苦手だった。でも八雲の為にお姉ちゃんがんばるから……
「おい、塚本」
「うひゃぅ!」
「うお、なんだよいきなり」
振り返ると美琴を初め先に出発したメンバーが揃い踏みだった。
「なんだ、美琴ちゃんか。ビックリさせないでよ」
少し涙目になりながらもホッとした表情を浮べる
「そりゃこっちの台詞だ」
「あれ? なんで皆左の廊下から帰ってきてるの?」
そう。彼女らは皆左の廊下から帰ってきた。右回りで回るのだから右の廊下から帰ってくるはずである。
「あぁ、少し進んだら行き止まり、とゆうか立ち入り禁止ってテープが貼ってあって注意書きに
『この先崩落の危険』ってなことが書いてあって、足元も危ないし雨も降り始めたから引き返してきた」
「えー、そうだったの。ごめんね。ちゃんと調べてなかったよ」
「気にしなくていいわよ。それより帰りをどうするかよね。しばらく雨宿りでもしていく?」
「そだねー、濡れるのヤだし。でもなんかちっとも雨上がりそうにないんだけど……」
今鳥が言った次の瞬間雷が轟いた。雨脚は強くなるばかり。


685 :IF肝試し:04/08/05 21:20 ID:T748BThI
「あ、思い出した」
「ん? 何を? 晶ちゃん」
「今の雷で思い出したの。ここのキャンプ場をネットで調べてるとき、掲示板にこの廃校のことが書いてあった」
「へー、ここ隠れスポットなんだな。でなんて書いてあったんだ?」
「話ていいの?」
「む、もったいぶるとこを見ると怪談か? 丁度いいじゃないか。肝試しもあまり盛り上がらないまま終わってしまったし、
雨が止むまでの暇つぶしにもなるだろう」
「そう……では」
コホンと軽く咳払いをし、花井から懐中電灯をぶん取って顔の下から光を当てながら晶は語りだした。
「掲示板にはこう書いてあったわ」


686 :IF肝試し:04/08/05 21:20 ID:T748BThI
ある日私たちみたいにキャンプに来た若いカップルがこの廃校を訪れたそうよ。もともと2人には地元で
子供のころからこの廃校で友達とよく遊んでたんだって。2人にとって思い出の場所だったんでしょうね。
でも折角キャンプに来たのにずっと雨続きでね、帰りの日せめて思い出を振り返るのにって雨の中この廃校に2人はやってきた。
恋人よろしく仲良く手を繋ぎながら、よくこの教室で遊んだ、この教室は俺のだった、とか子供の時のことを思い出しながら
左回りに廊下を歩いていった。
そして運命の部屋の前に来たの。そこは体育用具置き。子供のころどうしても扉が重くて開けられなかった場所。
その部屋は非常ドアのとこに無理やり後付された職員手作りの部屋だったそうよ。非常ドアだからとても重かったけど
大人になった今になってやっと開けられる場所。
中に入ってみると特に変わったものは無かった。体育用具がほどんど残されていた以外は。トビ箱、ハードル、平均台。
その他もろもろの授業で使うような道具。子供の時にはとても謎めいた部屋だったけど大したことなかった。って思ってると
グラリと部屋が揺れた。この廃校裏手はガケになっててその部屋はガケの直ぐ手前に作ってあったの。長雨で地盤が緩んでたのと
合わせて2人の体重で崩れかけてきたんでしょう。男の方は直ぐに部屋から出たけど、女の方は用具に引っ掛って用具の下敷きに
なってしまった。腕を伸ばしてもドアから少し出る位。男は慌てて女の腕を引っ張ったけど抜ける様子はない。お互い手を握り合って
なんとか抜け出そうとしたけど、部屋はどんどん傾いていく。もう駄目だと男は手を離そうとしたけど女が「助けて」と手を離さない。
このままでは2人ともガケ崩れに巻き込まれる。そう思った男は……


687 :IF肝試し:04/08/05 21:21 ID:T748BThI
「――どうしたと思う?」
「……」
「とても重い非常ドアをね。彼女の腕にぶつけて外そうとしたのよ。苦痛の叫びをあげながらそれでも彼女は手を離さなかった。
彼はさらにドアを叩きつけた。死にたくない一心で夢中になってね。何度も何度も。彼女の叫びを聞きながら。
やがてブチッて彼女の腕が千切れた。その瞬間部屋は彼女と共に落ちていった。校舎には息を切らす男と
彼の右腕をまだ握っている彼女の左手だけが残ったの。
そのあと彼はね、彼女の左手をなんとか毟り取って捨てて、事故として彼女がガケ下に落ちたって連絡したの。
死体は直ぐに見つかったけど、どこを捜しても彼女の左手だけは見つからなかったんだって」
――流石天満ちゃん。この俺もちっぴりブルっちまうほどのストーリーテラーだぜ。それにしても天満ちゃんの手冷たいな。
顔はよく見えないがきっと自分も怖がってるんだな。しかしなんで自分まで怖がってまでこんな話を……
そうか! わかったぜ天満ちゃん。俺は絶対に君の手を……
「おっと」
「どうしたの?」
「いや、なんでもねー。ちょっと蜘蛛の巣に引っ掛ったんだ」
「さぁ、皆待ってるわ。早くいきましょう」
「おう」
播磨は蜘蛛の巣を……『立ち入り禁止』と書かれたテープを払い天満に手を引かれてさらに漆黒の闇の中を歩く。
廊下の埃を被った大鏡の傍を通った時、雷鳴が轟き2人の姿を鏡に映した。そこには播磨とその手を握る左手だけが映されている事に
彼は気付かなかった。


688 :IF肝試し:04/08/05 21:22 ID:T748BThI
外は大雨となり木が叫び声をあげている。6人は水を打ったように静まり返り晶の言葉を待った。
「その後その男は二度とこのキャンプ場に来ることはなかったそうよ。それからとゆうものこんな雨の日にこの廃校を訪れた男は好きな
女の子と何故か出会うんだって。その子に手を引かれて付いていくと例の非常ドアのとこまで来る。道すがら女の子にその話を聞いた男は
慌てて逃げようとするんだけど、どんどん引き込まれていく。このままではってとこで話の通り女の子の腕に非常ドアにぶつけ様とすると
……」
パチンッと晶は指を鳴らして
「THE END。留め金が壊れてて勢い余ってガケに真っ逆さま。実際ガケの下にある川の下流に今までに何人か死体が上がってるそうよ」
これでおしまいと晶は灯りを消した。
「あれ? 皆そんなに怖かった?」と尋ねる。
確かに塚本姉妹は互いに手を取って震えてるし、沢近は顔が引き吊り、美琴は頭抱えて唸って、今鳥は顔面蒼白、花井だけは無表情だが
膝が笑いまくってる。
「話は確かに怖かったわ。だけど晶。何も感じないの?」
「なにが……」
と言いかけて気付いた。夏だとゆうのに凍えそうに寒い。そのくせ手はビッシリ汗を掻いているのだ。
ゾクリとしたがこんな物は気の迷いの所為だと思った。
「濡れてもいいから、早くこんなとこから出ましょ。なんか気分が悪い」
「そ、そうだな。なんつーか気持ち悪くなっちまったよ」
「男性陣に意義はない」
「あ、でも播磨先輩は?」
八雲に言われ天満が
「あ……、入り口で逸れちゃった……」
近くで雷が落ちた


689 :IF肝試し:04/08/05 21:22 ID:T748BThI
 延々と闇の中を歩く播磨。闇は廊下が永遠に続いてるかのように見せ、雨は窓を狂ったように叩き、
風は稲妻を呼び木々を泣かす。そんな中播磨は
――天満ちゃんよく真っ暗な中スイスイ歩けるなー。目がいいんだな。
と感心していた。
クスッと天満が笑った。
「ん? なんか俺可笑しなことした?」
「なんでもないわ。さぁ着いた。皆あのドアの向こうで待ってるよ」
直ぐに無表情に戻り足を止めた。
 ドアは分厚い金属製でやや下の方に黒い何かがこびり付いている。
その黒い部分を見ていく内何故か赤く見てて来る。


690 :IF肝試し:04/08/05 21:23 ID:T748BThI
「おー、やっと着いたか。さぁサッサと行こうぜ」
今度は播磨が先行しようとして慌てて天満は言った。
「話聞いてた?」
「おう、もちろん」
「そ、そう。じゃあいきましょう」
 天満は播磨の手を引っ張り先に中に入った。続いて入ろうとした播磨が見たものは何も無い。扉の向こうは
直ぐにガケになっていた。気付いた瞬間天満は谷に吸い込まれそうになる。
「うお!? 塚本!」
慌てて引っ張り上げようとするが天満とは思えないほど重い。逆に播磨の体が引き摺られていく。
「うおー! 塚本! 絶対引き上げてやるからな!」
「あなた、本当に話聞いてたの?」
「もちろんだ! 君の気持ちは痛いほど伝わってきたぜ! こんな事態になっても絶対に手を離さないでねってことだろ!?」
「……」
そうこうしている間にもさらに播磨の体は外に引き摺られていく。
――クソ、なんで上がらねぇ! もっと体鍛えとくべきだったか。俺はどうなってもいいがなんとしても天満ちゃんだけは!
「あなた死ぬのが怖くないの?」
「怖いさ。だが君が居ない世界の方がもっと恐いんだ! 天満と死ねるならむしろ本望だ!」
しかし播磨ももう駄目だと思った時、ふと引き込まれる力が無くなった。唐突に雨が止み雲の間から月がでる。
見ると天満が泣いている。いや、天満ではなく知らない女だった。
「彼にも……彼にもそう言って欲しかった」
零れ落ちる涙が月の光で煌いている。
「そして本当は……こう、したかった」
彼女はふと手を離す。すると非常ドアも音も立てず彼女と共に谷の闇に消えた。

その後、捜しに来た天満たちが、呆然と佇む播磨に声をかけた。
振り返ると同時に今まで握っていた白骨が手から滑り落ちた。

おしまい


691 :Classical名無しさん:04/08/05 21:30 ID:T748BThI
相変わらず文章力がなくお目汚しすみません
と言うか別にスクランじゃなくても良かった気もしてきました
なんとか読んでいただけるためもう少しマシなのを書けるようにがんばります

692 :Classical名無しさん:04/08/05 21:39 ID:ox4cNqrw
GJ!
怖いかはともかく、理屈ぬきに面白いが
最後の播磨の言葉はちっと播磨じゃねぇと言いたい
播磨には心底馬鹿な発言のほうがかっこいい

693 :Classical名無しさん:04/08/05 22:03 ID:NCePL43w
面白かったです。
こういうのも私は好きですね。
私も最後の播磨の台詞が、それと改行も少し気になりました。
次回作に期待させてもらいます!!

694 :Classical名無しさん:04/08/05 22:53 ID:e0ROVpJQ
他の人も言ってるとおり「怖いさ。〜〜」の辺り台詞は気になったけど、行動としては播磨らしくていいです!
GJ!

しかし、本編でこんな展開があったら霊の子に憑かれたりしそうだな、播磨は・・・
そして、連れて帰ってみたところ沢近と弦子さんに… (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
怪談よりよっぽど怖そうだ

695 :Sign:04/08/06 00:18 ID:gra.6tTE
 ――夏休み最後の日。

「本当にどうもありがとうございました。感謝の言葉も……」
「いや、俺たちの方こそ黙ってて貰って」

 ぺこりと。お互いに頭を下げる。
 ――結局、腕だけになった少女の骨は彼女の両親に届けることにした。
 議論は結構分かれた。
 放り捨てて行こうというものもいたし、校舎の近くに埋めてしまえばいい
のでは、という案も出た。
 喧喧諤諤。
 最終的に、播磨が決めた。
「この女の子の、お父さんとお母さんに持って行ってやろうじゃねぇか」
 と。

 持っていた着替えに丁重に骨を包んだ播磨は、晶の手を借りて当時の新聞
記事を読み、そして彼女の両親と連絡を取った。

 ――白いワンピースの少女がいる。

 両親はとっくに諦めていた彼女の腕が出てきたことを喜び、その代わりに、
警察には彼らのことを黙っておいてくれた。
 播磨は少女の両親に「できれば線香を上げさせてもらいたい」と頼み、二人
は快諾した。
 そうして今、播磨は彼女の墓と向かい合っている。
 手を合わせ、目をつむり、彼女の冥福を祈っていた。
「さて、と……」
 少女の両親の車で送ろう、という誘いを固辞して播磨は墓地出口に停めて
いたバイクに乗る。
「あの」
 声をかけられた。

696 :Sign(2):04/08/06 00:28 ID:gra.6tTE
 ――白いワンピースの少女。
「何でぇ? ……じゃなくて、何か用ですか?」
 墓地から出るなり、言葉遣いがぞんざいなものになった自分を愚かしく
感じながら、播磨は応じた。
「いえ。……わたし、その、えっと……妹です」
「誰の?」
 無言で、少女は墓地を指差した。
「ああ」
 あの人の妹さんか。
「この度は……」
「いえ、ずっとむかしむかしのお話ですから」
 苦笑い。
「あー……いや、俺にとっちゃぁついこの間の話だからな」
「そうですか? ……そうですよね。あの、えっと……」
「ああ、播磨。播磨拳児」
「播磨さん、一つご質問があるんですけどよろしいですか?」
「何スか?」
「どうして――手を離さなかったんですか? 姉さんの」
「……いや、だって。その、俺がほ、惚れた女だと思ったから……かなあ」
「じゃあ、惚れてなかったら……手を離していたんですか? 例えば、
あなたと一緒にいた、女の子たちとかだったら」
「どうかな……」
 ワンピースの少女が、すそをぎゅっと掴む。
「その時になってみねぇと分からねぇけど、多分離さなかったと思うぞ」
「……ど、うして?」


697 :Sign(3):04/08/06 00:29 ID:gra.6tTE
「そういう事をする人間に、天満ちゃん――いや、こいつは俺が惚れてる
女の子の名前なんだけど――が好きになってくれるはずねぇからよ」
「……」
「だから、例え相手が別の女だろうが天王寺だろうが今鳥だろうが
手は離さなかった、と思うぜ。……ま、花井は別だな。アイツなら自力
で脱出できらぁ」
 そう言って播磨は笑った。
 少女も笑っていた。
「そっかぁ……播磨さん、すごいです」
「そうかぁ?」
「はい、その天満ちゃんって娘も絶対惚れちゃいます!」
 播磨の鼻の下がデレェと、だらしなく伸びた。
「それじゃわたし、そろそろいきますね」
「おー」
 バイクのキーを捻り、エンジンを吹かす。
「さようなら、播磨さん。……逢えて、良かった」
「おう。――腕、戻ってよかったな」
 最後の台詞に、慌てて少女は腕を抑えた。
 それとほとんど同時に、播磨はバイクを発進させる。
 一度だけミラーを覗いたが、もう既に少女の姿は煙のように消えていた。
「……よかったな」
 最後にそう呟いて、播磨は一層バイクを加速させた。
                                          ――了





すいません、>690さんのアフターストーリーを勝手に書いてみました。
個人的趣味で爽やかエンディングに。

698 :IF肝試し書いた者:04/08/06 00:41 ID:0M9HfNZ.
おぉ、私の話なんかに続き話書いてくださってありがとうございます
こんなスッキリした終わらせ方なんて思いつきもしませんでした
ともかく感謝です

699 :Classical名無しさん:04/08/06 01:50 ID:7R1qc0/A
ええ、話や
こういう雰囲気の怪談って俺は好きだな
お二方GJ

700 :Classical名無しさん:04/08/06 02:26 ID:6sS8Vu9E
>>690
怪談話いいね。もっと読んでみたいな。
ただ出来れば「世にも奇妙な物語」みたいに
後味の悪い話は止めて欲しいなー

701 :Classical名無しさん:04/08/06 04:34 ID:BHUs28vo
夏にぴったりな怪談グッジョブです

天満との勝負って、そんなんだったんだな、納得

702 :Classical名無しさん:04/08/06 11:48 ID:I0xHgXL.
良い話やなぁ…。
こういう話は好きよ。その後のアフターストーリーも、違和感が殆ど感じられないし…。
GJ!!

出来れば、女の子の手を引いてる時に、播磨が『海の男はよ』の唄を歌うシーンが、オレ個人では欲しかったな。

播磨「似たような事が前にもあったような…確か、マグロ漁船に乗ってて…ハッ!?
   そうだ、こんな時は歌うんだ!!」

『海の男はよ』を唄いながら、引っ張り上げようとする播磨…。
勿論爽やかな笑顔で。

…時系列が狂うのは承知の上なんだが。
こういうのはダメなのだろうか…。



703 :Classical名無しさん:04/08/06 12:13 ID:C63lvSs6
>>702
妄想はSSにして表現しる

704 :風光:04/08/06 15:11 ID:lsQKtqyQ
はじめまして。風光と言います。
早速ですがSS投下させてもらいます。
一応SSは今までいくつか書いてはいるのですがこういった場に書き込むのも
初めてであればスクランのSSを書くのも初めてでかなり不安です。
拙い文章だとは思いますがよろしく。
ちなみにタイトルは『Singin'in The Rain』です。

タイトルに『Singin'in The Rain』、邦訳『雨に唄えば』の名を冠した物語。
その名の通り雨の降ったある日のお話です。
まもなく開演致しますのでしばしの間、お付き合いくださいませ。

705 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:15 ID:lsQKtqyQ
――放課後
 ポツポツポツ……ザァァァー
「ちっ、降ってきたか」
 麻生広義はそう毒づくと雨宿りが出来る場所を探して走り出した。

            『Singin'in The Rain』

「やっぱ傘持って来るべきだったな」
 意外に最近の天気予報はよく当たるらしい。
 一応天気予報は確認してはいたのだが朝、雲一つない青空が広がっていたため
大丈夫だろうと傘を持たずに家を出、結果見事に降られてしまったのだ。
「たく、折り畳みぐらい持ってくべきだったな」
 そうは言っても後の祭り。
 麻生は少しでも早く雨風を凌げる場所を探して走り続けた。
 サアアーーッ
「おっ、あそこで良いか」
 適当な店の軒先を見つけ麻生は慌てて駆け込んだ。
「ふぅー、やばかったな」
 彼は呟きながら持っていたハンカチで軽く服についた雨を払った。
 あと少し雨に濡れていればぐしょ濡れになっていたことだろう。
「けど止むのか、これ」
 天を仰ぎ見ながら呟くが、空はどんよりと雨雲が広がっており
一向に止む気配がなかった。
「夕立だと良いんだが……いや、その考えは都合が良すぎるか」
 軽く溜め息をつきながら目線を落とすと髪を掻きむしり彼は呟いた。
「仕方ねぇ、そうすっか」
 ある程度待っても雨の勢いが弱まらなかったら走って帰ろう、
そう考えて麻生は再び深く息を吐いた。

706 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:19 ID:lsQKtqyQ
「どうぞ」
「あん?」
 その声に反応して顔を上げると目の前に傘が差し出されていた。
「お前か」
「はい、こんにちわ、麻生先輩」
 傘を差し出した人物は麻生の一年後輩でありバイト仲間のサラだった。
「先輩。傘、ないんですか?」
「ああ、見ての通りな。んでお前は何してんだ?」
 傘を指で差しながら麻生は訊ねた。
「見ての通り先輩を傘の中に入れているんですよ」
「んなの見れば分かる。俺が言いたいのは何でそんなことしてるのかってことだ」
 いきなり傘を差し出されて戸惑ったのか、麻生の口調はいつもより少しだけ強かった。
 けれどサラは気にした様子もなく質問に答えた。
「先輩が雨宿りをしていたからですよ。だから傘がないのかなって思って……」
 サラはにっこりと笑顔を浮かべながら軽く傘を掲げた。
「……それは何だ? ……もしかして入って行けって事か?」
 嫌な予感を覚えて麻生は訊ね返した。
「もしかしても何もそういうことですよ。傘がないなら一緒に帰りましょう」
 全く邪気のない笑顔でサラはそう提案した。
「断る」
 しかし麻生はその提案をナノ一秒で却下した。
「え〜、何でですか?」
 サラは信じられないと言った面持ちで質問した。

707 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:24 ID:lsQKtqyQ
「当たり前だろ。お前、男が女の傘に入れるか?」
「え〜、先輩もそう言うの気にするんですか?」
「当然だろ。そもそもお前こそ人に見られたら誤解されるぞ。迷惑だろ、そう言うの」
 自分が冷やかされるのは……まぁこの際無視しても
サラに対してあることないこと噂が飛び交うのは嫌だった。
「気にしませんよ、そんなこと」
 けれどサラはきっぱりとそう言い切った。
「気にしろ」
 麻生は呆れながら溜め息をついた。
「普通は気にしますけど先輩だから良いんですよ」
「……なんでだ?」
 その違いが麻生には分からなかった。
「むぅ〜、そう訊きますか?」
 何故かいきなりサラの機嫌が悪くなってしまった。
「なに急に怒ってんだよ」
 理由が分からなかった。
「知りませんっ」
 サラはソッポを向いたままそう答えるだけだった。
「……変な奴だなぁ」
 少しは性格が掴めてきたかと思っていたがやはり分からねぇ、
そんなことを考えながら麻生は軽く首を傾げた。

708 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:25 ID:lsQKtqyQ
「はぁー、もう良いです」
 何か諦めにも似た溜め息をついてサラは言葉を続けた。
「それで入らないんですか?」
 再度サラは訊ねて来た。
「入らねぇって言ってんだろ。どうせそのうち止むだろ」
「え? ………この雨、夜半過ぎまで降るって言ってましたよ」
「なっ、そうだったか?」
 チラリとしか天気予報は見ていなかったから自信はなかったがそんな事を言っていただろうか。
「ま、まぁ、良い。なら雨が弱まったら走って帰……」
「夜になればなるほど雨足は強くなるとも言ってましたよ」
「…………」
 サラの言葉に麻生は返す言葉を失ってしまった。

709 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:28 ID:lsQKtqyQ
 ザァァァーッ
 雨は強く降り続いている。
「で、入りませんか?」
 サラの三度目の誘いの言葉。麻生はその笑顔を見ながら溜め息をついて一言。
「……入らせてくれ」
 そう答えるしかなかった。
「はい。よろこんで」
 サラは今日一番の笑顔を浮かべて頷いた。
「それじゃあ、どうぞ」
 傘を麻生の上に差し出すサラ。どうやら自分で傘を持つつもりのようだ。
「たく、ほら貸せ」
 その行動を見て麻生は軽く溜め息をつくとひったくるようにサラから傘を奪った。

710 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:29 ID:lsQKtqyQ
「え?」
「俺が持つ。……つーかお前は俺より背が低いんだから無理すんな」
 ぶっきらぼうな言い方。
 けれどその言葉に秘められている優しさに気づいてサラは胸の奥が仄かに暖かくなるのを感じた。
「どうした?」
 少し惚けたような表情を浮かべたサラを心配に思ったのか、麻生は様子を訊ねた。
「あ、いえ、大丈夫です。なんでもないですから」
「……まぁ、それなら良いが。道端でいきなりボーっとすんじゃねぇぞ」
「大丈夫ですよ、先輩」
 軽くガッツポーズを取るサラ。その様子を見て麻生は溜め息をつきながら一言。
「ボーっとしてた人間が言っても説得力ねえよ」
 そう答えて歩き出してしまった。
「わわっ、待ってください」
 サラは慌てて追いつこうと走り出した。
「冗談だ」
 そう言って立ち止まると麻生はサラの頭上に傘を差してあげた。少しでも濡れないようにと。
「むぅ〜、最近先輩、少し意地が悪いです」
「そんなことないだろ」
「そんなことありますよぉ」
「気にすんな。ほら、早く行くぞ」
「はーい」
 そして麻生とサラは二人揃って歩き出した。

711 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:30 ID:lsQKtqyQ
「けどお前、何であんなとこ歩いてたんだ?」
「へっ? 何でってあそこ通学路ですから」
「え?」
 それは予想外の答えだった。
 いや、サラの通う道なんて知らなかったのだから予想外も何もないのだが
まさか自分と同じ道を通っているとは思わず麻生は少し驚いてしまった。
「ん? 何で驚くんですか?」
「あ、いや、なに。お前もこの道を通ってるんだなって思ってさ」
「そうですよ。いっつもこの道通ってるんですから」
「ふーん、知らなかったな」
 思えばサラと一緒に帰るなどバイトで夜遅くなったときだけでこうやって放課後に帰ることなど初めてのことだった。
「先輩もこの道を毎日利用しているんですか?」
「ん? ああ、そうだな。どっか寄り道しない限り大抵この道を利用してるな」
 とは言ってもあまりつるむのを好む性質ではないのでそれほど寄り道はしないが。
「なるほど……………あっ、じゃあ先輩」
「あん?」
「今度から一緒に帰りませんか?」
「はぁ?」
 何をいきなり言うのだろうか、こいつは。
 麻生は内心溜め息をつきたくなった。
「えー、何ですか、その反応は」
「当然だろう。何が悲しくてお前と一緒に帰らなくちゃならないんだ」
「良いじゃないですか。帰り道一緒なんですし」
「そりゃそうだが……お前部活は?」
 確かサラは茶道部に所属していたはずだ。
 知り合いが部長ってこともあるがサラのような外国の人間が茶道部などと言う
和風テイストの部活に入っている事に驚いて強く印象に残っていた。
「そんなの先輩が待っていてくれれば良いんですよ」
「馬鹿かお前は。そんなことしてやる義理はないだろうが」
 麻生は冷たく言い放った。
 ただの友人と、それも女と帰るために待ち合わせをするなどと言う発想を麻生は持ち合わせていなかった。

712 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:32 ID:lsQKtqyQ
「む〜、冷たいですよ。可愛い後輩の頼みなんですから聞いてくれても」
「聞く理由がねぇよ」
 にべもない返答。
 サラは少しばかり挫けそうになったがここまで来て止めるのは癪だった。
「じゃあせめてバイトの日だけでも一緒に帰りましょう」
「バイトの日?」
「はい。帰りは送ってくれるんですし行きも良いじゃないですか」
 サラとしては最初は冗談のつもりだったがあまりにも麻生の反応が冷たいため
そのうち意地でも了承させたくなっていた。
「あれは暗いからやってるだけで出勤時間の頃はまだ空は明るいだろうが」
「う〜、……はい。……まぁ、仕方ないですよね」
 それでも変わらぬ麻生の態度にサラは渋々頷いた。
 本当は少しでも一緒にいたかったのにな、そういう想いはあったが
サラは敢えてその気持ちは口にしなかった。
 言えば今の関係が壊れるんじゃないか、そんな恐れにも似た感情が胸にあったからだ。
「…………」
 目に見えて落ち込んでしまったサラの表情。
 少し悪かったかなという思いが麻生の胸の内を掠めた。
 ……それに。
「あはは……まぁ、元から冗談のつもりで聞いていたから良いんですけどね。けど先輩。
そんな風に冷たい態度ばっかり取っていたらそのうち女の子に嫌われちゃいますよ」
 落ち込んだ表情から一変、笑顔で忠告をするサラ。
 けれどその笑顔が無理をしているようなものに見えて
麻生は知らず知らずのうちに小さく舌打ちをしていた。

713 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:39 ID:lsQKtqyQ
「……別に女にどう思われようが気にしねえよ」
「もう、そんなこと言って……」
 少し困ったような笑顔。サラという少女はいつでも明るく振舞う。
(気に食わねぇ)
 そしてそう言うところを麻生は気に入ってもおり、また嫌いでもあった。
 いつもの心からの笑顔、それは良い。むしろもっと笑っていて欲しいくらいだ。けれど無理してでも笑うことはないと思っていた。
「はぁー、おいっ」
 だから彼は行動した。イラつく理由を取り除くために。
「え? なんですか?」
「……冬」
「え?」
「冬にでもなったらこの時間でも十分暗いよな」
「え、ええ……」
 サラは麻生の言いたいことが分からず曖昧に返事を返した。
「だからそん時にでもなったら一緒に帰ってやるよ」
「え?」
 一瞬サラは麻生が何を言っているのか分からなかった。つまり、それは……。
「冬になったら一緒に帰ってくれるってことですか?」
「ん? まぁな。まだ先だがそれでも良いってんなら一緒に帰ってやっても……」
「全然問題ないですっ」
 サラにしては珍しく大きな声だった。
「あっ……」
 そして自分の行動に驚いたのか、サラは頬を赤くして顔を伏せてしまった。
「じゃあ、決まりだ」
 麻生は気にした風もなくそう答えるとこれで話は終わりだとばかりに視線をサラから外した。
「はい。フフフ……」
 そして笑みが彼女の口を形作った。それは先ほどのような無理して作ったものではなく本当に心からの笑顔だった。
「なに笑ってんだか」
 その様子を横目で確認しながらもぶっきらぼうな口調で麻生は答えた。
 けれどそう答えはしたがその笑顔が見れて彼は内心嬉しかった。
 やっぱこいつはこうでなくちゃな、絶対に口にすることはないが彼は心の中でそう呟いた。

714 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:43 ID:lsQKtqyQ
 サァァァー
「フーンフフーン♪フフフフーン♪フフフフーフフーン♪」
 さっきからサラはご機嫌な様子で鼻歌を歌っている。
「なに浮かれてんだ? ガキじゃあるまいし」
 麻生は少し呆れた口調で訊ねた。
「フーフフフーン……え? もう、そんなの先輩と一緒に帰れるようになったからに決まってるじゃないですか」
「帰れるようにってまだ先の話だぞ」
 今はまだ秋。冬になるまではもう少し時間を必要としていた。
「でも約束してくれたじゃないですか。それだけで嬉しいんですよ」
「……変な奴だな」
 いまいち分からない。こんなことぐらいで何故それほど喜ぶのだろう。
「もう、乙女心が分かっていないですね」
 ビシッと人差し指を立てて注意するサラ。その仕草はやはり子供っぽい。
「はいはい。悪かったよ」
 いつも通り気のない返事。
 そんな麻生の態度にサラは溜め息をつきながら答えた。
「はぁ、もう良いです。……けど先輩。私が雨を楽しんでいたのって
そう言う理由だけじゃなくて元々雨が好きだったからなんですよ」
「雨が? ……ますます変な奴だな」
「えー、なんでですか?」
 頬を膨らませながら抗議するサラ。その様子に苦笑しながらも麻生は言葉を続けた。
「なんでって雨を好きになる理由が分からねぇからだよ。雨なんて鬱陶しいことこの上ないぞ」
 そう言ったのは麻生の正直な気持ちだった。
 歩けば靴が濡れるし傘も差さなくちゃならない。何より外に出る気がなくなるのが嫌だった。
 雨なんて好む奴の気が知れない、それが彼が長年持っている考えだった。

715 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:44 ID:lsQKtqyQ
「そんなことないですよ。例えば……ほら、傘にポツポツって当たる雨の音。この音を聞くだけでも楽しいじゃないですか」
「……そうか?」
 耳を澄ませて傘に当たる雨音を聞いてはみたがそんな感想は一片も湧かなかった。
「そうです。もう、先輩って情緒なさ過ぎですよ」
「情緒なのか?」
 いまいち違う気がしたがサラは強引に言い張った。
「そうなんです。それに傘を差して雨の中を歩くだけでもウキウキしませんか?」
 サラは笑顔のままだったが目に少しばかり力が入っていた。
「いや、全然」
 けれど麻生はそう言ってサラの問いを再びキッパリと否定した。
「う〜」
「たく、分かんねぇなぁ。ヤなとことかねえのか? 例えば雨で靴が濡れたら嫌だろ?」
 麻生は少なくとも嫌だった。
「そんなことないですよ。水たまりとか靴でピチャピチャって踏むの楽しいですし……」
「やっぱガキか」
 その思考回路は麻生には理解不能だった。
「あ〜、先輩それは非道いですよ」
「非道くねえよ。事実を言ったまでだ」
 雨が降って喜ぶ奴は根暗な奴か子供、その認識は間違っていなかったようだ。
「むぅ〜」
 サラは頬を膨らませながら上目遣いに麻生を睨んだ。
 けれど麻生はそれを気にした風もなく軽く肩をすくめ歩き続けた。
「Ladyに対してそういう言い方はないですよ」
「言っとけ」
 なおも言い募るサラを適当にいなしながら歩き続ける麻生。
 結局それから数分間サラは文句を言い続けたが麻生はことごとくそれらを躱し、
最後にはもう良いですと言うサラの言葉と共にこの話は打ち切られた。

716 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:46 ID:lsQKtqyQ
「さてと。なぁ、ここまで来れば家はすぐだしもう良いぞ」
 それまで比較的楽しくサラと会話をしていた麻生は突然そう話を切り出した。
「え? なんでですか?」
 突然のことに戸惑いながらもサラは訊ね返した。
「お前の家、向こう側だろ。俺の家はあそこの角を左に曲がるからさ」
 数十メートル先の角を指差しながら麻生は答えた。
「えー、良いですよ。そんなに手間じゃないですし」
 当然のようにサラはその提案を棄却した。
「お前が良くてもこっちが嫌なんだよ。男の都合で女にわざわざ遠回りなんてさせられっか」
 麻生広義。良くも悪くも固い人間であった。
 そしてサラ・アデイエマスは対照的に非常に柔軟的思考の持ち主だった。
「もう、そんな前時代的なこと言わないでくださいよ。私がしたいからしてんですから」
 にっこりと笑顔で答えるサラ。けれどその笑顔には少しばかり迫力があった。
 一言で言えば反論は許さないと言った類の笑顔であり、普通の男ならすぐさま自分の意見を引っ込めるだろう。
 ……だが。
「何と言われようと、そんなことさせられねえよ」
 多少はその笑顔にぐらついたがそれでもこういう場合は意見を曲げることはないのが麻生だった。
「頑固ですねぇ」
「頑固ってわけじゃないんだがな。そもそもちんたら歩くより走ったほうが早く帰れて良いんだよ」
 在る意味それは事実だったが本音ではなかった。
 そして前時代的な考え方もまた所詮は言い訳に過ぎなかった。
 本当の理由は単純明快。単に麻生自身がサラに迷惑を掛けたくない、ただそれだけだった。
「それはそうですけど……」
 そしてその理由にサラ本人はもとより麻生自身さえ気づいていないのが現状であった。

717 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:49 ID:lsQKtqyQ
「つーことで俺はここで帰るな」
「えー、けどまだ雨降ってますよ?」
 そう言って空を見上げるサラ。けれど……。
「あれ?」
「止んできたな」
 いつの間にか雨の勢いは弱まっていた。この分だとあと数分もしないうちに完全に止んでしまうだろう。
「はぁ〜」
 麻生の持つ傘の下でサラはがっくりと肩を落としてしまった。
「まぁ、あの角までは一緒で良いからさ」
 サラがあからさまに落ち込んでいるのを見て麻生はそう言って声を掛けた。
「はい、分かりました」
 そして二人は麻生が指し示した角まで歩き始めたが……。
「完全に止んだな」
 目的地に着いた時点で雨は完全に上がってしまった。
「そうですね。はぁ〜、仕方ないです」
 そう言ってひょこっと傘からサラは飛び出した。
「お、おい」
「んー、お日様の光が見えてていい感じですよ」
 サラはくるりと麻生の方にへと向き直り笑顔を向けた。
「あ、ああ」
 しかし麻生は珍しく曖昧な返事しか返さない。
「あ、そうだ、先輩。さっきの話ですけど私が雨を好きな理由がもう一つありました」
「もう一つ?」
 麻生が怪訝な顔で返すとサラは「はい、そうです」と頷きつつ答えた。
「雨上がりの空。この光景を見るのが好きだからですよ」
 そう言いながらサラはバッと両手を大きく広げた。
 その仕草はどことなく子供っぽくもあったが雲のすき間から差し込む太陽の光に照らされたサラの顔はいつも以上に綺麗だった。

718 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:56 ID:lsQKtqyQ
「……聞いてますか? 先輩」
 ボーっとした表情を浮かべる麻生に対しサラは少しばかり口を尖らせて訊ねた。
「あ、ああ。聞いてるぞ」
「なら良いんですけど、ボーっとしちゃダメですよ」
 意趣返しの意味合いを込めてサラはその言葉を口にした。
「してねえよ」
「あはは、ホントですかぁ?」
「ああ」
 短く返す麻生にサラは小さく笑いくるりと体を反転させて言葉を続けた。
「けど先輩。さっきは全部却下されちゃいましたけど今度の雨を好きな理由も同意してもらえませんか?」
 後ろを向いたまま再びサラは問いかけた。麻生の態度から半ば答えを予想しているかのようにその顔を見ずに。
 そのサラに対し麻生は今だ差していた傘を閉じながら答えた。
「そんなことはねえよ。今度は同意してやるよ」
 素直じゃない台詞。その答えを聞いてサラはくすりと笑みを漏らした。
「たっく……」
 けれど麻生がそう答えた理由はサラの考えていたものとは少しばかり違った。
 確かに雨上がりの空は綺麗だと思ったがそれ以上にキラキラと水たまりに反射する光に照らされたサラの姿を綺麗だと思ったからだった。

719 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:57 ID:lsQKtqyQ
「チッ」
 そしてそんなことを考えてしまった自分に対し麻生は軽く舌打ちをして頭を掻いた。
(なに考えてんだか俺は)
 らしくないことを考えた自分に呆れていると不意に彼はある事実に気づいた。
「っておいっ、なんで晴れてんだよっ」
「え?」
 麻生の叫びに後ろ手に手を組み楽しげに左右に首を揺らしていたサラはピタリと動きを止めた。
「お前、今日は夜半過ぎまで雨が降るとか言ってなかったか?」
 確かにサラはそう言ったはずだ。
 ビクッ
「え、えっとそうでしたっけ? そんなこと言った覚えはないんですけど」
 麻生の言葉にサラは面白いくらいに動揺を見せた。
「言ってたよ」
 多少低い声で麻生は答えた。
「や、やですよ先輩。そんな怖い声出して」
「ならこっち向け」
 一向にこちら側を振り返らないサラに多少のイラつきを覚えて麻生は声をかけた。
「う〜、先輩の勘違いですって。そういうことにしときましょうよ」
「…………はぁ〜」
 サラの言葉にいい加減どうでも良くなってきた麻生は深い溜め息をついた。

720 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:57 ID:lsQKtqyQ
「たっく、仕様がねえなぁ」
 怒るほどのことでもないからな、そう考えて麻生は言葉を漏らした。
「えへへ……」
 麻生の答えに罰の悪そうな笑みを浮かべながら振り返ったサラの表情は次の瞬間驚きの表情に変わった。
「せん……ぱい?」
「え?」
「その肩……」
 サラが微かに震える指先で指し示す先には雨でぐっしょりと濡れた麻生の右半身があった。
「あ、ああ。……チッ」
 雨が降っているままならば気づかれなかったのにと軽く麻生は舌打ちをした。
「どうしてそんなに濡れて……」
「ああ、それは……」
 答えを渋る麻生。
 不審に思ってそのまま視線を落とすと彼が左手に持つ傘に視線が止まった。
「あ、もしか……して……」
 麻生が今持っている傘はサラの物だ。
 そしてサラの物と言うことはそれは女の子用の物と言うことと同意だった。
「……チッ」
 そこで上手く誤魔化すことが出来れば良いのだが生憎、麻生と言う人間はそう言ったことが苦手な部類の人間であった。
 だから彼は正直に事実を話した。
「……ああ、小さかったからな」
「っ!?」
 麻生の言葉にサラは小さく息を呑んだ。
 当然だろう。自分が傘の大きさを失念していたから麻生が濡れてしまったのだから。
「……気にすんな」
 もっとも麻生の言葉には大きく欠けている部分があった。
 確かにサラの傘は小さかったが普通に差している分にはそれほど濡れなかったはずだ。
 けれどそうしなかったのはサラの身体を濡らしたくなくて傘を少し大きく傾けていたからだった。
「お前の所為じゃねえよ」
 けれどその事を告げたらサラはもっと責任を感じてしまうだろう、だからこそその事は口が裂けても言わないでおこうと彼は考えた。

721 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:58 ID:lsQKtqyQ
「けど……」
「なに、傘に入れてもらえたからここまで来んのにこのくらいの被害で済んだんだからさ」
 傘を差さずに走って帰っていたらこんな被害で収まらなかったはずだ。確実に下着までぐしょ濡れになっていたことだろう。
 けれどサラは大きく首を横に振った。
「ん?」
「違い……ます。確かにそのこと自体申し訳ないなって思ってますけど……でもそうじゃないんです」
「……じゃあなんだ?」
「……そもそも私が先輩を誘わなければ先輩、濡れなかったんですから」
「そんなこと……」
 反論しかけて麻生は言葉を止めてしまった。
 そう言えばそうだった。彼はサラの『夜半過ぎまで雨は降り続く』と言う言葉を聞いて一緒に帰ることにしたのだから。
「ふぅー」
 けれど事実は違った。見上げた空は日が差し込みサラの言葉に反して雨は上がってしまっていた。
 ……つまり、こう言う事だったのだろう。
 サラは自分と帰りたいがために態と嘘をついた、そう言う事だったのだろう。
「……ごめんなさい」
 サラは申し訳なさそうに頭を垂れた。
「チッ」
 ついた理由はよく理解らないがサラの嘘は可愛いものだった。
 なのにそんなことでこんな風な悲しげな顔をして欲しくなかった。
「気にすんなっつってんだろ。お前が傘に入れてくれたお陰でこうも早くここまで来れたんだから」
「でも……」
 理解っている。
 サラは自分がついた嘘の所為で麻生に迷惑を掛けてしまったことを悔やんでいるのだと言うことは。
「これだって乾かせば良いんだしな」
「……はい」
 頷くがサラの顔は泣きそうなままだった。
 その顔が麻生の心を酷く騒つかせる。
「はぁ……」
 サラには珍しい悲しげな溜め息。
 そして麻生が見ているのを思い出して慌てて笑顔を作ろうとした。

722 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:02 ID:lsQKtqyQ
(くそっ)
 その行為に彼はイラついた。激しくイラついた。
 ……だからその激情のまま彼女の名を呼んだ。
「サラッ」
 ビクッ
「は、はい」
 己が名前を呼ばれたことに動揺し、そしていつも冷静な麻生の初めて聞く激しい口調に驚き
僅かに怯えた面持ちで彼の顔を彼女は見上げた。
 ポンッ
「え?」
 けれど彼が行った行為はおおよそサラが予想したものとは違ったものだった。
「先輩?」
 彼のその行為はおそらく無意識に行われたものに違いなかった。
 いつもの彼なら絶対しないであろう行動。……それは。
「あ、あの……」
 サワサワ
 彼はサラの頭に右手を置き少し強めに彼女の頭を撫でていた。
「そんな顔をすんじゃねえよ。お前は別に悪くないさ」
「え……あ……」
「確かに雨は止んだかもしれねえがお前が誘ってくれなきゃ俺は今時分まで一人であんな場所に立ちっぱだったんだからな」
 言い聞かせるように普段よりほんの少しばかり柔らかい、けれど普通の人間には違いが分からないほどの口調で彼は話しかけた。
「けど雨に濡れることはなかったんですよ?」
「それでもだ。こんくらい濡れたうちにも入らねぇよ。……それに一人寂しく帰る事もなかったしな」
「え?」
 麻生の言葉にサラは信じられない面持ちでその顔を見つめた。
「寂しい、ですか?」
「ん? ああ、別に本当に寂しいわけじゃねえが一人で帰るよりお前と帰る方が断然楽しかったからな」
「え? あの、楽しかったんですか?」
「ああ、そりゃな。つーより楽しくなきゃ一緒に帰ろうなんて思わねぇよ」
 軽い嘆息と共に彼は答えた。

723 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:03 ID:lsQKtqyQ
「け、けどあれは私が強引に……」
「強引でも何でも一緒に帰っても良いって気持ちが一片もなきゃこんなことしてねえよ」
 麻生の言葉に呆然としつつもサラはそれが本心だと感じていた。
 短い付き合いだがサラは麻生がする気がないことは決してしないし
気遣いで他人に黙って従うと言うことも出来ない人だということを理解っていた。
「そう、でしたね」
 けれどサラの気持ちは晴れなかった。
 その様子を見て心の中で深い溜め息をつくと麻生はサラの頭の上に置いていた右手を強く動かした。
「あー、もう」
 グシャグシャグシャ
「わわっ! せ、先輩っ!?」
 非道く乱暴に頭を撫でられてサラは抗議の意味も込めて麻生の顔を睨んだ。
「俺はそんな顔させたくて付き合ったんでもないし
濡れてたのを黙ってたわけでもないんだから、そんな顔をするな」
「む、無茶ですよ」
「無茶でもだ。……たっく、いつもみたいになんも考えずに笑ってろ。それが一番お前らしい」
「そ、それってかなりの侮辱ですよぉ」
 少しばかり麻生の言葉に傷つきながらもサラは抗議を止めなかった。
「間違ってねぇだろ。泣き顔も落ち込んだ顔も悩んでる顔も全部らしくねぇ。お前は笑ってる顔が一番良いんだからそうしとけ」
「え、えっと……」
「泣かせねぇし落ち込ませねぇし悩ませもしない。俺がさせない。んで嫌なことあったら全部言え。
俺がそれを全て取り除く。だからお前はいつものように屈託のない笑顔を浮かべてろっ。いいな」
 その言葉は傲慢以外の何物でもなかったけれどその言葉の意味が分かってサラは嬉しくなった。
「はぅ〜」
 けれど同時にかなり気恥ずかしかった。
 麻生の言葉は聞きようによっては告白とも受け取れないこともない言葉だったからだ。
「あん? なに赤くなってんだ?」
 しかしながら麻生自身はそのことに気づいていない様子だった。

724 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:05 ID:lsQKtqyQ
「あ、いえ、その……先輩の手が恥ずかしくて」
「俺の手?」
 そう言われて麻生は己が右手の場所を目で追った。
「って、す、すまん」
 サラの頭を撫でていたことに今更ながらに気づき慌てて彼は彼女の頭から手を離した。
「あっ……」
 その事実にサラは残念そうに声を上げた。
「わりぃ。その……な……」
 罰が悪そうに麻生は目線を逸らした。
「いえ、別に。………じゃ、じゃあ先輩。私ここで帰りますね」
 その場に留まっていたら何か変なことを口走りそうでサラは慌てて頭を下げた。
「ああ。……って、待て。これ持ってけ」
 麻生は左手に持っていた彼女の傘を差し出した。
「あ、はい、すみません。ずっと持ってもらってて」
 麻生から傘を受け取りサラは深々と頭を下げた。
「いや、気にすんな」
「それじゃあ帰りますね」
「ああ」
「ではまた今度」
「おう」
 そして麻生の返事を聞くが早いかサラはその場から去って行ってしまった。

725 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:06 ID:lsQKtqyQ

「はぁ〜〜〜」
 サラの姿が見えなくなったところで麻生は今だ濡れたままの塀に手を付き深い溜め息を吐いた。
「いくらなんでも年頃の女の頭を撫でるか、普通」
 彼は自分の信じられない行動に自己嫌悪に陥っていた。
「嫌がられてはなかったと思うが……けどなぁ」
 と、無用の心配をしばらくの間、彼は繰り広げていた。

 一方……
「えへへへへへ……」
 サラはにやけそうになる顔を抑えることが出来ないでいた。
「名前を呼んでもらえた上に頭まで撫でてもらっちゃった」
 バイト先で知り合いそれなりに経つが今日してもらったことはどれも初めて事ばかりだった。
「しかもあんなこと言ってもらえたし……フフフフ……」
 握った傘をぎゅっと抱き寄せサラは一人で笑みを零した。
「う〜、顔が緩んで直らないなぁ」
 あのまま彼と一緒にいたなら絶対変な顔をされていたことだろう。
「……けど」
 不意に彼女は真顔になった。
「先輩に嘘をついて迷惑を掛けちゃったのはホントだし……反省しよう」
 静かに呟きこれからは出来るだけ彼には心配も迷惑も掛けないでおこうと固く彼女は決心した。
「でも……えへへ……」
 再び笑みが零れだしサラは一人浮かれ始めてしまった。

――こうして一旦の幕引きを迎えたある雨の日のお話。

                〜 Fin 〜

726 :風光:04/08/06 16:08 ID:lsQKtqyQ
と言うことで出来上がったサラ×麻生の物語。
キャラを掴めていない気もしますしこういう三人称の書き方もほぼ初めてで少し不安です。
なにより長文になってしまったことがかなりの失敗。本当は上手く纏められれば良かったんですけどね。
次があったらもうちょっと上手く書くのでご容赦を。
ってか「改行が多いです」だとか「本文が長すぎます」ってエラーメッセージに何度泣いたことか。
かなりの数リロードして投稿しながら文を書き直す羽目になってしまいました。

それでは長々とお付き合い有難う御座いました。これにて一旦閉幕とさせて頂きます。

P.S.
芝居かかった口調は態とですんであしからず。

727 :Classical名無しさん:04/08/06 16:10 ID:HUBhFNx.
GJ!リアルタイムで読ませていただきました。素晴らしかったです。

728 :Classical名無しさん:04/08/06 16:32 ID:kQe3JHXM
GJです。非常にいい作品だと思います。
ただ個人的には706のような「ナノ一秒以下」
というような表現は幼稚に見えるのでやめたほうが
いいと思います。このような良い雰囲気のSSでは
特に……。

まあSS書いたこともない人間の戯言なので気にせ
ずにこれからも頑張ってください。


729 :Classical名無しさん:04/08/06 18:12 ID:6sGlLixk
GJってなんすか?

730 :Classical名無しさん:04/08/06 18:27 ID:2eCujtKI
God's Joke の略

731 :Classical名無しさん :04/08/06 19:09 ID:SgMKkMVQ
GOOD JOBの略



732 :Classical名無しさん:04/08/06 19:41 ID:ZZflvkPQ
こないだあるSSサイトのweb拍手でコメントに「GJです」って書いたら「はじめましてGJさん」って返事が返ってきた
まだ知らんひとも結構いるのだね
それはそうと>>726 GJ!

733 :Classical名無しさん:04/08/06 20:12 ID:Q.Gktd4I
ロッテファンの俺的には今回のは
GJと書いてGREAT JOBだ。

734 :Classical名無しさん:04/08/06 20:16 ID:WiBE5f36
じゃあ鷹ファンだから
GORILLA JOHJIMA

735 :Classical名無しさん:04/08/06 22:07 ID:gFdEljq2
>>734
ワラタ

736 :Classical名無しさん:04/08/06 23:16 ID:2/xo3W9.
GJ!
初めてとか言ってるくせにキャラも良く掴めてるじゃないですかー。
雨が止むところのシーンとか、描写が凄く良かったと思います。
気になった点といえば、麻生が「チッ」って言い過ぎかなと。
雰囲気悪くなります。

737 :Classical名無しさん:04/08/07 00:48 ID:b1O9Jwvc
あえて言ってしまうと、読点が少なすぎる気が。
全編通してそういう印象なんだけど、極端なところだと、
>確かに雨上がりの空は綺麗だと思ったがそれ以上にキラキラと水たまりに反射する光に照らされたサラの姿を綺麗だと思ったからだった。
に一個も読点が入ってないのは、正直読み辛い。
いや、こういう意見もあるということでひとつ……。

738 :Classical名無しさん:04/08/07 01:43 ID:2eCujtKI
しかし文章の構成上不必要な読点は除去すべし、という意見もある。
無用な読点は馬鹿っぽいし、乱雑に打たれた読点は文章の構造自体を
狂わせてしまいもするからね。

739 :Classical名無しさん:04/08/07 02:39 ID:pPuZhESk
確かに『不必要な』読点は避けるべきだと思う。
しかし、読点が少ないのもどうかと思う。
読点があることで文章にリズムが生まれる。結果として物語に入り込みやすい。
長い文章なのに読点がないと一本調子の棒読みになりかねない。
そうなると、物語に入り込みにくく、読むことだけに必死で大して印象に残らない。
必要か不必要かの判断のしどころが難しんだけどね、素人としては。

740 :Classical名無しさん:04/08/07 02:44 ID:pPuZhESk
上の『素人』発言は、『プロの物書きではない人』という意味です。
SS作家の方々を侮辱する意味で書いたわけではありません。
誤解を与えかねないので、念のため書いておきます。

741 :空振り派:04/08/07 09:28 ID:0fNaYKGc
前回はご迷惑をおかけしました。
性懲りもなく迷探偵シリーズです。(シリーズ化するのか?)
と播磨で2作目を考えてたのですが、ちょっと詰まってしまったので息抜きに
天満を主人公に書いてみたら、予想以上に暴走してくれたので一本できて
しまいました。推理にならないのは目に見えてますが……。
では、他の職人さんとかぶらないよう様子を見て3分後くらいに一気に投下します。

742 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件:04/08/07 09:35 ID:0fNaYKGc
「伊織〜。何処〜?」
 ……いない。もうすぐ昼ご飯の時間になるというのに、今日は朝から我が家の飼い猫
である伊織の姿が見つからないのだ。
 これは私に対する挑戦だわ!
私の探偵魂に火が点いた。天才は忘れた頃にやってくる……。
そう! 天才探偵テンマの出動よ! 伊織は必ず見つけ出してみせる!
えっと、虫メガネにヒゲ、帽子、帽子……。それとシガレットチョコ。
 よし! まずは推理よ!
昼ご飯の時間になっても出てこないということはきっと伊織はさらわれて、どこかに監禁
されているに違いない……。
 ハッ! これは事件だわ!
それに伊織は人見知りが激しいから知らない人には着いて行かないはず。となると私の
親しい人間ね!
 犯人がわかったわ!
え? 早すぎるって? ちっちっち。名探偵に必要なのは天性のカンなのよ!


743 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件:04/08/07 09:36 ID:0fNaYKGc
 さぁ、犯人は……。
→播磨君よ!   >>744
 愛理ちゃんよ! >>745
 美コちゃんよ! >>746
 晶ちゃんよ!  >>747
 烏丸君よ!   >>748
(他のルートを堪能した人は……)
 もう疲れたよ〜 >>749

744 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜播磨ルート〜:04/08/07 09:36 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 とは言ったものの、播磨君どこにいるんだろ?
とりあえず公園に向かうと……居た!
「て! よう、塚本……」
 平静をよそおって挨拶を交わす播磨君。
しかし、一瞬動揺してシャツの下に何かを隠すのを私は見逃さなかった!
播磨君に近づいて服の上から感触を確かめる。さわさわ……。
「こ、これは何でもねぇんだ!」
 何かを隠している!
私はさらにシャツの下に手を入れて確認した。こちょこちょ……。
「ぶ、ぶはぁ! それはさすがにまずいって!」
 バサッ。
「あ!」
 播磨君のシャツの下から出てきたのは大きな茶封筒と紙束だった。
……な〜んだ。伊織じゃ無かったのか。
 こうしちゃいられないわ! 次よ。
「お〜ぃ、塚本〜。もっとニャンニャンしようぜ……」
>>743

745 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜愛理ルート〜:04/08/07 09:37 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 愛理ちゃんの家だ。相変わらず大きいな〜。
「あら、天満。ま〜た、変な格好して……。何の用?」
「秘密捜査よ! 愛理ちゃんの部屋をあらためさせてもらうわ!」
 ビシッと親指を立てる私。
「ち、ちょっと。私の部屋はダメよ! 親しき仲にもブレーキありって知らないの?」
 明らかに動揺している! 私は真っ直ぐ愛理ちゃんの部屋に向かった。
 ベッドの下。カーテンの裏。居ない……。
だが、ベッドの脇にある父親と思わしき男性と写っている沢山の写真立ての中に播磨君
の写真が混じっていることを私は見逃さなかった!
 虫メガネでじーっと確認するとあわてる愛理ちゃん。
「そ、それは……。いわゆる魔除けってやつよ。誤解しないでよね」
 やっぱり、写真の中にも伊織は映っていない……。
 こうしちゃいられないわ! 次よ。
「ちょっと天満! 変なこと言いふらさないでよ〜……」
>>743

746 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜美コルート〜:04/08/07 09:38 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 私は美コちゃんの家の道場へやってきた。
「お、塚本。うちにやってくるなんて、めずらしいな。何の用だ?」
 私は虫メガネで美コちゃんの身体を観察した。
――ム! 以前よりも胸がふくらんでいる。怪しい……。
 私は美コちゃんに近づき、ゆったりとした道着の上から胸を触って確認した。
「お、おぃ。やめろって! あっ……」
 ん〜。やわらかい。やはり伊織は隠れていないようだ。
「お前ら、何してるんだ……」
 そう言って出てきた花井君の足元に真新しい血痕があったのを私は見逃さなかった!
……な〜んだ。花井君の鼻血か。
道場の中にも伊織が隠れるような場所は見当たらない。
 こうしちゃいられないわ! 次よ。
「おぃ、塚本! あ、アタシはノンケだかんな〜……」
>>743

747 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜晶ルート〜:04/08/07 09:39 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 よく考えたら、晶ちゃんの家も知らないんだよね〜。
あてもなく街中をさまよっていると背後から声をかけられた。
「あら、天満。探偵みたいな格好して何しているの?」
「あ、晶ちゃ〜ん。探してたんだよ〜」
「私を? それで何の用?」
「伊織がどこにいるか知らない?」
「あぁ、それなら……」
 晶ちゃんが指をすっと指し示した。
「この道を真っ直ぐ行って2番目の交差点を左。それから突き当たりを右に。タバコ屋
 さんの角を右に曲がって、郵便ポストのある交差点を右。で真っ直ぐ行って2つ目の
 垣根のある瓦屋根の家に行ってごらんなさい」
「う〜。覚えきれない……」
「そうね。紙に書いてあげるわ」
 晶ちゃんに書いてもらった紙を頼りに私は現地へと向かった。
 え〜と、この郵便ボストで右に曲がって……と。見えた!
 ――私の家じゃん!
>>743

748 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜烏丸ルート〜:04/08/07 09:39 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 とは言ったものの、烏丸君。どこにいるんだろ?
ここは……私の超能力の出番よ! ん〜。(ピコピコ)あっち!
「……やぁ、塚本さん」
 居た! これはやっぱり愛の力ね!
「こんにちは。烏丸君。……クロネコ見なかった?」
「……」
 無言で交差点に停止しているトラックを指差す烏丸君。
まさか! 伊織はあのトラックの荷台の中に!?
「烏丸君。ありがと〜」
 あぁ! 信号が青になってしまう。
烏丸君がくれた情報。無駄にはしない……。私はダッシュでトラックを追いかけた!
 ――10分後。
ぜぇぜぇ。やっと追いついた……。
「どうしたい? お嬢ちゃん」
「うちのクロネコが荷台の中に……」
「ん? 荷台には何も居ないよ。確かにうちはクロネコだけどな。はっはっは」
 ――クロネコヤ○トだった!
 もうっ。烏丸君のバカバカ……。でも好き!
>>743

749 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜解決ルート〜:04/08/07 09:43 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
「は〜。見つからなかったよ〜」
「……姉さん、どこに行ってたの? それにその格好……。お昼暖め直すね」
「ありがと〜。八雲〜。伊織、見なかった?」
「……昨晩、姉さんが伊織と一緒に寝るって言ってから部屋に閉じ込めてたよ……」
 台所を見ると遅い昼ご飯を黙々と食べている伊織の姿が……。振り向いて一鳴き。
「ニャ〜」
「な〜んだ。ここにいたんだ〜」
 ――こうして私のたゆまぬ捜査により、事件は解決した。
 天才探偵テンマに未解決の文字は無いのだ!
                              <END>
「……姉さん、それは違……」

750 :空振り派:04/08/07 09:44 ID:0fNaYKGc
完了です。
最近、連続投稿でよくひっかかる……orz
正解もBAD ENDも無いのですが、播磨とはまた違った楽しみ方があるかと。
正直、ルートを分ける必要は無かった気もしますが、好きなルートから読んで
いただければ。
事件の掻き回しっぷりが天才たるゆえんです。お姉ちゃんパワー?発揮気味。
そして、やっぱり晶は正しかった……。
つっこみどころが多すぎるので、最後八雲に代表してつっこんでもらいました。

751 :風光:04/08/07 17:35 ID:gvjb4pUY
GJ!……って言えばいいのかな。
ともかく面白かったですよ。
特に最後の八雲の台詞が素敵ですな。
沢近も美琴もいい感じだし……ただ播磨がなんか違う気がしたけれど、まっ、それは置いときましょ。
次の作品も期待してますね。

>>736
言われてみればちょっと「チッ」って言わせすぎたかも。
もうちょっと別の表現にしてみればよかったですね。
>>737
確かに読点をつけるべきでしたね。
本当は途中で改行していて文章もちょっと違ったんですけど「改行が多すぎます」だとか
エラーメッセージが出たためその場で書き直していたため読み返す暇が無かったのが敗因ですね。
まぁ、今度また書いてみるつもりなのでその時気をつけてみますね。

752 :Classical名無しさん:04/08/07 18:01 ID:Fxxuq7bM
>>751
専用ブラウザの導入をオススメします。
行の制限数や改行の位置などがわかりやすく、投下するのにすごい便利ですよ。

753 :xoder.rh.rit.edu:04/08/07 18:31 ID:763c3gh.
選択肢ありのSSは
リーフ図書館のthe day of multiに近いものを感じる

もしかすると同じ人が書いているのかもしれない

754 :Classical名無しさん:04/08/07 18:54 ID:6sS8Vu9E
>>753
リーフ図書館か、何もかも懐かしい…

755 :Classical名無しさん:04/08/07 19:23 ID:.D0SMK2U
>>742-749
GJ!!
笑わかしてもらいました。

756 :Classical名無しさん:04/08/07 20:46 ID:z768yxMk
>>742-749
GJ!
やっぱり天満には、ほのぼの・コメディが似合いますね。
このとぼけた空気が大好きです。

757 :Classical名無しさん:04/08/07 23:46 ID:8iICDBbw
>>742-749
GJです!
重要なアイテムをことごとく見過ごす天満が面白かったです。

気になったのは>>746ですが
道場は花井の家で、美琴はそこの師範代(先生?)だったと
思われます。

重箱の隅をつつくようですが、結構重要なことだと思いましたので
失礼しました。

758 :空振り派:04/08/08 01:12 ID:6X18evaM
仕事から帰ってきたのでちょっとだけレス。

>>751
播磨があまりにもありきたりだったのであえて壊してしまいました。

>>753
リーフ図書館って知りません・・・。ちなみにスクラン以外のSSは書いてません。
スクラン以外の掲示板もほとんど行ってません。そもそも2ちゃんねるを使い出した
のもスクランがきっかけだったから・・・。

>>757
それは気付かなんだ。今鳥とイチさんが出会った回で道場に訪問した今鳥を
美琴が迎えたので間違って思い込んでたみたいですね。

759 :Classical名無しさん:04/08/08 08:53 ID:RInbhL8g
>>752
その「専用ブラウザ」って何でつか?
教えてください・・・
漏れは「かちゅ〜しゃ」だけど、
そんなのなかった・・・

760 :Classical名無しさん:04/08/08 09:15 ID:wzNZNqco
>>759
それはひょっとしてギャグで言ってるのか…?

761 :Classical名無しさん:04/08/08 14:04 ID:wXD1UA1o

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!   
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・   
                                             
            ,. -─- 、._               ,. -─v─- 、._     _
            ,. ‐'´      `‐、        __, ‐'´           ヽ, ‐''´~   `´ ̄`‐、
       /           ヽ、_/)ノ   ≦         ヽ‐'´            `‐、
      /     / ̄~`'''‐- 、.._   ノ   ≦         ≦               ヽ
      i.    /          ̄l 7    1  イ/l/|ヘ ヽヘ ≦   , ,ヘ 、           i
      ,!ヘ. / ‐- 、._   u    |/      l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l イ/l/|/ヽlヘト、      │
.      |〃、!ミ:   -─ゝ、    __ .l         レ二ヽ、 、__∠´_ |/ | ! |  | ヾ ヾヘト、    l
      !_ヒ;    L(.:)_ `ー'"〈:)_,` /       riヽ_(:)_i  '_(:)_/ ! ‐;-、   、__,._-─‐ヽ. ,.-'、
      /`゙i u       ´    ヽ  !        !{   ,!   `   ( } ' (:)〉  ´(.:)`i    |//ニ !
    _/:::::::!             ,,..ゝ!       ゙!   ヽ '      .゙!  7     ̄    | トy'/
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、    r'´~`''‐、  /        !、  ‐=ニ⊃    /!  `ヽ"    u    ;-‐i´
 !    \::::::::::::::ヽ   `ー─ ' /             ヽ  ‐-   / ヽ  ` ̄二)      /ヽト、
 i、     \:::::::::::::::..、  ~" /             ヽ.___,./  //ヽ、 ー        


762 :Classical名無しさん:04/08/08 16:28 ID:TTBzgvBw
倉庫更新マダー?

763 :Classical名無しさん:04/08/08 17:04 ID:7R1qc0/A
そういやもう大分更新してないな保管庫

764 :Classical名無しさん:04/08/08 18:25 ID:chBl6T3c
>>752
専用ブラウザっていくつかあるみたいですけどどれでもいいんですかね。
いまいち分からないっす。

765 :Classical名無しさん:04/08/08 19:36 ID:NCePL43w
>>763
更新が待ちきれないのと合併号の悲しさから
過去ログでクズリ氏の連載SSを読んだ俺

766 :Classical名無しさん:04/08/08 19:46 ID:R4uncQhw
>>759
多分aaeditorとかのことじゃね?

767 :Classical名無しさん:04/08/08 20:18 ID:2eCujtKI
>>763
倉庫が更新されていないという単純な事実に気付くまでは
クズリ氏の新作まだー
って感じで待ち惚けていた俺。

768 :Classical名無しさん:04/08/08 22:05 ID:SHOtNNFU
>>763
更新してないくせに、「最終更新日」のみが更新されてるのって、なに?
SS保管庫で最初に見るのそこだから、更新してないのなら期待させるのはやめて欲しいですよね。

769 :Classical名無しさん:04/08/08 23:01 ID:7R1qc0/A
更新もそうだがクズリ氏のSSを一まとめにしてもらいたいんだが
あの長編をバラけさせているいると探すのも面倒なんで

770 :Classical名無しさん:04/08/08 23:22 ID:ZBauQIXs
まとめるのは暇できた時でいいので
忙しくてもがんばって少しずつでも更新して欲しいです

771 :Classical名無しさん:04/08/09 00:04 ID:e0ROVpJQ
最終更新日が勝手に更新されるのはjavaだから、っつか鯖のせい
あそこの広告アホだから

と擁護してみる
まあ、いいかげんまとめて更新してほしいのは漏れもだが

772 :Classical名無しさん:04/08/09 07:57 ID:e1uYofks
当分本編でみられそうにない一条のSSきぼんぬ

773 :752:04/08/09 10:34 ID:Fxxuq7bM
なあ、俺は事細かに説明した方がいんだろうか?
自分がこんな自体に遭うのは初めてなので、誰か助けてください OTL

774 :ほんわか名無しさん:04/08/09 11:06 ID:/KfIBzsw
専用ブラウザ導入のススメ

―2ちゃんねるブラウザの比較表(仮仮仮仮)―
ttp://www.geocities.jp/browser_2ch/index.htm
↑ココ見てから、↓ココの各ブラウザスレでの評判を見る。
ソフトウェア板
http://pc5.2ch.net/software/
2ちゃんねる用ブラウザで最強なのは?
http://pc5.2ch.net/test/read.cgi/software/1030090735/

あとは色々自分で使ってみて、使い易いと思ったのを選べばいいよん。

775 :Classical名無しさん:04/08/09 11:16 ID:eqxSnl/.
>773-774
自分の知っている範囲で補足。
janedoeの場合、本文を書き込む所にレス容量/最大レス容量と現行数/最大行数
が表示される。
その他、setting.txtの取得も可能。
……自分はLive2ch派だけど。

776 :764:04/08/09 17:32 ID:nhbMRQkU
janedoeを導入してみました。
これでSSを投下するのも楽になりそうです。
>773-775
感謝です。

777 :Classical名無しさん:04/08/09 19:37 ID:RopKxP9E
保管庫、新しく設置されたねー。
新管理者の人、よろしくー。


778 :職人のはしくれ:04/08/09 20:12 ID:ZPdsCAGQ
katju88→A bone→ゾヌ2→ギコナビと乗り換えてきましたが、Openjanedoeイイ!
ギコナビで欲しかった機能=タブ多段・板タブ・レス行数/容量表示等が実装されて
なおかつ軽い!これでスレ検索バーとサムネイル表示があれば個人的には完璧。
>775 thx! …っていうかスレ違いですね。スマソ

779 :Classical名無しさん:04/08/09 21:36 ID:UBPg7pRw
非常に短いですが、しばらく投下が無いみたいなのでリクエストにお応えして、
イチさんのSSを作りました。
投下します。

780 :AGAINST THE ROPES:04/08/09 21:37 ID:UBPg7pRw
 楽しかった……。今鳥君とのデート。塚本さんのおかげで親しくなることができた。
……でも、今鳥君が特撮好きだったなんて意外だったな……。
 ふと思い出すのは私がアマレスを始めるきっかけとなったあの人――。
あれは小学生の頃のこと。身体が小さい私は同じクラスの男子生徒から格好のいじめ
の的となっていた。
「や〜い。イチさん、イチさん。体育の成績もイチ〜」
 あの頃の私は泣き虫で毎日、泣きながら家に帰っていた。親が心配するので家に着く
と何事も無かったようにふるまっていたけれど。
 あの日も同じように男の子達に囲まれて……。私は泣きながら、逃げることもできず
に途方にくれていた……。その時だった。あの人があらわれたのは。
「お前ら、弱いものイジメはこの僕が許さんぞ!」
「なんだ、てめーは!」
 大勢のいじめっ子にもひるむ様子も無く、あの人は答えた。
「僕の名前はヤガミ戦隊、ヤガミレッド!」
 あっけに取られるいじめっ子達。
「……仲間もいないくせにいきがりやがって。皆、やっちまえ!」

781 :AGAINST THE ROPES:04/08/09 21:37 ID:UBPg7pRw
 そして、私の目の前であの人はいじめっ子たちにぼこぼこにされて……。それでもあの
人は立ち続けた。私は怖くて見ていることしかできなかったけど……。
 いじめっ子たちはそのうちに疲れて帰っていった。
「……あの……。ありがとう……。大丈夫ですか?」
「ごめん。僕は本当は弱いんだ……。でもきっと大きくなったら、テレビのヒーロー
 みたいになるんだ!」
 あの日……、私は初めて本当の強さという意味を知った。そして、それ以来あの人に
あこがれて私も強くなろうとアマレスに打ち込んできた。
名前も聞かなかったあの人……。ひょっとして今鳥君だったのかな……。
 私は運命というものに感謝した――。

782 :Classical名無しさん:04/08/09 21:37 ID:UBPg7pRw
完了。
でも、あの人……。今鳥じゃなくて花井だった可能性のほうが高いw

783 :Classical名無しさん:04/08/09 22:24 ID:idVzxxjM
一条×花井って新鮮ですね。乙です。

784 :Classical名無しさん:04/08/09 23:00 ID:JZmhiykM
そろそろ次スレの時期?
何kbいっちゃうと書き込めなくなるんだっけ?

785 :Classical名無しさん:04/08/09 23:18 ID:BHUs28vo
>>782
リクに答えてくれてどうもです
アマレス始める前のイチサンは弱かったんですかね

ここではイチサンはあんまり人気ないみたいなんで
イチサン好きは肩身がせまいっす

786 :Classical名無しさん:04/08/09 23:18 ID:hD/rm1FQ
>>784
あらら、ぼちぼち投稿しようと思ってたんだが…まずい?

787 :Classical名無しさん:04/08/09 23:28 ID:asm6xbv6
>>785
ここにはいろんな職人さんがいるので気長に待つが吉。
烏丸SSよりは可能性高いかと。

>>786
たしか以前のスレで480KB踏んだ人が次スレ立てよう
とかいう話しをしてたと思う。
まだ投稿できると思うけど、踏んじゃったら次スレよろ。

788 :Classical名無しさん:04/08/09 23:37 ID:RopKxP9E
残り41kb まだ余裕あり。


789 :550:04/08/09 23:38 ID:SDfBvCW2
>>787
書き込んだらすぐ寝る気だったので立てれるか分からん…努力はするけど無理だったら他の人頼みます。

二度目の投稿です。また恋愛要素なしですがホラーでもありません。
初投稿にもかかわらずレス頂けた皆様に感謝。

790 :Classical名無しさん:04/08/09 23:40 ID:SDfBvCW2
 サラはバイトがあるから来られなかったけど、私は今日も動物園に来た。
夏休みも残りあとわずか。その残り少ない日程を最近は殆ど動物園に通う為に費やしている。
1週間程前まで播磨さんに学校で飼われていた動物達の様子を見る為に。
まだまだ8月の終わりなのでとても暑い。私は園内の広場のベンチで一休みする事にした。
大きな木の下にあるから日を遮っていて涼しい。
私の周りでは小さな子供達の歓声が盛んに聞こえる。
播磨さん仕込みの芸を披露しているのだと思う。

…気のせいか、だんだん頭がぼうっとしてきた。
ああ、こんな所で眠るんだ―――


791 :Classical名無しさん:04/08/09 23:41 ID:SDfBvCW2
 動物達が動物園に移される前日。部室に置いた忘れ物を取りに学校へ行った私は、偶然播磨さんに会った。
播磨さんは動物達に餌をあげるようだったので、一緒にさせてもらう事にした。
生徒という主を失った体育館。でも、そこに寂しさはなかった。
キリン、ライオン、パンダ…様々な動物達が播磨さんを迎え入れる。
あっという間に播磨さんが動物達の下敷きになる。でも播磨さんはすぐに抜け出してくる。
そして慣れた手つきで餌をあげる。
獰猛そうなライオンもトラも、巨大なゾウもキリンも、皆播磨さんに懐いている。
私は、それが少し羨ましかった。

 あらかた餌をやり終えると、動物達はあちこちで遊び始めた。播磨さんは嬉しそうに眺めている。
「あの…ライオンとかトラをこの中で飼っていて、大丈夫なんですか?」
ふと頭によぎった質問をした。この中には草食動物もたくさんいたからだ。
「ああ…それなら大丈夫。あいつらちゃんと餌やってりゃ結構大人しいからな。
それに、ちゃんと俺からも言って聞かせてるし」
播磨さんの視線を追うと、ライオンを馬やカンガルーが追いかけている。鬼ごっこでもしているのだろうか。
私はこの環境がとても素敵だ、と播磨さんに言った。肉食動物も草食動物も仲良くいられるからと―――

でも、播磨さんの表情は変わった。つい先ほどまであった笑顔は消えてしまった。


792 :Classical名無しさん:04/08/09 23:44 ID:SDfBvCW2
 播磨さんは私を校内の広場に連れていった。途中で彼が買った十七茶を私に投げる。
播磨さんにお礼を言って、蓋を開ける。缶は夕焼けで少し赤く染まっていた。
ベンチに腰掛けていると、播磨さんも隣に座った。
ただ、無言のままお茶を飲む。
 播磨さんが口を開いたのは座ってから3分程経ってからだった。その頃にはお茶は残り半分程になっていた。
播磨さんは体育館の中にいた動物達の話をしてくれた。
どこでどんな風に出会ったか、一匹ずつ。

 ショックだった。密猟者に両親を殺され、日本に連れて来られたトラ。
飼い主に頻繁に暴力を加えられ、逃げ出してきた犬。
経営難の動物園で、毒殺されかかったゾウ―――
皆、とても悲しい過去を持った動物ばかりだった。
 キリンのピョートルみたいに、能天気だからそんな事忘れてる奴もいるけど、と播磨さんは言った。
私はその言葉に少し救われた。
 でも、未だに過去に受けた体や心の傷が癒えていない動物がたくさんいると言われると、再び私は落ち込んだ。


793 :Classical名無しさん:04/08/09 23:45 ID:SDfBvCW2
 「動物同士って、実は会話出来るんだよ―――」
ちょっと意外な事実だった。落ち込んだ私を見て、播磨さんは話題を変えてくれたようだった。
「野生とかだったら同じ種類同士とかじゃないと無理らしいけど、ここの連中は皆会話できるんだよ」
動物の気持ちが分かる播磨さんだからこその発見なんだと思う。
「…でも、どんなに頑張っても、人間だけは動物と会話は出来ないみたいなんだよな」

 そう言われて、それは当然なんだろうと私は思った。
責任感も無しにペットを飼う人間。
自分の利益だけの為に必要以上に動物を殺す人間。
虐待のニュースが連日流れるような社会を作った人間。
だから、人間だけは動物達の気持ちが分かる事はないんだと思う。
私が知る限りではただ一人、播磨さんを除いて。

 ひょっとしたら播磨さんも、私と同じように枷をはめられた人なのかもしれない。
私が私に好意を抱いている男の人の心が視えるように…。
私はこの力のせいで、男の人が信じられなくなりかけた事さえあった。
播磨さんだって、動物達の気持ちを理解するうちにそういった考えが浮かんだのかもしれない。
 動物達が動物園に引き取られる日、播磨さんは最後まで抵抗した。
刑部先生は播磨さんに「それはエゴだよ」と言っていたけれど、きっとそれは違うと思う。
人間に傷付けられた動物達を、他の人間に預けるなんて出来ないと思って抵抗したのではないだろうか。
最後まで動物園の人達を信じなかった播磨さんも、引き取られた後動物園に通ううちに落ち着いてきた。
きっと幸せそうに動物園で生きる動物達を見たおかげなのだろう。


794 :Classical名無しさん:04/08/09 23:46 ID:SDfBvCW2
 それにしても、私や播磨さんについた枷。何故私達なのだろう。
他の人にはない力。それは持っているからといって幸せになれるとは限らない力。
枷をはめられた私達は、これからどうすればいいのだろうか。
少なくとも今の私に出来る事。それは動物園に行って動物達の様子を見る事。
だから今日もこうして…

――――――あれ?

 肩に軽い振動を感じた。目を開けると、そこには播磨さんが立っていた。
周りを見渡す。もう子供達の姿はなく、閑散としている。
夕焼けが、動物園を照らしている。
不意に不快感に襲われた。体中が蒸したように暑かった。ずっと外で寝ていたせいだろうか。
私はハンカチで額の汗を拭った。
「妹さん、もうすぐ閉園時間らしいんだが…」
播磨さんの言葉を聞いてはっとした。時計を見ると、閉園まであと5分しかなかった。
私は播磨さんと出口へ走った。閉園時間丁度に出口を駆け抜けた。
ますます体が暑くなり、私は汗を拭った。
と、出てすぐに近くの自販機で買い物をしていた播磨さんが私に缶を投げた。
あの時と同じ十七茶。でも播磨さんは笑っている。
私も笑う。汗をかいた顔のままで。
夕焼け空ももうすぐ終わり。セミは鳴き止み、星が瞬く―――


795 :550:04/08/09 23:47 ID:SDfBvCW2
こんな感じで。
またタイトル考えてません。みんなつけてるから内心不安ですが…
もしいるなら前作を含めて誰かつけてもらった方が早いかもしれないw

796 :Classical名無しさん:04/08/10 00:20 ID:mq9i9a3E
>>795
乙です。
場面転換の部分はちょっと違和感を感じますが、なかなか重みの
ある文章ですね。
あとは設定以外にもう少しキャラの魅力が引き出せればもっと良く
なると思います。
まぁ、たいしたことは言えませんが、次回作も頑張ってください。

タイトルはなんか繊細な感じがするので、THE GLASS MENAGERIE
(邦題:ガラスの動物園)とかどうでしょう。動物園続きで心の枷が
大きなテーマになっているみたいなので。
まぁ、映画の内容はあまり関連性無いですが。
タイトルなしはやっぱりインパクト弱いですからね。

797 :Classical名無しさん:04/08/10 00:27 ID:idVzxxjM
>795
素敵なSSでした。乙です。

798 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
 窓から射し込んでくる夕陽が部屋の中を染める。赤、と表現されることの多いその光だが、実際
晩秋のそれはむしろ金に近い色合いをもっている。直視すれば目もくらむような、ともすれば真夏の
陽射しより強烈なその光の中で、晶は一人、活字に目を走らせていた。
 元より活動内容などあってなきに等しいこの部活、部室に誰もいないことさえ珍しいことではない。
そもそも彼女を除けば、定期的に顔を出すのさえあとはサラと八雲くらいなものである。それでも
曲がりなりにも部活として成立しているのは、やはり顧問の手腕ということになるのだろうか。
 ともあれ、そんな部活である。晶自身も特に目的があってそこにいるわけでもなく、切りのいいところ
まで、と考えながらさらにページを繰っているところに。
 ――とんとん。
 遠慮がちなノックの音。茶道部の知名度、加えて場所を考えると、決して来客の多い場所ではない。
そこにわざわざ訪ねてくるとなると、往々にして友人関係、そしてそうなると一々ノックをするような
こともなし、とわずかに訝しげな表情をつくる晶。
「どうぞ」
 そうは言っても、警戒してどうなるものでもなし、と取り敢えず扉の向こうに声をかける。一拍置いて、
その向こうから現れたのは。
「――やあ」
 花井春樹その人だった。持ち前の律儀さから、出入り禁止を申し渡されて以来部室には足を踏み入れ
なかったその姿――もっとも、入ってこないだけでその近くにいることはよくあったわけだが――に、
期せず晶の口から、珍しい、という言葉が洩れる。当の春樹本人もそれが分かっているのか、若干申し訳
なさそうな様子で入り口に立ったまま。

799 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
「どうぞ、遠慮することはないわ」
「……そうか。ではお邪魔させてもらうよ」
 晶のその一言でようやく部屋に入ってくる、そんなところにも見える生真面目さに、そういうところが、
と思う彼女だったが、その行き過ぎたまでの実直さを殺してここを訪れた心中をおもんばかって、皮肉は
さしあたって胸の中に留めておく。
「何か飲む? 一通りのものは揃っているけど」
「いや、構わないよ」
 社交辞令のような挨拶、まずそれを交わしてから本題へ入る。
「それで、何の用かしら」
 その問に、一度目を閉じてから大きく息をする春樹。何かを決心したような表情で、下ろした目蓋を
上げてから告げる。
「八雲君のことなんだが」
 瞬間、すっ、と細められる晶の瞳。しかし、先を促すようにその口は沈黙を保ったまま。
「こうなってしまうと今更、の話になってしまうんだろうな。僕自身そう思う。だが、言って おかなくては
 ならないことだ」
 ふっ、と小さく自嘲気味の表情。
「彼女には――そして君にも随分と迷惑をかけたと思っている。謝ってどうなるものでもないのは分かる。
 それでもこのままにはしておけなくてね」
 すまない、そう言って頭を下げる。対する晶は黙ったままそれを見つめている。そんな静寂がしばらく
続き、やがて春樹が顔を上げる。
「それだけだよ」
 その表情は、先程とは違って晴れやかな、思い残すことは何もないような笑顔。

800 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
 けれど。
「ねえ、花井君」
「何かな?」
 晶の言葉がそれを穿つ。
「あなたはそれでいいの?」
 春樹の顔から笑顔が消える。そして現れるのは、苦悩に満ちた表情。
「……僕は」
 人の想いというのものは、それほど簡単に変わるものではない。故に納得出来るはずもなく、また彼自身
そのことがよく分かっている。続けるべき言葉は無数に心の奥底で渦巻いている――が。
「僕は、それでいいと思っているよ」
 それでも、彼は笑った。どうにもならないことを、どうにもならないこととして受け止めるように。
「そう」
 その答を聞いた晶は、短く返事をしてからおもむろに立ち上がり、部室の外へと向かう。
「高野君、どうしたんだ? 何か僕がまずいことでも……」
 慌ててその後を追う春樹に答えず、廊下に出たところで足を止め、くるりと壁に向き直る。そこにあるのは、
いつぞや彼女自身が貼った一枚の紙。

801 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:07 ID:qmlfIyEQ
「これはもう、いらないわね」
 呟いて、『花井の立入を禁ず』、そう書かれた張り紙を一息に破り捨てる。
「高野君!?」
「サラに聞かなかったかしら。うちのモットーは出入り自由よ」
 驚く春樹にも、淡々と対応する晶。その後で、それに、ともう一つ付け加える。
「今のあなたなら、八雲のいい先輩になってもらえると思ったんだけど。無理かしら?」
 試すように、わずかに笑みを浮かべた表情で問いながら、片手を差し出す。
「当然だ」
 対する春樹も笑顔で応え、その手を取ってしっかりと握手を交わす。
「それじゃ、この件に関しては休戦ということで」
「ん? 何か言ったかな?」
「コッチの話。それで、要件はもう終わりかしら?」
「ああ。時間を取らせて悪かった」
「いいわ、別に。今度はあの娘たちもいるときにでもいらっしゃい」
「そうさせてもらうよ」
 まだ覚悟が決め切れていないのか、苦笑いにも似た顔でそう言って去っていく春樹。それを見送ってから、
これはこれでよかったのかしら、と部室に戻る晶。いつのまにか夕陽は地平線の向こうに消え、宵闇が遠く
忍び寄ってきている。
「まあ、頑張りなさい」
 残照に彩られた空の端を眺めつつ、晶はそう呟いた。

802 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:09 ID:qmlfIyEQ
あえて八雲暴走特急ではない花井を。
……これだけ物分かりよかったら、最初から問題ないのは気にしない方向で。
と言うか本編の花井はどうなることやら。

803 :Classical名無しさん:04/08/10 01:36 ID:c27PO8bE
>>802
乙です。
本編の花井もこれくらいになれれば…
情景描写が美しいですね。

804 :Classical名無しさん:04/08/10 01:43 ID:c27PO8bE
立てました
スクールランブルIF12【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1092069593/l50


805 :550:04/08/10 09:06 ID:9w3Jm22k
>>756
THE GLASS MENAGERIE ですか・・・いいですね。
映画ろくに見てない自分では絶対思いつかない。

806 :Classical名無しさん:04/08/10 12:07 ID:mq9i9a3E
自分も映画ほとんど見ないけど……。
映画 原題 〜キーワード〜
とかでググって見れば? 結構見つかるよ。

807 :550:04/08/10 13:36 ID:9vK2ekgI
>>806
いい事聞いた・・・ありがd

808 :Classical名無しさん:04/08/10 16:55 ID:Fxxuq7bM
サンクス、助かった。
というか、レス容量、全ての専用ブラウザに表示されているわけじゃないんやね。

809 :Classical名無しさん:04/08/11 03:33 ID:7R1qc0/A
そうか…もう、あれやんないんだっけ

810 :Classical名無しさん :04/08/11 09:44 ID:SgMKkMVQ
>>13 無題
>>33 My Gift to You
>>50 THE MAJESTIC
>>64 無題
>>83 Majic Night
>>99 無題
>>106 乗船前
>>115 言葉にならない
>>123 彼女の想い
>>132 Joyful, Joyful
>>140 シスターサラの懺悔室
>>162 無題
>>172 MY HERO
>>194 無題
>>204 Birthday... Mikoto Suou
>>208 Birthday... Mikoto Suou...18
>>214 離したくない物
>>228 無題
>>233 Always
>>265 #62-63 side B
>>322 Track4 三匹に斬られろ
>>329 Lacrima
>>348 A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM
>>402 white breath
>>419 Mistake
>>434 無題
>>441 Anastasia
>>455 HEAVENLY CREATURES
>>467 Is this LOVE?
>>479 While waiting for him


811 :Classical名無しさん :04/08/11 09:55 ID:SgMKkMVQ
>>551 無題
>>564 Summer
>>570 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件
>>581 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜俺?ルート〜
>>582 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜ENDルート〜
>>586 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜花井ルート〜
>>589 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜沢近ルート〜
>>593 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜八雲ルート〜
>>595 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜天満ルート〜
>>612 Change the world
>>642 「夏祭りの夜に -a beginning- 」
>>653 Ritalin 202
>>666 【夏祭りの夜に -tenma side-】
>>682 IF肝試し
>>695 Sign
>>705 Singin'in The Rain



812 :Classical名無しさん :04/08/11 10:04 ID:SgMKkMVQ
>>742 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件
>>744 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜播磨ルート〜
>>745 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜愛理ルート〜
>>746 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜美コルート〜
>>747 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜晶ルート〜
>>748 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜烏丸ルート〜
>>749 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜解決ルート〜
>>780 AGAINST THE ROPES
>>790 THE GLASS MENAGERIE
>>798 Dawn of a New Day


813 :Classical名無しさん:04/08/11 13:13 ID:cWK007Rg
テメエラ胸ノ話スンナ。ミーノ竿、スゲエコトニナッチマッタゾ

814 :Classical名無しさん:04/08/11 21:13 ID:PjRewOSg
目次サンクス。これで読み直すのが楽だ。
しかしひと月もせずにスレを消費し切るSSスレってのは読んでて嬉しいもんだね。

815 :Classical名無しさん:04/08/13 03:46 ID:17NVtdkE
<noTaitol>
#
「…今日も寒いわね―――」
もう雪がチラついてもおかしくない季節
窓から見える風景は灰色に染まってている
「イヤだな…」
『まるで、いまの私の心のよう』
『やれることはすべてやった、それなのに』
『まだ、諦め切れない…のかな』
「好きな女がいる―――」それがアイツの答えだった
いろいろ引っ張りまわした
自分の心も伝えた
初めてのkissも…
それで振られたのだから、仕方がない
『泣くつもりはなかったんだけどな』
気丈でいるつもりだった、いつも通りに振舞うはずだった
いまにも降り出しそうな暗く低い雲をみるとあの日を思い出す
後輩の女の子、友達の妹―――あのコが傷ついたのもきっと自分のせい
自分の嫉妬から巻き込んでしまった…だけどあのコもアイツのことを…
こんな日だった、あのコの涙を見たのは
『だから、じゃないけど私は泣かないつもりだったのに』
まだ泣いてすがる事もできるかもしてない
この身体だって…
だけれどもわかる、そんなことをすればアイツは本気で嫌悪するだろう
『だから、もう未練はないんだから!』

「ハァ――」
もう何日同じことを繰り返しているのだろう
「雪、降らないかな」
カーテンの合間から静かに空を見上げ続ける


816 :Classical名無しさん:04/08/13 03:54 ID:17NVtdkE

教室にいると無意識に目で追ってしまう…
視界に捕らえてしまうと逃げ出したくなる
あいかわずサングラスをしているその表情はわからない
その視線がどこを見ているのかわからない
『見られたくない』
視線を気にしたとき、逃げ出したくなる自分が悔しい
美琴も晶も…そして天満も、自分を心配してくれる
「大丈夫?」「元気だして」「男はヤツだけじゃないって」
言われる度に「もう、大丈夫だから」笑顔で答える 作り笑顔で…
だから余計に心配かけてしまうのだろう

「ごちそうさま」
「お嬢様…もう少し召し上がられては…」
食事が喉を通らない、もとより食欲なんて――無い
家の者が喉を通りやすいものや好物を用意してくれるけれども
「ごめんなさい もういいわ」
静かにテーブルを離れる

「なんでこんな寒い日にマラソンなのよ」
「なんでだろうなー」
私のぼやきにたいして気にしてなさそうに美琴が答える
「まぁ、体は暖まるって」
『ポン』と肩を叩かれスタートしていく

「ハァ――ハァ――」
『やっぱり体力落ちてるな』ここのとろの不摂生が身にしみる
『…………』
『あれ?』
突然、世界が真っ暗になって―――

817 :Classical名無しさん:04/08/13 03:56 ID:17NVtdkE
♭-a
視線を感じた…
『……お嬢』
いつもは気丈な背中が、小さく見える
意識して俺を避けているのがわかる
『まあ、当たり前か』
だが、もう少しうまく、やさしく言ってやることは出来なっかたのだろうか
『―――あなたのことが好き』
正直、驚いた。何を言われたのか一瞬どころかしばらく理解できなかった
言葉の意味を理解したとき、また俺を振り回すためにからかっているのだと思った
だから―――
『泣かしちまうとは…』
あのコのときもそうだった…とても大切な人だったのに
『女心とか色恋沙汰ってのは!』
『ちっ』
そんな口上で逃げる自分にイライラする

『!』『――!!』
「あん?どーしたんだ」
タラタラと走って(歩いて)いる前のほうに人集りが見える
「沢近さんが倒れたんだって」
通り過ぎるクラスメートの会話が聞こえる
「…あのバカ……」
だが、足は動かない
目の前の人集りに近づけず人々の動きを目で追うしかできない


818 :Classical名無しさん:04/08/13 03:58 ID:17NVtdkE
再び保健室の扉が開く、とそこから
「廊下で騒いじゃダメじゃない」
保健室の前なんだから―と見知った女性が顔を出してきた
「ほら、周防さんはなにか飲み物はやく買ってきて」
「うっ―――けどっ」
『大きな声出さない。彼女怯えちゃうでしょ…』
ハッとする、そこまで俺はアイツを傷つけているのか――と
「…わかりました」
周防は渋々ながら俺から離れ、睨みつけてから廊下を走っていく
『………』
お姉さんと目が合う
「ほら、ハリオも…」
「お嬢は――」
しかし言葉は遮られ、お姉さんは横に首を振る
その瞳は優しく、けれど寂しそうに…
『いまはまだそっとしてあげて――』
そんな風に云っているようだった

819 :Classical名無しさん:04/08/13 04:02 ID:17NVtdkE
♭-b
「日が暮れるのもはやくなったな」
下校の時刻が過ぎ、低い雲の所為もあってあたりははやくも薄暗い
「あ…」
「ん?」
廊下を曲がり、階段に差し掛かったとき、彼女と出会った
「…こんにちは」
「あ、ああ」
お互い緊張しているのがわかる
次の言葉が出てこない
『………』
こんなことになるつもりはなかった…もっと気軽に話のできるままでいたかった
『それは、俺の我儘、身勝手だろう』
「妹さんもいま帰りか?」
「いえ…部活の途中です」
「…そう、か。じゃあな…部活がんばれよ」
『恩を仇で返す…そのものだ』
だけれども彼女の心はそんなところにはなかった
俺の気持ちに気付いても、なお想いを寄せてくれたのだ
『逃げることしかできないのか、俺もアイツと同じか…』
「播磨さん」
呼び止められた
「…ごめんなさい。元気がないようだったので……つい」
「そうか。元気なさそうか、俺」
『分かっちまうのか、な』
「相変わらず、隠し事はできないな」
軽く笑ってみせる、と――ちょっと困ったように彼女も表情を緩ませた
「気持ちは――想いは伝えましたか?」
『チクリ』
胸が痛んむ…俺はまだ自分の想いを伝えていない
勝負は判りきってしまっているから

820 :Classical名無しさん:04/08/13 04:03 ID:17NVtdkE
「…播磨さんらしくないです…いえ、播磨さんらしいのかもしれません。けど」
「立ち止まったまま、その場で苦しんでいる播磨さんなんて……」
「見ていたく…ありません」
「ちゃんと一歩を踏み出して…ほしいです」
言われた…このコにしては珍しくまっすぐと見詰められながら…言われてしまった
返す言葉もない
「そうだな」
下を向いていた顔が上がる
「あいかわらず、端的な意見を言ってくれるな。妹さんは」
「……」
ちょっと困らせてしまった
「サンキュ。まったくそのとーりだぜ」
「ほんと、妹さんにはかなわねーや」
おどけて見せよう…そして胸を張ろう
「いつもありがとな」
手を上げ別れの挨拶をする
「はい…がんばってください…」
彼女はやわらかく微笑んでくれた

『そう、俺自身前に踏み出さないとな』
彼女たちを傷つけて、自分だけ安全なところで傷つくのを恐れていたなんて―――
「俺は播磨拳児だぜ」
『そうだ、俺は肩で風を切っていればいいんよ』
冷たい風が久しぶりに心地よい……

821 :Classical名無しさん:04/08/13 04:04 ID:17NVtdkE
『伝えたいことがあります。屋上で待っています。―――播磨拳児』

始業前の学校
その校舎の屋上で播磨拳児はひとり、立っていた
『封筒の中身は確認した。入れた下駄箱も間違いはない』
『いままでのような冗談みたいな間違いは無い!――はず』
ちょっと不安になる
「否!彼女は来る」
彼女はもう登校しているであろう時間
もはや後に引くことはできない
『ギィ』
屋上の扉が開く音、そしてその先に―――
「ごめなさーい。遅くなっちゃたかな」
彼女は来た
「どうしたの?急に――」
相変わらず場の雰囲気を読んでいない様子だ
「……塚本」
「うん?」
「いや、天満ちゃん!」
遂に来た。この時が。
玉砕しようが返り討ちに遭おうがもはや関係ない
この想いを伝える。それだけだ
「この学校に入る前、中坊のとき、俺は君に出会った」
「そして、君とこの学校で同じ刻を過ごすため俺は必死に勉強した(中1の教科から)」
「おかしいだろ?俺みたいな不良が女の子ひとりに…」
「だが本気なんだ!俺は――」
「俺は君のことが!」

822 :Classical名無しさん:04/08/13 04:05 ID:17NVtdkE
ズキッ』
胸が軋む…目の前に思いを寄せ続けた少女がいるというのに
いま、痛みとともに違う少女が脳裏をよぎった
『なんで―』
「俺は―!」
「俺は…」
胸が痛い…いや、心が痛い
「……」
「……」
「播磨君?」
訝しげに彼女が聞いてくる
「え?あ…」
『俺はなにを考えているんだ、目の前にいるじゃないか』
「大丈夫?」
「あぁ」
怪しくも思うだろう…いま告白の瞬間、いきなり胸を押さえて微動だにしなくなるのだから
「播磨君。あのね…その…」
「気持ちはとっても嬉しいよ」
「え?」
「だって、自分のためにがんばって同じ学校に来てくれたなんて」
「それに…なんとなく、そうかなって思うときもあったし…」
「…」
「だけど私、大好きな人がいるの」
『あぁ、知っている』

「八雲や、愛理ちゃんのこともあったけど」
「播磨君のこと、悪い人じゃないって思ってる」
「…だって、八雲が好きになった人だもんね」


823 :Classical名無しさん:04/08/13 04:08 ID:17NVtdkE
「でも、ちゃんと告白してくれなかったね」
『ズキッ』
「うっ」
そうだった…心を、覚悟を決めてきたというのに
「あっ、ごめんね。責めてるとか、そういうのじゃなくて…えっと」
「告白のとき…播磨君の心にいたのは私じゃない。違う人っだったんじゃないかな、って」
「…」
「ね?」
小首をかしげ、可愛らしく微笑む
『この姉妹は…まったく』
『完敗だ。もとより勝負になっちゃいねぇ』
姿勢を正す、まっすぐ目の前の少女をみる
「まったく、そのとおりだよ」
俺は、いま笑っているんだろうな

「悪いな、時間取らせちまって」
「ううん。全然オッケーだよ」
「そうか」
「そんじゃ俺は仕切り直ししてくるか!」
踵を返し校内へと駆け出す
「うん!がんばれーファイトー」
いつもの明るい彼女の声に後押しされて…
…一秒でも早く、この想いを伝えるために、走る

824 :Classical名無しさん:04/08/13 04:10 ID:17NVtdkE
ending
『ドドドドド――』
一気に階段を駆け下りる
向かうのは教室
もうHRが始まっているのだろうか生徒の影も見当たらない
『ガダンッ』
勢いよく扉を開く
クラスメートの視線が集まるのがわかる…が
『なりふりかまっちゃいられねーっての』
教室を見回す…
見回さなくてもひと目で見付けられる…美しい金の髪
扉の音に驚き、一瞬こちらを見るがすぐに視線を逸らしてしまう
『チクリ』
胸が痛む
他の2人の友達と話をしていたのだろう
その友人たちが俺の視線に気付き睨みつけてくる
『仕方ないか』
意を決し、歩みを進める…アイツのもとへ
「…お嬢」
隣へ行き声をかける
目の前の少女が肩を震わせているのがわかる
クラス中の空気がどよめく
『俺たちのこと、みんなが知っていたのか…が』
気にする必要は無い
「お嬢」
耳を塞ごうとする
『ズキリ…』
『コイツはこんなにも弱く、こんなに小さかったっけ』


825 :Classical名無しさん:04/08/13 04:10 ID:17NVtdkE
「話を聞け、お嬢」
「―っ!」
なおも続ける俺に周防が食って掛かろうとする
高野が押し留める
「晶!」
「……」
だがその視線は鋭い…
どちらにしろ構う必要は無い

「こっち向け、お嬢」
硬く身を縮めて動く気配は無い
「…ったく」
「いま、塚本に告白してきた」
『どよっ』
皆が驚く
「いや、結局はできなかったんだがな」
「…おめーには、参ったよ」
サングラスを外す、そして机の上に置く
「人の恋路邪魔しやがって―――」
「!!」
「…おまけに人の心まで持っていきやがって」
「!」
大きく肩が跳ねる
まだ、顔を上げる気配は無い
『ふう』
しゃがみ込み視線を下げる頭の位置を同じ高さにする
「まったくよぉ、いざ告白しようとしたら、おめーの顔がチラツキやがるし」
「心が…俺の心が告白する相手が違うって言いやがるんだ…」
「好きな相手が違うってな…」
「顔を上げろ、お嬢」
サングラスを外して見るその髪はとても美しい
だからいま、その顔を直に見たいと思う

826 :Classical名無しさん:04/08/13 04:12 ID:17NVtdkE

ゆっくりと顔を上げる少女…視線を合わすのが怖いのか下を向いている
その瞳は濡れ、頬に一筋涙がつたう
「お前の告白、真正面から受け止めることができなかった…すまねえ」
「だが、あのときから俺の想いが始まったんだ」
「お嬢…俺は、お前のことが好きだ」
ハッと俺の顔を見る
『驚いてやがるし…無理も無いだろうけどな』
こっちも顔が熱くなっている、だが照れている暇は無い
「もう一度言う、俺はお前が好きだ!」
今度こそ、その瞳を見つめながら、視線を逸らさずはっきりと言えた
「…いいの?」
「ん?」
「信じて…いいの?」
「ああ、もちろんだ」
きっと俺は微笑んでいるだろう
いままでで一番、俺らしくない優しい笑顔で…

―――――――――

827 :Classical名無しさん:04/08/13 04:14 ID:17NVtdkE
ageちまうは、一本抜けるは、ゾヌは言うこと聞いてくれんわ・・・最低だ
すまん

828 :Classical名無しさん:04/08/13 04:18 ID:uTlJ88VI
GJ!!

829 :Classical名無しさん:04/08/13 05:34 ID:17NVtdkE
>>817>>818の間にくるはずだったモノ・・・置いときますね

保健室の前
「ったく。なにやってんだ俺は」
来たはいいが、何をしたいのかまるでわからない
「ふんっ」
自分はあまりにも滑稽で笑いが出そうにもなる
『ガラッ』
扉が開き、中から出てきたヤツと目が合う
「…なにやってんだ」
目の前のオンナが言いながら睨みつけてくる
こちらの返答しだいでは殴り懸かってくる、そんな雰囲気で
「…アイツは…お嬢は大丈夫なのか?」
「くっ!」
「いまさら!テメーに用はないだろう!!」
『そうだな…そのとおりだ』
「とっとと消えやがれ!」


830 :Classical名無しさん:04/08/13 10:11 ID:jmK3k85U
GJ!
沢近が(・∀・)イイ!
クラスの全員の前で告白とは流石播磨、やることが違いますね。
王道的な旗SS楽しませて頂きました。

831 :Classical名無しさん:04/08/13 18:58 ID:/x42xZNo
>>815-826>>829
乙です。
長い文章だけど、きれいにまとまっていました。
ただ、播磨が天満から沢近に想いの対象を変えた過程が
読みづらかったのと、
天満の性格設定が少し不自然(そんなに鋭くないと思った)
なのが、少々気に掛かったぐらい。
それ以外はGJ!!

832 :Classical名無しさん:04/08/13 23:59 ID:OkkR/XRM
出先で埋めを兼ねて何か書こう、と思っていたら先を越されました。
ので、前スレ同様適当に絃子ネタでちょこちょこ。

「あ、刑部先生。……聞きました? あの噂」
「ん? 何の話かな?」
「何のって……播磨君に決まってるじゃないですか」
「彼の? それはまたロクでもない話だろうね」
「あの……知らない振りしてません?」
「だから何をかな。私は彼が塚本君と付き合ってるなどと……」
「……」
「……」
「……」
「……あー、こほん。それで何の話だったかな」
「だからその噂の話なんですけど」
「フン、所詮は噂だろう? だいたい、アレにそんな甲斐性が」
「でも、屋上でよく会ってるみたいですよ。二人きりで」
「……何?」
「あら、これは知らなかったんですね」
「噂だよ、全部噂。根拠なんてないに決まってる。それじゃ、私は急用を思い出したので帰る」
「え? ちょっと、刑部先生! それに帰るって、そっちは屋上……」

833 :Classical名無しさん:04/08/14 10:32 ID:fn86/Of2
絃子さん(*゚∀゚)=3

834 :Classical名無しさん:04/08/16 13:51 ID:tqkc1bdI
夏祭りの続きマダー?

835 :Classical名無しさん:04/08/18 19:44 ID:2eCujtKI
>834
次スレに投下されますた

836 :Classical名無しさん :04/08/18 20:27 ID:SgMKkMVQ
>>815 無題
>>832 無題

837 :Classical名無しさん:04/08/18 21:59 ID:17NVtdkE
タイトル付けないとまずかったのか?
すまん…

838 :Classical名無しさん:04/08/18 22:40 ID:ZPdsCAGQ
>>837
>836は目次でしょ。IDで検索してみそ

839 :Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「今帰ったぜ」
「ん、おかえり。今日は遅かったな」
 どうということもない、普段通りのやりとり。ちっと学校でな、などと居間にいる絃子に一声かけてから
部屋に戻ろうとした拳児だったが。
「――ちょっと待て絃子」
「うん? 何かな、今少々忙しいんだが」
 その足がぴたりと止まる。理由は視線の先、絃子が忙しく目を走らせている――
「何でお前がそれ読んでやがるんだ」
「いや、君の部屋に行ったら机の上に置いてあってね」
 そう言って彼女がひらひらと示して見せたのは、紛うことなき拳児の原稿。
「他人の部屋に勝手に入ってんじゃねぇっ!」
「……あのね拳児君、悪いけどここは私の家だよ。大体、最近ロクに掃除もしないで閉めきっているから、
 衛生管理の一つもしてあげようと思ったんだがね」
「そりゃ悪かったけどよ……でもそれとこれとは別だろ」
「読まれて困るものを描いてるのか、君は……っと、まあ確かに困るだろうね、これは」
 まったく、と溜息をついてから、拳児にそこに座るように促す絃子。
「最後まで読んでからと思っていたが、丁度いいから今話しておこうか」
「んだよ、絃子にゃ関係」
「ああないよ、そんなもの。だから言わせてもらうんだ」
 有無を言わせぬ強い口調に鋭い眼光。いつもの悪ふざけとは違う、その本気の態度に拳児も渋々と腰を下ろす。

840 :Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「……で、なんだよ」
「このヒロインの少女だが……モデルは塚本君だな?」
 最初から核心を突いてくる問に、答えられない拳児。
「沈黙は肯定と見なすよ。さて、そしてこっちは君だ。間違いないね?」
「……悪ぃかよ。俺が何しようと勝手だろ?」
 ふてくされたようなその返事を聞いて、ハ、と小馬鹿にしたように笑い飛ばす絃子。
「悪いか? そんなの悪いに決まっているだろう! ……拳児君、君はどうしてマンガを描いている?」
「そりゃこいつをやりとげりゃ俺は……」
「変われる、とでも? 本気でそう考えているならおめでたいとしか言いようがないな」
「なっ!? 絃子、テメェ言っていいことと悪いことってのがあるだろうが!」
 そこまで言われてはさすがの拳児も激高するが、それでも一歩も引かない絃子。
「だから言ってるんだよ。いいか拳児君、どれだけ君がこのマンガに情熱を注いだところでね、これは
 塚本君じゃないんだ。それぐらい分からない君じゃないと思うが?」
「っ……それは」
「『それは』何だ。文句があるなら言ってみるといい。どうだ、早くしろ!」
 答えられない拳児に絃子はさらにたたみかける。
「こっちの男もそうだ、君がこんなに恰好いい男か? ほら、何か言ってみろ。私の言ったことを否定
 してみせてくれよ」
「……俺は」

841 :Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「なあ、確かに君は抜けてるところは山ほどあるし、空回りすることなんてしょっちゅうだよ。それでもね、
 そのひたむきさだけは、いつも十分褒められるものだと思うんだ。でもこれじゃただの現実逃避だ」
 そこで一息ついてトーンダウンする絃子。
「いろんな噂が流れているのは知っているよ。まあ、君のことだからどれも何かの勘違いだとは思うよ。しかしね、
 そんな噂が流れる、ということは、君は塚本君に対して何のアプローチもしていない、ということだ」
 違うかな、という言葉に力なく頷く拳児。
「だったらこんなことをしている場合じゃないだろう? 彼女がいるのはマンガの中じゃない、現実の、君のクラス
 の、君の隣の席に座っているんだ。もたもたしている暇なんてないと思うんだが?」
 言うべきことを言い終えた絃子は、頬杖をついて拳児を見つめる。
 そして、その視線を正面から受け止めて。
「すまねぇ、絃子。行ってくるぜ」
 そう口にしてから転がるようにして家を飛び出していく拳児。
「……そこでいきなり極端なのが君らしいけどね」
 ぽつんと残された絃子は一人苦笑い。
「どうせ今回もどこかで何かしら失敗するんだろうけどさ、何もしないよりはマシだよ、きっと」
 立ち上がって玄関の戸を閉めつつ、届かない背中にむかってそう呟き、居間に戻ってあらためて原稿を手に取る。
「まあ、でもよく描けているのは確かだよ。それは認めよう」
 くすりと小さく笑ってから、ちらばったそれをまとめ直し、絃子は拳児の部屋へと向かった。

842 :Guardian angel:04/08/19 20:59 ID:qmlfIyEQ

某スレ見て切り口変えてみたりしつつ、違う方向にやりすぎてみる試み。
……ってまだ埋め終わりませんか。むむ。

843 :Classical名無しさん:04/08/19 22:38 ID:0D.TtIWM
>>842
GJ!
絃子さん(・∀・)イイ!

844 :Dead Stock Paradise:04/08/22 17:00 ID:ZPdsCAGQ
「部長、質問があるんですが」
「何?」
「部長は誰にでも無難な人当たりなのに、何で花井先輩だけにはキツいんですか?」
「かわいそうじゃないか……って?」
「いえいえそれ自体は全然OKなんですが、何か理由でもあるのかなって思って」
「……そうね、だいぶ前の話になるけれど……」
高野晶は緑茶をちびりと飲むと、ぽつり、ぽつりと語り始めた。


その女の子はガンプラがとても好きでしたが、
親には「もっと女の子らしいものにしなさい」と言われ、なかなか買ってもらえませんでした。
そこで女の子はなけなしのお小遣いを貯めて、自分で買いに行きました。
ところが模型店には行列が出来ていました。はやる気持ちを抑えて女の子は最後尾に並びました。
ドム、強化新型グフ、ホワイトベースなど人気商品がまたたくまに売れていきましたが
女の子の狙いはただひとつ、1/60スケール量産型ザクでした。
事前に買っておいたムギ球を仕込んでモノアイを光らせるのを楽しみにしていたのです。
ところが、女の子の番まであと一人という所でザクは完売してしまいました。
最後のザクを買ったのは、女の子の前に並んでいた、メガネをかけた眉の太い男の子でした。
残った商品はいくらもありませんでした。人気商品のザクは全スケール完売の状態でした。
女の子は泣きべそをかきながら家路につきました。
仕方なしに買った、アッグとドダイYSの箱を抱きしめながら……


「むーっ、ガンプラはよく知らないけど花井先輩ひどいですね!
 八雲にもよく言っとかなくちゃ!今後1-Dにも出入り禁止ですっ!」
(別に花井君かどうかはわからないんだけどな……まあいいか)

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