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スクールランブルIF11

1 :ゾリンヴァ:04/07/19 21:34 ID:uRupIwYc
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週10ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】

SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。

≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫

SS保管庫
http://www13.ocn.ne.jp/~reason/

【過去スレ】
スクールランブルIF10【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1088764346/
スクールランブルIF09【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1087097681/
スクールランブルIf08【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1084117367/
スクールランブルIf07【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1082299496/
スクールランブルIf06【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1078844925/
スクールランブルIf05【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1076661969/
スクールランブルIf04【脳内補完】(スレスト)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1076127601/

2 :ゾリンヴァ:04/07/19 21:35 ID:uRupIwYc
関連スレ(21歳未満立ち入り禁止)
【スクラン】スクランスレ@エロパロ板3【限定!】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082689480/l50

【荒らし行為について】

“完全放置”でよろしくお願いします ネタばれも当然不可です
 
■ 削除ガイドライン
http://www.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide

3 :Classical名無しさん:04/07/19 21:37 ID:jrv0mCSw
乙一。

4 :Classical名無しさん:04/07/19 21:39 ID:RopKxP9E
ここの板って一定のレス数がついてないとdat落ちとかってある?

あるのなら、誰か作品書き込んでくれるといいかもだ。
(戸田風)


5 :Classical名無しさん:04/07/19 21:39 ID:Fxxuq7bM
乙カレリン

6 :Classical名無しさん:04/07/19 21:54 ID:fab4xAPk
>>1

>>4
クラウンは全然落ちないから安心。

7 :ゾリンヴァ:04/07/19 21:58 ID:uRupIwYc
申し訳ない…保管庫のURLこっちでした。一応↓に

http://master-sunohara.hp.infoseek.co.jp/index.html

8 :Classical名無しさん:04/07/19 23:00 ID:BHUs28vo
乙カレリン

9 :Classical名無しさん:04/07/19 23:36 ID:Z7G2D5ZE
>>1


10 :Classical名無しさん:04/07/19 23:58 ID:YA6.c9tw
>>1


11 :Classical名無しさん:04/07/20 01:00 ID:vefvvOdM
>>1

このスレでも良きSSと職人に出会えますよう

12 :Classical名無しさん:04/07/20 03:29 ID:Y8vyDweI
ほんじゃま、一番槍で、本編の展開まったく無視したおにぎりSS投下させて
もらいます。

13 :Classical名無しさん:04/07/20 03:34 ID:Y8vyDweI
「あ……」
 一人の男が視界に入り、塚本八雲は歩みを止めた。
 がっしりとした長身、サングラス、最近トレンドマークになりつつあるベレー帽。無く子も黙る
矢上高校の魔王、播磨拳児。しかし、ベンチにしょんぼりと座って地面を見つめているその姿から
は、魔王の威厳を感じることは出来なかった。
「……播磨……さん?」
話し掛けて良いものかどうかためらわれたが、八雲は思い切って声をかけてみた。
一瞬わずらわしそうに眉間に皺を寄せた播磨であったが、すぐに声の主の正体に気付き、一変して
柔和な顔になる。
「おお、妹さんか。どうした?」
「いえ、用事があるわけではないんですけど……」
元気が無いように見えて心配だったから。という事がなかなか言えず、もじもじしていると、唐突
に播磨が声をあげた。
「おっ!」
「……!?」
播磨は、不意打ちに驚いて少し後ずさった八雲に近づくと、その手に二枚の紙片を握らせた。
「?」
そっと拳を開いてみると、それは水族館の入場チケットだった。
「いやな、知り合いがくれたんだけどよ、一緒に行くつもりだった奴が用事があるみたいでな、先
行公開だから、日程もずらせねえし、どうしようか迷ってたところなんだ。金髪の友達と一緒に行
きな」
「これ…くれるんですか?」
「おお、妹さんにゃ日頃お世話になってるからな、こんくれーはしねーとな。」
 そんじゃな。そう言い残すと、播磨は八雲に背を向けて、ゆっくりと歩いていった。
一人取り残された八雲は、先ほどまで播磨が座っていたベンチに腰をかけると、手元に残った二枚
のチケットををしげしげと眺めた。チケットには、「ぷちうみ」と大きく印刷されており、その横
で蝶ネクタイを締めたペンギンが手をふっていた。
「今度の日曜日か……」
しばらく考え込んだ後、ポケットから携帯を取り出し。友人であるサラにコールする。程なくして
聞きなれた声が耳に飛び込んできた。

14 :Classical名無しさん:04/07/20 03:37 ID:Y8vyDweI
どうしたの?八雲」
「あの……今度の日曜日、一緒に水族館にいかない?」
「え、水族館って今度新しく出来たぷちうみ?」
「うん、播磨さんが特別招待券を二枚くれたから、一緒にどうかなって思って……」
「うーん、ごめん」
受話器から聞こえてきたサラの言葉に、八雲の顔は暗くなった。
「……そうなんだ」
「ホントにごめんねー」
「ううん」
「けど八雲なら一緒に言ってくれる人すぐ見つかると思うよ」
「そう……かな」
「もちろん!」
それじゃあと挨拶を交わし、通話を切ると、八雲は大きな溜息を一つついた。
「どうしよう……。」
サラはああいってくれたが、はっきり行って、サラ以外に二人で一緒に遊びに行ってくれるような
人は思いつかない。
「姉さんも今度の日曜は烏丸さんとプロレス観戦に行くって言ってたし……」
 頼みの綱である姉の線も消え、孤独感に打ちひしがれながら八雲はとぼとぼと、家に続く道を歩
いていった。
「一緒に言ってくれる人、一緒に言ってくれる人……」
しばらくして、唐突に八雲の脳裏に花井の顔が浮かんだ。必死に頭を振って花井のイメージを払い
飛ばす。
「悪い人じゃないんだけど……」
花井が一緒ではゆっくり魚を眺めることなど出来ないだろう。
 再び溜息をつき、右手に握った二枚のチケットに視線を落とす。ふとタキシードを着たペンギン
と目が合ったような気がした。
「見たかったな……ペンギンさん」
播磨の動物たちがいる動物園には、ペンギンやラッコなどはいない。八雲はまだ、テレビでしかペ
ンギンを見たことが無かった。

15 :Classical名無しさん:04/07/20 03:41 ID:Y8vyDweI
 八雲は、暗く沈んだ気分を少しでも払拭しようとお気に入りのガムのCMを思い出した。父親ペン
ギンを見ながらペンギンの母子がおしゃべりを……。
「あ」
 おしゃべり、そうおしゃべりだ。なぜ早く気付かなかったのだろう。数少ない面識のある人物で
、動物のことに詳しく、それどころか話まで出来てしまう!そんな人。一緒に水族館に行くのにこ
れ以上うってつけの人間はいないではないか。八雲の脳裏には、播磨を通して、ペンギンやラッコ
、オットセイなどと話をしている自分の姿が浮かぶ。
 先ほどまでとは一変して、顔を輝かせながら、八雲は播磨にメールを送った。
 ところが、一分、二分、五分。いくら待ってもメールは帰って来ない。そうこうしているうちに
家にたどり着いてしまった。部屋に上がり、私服に着替える。メールは来ない。夕食の準備を始め
る。炊事の合間にちらちらとちらちらと携帯を見るが、全く変化は無い。結局。食卓の上で料理が
湯気を上げる頃になっても、播磨からの返信は無かった。
「どうしたの?八雲」
八雲の様子を心配した天満が声をかける。
「……なんでもない」
「そうは見えないけど……困ったことがあたらちゃんとお姉ちゃんに言うんだよ?」
「……うん、姉さん」
天満の励ましに幾分元気を取り戻し、食事に箸をつける。たわいないコメディー番組が終わり。CM
が流れ出す。それは八雲の好きな、ガムのCMだった。
 箸を休め、八雲はCMに見入った。三十秒ほどのCMはすぐに終わり、変わりに眉間に皺を寄せたニ
ュースキャスターが映し出された。
「……」
視線をテレビの画面からそらし、もう一度溜息をつこうとしたとき、唐突に携帯がメールの着信を
知らせた。
 八雲の反応は迅速だった。箸を置き、膝元においていた携帯の液晶画面を凝視する。
「俺は暇だけど、俺で良いのか?」
八雲はコクコクとうなずきながら播磨に返信した。胸をなでおろしながら再び食卓に向かうと、腕
を組んだ姉が満足そうにうなずいていた。

16 :Classical名無しさん:04/07/20 03:42 ID:Y8vyDweI
「姉さん?」
「いやいや、お姉ちゃん安心したよ。そういうことだったんだね。」
「そういうことって、どういう……」
「まあまあ、八雲も恥ずかしいだろうし、詳しくは聞かないよ」
「姉さん、多分それは違……」
 八雲の言葉も聞こえていないらしく、天満はなにやら一人で悦に入っているようだった。姉の誤
解を解くことはあきらめ、八雲は食事を再開した。
 それからの数日間、八雲は楽しみで、それでいてじれったい、そんな至福の時を過ごすことにな
った。
 当日の日曜日、天気は生憎の雨模様となったが、ぷちうみの周囲は家族連れやカップル等でにぎ
わっていた。
「播磨さん、どこかな……」
八雲はきょろきょろと周囲を見渡したが、播磨の姿は見当たらない。人ごみと雨のせいで視界はお
世辞にもいいとは言えず、この中から播磨を見つけ出すことは不可能なように思われた。携帯にメ
ールを送ってみるが反応は無い。八雲はだんだん心細くなってきた。その時、八雲の耳に聞き覚え
のあるバイクのエンジン音が飛び込んできた。
「あ」
 播磨拳児、その人であった。
 急いでバイクのほうへと駆け寄る。
「おう! 妹さんすまねえ、少し遅れちまった」
「いえ、私も今着たばかりですから」
「そうか、んじゃいくか」
「はい」
 窓口でチケットを渡し、手の甲にスタンプを押してもらう。
「なんだこりゃ?」
「特殊な塗料です。今日一日は出入りは自由。手を洗っても落ちませんからご安心ください」
いぶかしむ播磨に受付嬢がマニュアルどうりの笑顔で応対する。
「ふーん」
納得したのかしていないのか微妙な返事を返しながら、播磨は角度を変えながら自分の手の甲をし
げしげと見つめた。

17 :Classical名無しさん:04/07/20 03:45 ID:Y8vyDweI
「あの……播磨さん、早く行きませんか?」
 播磨がゲートで立ち止まっているせいで、ただでさえ混雑している入り口付近は、けが人が出て
もおかしくない状況に陥っていた。播磨と八雲でなければ、後ろから文句の一つでも飛んできたこ
とだろう。
「まあまあ、そんなに急がなくても魚は逃げやしねーよ」
そんな状況に気付くことも無く、播磨は鼻歌交じりで館内へと進んでいく。慌てて八雲もその背中
を追った。
「ここは……」
最初は、淡水魚のコーナーだった。
「岩魚に鮎……やけに食欲をそそるコーナーだな」
「そ、そうですか?けどほら、うろこがキラキラ光って綺麗ですよ?」
「そうだな」
たわいも無い会話を続けながら回廊を進んでいく。様々な色形の魚を眺めながらゆっくりと脚を踏
み出してゆく。ゆったりとした時間が流れていった。
 ふと播磨が立ち止まる。
「変なカッコの魚がいるな」
「太刀魚……ですね」
「マジで立ってんな、おい」
刀のような形をした魚たちは、水底に尾を、水面に頭を向けて、スポットライトを浴びて銀色の光
を放ちながら、ゆらゆらと体を揺らめかせていた。
「……レストランで食わせてくれんのかな?」
「それは、ちょっと無理だと思いますけど……」
「けどさっきのクラゲといい、こうやって見ると綺麗なもんだな」
「……そうですね。」
八雲はうっとりと水槽の中の魚たちを眺める。
「そろそろ次行くか」
「はい」
しばらくお互いに無言で水槽を眺めながら歩いていたが、やがて八雲が播磨におずおずと話し掛け
た。

18 :Classical名無しさん:04/07/20 03:48 ID:Y8vyDweI
「あの、播磨さん」
「ん?」
「播磨さん、お魚たちとも話せるんですか?」
「んー、考えてることは解るんだけど、こっちの、呼びかけには反応鈍いなー。あんまたいした事
考えてるわけでもなさそうだし」
「そうなんですか……」
「マイペースなかんじかなー、芸を教えたりは出来なさそー……でもないみてえだな……」
 二人の進行方向には、人垣が出来ており、その上には、『イシダイの大吾くんショー』と描かれ
た大きな看板が下がっていた。
「マジか……」
「こ、これって凄いことなんじゃないでしょうか……?」
「いったい何やるんだ?」
興味津々で人垣を掻き分けながら水槽に近づいていく。ステージ上の水槽の中には、一匹のイシダ
イと、かごを持った熊のような生き物の人形が入っていた。
「さー大吾くん、はりきっていってみよー!」
 子供向け番組のようなノリの司会が手を振り上げると、人形のもつバスケットから紐のようなも
のがでて来る。それを見たイシダイは人形に近づくと、紐の先端を突っつき出した。
「これのどこが芸だって言うんだ?」
胸元で腕を組んだ播磨があきれたようにぼやく。
「待ってください、ほら!」
 紐の先端を加えた大吾くんは、ゆっくりとバックしていく、やがて、もう一方にくくりつけられ
ていた箱がかごから飛び出した。その箱にも同様に紐がついており、大吾くんは再び紐をひっぱり
はじめた。
 「うーん」
 播磨は、箱から出てきた餌をうれしそうにつっつく大吾くんを見つめながら、複雑そうな面持ち
で首をかしげた。
「あんまパッとしねーよなー」
「けどやっぱり凄いことだと思いますけど……」
「そりゃまあ……な。それにしても広いなーここ、一体今どこら辺なんだ?」
 そう言って播磨は八雲が広げたガイドマップを覗き込んだ。

19 :Classical名無しさん:04/07/20 04:18 ID:UYzYZwYg
こんな時間だけど、支援ー

20 :Classical名無しさん:04/07/20 05:07 ID:6xG/JldU
生殺し?

21 :Classical名無しさん:04/07/20 05:59 ID:m.jpTm1Q
アレ、続きがねえ

22 :Classical名無しさん:04/07/20 07:02 ID:Y8vyDweI
すみません、気がついたら寝てました。


23 :Classical名無しさん:04/07/20 07:04 ID:Y8vyDweI
「えーと、今はこの辺りですね」
「ようやく半分か、いいかげん脚が疲れてきたぜ」
大げさに溜息をつく播磨を見て、八雲の頬がかすかに緩む。
「そうですね、すぐ先に自販機コーナーがありますからそこで少し休みましょうか」
「賛成」

 プシュッ

小気味良い音を立てて炭酸が噴出す。のどを走る心地よい刺激を感じながら、播磨は目の前の巨大
水槽を見上げた。
「八メートルの水槽か……。結構圧迫感あるな」
自販機コーナーの正面に据えられた水槽の中では、様々な色形の魚が勝手気ままに泳ぎまわってい
たが、中でも目に付くのは、大型のエイと、サメであった。
「少し、怖いです……」
八雲はおびえたように、後ずさった。
そんな八雲の様子を見て、播磨はサメに向かって手を振る。八雲には、その時サメがこちらを見た
ように思えた。
「へへっ」
不意に播磨の笑い声が聞こえる。
「どうしたんですか?」
不思議そうに尋ねる八雲に向き直ると、播磨はへらへらと笑いながら親指で水槽の中を悠々と泳ぐ
サメを指差した。
「いやな、こいつが言うに、餌は十分もらえるから何不自由しないんだが、栄養を取りすぎてしま
って運動するのが大変だ。だってよ。可笑しいだろ?」
 そう言って笑う播磨の顔をしばらく見つめ、もう一度水槽の中のサメを見つめる。サメの顔は、
先ほどとはうって変わって、愛嬌があるように思えた。
「そうですね」
そう言って目を細める八雲の顔を見て、播磨は満足げにうなずく。
 「……どうかしましたか?」
「いや、妹さんが楽しんでくれてるみたいだから、良かったなと思って」

24 :Classical名無しさん:04/07/20 07:11 ID:vefvvOdM
支援?
寝るなよー

25 :Classical名無しさん:04/07/20 07:19 ID:Y8vyDweI
「……はい、すごく、楽しいです」
「まあ、このくらいじゃ、日頃の恩は返せねえけどな」
「いえ、そんな……恩だなんて」
「いや、マジ助かってる。妹さんぐらいなもんなんだよな、気を許して話できるの……
フルフルと首を横に揺らす八雲に言葉を投げかける播磨の表情は、心無しか疲れて見えた。
「さて!次行くか」
 何かをふり払うように体をゆすり、播磨は水槽から離れた。
「はい」
八雲はもう一度水槽を振り返り、サメに向かって小さく手を振った後、少し離れた場所で待つ播磨
の元へと駆けていった。

「ん、なんだぁ?」
 二人の眼前に広がる陸地つきの大きな水槽、ペンギンたちが快適に暮らせる様にと作られたもの
で、岩や岸壁はまるで作り物とは思えないようなできばえであり、まるで本当に南極にいるような
感覚を覚えてしまう。しかし、それらの精巧さも、動くもののいない水槽の空虚さを際立たせるだ
けであった。
「まだ入ってねえのかな?」
八雲の返答を期待しての一言だったが、隣からは何の反応も返ってこない。そのまま二人は何を見
るでもなく、ぼんやりと空の水槽を眺め続けた。
(あー……)
余りにも静かな隣の雰囲気に、いやな予感を覚えつつ、播磨はちらりと、八雲の様子を盗み見た。
 日頃は余り感情を表に出すことのない八雲の顔は、珍しく、はっきりと彼女の心情を物語ってい
た。
しかしそれは、悲しみ、と呼ばれる類のものだったが……。
 慌てて視線を正面に戻し、播磨は心の中で頭を抱えた。
(あー、どうしよう。妹さんペンギン見るのすっげー楽しみにしてたもんなー)
何とか自然に場の雰囲気を変えることは出来ないだろうか、そんなことを考えながら、播磨は、話
題の材料を探すべく、己の五感を研ぎ澄ませた。

26 :Classical名無しさん:04/07/20 07:21 ID:Y8vyDweI
(ん?)
その甲斐あってか、播磨は周囲の違和感を感じ取った。通路を見渡してみるが、先ほどまで、あれ
だけたくさんいた他の客が、ほとんどいなくなっていた。
「こりゃあ……」
先に状況を理解したのは八雲の方だった。おもむろに一枚のポスターを指差す。
「ん」
八雲の指先を目で追う播磨であったが、ポスターを確認する前に思い切り服のすそを引っ張られ、
体勢を崩してしまった。
 「ちょ、ちょっと! 妹さん!?」
とりあえず、引っ張られるままに走ってついていくが、播磨にはまったく状況がつかめていない。
「ショーだったんです」
八雲のその言葉を合図にしたように、遠くから歓声が聞こえて来た。それを聞いて八雲は更に加速
する。
いくつかの曲がり角を曲がり、階段を駆け上り、ドアを開ける。その途端、係員のアナウンスと、
子供たちの甲高い歓声が二人の耳に飛び込んできた。
「さー、ペンギンのベン君たちの行進です、みんなー、手を振ってあげて下さいねー」
「わー、こっちこっちー!」
「ベンベーン!」
ペンギン達の、行進コースのふちに群がった子供たちは、大声でペンギンたちに声をかけたり、ペ
ンギンに触ろうとして必死に手を伸ばしたりしていた。そんな子供たちに向けて、ペンギンたちは
ヒラヒラと手を振って答える。
「うわぁ……」
その光景を見て八雲は、感嘆の声を漏らした。しばらくは満足げにペンギンと子供達の様子を眺め
ていたが、そのうち、そわそわしだした。
「どうした?妹さん……」
 不思議に思った播磨が尋ねると、八雲は顔を真っ赤にして顔を横に振った。
「な、何でもありません」
そうは言ったものの、やはり八雲は、落ち着かない様子だった。
 その様子を播磨は首をひねって考えていたが、満足のいく答えを思いつき、ポンと手を打った。
「妹さんもペンギンに触ってみたいってか?」

27 :Classical名無しさん:04/07/20 07:22 ID:Y8vyDweI
 播磨の問いかけに、八雲はビクリと肩を震わせ、少し時間を置いて、恥ずかしそうにコクリとう
なずいた。
「けど、本当はいけないことだろうし、子供達の楽しみを邪魔するわけにも行かないし……」
「まあな……」
うなずきながらも、播磨は何か考えているようだったが、そのうち八雲に向けて満面の笑みを向け
るて
ペンギン達のほうへと向き直った。
「?」
八雲は首をかしげて播磨の横顔をしばらく見上げていたが、視線に気がついた播磨に促され、ペン
ギン達に視線をもどし、そして大きく息を呑んだ。
 なんと、ペンギン達がこちらを向いて手を振っているではないか!
「……っ!?」
八雲は驚きながらも、ペンギン達に挨拶を返した。
「あ、あの、播磨さんが頼んでくれたんですか?」
「ああ、これくらいなら大丈夫だろ?」
おずおずと尋ねる八雲に播磨は得意満面の笑顔で返した。
「ありがとうございます」と播磨に頭を下げ、再びペンギン達に視線を戻す、とその時、八雲は観
客達達の注目を一身に集めている事に気がついた。
「わー、きれいな娘ー」
「お、かわいい子、くっそー、あのごっついやつの彼女かぁー?」
「結構こいつらも面食いなんだな」
周囲から言葉と思念が次々と飛び込んでくる。
子供達にいたっては、ペンギン達と一緒に無邪気にこちらを向いて手を振っていた。
 結局八雲は播磨を引っ張ってあたふたと会場を後にした。
「あーなんだ、もしかして余計なことしちまったかな……」
肩で息を整える八雲に、播磨はすまなそうに頭をかきながら頭を下げた。
「あ、いえそんな…… すごく嬉しかったです」
「そ、そうか?」
八雲の言葉を聞いて、播磨は安心したように胸を撫で下ろした。
「いや、そういってもらえると助かるぜ、それじゃあ、続きを回るか、今なら空いてるし。」
「はい」

28 :Classical名無しさん:04/07/20 07:24 ID:Y8vyDweI
 二人は再び、水の回廊を進み始めた。人の指くらい軽く噛み千切れそうな怪獣のような風貌の亀
、海草や葉っぱと見分けがつかない忍者のような魚、変り種ではのそのそと海底をひれを使って歩
きまわるひょうきんな顔をした魚、etc、etc……。それらの全てが八雲に新鮮な驚きと喜びを与え
てくれた。
 売店にもいった、ゆったりとしたスペースのお土産売り場は、かわいらしい海のキャラクター達
のグッズであふれかえっており、ファンシーショップも顔負けといった様子であった。八雲は自分
と姉のために、おそろいのタキシードを着たペンギンのストラップを、播磨は眠たげな目をした海
亀のストラップを買った。
 本当に楽しいひと時だった。しかし、楽しい時にもつらい時にもいつか終わりが訪れる。今、八
雲の目の前には、出口のゲートが立ちはだかっていた。
「あ……」
八雲は呆然としたように、大きなゲートを見上げていた。
「おー、ようやく出口か、広かったなー、ここ……ん、どうした? 妹さん」
「なんだか、少し、残念です……。」
「まあ、また来ればイーじゃねーか。まあ今度は、金髪の子ととか、あとなんだ、そのー、あれだ
姉さん、塚本のやつも一緒にだな……」
後半なぜかしどろもどろになる播磨、心なしか頭身も少し低く見える。
「そうですね、今度はみんなも一緒に……それじゃあ出ましょうか、播磨さん」
「ん?おっおう!」
外は、湿気のせいで少し蒸し暑かった。
「いやあ、喜んでくれたみたいでよかったぜ」
愛車にまたがりながら、播磨は八雲に話しかけた。
「はい、すごく楽しかったです。なんていうか……!?なっなんでもないです!」
八雲は何かを言いかけたが、あわてて頬を紅に染めて俯いた。
「なんだ?そこで止められちゃあ気になってしょうがねえぜ」
「は、はいその……播磨さんみたいな、兄さんがいたら良かったなあって思って……ごっごめんな
さい、変な事いって!」
慌てて八雲は播磨に向かって頭を下げた。
「いっ、いやあ、おっ俺も妹さんみたいな義妹がほしいっていうか、なってもらいたいというか、
あはははは!」

29 :Classical名無しさん:04/07/20 07:25 ID:Y8vyDweI
八雲の言葉に答える播磨の顔も、サルのように真っ赤になっていた。
しばし二人の間に気まずい沈黙が流れたが、播磨はそれを振りはらうように、八雲に声をかけた。
「よし、送るぜ、のんな」
そこまでしてもらうのは悪いと断る八雲を急かして後ろに乗せると、播磨は愛車を発進させた。
 風が二人を包み込む、日頃見慣れたはずの風景も、普段とはまったく違う、新鮮なものに感じら
れた。
「……」
八雲はしばらく無言で流れていく景色を眺めていたが、視線を眼前の播磨の大きな背中に移した。
(今度は、播磨さんと、姉さんの三人でどこかに行きたいな……)
目をつぶり、三人で楽しく話している光景を思い浮かべながら、八雲は革ジャンに頬をそっと押し
つけた。
-了-

30 :書いた人:04/07/20 07:28 ID:Y8vyDweI
途中でいったん投稿を中断してしまい、すみませんでした。
 このSSですが、違和感無く積極的な八雲が書きたくて、水族館という舞台を
考えました。けどちょっと八雲が活発的過ぎるかな?

31 :Classical名無しさん:04/07/20 08:11 ID:jCJ2GJLk
お疲れさま〜
途中で寝るってよっぽど眠かったんですね。
今日は祝日なのでゆっくりベットで寝なおしてください。
八雲SSはいっぱいありますけど
こういうほのぼのとしたのはいいですね。
グッジョブです。

ガキのときに水族館でペンギンに噛まれたのを思い出したよ。
あれは痛かった、今でもペンギン好きだが。

32 :Classical名無しさん:04/07/20 08:39 ID:6ztCdbEY
新スレたておつかれさまです。
……えーと、前スレでは自分の短慮のせいでスレの雰囲気が悪くなってしまうような
配慮に欠けた発言をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
そのことの反省を踏まえ原作を読み直し、一度書いていたものを大幅に手直しした結果、
やたら長くなってしまいました。説明的な文章が多くなってしまいましたし……
もう少し手短にまとめられれば良いんですけど、今の自分の力量ではこれが限界です。
登場人物の人物像や性格について、まだ自分の偏見があり気に入らないという方もおられると
思いますが、最後まで読んでいただければ幸いです。

前スレの『嘘つきは○○の始まり?』の続編で、『My Gift to You』です
         (前回は日本語で今回は英語のタイトルですが気にしないで下さい)
前作とはちょいと雰囲気が違います


33 :Classical名無しさん:04/07/20 08:40 ID:6ztCdbEY
 お昼前の授業中、教師の声とチョークの音が響き渡る中、集中しきれず窓の外へと視線を向ける―――外は
時折晴れ間を覗かせたりするはっきりしない曇り空。それを見て、
「はぁ〜………」
 と、胸の中に溜まったもやもやを全部吐き出すかのように、深いため息をついた。しかし、吐き出せたと思
ってもまた同じ事を繰り返し考え、もやもやが溜まるの繰り返しだ。
 ……ホント、どうかしてる……
 そう思いながら、もやもやの原因の方を見てみると――――イビキかいて幸せそうに寝てやがる―――
 ………ヒトの気も知らないで………

 ――ミシ――

 何かがかすかにきしむ様な音を聞いた気がした――――


 あの日――嘘の恋人同士を演じた日――から二週間近く経った。その間暇さえあれば、それとなく播磨を観察
してきた。播磨がどんなやつか知り、あの時のお礼をするために。
 しかし、その成果はというとさっぱりだった。あたしが見ている時はたいてい居眠りをしている。そうじゃな
い時でも、特に誰かと親しくするわけでもなく自分の席に座っているだけで、特に変わりは無い…サングラスの
せいでどこを見ているのかわからないが……
 気になった事はといえば、携帯を片手にメールを打っている姿を度々目撃した事だった。あたしもアドレスを
交換したからあいつの携帯に登録されているだろうけど、あの日以降あたしにあいつからメールが届いた事は一
度としてない。比較的親しく見える花井や今鳥達も知らないようだったから、誰にでも教えているという事では
ないだろう。吉田……だったかな? まーいいや、あの男にしたって一見すると親しくしてそうに見えてるが、
ただ播磨の舎弟を気取りまとわり付いているだけで、播磨は特別な友人として見ているわけではないだろう。
 ……そうなると一体誰にメールをしてるんだ? それにメールを打ってるのを見かけた日はいつの間にか姿を
消しているのはどういう事だ?……まさか誰かと待ち合わせ?…男? それとも……お…女………?

 ――ビキッ――


34 :Classical名無しさん:04/07/20 08:41 ID:6ztCdbEY
「……こと……美琴!」
 ハッと顔を上げると沢近が焦ったような顔をしてあたしを見ていた。その後ろには、驚いている塚本とほんの
少し眉を顰めている高野の姿があった。
「何やってんのよ、一体!?」
「え……な、何がだ?」
「何が…って、自分の手を見てみなさいよ!」
 そう言われて手を見ると持っていたシャーペンが見事に潰れていた。……そういやさっき何かの音がしてたが
これの音か………
「あ…こ、これは何でもねーよ、怪我もしてねーし。……ただ、ちょっと考え事してて無意識に手に力を込めて
しまってたみたいだ………」
「………気をつけなさいよね、全く!」
 沢近は一瞬ほっとしたような顔をすると、顔を背けて怒った様にそう言った。……頬が赤くなってやがる……
「…悪かったな、心配かけて……」
「なっ、そ…そんなんじゃないわよっ!」
 そう言うとさらに頬を染めて反論してきた。塚本や高野もそんな沢近を見て、表情をほころばせている。
「まあまあ……落ち着いて、愛理」
「そうだよ愛理ちゃん、早くお弁当食べようよ」
 今更ながらに気づいたが、授業はとっくに終わっていたようだ。おそらく号令を省略して教師はさっさと出て
行ったのだろう。おかげでシャーペンを潰した場面は近くに来ていたこいつ等にしか知られていないようだ。
 ……助かった……皆に気づかれてたら、どんな目で見られていたか………
「なにまたボケッとしてるの?さっさと昼食にするわよ!」
 口調とは裏腹に心配そうに見ている沢近にこれ以上心配させないよう、弁当を取り出した―――


35 :Classical名無しさん:04/07/20 08:41 ID:6ztCdbEY
「……ところで……」
 先に弁当を食べ終えてお茶を飲みながら、高野が世間話でもするように尋ねてきた。
「美琴さんは何を一体何を考え込んでいたの……?」
「ん、ああ…どんなお礼が男に喜んでもらえるかな………って!」
 余計なこと考え込んでしまわないようにと、食べる事に意識を向けていたあたしは高野の策略にまんまとはまり
口を滑らせてしまった―――
 慌てて周りを見ると、目を丸くして固まっている沢近と塚本……そして、かすかに―その実すごく楽しそうに―
微笑んでいる高野が目に入った。
「今のは違「誰? 誰? 誰にお礼するの!? 花井君? ……わかった! 今鳥君でしょう!!」……」
 ごまかそうとしたあたしの声は硬直から解けた塚本の息をもつかせぬ質問攻めに遮られた。
 ……何か…勝手に結論づけて、うん、うんと頷きながら自己完結しちゃってるし………
「いや、だからそうじゃな「なに、なに? 美コちんがオレにお礼してくれんの!? 金がかかるような物が欲しい
なんて贅沢言わないよオレ、ただその胸を―『ゴッ』―……」違うって!!」
 ハァーハァー……いきなりわいて出て来やがって………しかも恥ずかしくなるような事言おうとしやがって!
 三人の方へ向き直ると、高野は無表情のままお茶を飲み、塚本は自分の推理が外れた事に残念そうにこっちを見
て、沢近は……少し不機嫌そうにこっちをじっと見ていた。
「……どういう事か説明してもらえる?…美琴……」
 そう聞いてくる沢近から少し目を逸らしながら答えた。
「……親戚の男にこの間世話になってさ、まだろくにお礼もできてないだけだって………」

 ――チクリと胸が痛む――

 ……沢近が不機嫌そうなのは親友のはずの自分にどうして一言も相談してくれないのかと不満に思っているから
に違いない……。そうとわかっていても沢近にはとても本当の事は言えない………手を取り見つめ合っていた二人
の姿が脳裏に浮かんでくるから…………

 ―――ズキリと胸の痛みが増した気がした―――


36 :Classical名無しさん:04/07/20 08:43 ID:6ztCdbEY
「……話は変わるけどよー……」
 まだ訝しげにこちらを見る沢近の視線から逃れるため、少々強引だが話題を変えることにした。
「今更なんだが、沢近…お前、昼休みになると当然のように播磨の席に座ってるけど、その間播磨のやつはどこで、
何をしてるんだ?」
「…そういえばそうだよねー? どこ行っちゃったのかなー播磨君」
「…ちょっと…美琴も天満もやめてよね、食事中にあいつの話するの。食欲無くなっちゃうじゃない」
 何気なく振っただけの話題なのに沢近はすごく嫌そうな顔をしている。
 …本気で嫌がってるよな? あの後結局何も無かったってことかな?……
「……播磨君なら外の水飲み場にいると思う、月末になるとお金無くてお昼抜きみたい」
「ちょっと、晶まであいつの話しないでよ!」
 あたしの方を意味ありげに見ながら高野はそう言ってきた。
 …くっ、そういえばあれから何も言ってこないから忘れてたけど、高野にはしっかりと目撃されてるんだった…
……まてよ、今、高野はなんて言った? 月末は昼飯抜きとか言ってたよな? …どうしてそんな事を知ってるの
かは疑問だが、使えるよなそれ? お礼だと言って弁当を渡してやれば案外喜んでくれるんじゃねーか?……
「何がおかしいのよ美琴!」
 嫌がっている自分の様子を見て笑っているとでも勘違いしたのか、詰め寄って来る沢近をなだめながら、どんな
献立にするか自分のレパートリーを思い浮かべていた―――


37 :Classical名無しさん:04/07/20 08:44 ID:6ztCdbEY
 ―――――今朝はいつもよりも早く起きて台所に立った。下準備は昨夜のうちに終えてあるため、時間はあまり
かからない予定だったが、自然と目が覚めてしまったのだ。
 いつもより早起きしてきたあたしを両親は訝しげに見ていたが、二つの弁当箱―自分用のと、真新しく、あたし
のよりも一回り大きい弁当箱―を取り出し、下準備しておいた食材―いつもより手が込んでいる―を調理しだした
あたしを見ると、お袋は、がんばりなさい、と言い微笑んで肩に手を置き、親父は終始不機嫌そうにむっつりと黙
り込んでいた。
 なんとなく居心地の悪さを感じ、早めに家を出たあたしは鞄の中の弁当箱を手探りで確認し、朝日を浴びながら
胸を躍らせて学校へと歩き出した―――――


 時計の針が昼休みの時間に近づくにつれ、授業の内容は全く頭に入らず、別の考えが頭の中を占領している。
 …好き嫌いはあるだろうか?……今日に限って弁当持ってきてるだろうか?……なによりも、あたしの味付けは
播磨の口に合うだろうか?………
 
    ―――キーンコーンカーンコーン……―――

 チャイムの音に思考を切り替え、号令に合わせお辞儀をして、はやる胸を押さえながら播磨の方に目をやった。
播磨は既に教室を出て行こうとしているところだった。どこで渡すか考えていなかったあたしは、ちょうどいいと
考え沢近達に先に食べているようにと伝え、鞄をしっかりと抱えて播磨の後を追いかけた――――


38 :Classical名無しさん:04/07/20 08:44 ID:6ztCdbEY
 ……おかしい……水飲み場に行くんじゃないのか? この上は……屋上か……?
 てっきり外に行くんだと思ってたあたしは、予想外の展開に少々混乱しながら屋上への扉の前でたたずんでいた。
 ……ま、今日みたいに風の強い日に屋上で飯食う奴はいないだろう。……なら、問題ないよな。どうせ暇つぶし
に、屋上で寝るつもりだろうし………
 そう考えて、弁当を鞄から取り出し、腕に抱えながら屋上への扉を開けた―――――


 ―――――目の前の光景に言葉を失い、頭の中が数瞬真っ白になる。思考が戻ってくるに従い、あたしの思考は
混乱の渦へと飲み込まれて行く―――――
 あれ……塚本の妹だよな……? 何度も会ってるんだし、花井の奴がいつも騒いでるから忘れるはずが無い……。
……だとしたらなんで播磨とここにいるんだ? 誰もいない屋上で二人っきりで……。………二人きり?……っ!!
……ああ……なんだ……バカだなあたしは………年頃の男女が人目の無い場所で二人きりなんて……答えはひとつ
しかないじゃないか!!

「……周防…?」
「……周防…先…輩?」
 二人があたしに気付きこっちを見ている……
 ……きれいな娘だよな…気立てはいいし家事上手だって評判だし……、花井や他の男どもが夢中になるのも理解
できるよ………播磨だって……、っ!!
 塚本の妹があたしの腕の所を見ているのに気付き、慌てて手に持っていた物を背後へと隠した。
「…周防…なんで「いや、あの…は、播磨に用事があって追いかけて来たんだけど…やっぱりいいや! たいした
ことじゃないし……ハ、ハハハ…ハ……」……」
 ……乾いた笑いしか出て来ない……
「……邪魔して…悪かったな……」
 二人の視線が突き刺さってくるかのように感じられて、身を翻し、駆け出した――――

     ――――「……周防…?……周防…!!」――――


39 :Classical名無しさん:04/07/20 08:46 ID:6ztCdbEY

    ―――キーンコーンカーンコーン……―――

「……あ…授業始まっちまった………」
 そうわかっていても動こうという気になれなかった。
 ……あいつ等心配してんだろうな……
 と、いつもの三人の顔が浮かんできた―――いつも冷静で無表情なくせに、よく人をからっかったり、なぜか普
通は知らない秘密を知っていたりと謎な部分が多いが、友情に厚い晶――勘違いやおせっかいが酷くて手がかかる
が、嘘をつくのが下手で、いつも一生懸命な塚本――プライドが高く弱みを見せるのが嫌で、他人の前では猫をか
ぶり、人当たりのいい完璧な人間を演じているが、人一倍寂しがりな沢近―――
 そんな三人の心配そうな顔も、申し訳なさを感じさせるだけで、動こうという力を与えてはくれなかった。
 二人―播磨と塚本の妹―の姿を目撃した時に感じた気持ちは、神津先輩に彼女がいたと知った時の気持ちに似て
いたが、あの時とは決定的に違う。あの時は辛かったが、自分の気持ちを隠して平気なフリを装えた。しかし、今
は違う――いつまで経っても落ち着かない。わずかでも油断すればドス黒い何かが体を突き破って出てきてしまい
そうだった。
 ………今は誰にも会いたくない。会えば八つ当たりだとわかっていても、きっと酷いことを言ってしまう………
このまま一人でいれば、そんな事をしないで済む………

    「……やっと見つけた…たく、こんな所に居やがったのか?」

 信じられないという思いとともに、驚いてその声の主を見た。播磨はこっちの様子などお構い無しに、「よっ」
と片手を挙げながら近づいて来て、隣に腰を下ろした。
 ……な…何で播磨がここに? え…だって…塚本の妹と……あ、もう授業中か……。…ん? やっと見つけた…
て言ったよな……? それって………
 気が付くとあれだけ胸の中で暴れ狂っていたドス黒い感情は、驚きのあまりきれいさっぱり無くなっていた。そ
の代わりに戸惑いとともに、なんだかとても暖かい感情が満ちてくるのがわかった―――
「…な、何で播磨がここにいんだよっ!?」
 そんな胸の内を悟られないよう、つい大声で怒鳴ってしまった。


40 :Classical名無しさん:04/07/20 08:47 ID:6ztCdbEY
「…ち、うるせーなー。俺に用があるって言ってたのは周防…てめーだろうが」
 耳を押さえて不機嫌そうにそう言うと眉を顰めあたしの方を向いた。
「…だ…だって、たいしたことじゃないって……」
「たいしたことじゃなくても用事は用事だろうが……。で、何なんだ用事って? さっさと済ませようぜ」
「え……あ……それは…その………」
 そう言いよどんで、視線をさ迷わせていると――

   ……グ〜〜〜ッ………

 と、この場に似つかわしくない音が鳴り響いた。播磨の方を見ると、顔を赤くして決まり悪げに横を向いていた。
そんな播磨がかわいく見えてつい声を上げて笑ってしまった。
「…し…仕方ねーだろーが、ひ、昼飯食ってねーんだから!」
 むきになってそう言う播磨をなだめながら弁当を差し出した。呆気に取られ、固まっている播磨にごうを煮やし、
無理矢理手に押し付けるように持たせた。
「……俺に? いいのか?」
「ああ、用事っていうのはこれの事だ……。以前、礼をするって言っただろう? 月末は昼飯抜きだって話を聞い
てな…これなら喜んでもらえるんじゃないかと思って……」
 播磨はしばらく無言でこっちを見ていたが、おもむろに弁当を開け食べ始めた。
「……うまいか?」
「ん…ああ、うまいぞ。なんつーか、お袋の味っていうのか? 安心して食える」
「………」
 …………バカやろう…そんな恥ずかしいセリフ、さらっと言いやがって………


41 :Classical名無しさん:04/07/20 08:48 ID:6ztCdbEY
 弁当を食べる播磨を横目でちらちらと見ていると、その頬に殴られたような痣があることに気付いた。
「…っ! どうしたんだその痣!?」
「…え?……あ! こ、これはなんでもねーよ!」
 ごまかそうとする播磨の肩に手を置き、じっと見つめる。あたしが引かないと悟ったのかため息をついて話し始
めた。
「……周防を追い駆けてたらよ、花井のやつを見かけたんでどこに行ったか尋ねたら『周防に何をした!』って殴
りかかって来てよ……。あ、花井のこと攻めんなよな? やられた分はやり返しておいたし…勘違いとはいえお前
の事心配してただけなんだから……」
 ……そういや、走ってる途中で誰かに呼ばれた気がするな……

「す……周防?」
 戸惑いの声を無視して頬の痣に手を当てて、そのままじっと播磨を見つめる。そして―――

    ―――キーンコーンカーンコーン……―――

 ……え! あ、あたし何しようとしてたんだ?…痣の状態を確かめようとして…そして……
 チャイムの音に正気に返り自分が何をしようとしていたか思い出し、慌てて立ち上がった。
「じゃあ、先に教室戻るから! 弁当箱は放課後にでも返してくれ。……それと、見た所痣はたいしたこと無さそ
うだけど保健室行ってちゃんと手当てしてもらえよ?」
「あ…ああ、そうだな、そうするよ。自分じゃどうなってるか見えねーし。」
 見つめていたことは痣の状態を確かめるためだけだと誤魔化せたらしい事に、安堵と…わずかな失望を感じて、
教室へと歩き出した。

 ―――ちなみに、教室に戻ったあたしは早とちりで播磨を殴ったことについて花井に説教をした。花井は申し訳
なさそうにうなだれていたが、最後に心配してくれた事の礼を言うと、信じられないものでも見たように目を丸く
していた。
 そんな花井に笑いかけてから、授業をサボった言い訳を考えながら三人の方へと向き直った―――


42 :Classical名無しさん:04/07/20 08:49 ID:6ztCdbEY
 …………あ、あった……あ〜あ、皺になっちまってる…………
 家に帰ったあたしは、タンスをひっくり返すようにして一枚のハンカチを探し出し、笑みを浮かべた。そして、
それを見ながら、高野の言葉を思い出した―――

 ―――三人に具合が悪くて保健室に言っていったと言い訳し、席に着こうとすると高野が近づいてきた。
「……美琴さん、私にも立場があるからあなた一人に協力するようなまねはできない…。けれど、あなたのこと
応援してる……後悔だけはしないでね」
 そう言って自分の席へと戻っていった―――

 最初は何を言っているのかわからず戸惑ったが、すぐに理解した。今まではお礼のためということで誤魔化し
ていた内に芽生えた想いが何なのかを知ってしまったのだから―――
 ――思えば既に兆候はあったのだ。あの日播磨に抱きしめられたあたしは、腕を緩めてくれと言った、離して
くれとは言わずに。あの腕の中で感じたのは安心感であり、離れた時にわずかに感じたのは喪失感だった。その
事と今日あった事を考えれば、いくら色恋沙汰に鈍いあたしでもわかるというものだ。
 高野の言葉からすると、ライバルが何人かいるのだろう。結局、塚本の妹と何故屋上にいたのかは謎のままだ。
沢近だって実際の所どう思ってるのかはわからない。播磨が押し倒したというのは勘違いだったが、あの保険医
の態度は他の生徒に対する場合以上の親しさを感じさせる――なにより、肝心の播磨が誰を好きなのかわかった
もんじゃない。
 そこまで考えてため息が漏れた。
 ………大変そーだけど仕方ないかな? 好きになっちまったんだし…。…神津先輩ん時みたいに何もしないで
終わらせたら後悔しそうだし…やれるだけやってみるか!
 そう結論付けると勢いをつけて立ち上がった。

   ―――――播磨に返すための新しいハンカチを買いに行くために―――――

                                        ―――了―――


43 :Classical名無しさん:04/07/20 08:50 ID:6ztCdbEY
書き終わっての感想は――女の視点は難しい――です。
播磨視点あっさり終わってしまいそうなんで美琴にしたんですが…失敗でした。こんなに難しいとは…
もっと修行が必要だと実感させられました。今度何かのSSを書くことがあればですが、もっといい作品が
かければと思います。拙作かと思いますが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

補足として――ひとつ目としましてお礼についてはおにぎり物で散々既出のお弁当にしました。
…だって…播磨って天満以外は基本的を重要視してなさそうだから、喜びそうなものって言ったって
他に思いつかないんだもん……
ふたつ目としては、晶の人物像で『友情に厚い』としましたが、ブックレットにあったように播磨の
動物のためにキリンの気ぐるみを着て協力したことや、あるサイトで調べた所誕生日の1月29日の花は
コブシ、花言葉は『友情』とあったので、それを参考にしました。
みっつ目として、気付く人は気付いて、気付かない人は気付かない事ですが、前作の書き間違いを
利用した箇所があります。いやー、偶然って怖いですね? おかげで心情を表現するのに役立ちました。
まあ、自分でそう思ってるだけなんで、自己満足に過ぎませんが…

44 :Classical名無しさん:04/07/20 09:24 ID:H6nAMYN6
朝から乙です。感想が上手く言えませんが楽しめました。

45 :Classical名無しさん:04/07/20 09:36 ID:VfqtWB2I
美琴が播磨に惹かれていく様がよかったです。乙でした

46 :Classical名無しさん:04/07/20 10:09 ID:U4s5vt76
乙です。楽しく読めました。
前回の分も含めてしっかりストーリーになっていました。
元ネタがほとんどないので鉛筆SSは難しいとは思いますが続きを期待します。

47 :Classical名無しさん:04/07/20 10:10 ID:U4s5vt76
あう。ageてしまった。

48 :Classical名無しさん:04/07/20 10:33 ID:A/lRrdwQ
>>43
GJ!
鉛筆SS堪能させて頂きました。
美琴の心理描写の節々に巧いな、と感じさせられる部分がありました。
沢近のことを気にする所とか。
これからも頑張って下さいね。

49 :空振り派:04/07/20 12:09 ID:duQnH7E6
>>1さん、スレ立て乙でした。
投稿者の方も続々増えてますね。
今回は他のスレでもちょくちょく出てた播磨漂流〜沢近家へ現本編からの派生SSです。
コミック派の方には何が何やらでしょうが。
まぁ、これだけ書いても作者は外してくるからある意味安心して書けるというかw
では、いきます。

50 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:09 ID:duQnH7E6
「……時化が来るぜ」
 鬼哭丸の船長が告げると船内は緊張感に包まれた。
一般の船員は船室に閉じこもり、船長の勘と腕を信じて祈るほか無い。
船はまるで天地がひっくり返ったかのように重力を失い、上下左右の区別もおぼつかない。
 播磨は写真を見つめている。
「天満ちゃん、最後にもう一度会いたかった……」
 が、横から大谷が素早く写真を奪い取った。
「たかが時化くらいでビクビクしやがって!」
「こんな写真、海に捨ててきてやるぜ。ヒャッハー!」
 船室から飛び出す大谷、怒りに我を忘れ追う播磨。
前方にはまさに船を飲み込まんかとする巨大な波が押し寄せる。
 そしてバランスを失った船上は勢いよく傾き、大谷は船から投げ出された!
――その時、超人的な力を発揮する播磨。
 傾いた船体をものともせず一直線に大谷目掛けて飛びついた。
空中戦さながらに大谷をつかみ、船上へと投げ戻す。
しかし、写真はすでに大谷の手を離れて海に飲み込まれようとしていた。
 播磨は叫んだ。
「天満ちゃーーん!」
 写真を追って身を投じる播磨は海の藻屑へと消え去った――。
 九死に一生を得た大谷は自分のしたことを後悔した。
「なぜ自分の身を犠牲にしてまで俺のことを……」
 船長がポンと大谷の肩に手を置いた。
「仲間のために自分の身を犠牲にする。アイツこそ真の海の男だ……」
 鬼哭丸は無事に時化を乗り切り、海には何事も無かったかのように平穏が戻った。
仲間の命を救った英雄を惜しみ懸命の捜索がおこなわれたが、ついに播磨の姿が見つかる
ことは無かった――。


51 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:10 ID:duQnH7E6
 一方、とある巨大な貿易船――。
 いかにも上流階級と思わしき英国紳士のもとに一つの知らせが届いた。
「ミスター。輸送中の船で東洋人とおぼしき男を救助しました」
「身元は一切不明なのですが、ただ一枚写真を握り締めていまして……」
「その写真にあなたのご自慢のお嬢様が映っていました」
 ぴくりと眉を動かす英国紳士。
「なんだって!? 娘の知り合いならばほっとくわけにもいかん」
「とりあえず本宅へ運んでくれ」
 そして、その男はある広大な邸へと運びこまれた。
「う……。ここはどこだ?」
 巨大なベッド。高い天井。見慣れない風景に意識は混乱する。
「気がついたようね」
 ベッドの横に座っていた女性が落ち着いた声で話しかけてきた。
「あんたは?」
 その女性は黒い髪が美しく、とても若いようにも見える。
「私はこの邸の主の妻です」
「一つお伺いしてもよろしいかしら。貴方は愛理とどういうご関係?」
 愛理……。必死に思い出そうとするが頭痛が強まるだけだった。
「そういえば俺は確か海に投げ出されて……。ここは日本か?」
「ここはイギリスです」
「イギリス? っていうと確か日本の裏側の? ……なんてこった!」
 とりあえず自分がどういう状況にあるかは飲み込めたらしい。
「助けてくれてありがとよ。礼を言うぜ」
「俺の名前は……。だ、誰だっけ?」
「どうやら記憶喪失みたいね」
 傍らの女性は残念そうな顔をしていた――。


52 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:11 ID:duQnH7E6
「今度、一緒に食事にでも行かないか? 個人的に君に興味があってね」
 この家の主人は英国人らしい。奥さんが日本人のために話しが通じて助かった。
別段断る理由もないので、この夫婦とともに食事へ行くこととなったのだが……。
 道すがら東洋人が珍しいのか、しきりに女性が播磨に声をかけてきた。
もちろん言葉が通じないため、何を言っているのかさっぱりわからない。
「君は随分とモテるようだな」
 と主人が嬉しそうに話しかけてくるが、全く興味が持てなかった。
「俺には心に決めた人がいる。それ以外の女は眼中にねぇ」
 それが誰かは未だ思い出せないのだが……。
「ほぅ。意外と一途なのだな。男はそのほうが良い」
 着いたのはいかにも高級といった感じのレストラン。出される食事はどれも見たこと
の無いものばかりだった。貸してもらったタキシードもひどく自分に不釣合いな気がして
落ち着かない。
 夫婦はしきりに娘の話しをしていた。それが本当に自分の知っている人間かどうかは
まだ思い出せなかったが、話しを聞く限りではそんなに悪い娘ではないようだ。
(俺が心に決めていたのはこの夫婦の娘さんなんだろうか?)
 記憶が戻らないもどかしさにだんだん苛立ちを覚える。
 そんなとき、いかにもチンピラ風といった男が――。


53 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:13 ID:duQnH7E6
 何を言っているのかはさっぱり解らないが友好的でないことは明らかだった。
後ろを振り向くといつの間にか周りにはナイフを持った連中が取り囲んでいて、奥さん
はその一人に捕らえられている。
 傍から見ると極めて絶望的な状況だが何故か恐怖よりも先に怒りが湧き上がってきた。
次の瞬間――。
「ハリケーンキック!」
 まずは奥さんを捕らえていた男の顔面に一蹴。男は成す術もなく崩れ落ちた。
一味は圧倒的優位な位置に立っていると思っていたため、何が起こったかわからず
動きを止めている。
「ハリケーンドラゴン!!」
 間髪入れずに残りの者を一発ずつ倒していく。一瞬にして悪党どもは蹴散らされた。
 夫婦は感嘆の声を上げた――。
「何て勇敢な青年なんだ! 君にならわが娘を任せられる」
「さあ、娘も待ってるわ。一緒に日本へ帰りましょう」
 どうやら興奮しているらしい。かなり重大なことを言っている気がするのだが。
 そして日本へ――。


54 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:13 ID:duQnH7E6
「ただいま、エリ。お前に相応しい男を連れて帰ったぞ」
 久しぶりに会った父はとても嬉しそうな顔をしている。
「お父様が気に入るなんて、珍しいわね」
「でもいろいろあって、今はそんな気分じゃないの」
 愛理は暗い顔をしていた。いろいろあった……らしい。
それでも父の連れて来た男をちらりと覗き見る。
「あら、なかなかイイ男じゃない。……でもどっかで見たような気がするのよね」
 しげしげと男を眺める愛理。
 がっしりとした体格、髪はぴんと伸びていて意志の強さをあらわしており、
目は凛々として純粋な瞳をしていた。確かにかなりの男前だ。
「海で遭難していたところを救助したのだが、どうやら記憶喪失らしくてね」
「へー。大変ね。うちのクラスにも失踪した男が一人いるけど……」
「それと彼は悪党から私たちの身を守ってくれたんだ」
 父は嬉々として、そのときの様子を語り出した。
「ハリケーンなんとかって叫んで まるで忍者みたいだったよ」
 技の名前を叫んでから技を出すバカがどこに――。と思ったがふとある考えが頭を
よぎった。――ハリケン? ハッと気付き中村に命令する。
「中村、サングラス。すぐに持ってきて」
「かしこまりました」
 中村から手渡されたサングラスを少し背伸びをして、その男にかける。
「お、おぃ。何すんだよ」
 男は突然のこの行動に思わず身構えた。
「やっぱり……。ハ、播磨君――」


55 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:14 ID:duQnH7E6
「ほう。やはり知り合いだったのか」
 父はニヤリとしている。
「救助したときにたった一つだけ身に付けていた写真にお前が映っていたらしい」
「え!? 私の写真を?」
 愛理は急に恥ずかしくなって顔を真っ赤に染めた。
「それに向こうの女性の誘いを全て断って、好きな人が居ると言っていたので、
 もしや……と思ったのだが」
「そっ、そんなんじゃないわ。ただのクラスメイトよ」
 父の追及を遮るためにあわてて否定する。
「ともかく記憶が戻るまでは預かってくれ」
 返事も聞かずに父はまたすぐに出かけて行った。
 再度、播磨を見つめる愛理。
「確かに播磨君のようだけど、いまいち迫力にかけるわね」
 といってもいつも突っかかっていくのは愛理の方からだったのだが……。
「実は記憶を無くしてるフリをしてるんじゃないでしょうね?」
「そんな器用なことができるかってんだ」
 播磨の口調だけは昔と変わっていない。
「わかったわ。でも絶対、私の部屋には入らないこと。いい?」
「おぅ」
 記憶喪失のためか妙に素直なので拍子抜けしてしまう愛理だった。
(いつもならここで「頼まれたって誰が覗くか!」とか言うはずなのに……)
 その夜、愛理は播磨の部屋を訪れた――。


56 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:14 ID:duQnH7E6
「播磨君。本当に私のこと覚えてないの?」
「あぁ。だがさっき自分の名前を知ってから、少しずつ記憶が戻ってきたみてぇだ」
 よみがえった記憶をたどりながら、ことの経緯を説明する播磨。
「俺には好きな女がいて、ふられたと思ったショックで日本を去った」
「それから時化にあって海に放り出され、奇跡的にご主人さんの船に救助されたんだ」
「だが自分の名前はおろか、好きな女のことも覚えてねぇ……」
「今さら、俺にどうやって生きてけってんだ?」
 記憶を失ったショックは思った以上に重いらしい。
「落ち込まないで……。私がいるから……」
 播磨の調子がいつもと違うためか、愛理も初めて素直に口に出すことができた。
「……元気付けてくれてありがとな」
 だが、だんだんと播磨の脳裏にある衝撃的な映像が浮かび上がってきた――。
「そういえば確か以前に告白をした記憶が……」
「うっ……。頭が割れるようだ。その後が何故か思い出せねぇ」
「む、無理して思い出すことは無いのよ」
 愛理はあわてて播磨の頭を抱きかかえた。
(この記憶とこの流れ、間違いない俺の好きな女は目の前にいる……)
 播磨は愛理の手をつかんだ。
「聞いてくれ。俺は今度こそ逃げずに言う。これは本気だ!」
「全て思い出したんだ」
「俺の最愛の女――。そう、君の名は……」
 いつに無い真剣な表情で真っ直ぐに見つめる播磨。
 薄暗い寝室に視線の絡み合う二人。
 播磨の告白――。期待に愛理の胸の鼓動は高鳴る。


57 :THE MAJESTIC:04/07/20 12:15 ID:duQnH7E6
 一瞬が永遠にも思えた……。
緊張と清寂が部屋を包み、とうとう放たれたその言葉は……。
「塚本……」
 その瞬間、愛理渾身のブーメランフック炸裂――。
 播磨の脳を激しく揺さぶった!
「いっ――てぇな。何すんだよ。お嬢!」
「あれ? 俺、なんでこんなところにいるんだ?」
「ふんっ。記憶が戻って良かったわね」
 そこにはいつもの不満そうな愛理の顔があった……。

58 :空振り派:04/07/20 12:15 ID:duQnH7E6
完了です。
やっぱりやってしまった……。オチが付かないと気がすまないので。
さすがに愛理を目前にして塚本は無いだろうと言う方がいると思うので一応
補足説明しておくと播磨は苗字の部分を塚本天満と混乱して塚本愛理と言おう
としたわけで。記憶喪失の設定なのであまり深くは気にしないでください。


59 :Classical名無しさん:04/07/20 14:09 ID:qojWfj5U
なんかちょっと展開が早すぎる気がしますが乙カレー。
どんなに予想してもどうせ外れるんだよな。
いままでまともに読めたのってジャージくらいだし、それも半信半疑だったもんな〜。

60 :Classical名無しさん:04/07/20 14:12 ID:F2FwXm5Q
「」切り過ぎじゃ無いですか?話は面白いです。
漫画に出来そう。

61 :Classical名無しさん:04/07/20 16:25 ID:1RtSXaXk
>>58
話の展開にアクセントが無くて淡々としている気がします。
あと描写が足りない&展開早すぎ。
つーか、最初読んだとき「嘘バレキター??」なんて思ってしまった。

絵に起こしたら面白くなるかもね。

62 :Classical名無しさん:04/07/20 17:40 ID:Dx3aBgqg
>>43
GJ!
特に美琴の両親の反応が秀逸。こういう反応するんだろうなと想像できる。

>>58
旗はやはりいいッス。
ただ沢近の両親は、もう少し落ち着いた感じじゃないかと……
少なくとも腕っ節で娘婿に見初めるような考え方はしないのでは……
戯言です。すみません。

63 :Classical名無しさん:04/07/20 18:27 ID:ThGz/uOQ
初投稿させていただきます
文章力はないので一つのネタとして楽しんでいただけると幸いです

64 :Classical名無しさん:04/07/20 18:28 ID:ThGz/uOQ
家の主は静かにグラスを傾ける。
――いつもと変わらない。私はいつも通り。
誰に言うでも無く呟く。ただ一人の部屋で。
明かりを点けない部屋でテレビの光が瞬き雑音が通り過ぎる。
彼女は空になったグラスに機械的にビールを注ぐ。
ふと窓に目を向けるといやに月の光が眩しい。
――この部屋はこんなに静かだっただろうか……
彼女の同居人が消えてから3日後の夜、また刑部絃子はグラスを呷った。

65 :Classical名無しさん:04/07/20 18:30 ID:ThGz/uOQ
「……ところで拳児君。塚本君とはどこまで進んだのだね?」
「ぐほっ!? ゴホゴホ……てめぇ! 人が飯喰ってる時にいきなり何言いやがる!」
「いやね、2年生になってめでたく君のだーい好きな塚本君と同じクラスになって
すぐにでもアタックかけると思っていたら何の進展もなく2学期が終わろうとしている
君の行動力の無さが心配でな」
「ぐっ……こ、こうゆうのはタイミングが大事なんだよ! ほっとけ!」
 いつもの会話。いつも通り絃子が拳児をからかう。そんな他愛の無い会話……のはずだった。
「まったく、君がそんな調子じゃ私も男を連れて来る事もできやしないな」
「!!……」
「私は結構もてるのだぞ。言い寄る男は沢山いるが、君のような不良が一緒に住んでると
バレたら何を言われるかわかったもんじゃない。私が売れ残る前に付合うなりフラレるなり
事を進めて欲しいものだ」
「……そうかよ……」
この後も散々絃子はからかったがその後の拳児はただ俯き、あぁそうな。と返事をするだけで
からかい甲斐がなくなりその日の会話は終了した。
 次の日、拳児は学校をサボった。たいして気にすることも無く絃子が学校から帰ると
テーブルの上にメモと封筒が置かれていた。
――今まで世話になった。荷物はもうしばらく置かせてもらうが何なら捨てて貰ってもかまわねぇ。
迷惑掛けたな――
メモには簡素にそれだけ書かれ、封筒には今月の家賃より少し多めの金が入れられていた。
 あわてて廊下に戻り拳児の部屋の梱包された荷物を見た時、絃子は何かが割れる音が聞こえた気がした。


66 :Classical名無しさん:04/07/20 18:31 ID:ThGz/uOQ
――大丈夫だ。彼は今まで何度か失踪したが必ず最後には私の下に帰ってきた。
今度もすぐに帰ってくる……
 初めはそう思った。思おうとした。
今までの失踪は突然消えて突然戻ってきた。しかし今回の消え方はもう戻ってこない意思がある。
……書置きまで残しいつもは催促しなければ払おうとしない家賃まで残して。
――私の言ったことにウソはない。彼が来てからはうるさいし外に出るのも気を遣った。
部屋は狭くなるし、客を呼ぶこともできない。そう、彼が来てからのメリットと言えば
家賃もろもろの折半で多少経済的ゆとりができたことと……
少し、ほんの少しだけ今より……たのしかったことだけ……
 5日目、月を見ながら飲む。今日も彼、播磨拳児は帰ってこなかった。

 会えない訳ではではない。彼はちゃんと学校に来ていた。
しかし授業で会う時、彼女と彼との距離は手を伸ばせば届くとこに居ながら
深い谷が2人の間にある気がした。
声を掛けることも目を合わすことも無く、淡々と日々は過ぎた。

67 :Classical名無しさん:04/07/20 18:32 ID:ThGz/uOQ
「刑部先生。刑部先生ってば」
 職員室で声を掛けてきたのは彼女の同僚であり親友でもある笹倉葉子。
「刑部先生、どうしたんですか?なんか最近顔色悪いですよ」
「なんでもないよ。ただ最近晩酌が長くてね。二日酔い気味なだけだ」
 葉子と絃子の関係は短いものではない。絃子が自分と同じくらい酒に強いことは知っている。
そして彼女がいつもと違うと言う事も。
「……悩み事ならいつでも聴きますよ」
「本当になんでもない。ほっておいてくれ。そのうち治る」
 それは自分に言い聞かせてるようでもあった。
「……そうですか……でもそんな顔してたんじゃ生徒にまで心配掛けますよ。
そうだ。姉ヶ崎先生に何か薬でも貰って来たらどうです?」
「そんなに酷い顔してるかい?」
 そりゃもう、とコクコク頷きこんな感じと絵にまで描いてくれた。
その絵の顔は確かに酷かった。とても人間には見えないくらい……って人間じゃない。
「……こりゃ相当酷いな。言われた通り薬でも貰って今日はゆっくり寝るよ」
「そうしてください。私だってこんな刑部先生描きたくないんですから」
「……すまないな。そうとう心配掛けたみたいだね」
絃子は席を立ちながらドアの方に向かいながら……ありがとう。葉子。と呟く。
絃子の後ろ姿を見ながら葉子はニッコリ微笑んで見送った。

68 :Classical名無しさん:04/07/20 18:32 ID:ThGz/uOQ
保健室で姉ヶ崎に二日酔いの薬を貰い早々に出て行こうとした絃子だったが
「少しお話しませんか?」と呼び止められた。
 絃子としてはあまり保健室に長居したくなかった。彼が来る心配があったのだ。
それに絃子は彼女をどうも好きになれなかった。
「なんですか?あまり気分が良くないので仕事をサッサと終わらせて帰りたいのですが」
 少々棘のある言い方だったが姉ヶ崎は意に介した様子も無く
「あら、それならベッドで寝ていって貰って構いませんよ。もう放課後ですから生徒も来ませんし」
 ニッコリと返された。なかば強引にベッドに寝かされ絃子の顔をニコニコ見ている。
「刑部先生ってやっぱりキレイですね。あ、キレイと言うかカッコイイって感じかも」
「……それは褒められてると取っていいのかな?」
「もちろん!」
「……貴女もキレイだよ。男が皆振り向く位ね」
「あら、冗談でも嬉しいです」
あははと笑った後、少しして
「でも私って好きになった男には振り向いて貰えないんですよね……」
「…………」
 少しの沈黙。部屋の空気が重くなった。
「私って彼の事をほんの少し解かっただけで、彼の事全部理解した気になってたんでしょうね……
でも気付いた時にはもう遅くて、彼はもう私の事見向きもしなくなってた」
――私も……あいつの事を解かっていたつもりだったのかな……
「……それで私彼にフラレた後ヤケになって見ず知らずの男の子を部屋に呼んだんです。
その子もフラレたらしくてなんか慰め合うには……傷を舐め合うにはピッタリだと思ったんですよね。
だけど彼全くそうゆうことしなかった。彼とは何もなかったけど彼がただ居てくれたお陰で
立ち直るのが随分早くなったと思います。自分より年下でしたけど彼は私の恩人ですね」
――恩人か……私の彼もただ居てくれるだけで安らぐことができた気がする……

69 :Classical名無しさん:04/07/20 18:33 ID:ThGz/uOQ
「その後彼とは?」
「……好きな子を諦めきれなくて出てっちゃいました。だけど彼この間戻ってきてくれて……」
 彼女はとても嬉しそうに言った。
「羨ましいな。私の彼も戻ってきてくれるといいんだけどな……」
「……大丈夫ですよ。きっと戻ってきてくれます」
――ただ薬貰うだけだったはずなのに……なんかこの人葉子に似てるな。
 ふとそんなことを思った。胸に溜まっていた靄が晴れたような気がした。
「少し寝かせて貰うよ。思っていた以上に疲れが溜まっていたらしい」
「はい。お休みなさい」
「……ありがとう」
「いえいえ」
 姉ヶ崎は微笑みながらカーテンを閉めた。

70 :Classical名無しさん:04/07/20 18:34 ID:ThGz/uOQ
 夢を見た。それは少し前のできごと。
 初恋の人が死んだ時の夢。彼は憧れでありヒーロー。彼のあとにどこでも付いて行った。
彼のやることなら何でもマネをした。彼には息子が2人居た。
息子達にとっても彼はヒーローだった。彼は奥さんを亡くしていた。
でも私が時機に母になる。息子達も私の家族になる。彼らと私はとても仲がよかった。
 しかし彼は唐突に死んだ。泣いた。泣きじゃくった。息子達も泣いていた。
いや、一人だけ泣いていなかった。その子はもう両親と呼べる者が居なくなったのに泣かなかった。
その子は歯を食い縛り拳を握り締め涙を堪えていた。彼は父親の教えを守っていた。
――俺が死んだらお前が大黒柱だ。涙なんか見せずしっかり家を守れ――
 息子達は私のとこに来ることになった。しかし彼だけは家を離れなかった。
俺が家を守るんだと言ってきかなかった。やがて彼はやって来る敵を倒すことになった。
そうしなければ守れなかった。親戚からの援助も断り続けただひたすらに来る者を拒んだ。
その内彼は親戚からも疎まれるようになった。父の教えを愚直に守りすぎたのだ。
 私はその後教師の道を選んだ。もしかしたら、いや確実に彼の影響だろう。
彼のような者に手を差し伸べたかった。
 引越しの準備をしている時突然彼はやってきた。
『絃子、おめぇ高校の教師になるんだろ? 一緒に住ませてくれねぇか?』
口の利き方も知らないバカガキがそこに居た。父親の面影を携えて――

71 :Classical名無しさん:04/07/20 18:36 ID:ThGz/uOQ
「……からもう少し厄介になるわ。すまねぇお姉さん」
「いいのよ、むしろ嬉しいくらい。ハリオがよければいつまでもいてくれていいんだからね」
――姉ヶ崎先生が誰かと話ししているらしいな。ちょっと眠りすぎたか。しかしこの声……
「ところでハリオ。今晩のオカズ何がいい? 久しぶりに肉ジャガなんてどう?」
「うーん、お姉さんの料理は何でも上手いからなぁ。作りたいものでいいっすよ」
「あら嬉しい」
「しかし迷惑ばっか掛けてすんません。この前もお世話になったのに。
従姉妹の奴が急に色気付いちまったもんで泊まるとこなくなっちまって突然またお邪魔しちまって」
…………
「もう、気にしないで良いのに。その従姉妹さんの為なんだし
それにハリオの漫画も楽しみだから私は全然OKよ」
 えへへと笑い合う2人の声をカーテンを開ける音が掻き消した。
途中バギンと音がしたのは気のせいだろう。
……もちろんカーテンレールが取れかかっているのも気のせいだ。

72 :Classical名無しさん:04/07/20 18:39 ID:ThGz/uOQ
「あら、刑部先生顔色がスッカリ良くなりましたね」
「おかげさまで……」
 絃子は姉ヶ崎に軽く会釈すると、ユックリと笑顔で播磨の方を向いた。
とたんに播磨の顔が引きつる。
「拳児君。君は私に迷惑を掛けない代わりに他人に迷惑を掛けることを承知で出て行ったのかね?」
「ば、な、なにを!?」
「えっと、出て行った?」
「えぇ。彼は私の従兄弟でね。保護者代わりに面倒みているのですよ。
あ、これは他言無用でお願いします。何かと問題ありますので」
「おめぇ、なにすんなりバラしてんだですか……」
 播磨の言葉も絃子の眼光が向けられたとたん消え失せた。
「そういえばさっき面白い事を言っていたね。誰かが色気付いたとかなんとか……」
「は?だってそう言ったじゃねえか。付き合ってる奴がいるとかなんと……イテッ! イテテテッ!!
耳を引っ張んな!」
「そんなことは一言も言ってない! そんな勘違いで他人に迷惑を掛けるな! 今すぐ帰るぞ。
君は私が保護者として君の恋が成立するまでずっと面倒を見てやる」
 播磨の耳を引っ張りながらキョトンとしている姉ヶ崎向かって
「本当にこのバカがご迷惑をお掛けしました。今後このようなことが無いようにしっかり監視しますので」
「……え、ええ。でも私は別に……」
「いえ。もう2度と姉ヶ崎先生にはご迷惑をお掛けしません。家族で解決しますので」
 それだけ言うと播磨を引きずりつつ保健室を出て行った。

73 :Classical名無しさん:04/07/20 18:40 ID:ThGz/uOQ
「恋が成立するまで……家族で解決……か。ハリオって母性本能擽るタイプなのかしら。
手ごわいライバルがいっぱい居るわねぇ」
 2人の出て行ったドアを見つめながら姉ヶ崎はクスクスと笑った。

「くそー、絃子の奴結局家まで耳引っ張ってきやがった。誰かに見られたらどうすんだよ……
んで私は疲れたから寝る。部屋の片付けしとくようにだと!
寝てたじゃねぇかよ……しかも……これを俺だけで片付けろってのか……」
 播磨拳児が出て行って10日目の夜。久々に帰宅した彼を出迎えたのは酒瓶の海だった。

後日、笹倉葉子の個展が開かれた。その中の1枚
笑顔の刑部絃子がサングラスを掛けた男の耳を引っ張る絵が
学校で話題となるのはまた別の話

おしまい

74 :Classical名無しさん:04/07/20 18:58 ID:2xarE89Q
>>63-73
GJ!
こういうのを待ってました。十分文章力あるじゃないですか!
不安がる絃子さんが実に可愛いくて゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!!
ちゃっかり姉ヶ崎先生のところに転がり込んでるとは流石播磨ですね。
しかし笹倉先生の絵をみたら学校は騒然となるんじゃ…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
とにかくGJでした。

75 :Classical名無しさん:04/07/20 19:02 ID:NfNBIbiQ
絃子可愛いよ!絃子!

76 :Classical名無しさん:04/07/20 19:28 ID:JZmhiykM
こうしてスクランSSスレ初めての夏は超姉派の先制攻撃を以って始動したの
だった。

77 :Classical名無しさん:04/07/20 19:39 ID:44iwDcsc
>>73
いや素晴らしい。
絃子さんだけに目がいきがちだが、葉子さんもお姉さんも凄く良い味だしてます。
三人ともの魅力を引き出すとは、やられました。
しかしやはり絃子さんは萌えるね、特にこの絃子さんは。
次の投稿を心待ちにしています。

78 :Classical名無しさん:04/07/20 23:01 ID:no2aObq.
超弦理論・・・
あ、いや何でもないです。
ともあれGJ!

79 :Classical名無しさん:04/07/20 23:02 ID:no2aObq.
書くなら『超絃理論』だったよ・・・orz
すまない、皆の衆すまない・・・

80 :上の書き逃げた者:04/07/21 00:11 ID:Y5t8EOSE
初めてSSとやらを書いたのでドキドキでしたが
思ったより好評でホッとしました
また何かネタ思いついたら書きたいと思います
ありがとうございました

81 :Classical名無しさん:04/07/21 01:02 ID:ynzVWu4A
鉛筆(?)SS投下します。
現実では美琴の誕生日、作品中では播磨の誕生日が間近ということで鉛筆フェアですね。

スクラン史上に残る名場面、愛理vs美琴 花井vs播磨の#54がベースです。

82 :Classical名無しさん:04/07/21 01:06 ID:m.jpTm1Q
支援

83 :Majic Night:04/07/21 01:07 ID:ynzVWu4A

  ある夏の夜のことだった――――――
 
 矢神神社の裏には小さな山があって、鬱蒼とした林に覆われている。未だ自然の面影を残すこの山は朝夕は散歩コースとして人気は多いものの、夜になるとめったに人が訪れることはなく、おどろおどろしい雰囲気さえ漂わせている。
今宵も例に漏れず人気のないこの山を播磨はさまよい歩いていた。
「ちくしょう、どこなんだここは。てか、どーやってきたんだ??」
 暗闇の中手探りで藪を掻き分けながら播磨は今に至るまでの経緯を思い出していた。

――――――そう、俺はあのメガネと最初は公園で闘ってたんだよな。闘ってた理由は・・・・忘れた。確かどーでもいい理由だったはずだ。
 だが、闘いの最中にアイツは蹴りを止めやがった。それにムカついて・・・・マジになって・・・・疲れて・・・・仮眠とって・・・・
 闘って・・・・腹減ったから善牛行って・・・・俺は銀シャリ、アイツは牛丼大盛りだったな・・・・で、また闘って・・・・
 で、気付いたらこんな訳のわかんないところにいて・・・・いい加減疲れたから闘うのやめて・・・・メガネと別れて家に帰ろうとしたらこの有様だ。
 てか、何時間戦ってたんだ俺ら?休戦を挟んだとはいえかれこれ16時間は闘ってたんじゃねえか?ホント何やってんだ俺は・・・・

 そんなことを考えながら岩をよじ登り、さらに歩くとようやく視界が開けた。
「ここは・・・・へえ、こんな場所があったとはな」
 そこはちょうど播磨と花井が先ほどまで闘ってた地点からほぼ真上に上がったところであった。地肌のはげあがった小高い丘のようになっており、矢神市内の夜景が一望できた。

――――――ま、たまにはこういうのも悪くないよな。

 播磨は夜景に引きつけられるように、丘のへさきの方へと歩いていった。前に進むに連れ見える夜景の範囲が広がっていく。普段自分の暮らしている街が眼下に、手に取るように広がっている。
 漆黒の闇、その向こうには海も見える。満月と適度な街の明かりが浮かび上がるようであった。
 その時、播磨は自分の斜め前で体育座りをしている人影を発見した。その人影は月明りに逆光となっていたが、セミロングの黒髪と服装からどうやら自分と同じ年代の女である事がわかった。
 それによく見ると夜景を見ているのではなく自分の膝と膝の間に顔を埋めているようだった。



84 :Majic Night:04/07/21 01:11 ID:ynzVWu4A

――――――なんでこんなところに女が一人で?

 播磨がちょうどそう思ったとき女のほうも播磨の足音が聞こえたのか、ゆっくりと播磨のほうを振り向いた。
「・・・・播磨・・・・」
 播磨のほうからははっきりと顔は見えない。だが、その声にはしっかりと聞き覚えがあった。何故なら、つい昨日何故かこの女と一緒に喫茶店にはいる羽目になったからである。
「周防・・・・か?何でこんなって、あー!?」

――――――ケンカの原因思い出したー!!

 播磨は突然大声を上げた。だが、美琴はまるで動じることもなく不思議そうに播磨を見るだけであった。
「なあ周防、俺ってオマエになんか嫌がらせでもしたっけ?」
「・・・・」
 美琴は少しうつむくと小さく首を横に振った。
「だよなぁ。ちくしょう、メガネの野郎何を勘違いしてケンカ吹っかけてきやがったんだったく。」
 播磨がぶつくさと呟くと美琴が弱弱しく播磨に尋ねた。
「ケンカ?・・・・花井と?」
「ああ。ついさっき終わったけどな。」
「そうか・・・・」
 美琴はボソリとうわ言のように呟くだけであったし、今にもふとしたきっかけで溢れ出しそうな悲しい感情を抑えるためにそれが精一杯であった。

――――――なんか今日の周防・・・・いつもと違う・・・・よな。よくわかんねーけど。なんか、辛い事でもあったのかもしれねーな。
だけど、普段の周防との付き合いからすると、はっきり言って俺が周防を慰める筋合いじゃねーだろうし、詳しい事情もわからないのに気休めで言葉をかけるのはかえって周防に失礼だよな。
てか、わざわざこんなところに来るって事は一人になりたいのかもしれないな。俺もそーいうときあるしな。なんか、周防の邪魔しちまってみてーだな・・・・行くか・・・・夜景は名残惜しいけどな。


85 :Majic Night:04/07/21 01:13 ID:ynzVWu4A

「じゃあ・・・・な」
 播磨は一応の挨拶だけをして、そこから立ち去ろうとした。が、
「あのね・・・・」
「ん?」
 突然美琴が口を開いたため播磨はその場で動きを止めた。
「・・・・・・いや・・・・・・」
 美琴はそれだけ言ってまた口をつぐんでしまった。播磨はしばしの間じっとうなだれたままの美琴を見ていたが、美琴がそれ以上何も言わないようなので再び歩みをはじめようとした。
 その時・・・・・・

 ド オ ン

「「あ・・・・」」

 漆黒のキャンバスに一際大きな花火が打ち上げられた。
 周りに他の人がいない丘の上、いつもよりもより水平方向に見える花火はまるで播磨と美琴に何かを語りかけるようであった。

ドオン ドオン パラパラパラパラ・・・・

「スゲエな・・・・」
「・・・・・・・・うん」
 鳴り響く爆発音と、眩い光に目覚めたかのように美琴はゆっくりと顔を上げ、
「私さ・・・・」
 そして播磨のほうを振り返って笑って言った。
「フラれちゃった!」
「・・・・・・・・・・」
 
――――――無理しやがって・・・・

 美琴の精一杯の笑み・・・・だが、播磨にもその笑みが哀しみの裏返しであることは容易に理解できた。

86 :Majic Night:04/07/21 01:15 ID:ynzVWu4A
 「そうか。」
 播磨はそれだけ答えた。そして、さらにしばしの沈黙の後、
「本気で・・・・好きだったんだな・・・・」
 美琴は花火を見つめたまましばらく黙っていたが、それまでよりもハッキリとした口調で答えた。
「まあね。中学の頃からずっと・・・・好きだった・・・・ま、片思いだったんだけどねー」
「え?」

――――――それって俺も同じ・・・・ずっと好きだった・・・・その想いは今でもかわらねえ・・・・
なのに・・・・なのに・・・・『サイテーだよ播磨君』って・・・・ちくしょう・・・・

「・・・・ぐっ・・・・・・ずずっ・・・・すん・・・・・・・・」

――――――えっ?

 美琴はその音に驚いて播磨のほうを振り向いた。そこには花火と月明りに照らされた、すすり泣く男の姿があった。

――――――播磨が泣いてる!?なんで?なんで?え、私の話で?もしかして、塚本が言ったとおり私を好・・・・いや、でもそうなら普通、私がフラれりゃ喜ぶはずだろ・・・・
それとも、アイツは心から私のことを・・・・・・・・
私のために・・・・・・・・

 美琴の心にできた小さなスキマ。そこに堪えきったはずだった悲しい感情と、新たに生まれた暖かい感情が流れ込んできて、美琴は再び両膝の間に顔を埋めた。そして、肩を振るわせた。
 一度堰を切った感情はなかなか留まることを知らず、ようやく美琴が落ち着きを取り戻したのは花火が終わる頃であった。

「終わったな」
「ああ」
「播磨」
「ん?」
「ありがとな」
「何が?」
「ふふっ、そうやってオマエはいつも・・・・」

――――――下心なく優しくしてくれるんだよな。シャーペンの時だってさ・・・・

87 :Majic Night:04/07/21 01:16 ID:ynzVWu4A
「俺がいつも、何だって?」
「なんでもねーよ。さ、帰ろうぜ」
「そうだな。ああ、ワリイけど途中まで一緒に帰ってくんねーか?帰り道がわからん」
「ああ、いいよ」
 二人は花火の感想を語ることもなく黙々と歩いた。あっという間に、矢神神社の入り口にたどり着いた。
「助かったぜ。こっからは道わかるから大丈夫だ。それじゃあな」
「ああ。あ、そうだ、花井にはキッチリ説教しとくから」
「ああ。頼むわ」
 その播磨の言葉を皮切りに二人はそれぞれの方向へと歩き始めた、が、
「播磨」
 美琴がもう一度呼びかけると播磨はピタリと足を止め美琴の方を見た。
「ありがとな!」
「ああ」
 月明りに照らされるいつも通りの美琴の笑顔、播磨もつられて軽く微笑んで、
 そして再び二人は背を向け合い歩き始めた。

――――――んで、何が「ありがとう」だったんだろ?なんもしてねーと思うんだが。話を聞いてやったからか?うーん、よくわからんが、ま、いっか。
 
播磨は家につくまでの間そんなことを考えたりしていた。


88 :Majic Night:04/07/21 01:20 ID:ynzVWu4A
 美琴は家につくとすぐ風呂に入り、あがってベットの上に寝転がると目を閉じた。

――――――疲れた・・・・本当に今日は色々なことがあり過ぎだよ。でも、あんな嫌な事があったのに、辛くないこたないけど、そんなに辛くない
・・・・・・・・神津先輩・・・・・・・・・・・・播磨・・・・・・・・・・って浸ってる場合じゃねえな。それよりも明日ちゃんと沢近と話しして仲直りしないとな。
うん、大丈夫、きっと上手くいくよな。とりあえず、今日は寝るか・・・・・・・・ん、ちょ、ちょっと待て、
そういや沢近と播磨が仲良く手つないで見つめ合ってたのは何だったんだ?見間違い?
んなわけないし、でもアイツは私のために泣いてくれたし、てか何がどうなってんだ?わけわかんねー!!

 結論の出ない思考の渦に巻き込まれ、結局美琴が眠りについたのは空が白んでくるころであった。

89 :Majic Night:04/07/21 01:24 ID:ynzVWu4A
そして翌日

 トゥルルルルル ピッ
『もしもし』
「あ、沢近?あのさ、ちょっといいか」
『何の用?私をからかうネタでも見つかった?昨日のオノロケ話でも聞かせてくれるのかしら?』
「な、何言って、そんなわけないだろ」
『どーかしら。私昨日見たわよ。アナタと播磨君が仲良く花火見てるの。好きな人との用事ってあれだったんだーへぇー』
「なっ、オマエッ見てたのか?いや、あれは違」
『アイツが私に告白してきたのだって、大方アナタ達二人で私をからかっただけなんでしょ?』
「いや、だから聞けって」
『ふん、今さらアナタの話なんて聞きたくないわ。じゃあねっ!』

ぷち つーつー

「・・・・あ、あのヤロウ・・・・取り付く島がねえ・・・・どうしよう・・・・」

 その後どうなったかというと、茶道部合宿は足並みが揃わずお流れとなり、美琴は沢近と仲直りできないまま、播磨は『サイテー』発言を解決できないまま、いや、もう何もかもがグダグダになって新学期を迎えたのであった。
            合掌・・・・じゃなかった終


90 :Majic Night 書いた人:04/07/21 01:28 ID:ynzVWu4A
投稿してからなんですが,#54はせっかくの名場面だったのに自分は活かしきれませんでしたね。
改行も怪しいし。推敲が甘かった。

タイトルは、投稿間際に決めました。「Majic」に意味はありません。
ただ、マジックナイトという強い競走馬がいたのでそこから取りました。

91 :Classical名無しさん:04/07/21 01:29 ID:tlOoFXbM
>89
落ちのしょうもなさ加減もアレなんだけど、一つだけツッコむ。


Magic nightじゃないのか?

92 :Classical名無しさん:04/07/21 01:30 ID:r45FT5cE
なんか、最近の作品は情景描写が少ない上に、三点リーダが多すぎる気がする。

93 :43:04/07/21 02:17 ID:ELFb7WPA
遅くなりましたが、『My Gift to You』感想くださった方々ありがとうございました。
概ね好評のようで何よりです。

>>45>>48
そういってくれると助かります。一人称だからその点を気にして書いてるんで

>>62
そ、そうですか?あまり深く考えていなかったんですが…そういえば、三巻の
通知表で、担任が美琴の父親を怖がってるけど、実際どんな父親なんでしょう?

>>46
続き期待して下さってありがとうございます。しかし、はっきり言って今のところ
無理っぽいです。ほとんどここまで勢いで書いてきたようなものですし。小ネタは
有ってもSSにするには足りなく、ストーリーになりません。気長に、期待せず
お待ちください。書けなくても怒らないで…

>>92
読み直した所、三点リーダ確かに自分のは多いですね。言葉を発したり、
思い浮かぶまでの間や、言ったり思った後の余韻を表現しようとしたんですが
確かにしつこかったかも。
情景描写の点で自分の作品についてはちょっと言い訳させてください。
自覚はしていますが、一人称SSのため、詳しすぎるとおかしくなりそうなんです。
たとえば何かを考えている時に周りの様子を気にしてみているでしょうか?
時折三人称を使い分ければ良いかもしれませんが、自分の力量では無理です。

長くなってすみませんでした。それでは


94 :Classical名無しさん:04/07/21 08:28 ID:TFGFBHkM
>>90
鉛筆GJ

95 :Classical名無しさん:04/07/21 10:09 ID:MxtqCIAs
こうやって連続で見ると鉛筆もなかなか…
なんて流されやすい俺。

96 :Classical名無しさん:04/07/21 10:11 ID:0UOZBzbU
>>90
あの場面を沢近でなく播磨でやってみたわけですな
じゃ花井でやってみたら…なんか流れ的に美琴は播磨に振られたと花井が勘違いしそう(w

97 :Classical名無しさん:04/07/21 15:30 ID:igcaW.eU
妄想垂れ流していいですかー。

98 :Classical名無しさん:04/07/21 15:40 ID:NfNBIbiQ
垂れ流せ

99 :Classical名無しさん:04/07/21 16:03 ID:igcaW.eU
 目の前の男、その広い背中に抱きつく。机に向かってなにやら描いていた
男――播磨拳児がいぶかしげに振り向いた。

「何だ?」
「別に。なんでもないわよ」

 しれっと答え――しかし絡めた腕の力は弱めずに、沢近愛理は播磨の背中に
顔をうずめた。
 『こういう関係』になるまでに、色々な事があった。
 皆が周知の出来事(本編)を含めて、本当に色々と。

 ……コイツが天満に告白して。フラれて。天満が烏丸君に告白して。でも
烏丸君は転校しちゃって――

 天満と烏丸は、只今文通中だ。烏丸の手紙が常に簡潔な――例えば『カレー
が食べたい』とか――ものなのに対し、天満の手紙はいつも巻物並のサイズ。
エアメールではなく、小包扱いで送っている。郵送費も馬鹿にならないだろうに。

「まあ、分かる気はするけどね」
「何がだよ?」
「別に」

 恋人の不審な態度に疑問を持ちつつも、目の前の締め切りの方が重要だと
播磨は判断したようだ。手元の原稿に集中し直す。
 播磨の描く漫画は愛理も認めている。が、締め切りが近くなると播磨は部屋
にカンヅメになる為、会えなくなる。

 ……それさえなきゃ、ね。

100 :Classical名無しさん:04/07/21 16:05 ID:igcaW.eU

 仕方なく妥協策で、愛理の部屋で描くという事になって、今こうしている。
トーンの屑が散らばったりするが、会えないよりはいい。
 回想もそこそこに、ぺたりと肌を寄せて感触を味わう。頼りがいのある広い
背中は、どこか父親を思い出す。カリカリとペンの走る音。少し汗臭い、彼の
匂い。とても――

 ……気持ち良い……

 ただ快楽を貪るかのように、肌を摺り寄せる。播磨は描きづらそうにするが、
振り払ったりはせず、わがままなお嬢様の為すがまま。
 とはいえ、愛理も言い分がある。この心地よい時間を味わうのに、多くの労力
を――主に恋敵達との抗争に――費やしたのだから、これぐらい甘えたとしても
罰は当たるまい。

「ねえ――拳児」
「なんだよ――愛理」

 名前を呼んだこちらに対し、律儀に名前を呼び返す。子供っぽいのか、それ
ともこっちの気持ちが分かるのか。
 どちらだろうな、と思いつつ、愛理は囁いた。

101 :Classical名無しさん:04/07/21 16:07 ID:igcaW.eU

「私のこと、好き?」
「いいや」

 愛理の問いを播磨は即座に否定。むっとする愛理の顔をしばし眺めてから、

「大好きだ」

 言われ、理解するのに数秒。行動に移すのは一瞬。

「――んんっ」

 唇が重なった。

102 :Classical名無しさん:04/07/21 16:08 ID:igcaW.eU
垂れ流し完了。改行多いとか言われた_| ̄|○<チュウモンノオオイリョウリテン


――しかし妄想を晒すというのは、実に見事な羞恥プレ(ry

103 :Classical名無しさん:04/07/21 17:36 ID:Pp4HmIL.
>>102
GJ!
なんか大人っぽくて良い雰囲気の二人ですね。甘くてイイ!
短いながらもなかなか濃い話でした。
あと、いちいち聞かなくてもいきなり投下した方がいいですよ。人がいないことも多いですし

104 :Classical名無しさん:04/07/21 17:54 ID:1UyPpf1k
>>99-102
甘い旗SSキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
播磨に甘える沢近が破壊力抜群でした。
こんな妄想ならこれからもどんどん垂れ流して下さい。

105 :102:04/07/21 18:51 ID:igcaW.eU
>>103
いや、別に誰かのOKを待っていたわけではなくて。
97で宣言してから書き始めただけです。だから短い。

>>104
さすが我が妄想<破壊力
次はエロパロ板で見つけたシチュ
「播磨と付き合ってる八雲。
だが何かの拍子に心が見えなくなってしまい、
播磨の心がわからず捨てられた子犬みたいに不安がる八雲」
の妄想に挑戦――

できたらいいなあ。

106 :乗船前:04/07/21 22:34 ID:SgMKkMVQ
 夕食後、くつろいでいると電話が鳴った。
「絃子か。 俺だ」
 バカ従姉弟の声だった。
「『さん』をつけろ『さん』を。 で、どうした?」
「また、休学届を出しておいてくれねえかな」
「!」
 以前にも、こんな事があった。
 そう、一学期のころ。
 何日か学校を休んでいて、マンガを描いていた。
そして、何も言わずにいなくなった。
何日かして戻って来たとき、動物を思う優しい男になっていたのには驚いた。
本人は何も話さないが、姉ヶ崎先生と何かあったらしい……
あのときは、行方不明ですなんて言えないから、休学届を出しておいた。
後になって知った彼に、ありがとよと感謝された物だった。
それを、今度は自分から出してくれと言う。
(また、塚本君絡みか……)
 そう思いながら、彼に尋ねた。


107 :乗船前:04/07/21 22:35 ID:SgMKkMVQ
「で? どれくらいで戻って来るんだい?」
 前回の事もあるから、一ヶ月くらいか、そんな風に考えていた。
「えっと、漁から戻ってくるのは一年後だってよ」
「は? 漁? 一年? ちょっと待て拳児君、なんだそれは?」
「ああ、マグロ漁船に乗る事にしたんだ。 しばらく日本を離れようと思ってよ」
 とんでもない答えに、一瞬頭の中が真っ白になった。
 マグロ漁船? 一年? 日本を離れる? なぜ?
「ちょ、ちょ、ちょっとまて、拳児君。 なにも其処までやる必要はないだろう?」
「珍しいな、従姉弟が慌てるなんて」
「だ、誰が慌ててなぞいるものか」
「落着けって、絃子。 こんな事頼めるの、絃子だけなんだ」


108 :乗船前:04/07/21 22:35 ID:SgMKkMVQ
これじゃ、いつもと逆ではないか。
 いつもなら、私が彼を止めるのに……
「絃子の事だ、察しが付いていると思うから、詳しくは言わねえ。 でも、俺なりに考えた結論なんだ、止めないでくれ」
「拳児君…… わかった、届は出しておくよ」
「すまねえな、絃子」
「ただし、無事に帰って来る事。 いいね?」
「ああ、わかった。 約束するぜ」
「約束を破ったら、どうなるか判っているね?」
「もちろんだ。 もうあんな目に逢いたくねえからな」
 互いに軽口を叩き合う。 しんみりした物は、いつの間にかなくなっていた。
「おっと、ぼちぼち出港だ。 それじゃ、切るぜ」
「拳児君。 ちゃんと帰って来るんだぞ、キミの家は、ココなのだからな」
「ああ、『おかえり』って、言ってくれよ。 それじゃ、行ってくらあ」
 電話を切った途端、彼の顔が思い浮かんだ。
 苦労はするだろう。
 でも、成長して帰って来るだろう。
「さてと、約束だからな。 書くとするか」
 私は、休学届を作成する為に、机に向かった。
 愛しい、けれどバカな従姉弟の無事を祈りながら……
 
おわり


109 :乗船前:04/07/21 22:39 ID:SgMKkMVQ
新スレになってIDが変わりました。
本編がとんでもない展開なので、補完の為のSSです。
休学すれば、留年は避けられると思いSSしました。

110 :Classical名無しさん:04/07/22 01:10 ID:YcO3buKU
>>43
鉛筆キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*GJ!

111 :Classical名無しさん:04/07/22 12:28 ID:RopKxP9E
SS保管庫は22日になっても更新が……orz

112 :Classical名無しさん:04/07/22 12:58 ID:jmK3k85U
忙しいんだろ。その内更新されるよ、マターリ待て。
俺も一応過去ログ全部残してあるし。

113 :Classical名無しさん:04/07/22 20:33 ID:7R5f7SIw
保管庫更新?

114 :Classical名無しさん:04/07/22 21:31 ID:s.p79sOI
人気投票締切前の俗っぽい煽動行為。でも隣子票ってカウントされるの?

《投下》

115 :言葉にならない 1/3:04/07/22 21:32 ID:s.p79sOI
「すいませーん」
 嵯峨野さんがそう言いながら引き戸を開けます。
 体育の時間中なのに、私たち二人がいるのは保健室の前。
ちょっとひねっただけだから大丈夫って言ったのに、みんな心配性だよね……。
ここまで付いて来てくれた嵯峨野さんや、すぐに駆け寄ってくれた城戸さんたち。
授業中時々うるさかったりするけど、このクラスになれて本当に良かったと思います。

「はーい。あら、その重心の傾き方は……捻挫かな?」
 間違いなく捻っただけなので頷いておきます。
 声の主は、二学期の途中から来た若い保健室のお姉さん。名前は姉ヶ崎先生。
この人に替わってから男子もよく来るようになって落ち着かないと女子には嫌われてます。
確かによく体調不良でぐったりしてる彼女たちが男子に見られたくないのもわかるけど、
それは先生のせいじゃなくて男子たちが節操もなくこの奇麗なお姉さんに…… ん?
 そういえば、播磨くんがこの人を真っ昼間から押し倒したとかいう噂もあったような。

 ちゃんと保健の先生がいたので、は体育の授業に戻っていきました。
他に人はいないから、姉ヶ崎先生もすぐ診断してくれそうです。
「この時間だとグラウンドにいるのは2−Cだったかな? あ、合ってた?」
 私が2−Cの生徒だとわかるとやけに嬉しそうにしています。
 そのままベッドに座らされ、靴下を脱いで異常がないか確認してもらいます。
触診が重要なのはわかるけど、もうそんなに痛くないからちょっとくすぐったい……。

「うん! これくらいの腫れなら湿布で良さそうね。ちょっと待っててね」
 そう言って先生は奥の小型冷蔵庫から冷えた湿布を出してくれました。
足に貼ってもらうとひんやりしてとても気持ち良かったのですが、それよりなにより。
あの冷蔵庫にビールらしき缶まで見えたのは目の錯覚なのでしょうか。気になります。

116 :言葉にならない 2/3:04/07/22 21:33 ID:s.p79sOI
 私の視線に気が付いたのか、また姉ヶ崎先生から話し掛けてくれました。
「治ったようでも今日いっぱいは無理しないでね。終わるまでここで休んでく?」
「はい」
 空調が効いた部屋とただ見学するだけになる体育の授業の二択なら迷いません。
でも、特に何もすることがない部屋にいるのはやっぱり退屈すぎたかな?

 その願いが通じたのか全く関係ないのか、姉ヶ崎先生が話し相手になってくれます。
「あ、そうだ。あなたのクラスにヒゲの似合うとっても怖ーい男の子がいるでしょ?」
 ―――播磨くん!?
 すぐにその名前が浮かびましたが、怖いという部分が何か違う気がしました。
この先生と播磨くんの噂があるせいですぐに名前が出てきそうになったのでしょうか。
他にヒゲが似合ったり怖かったりする男子は思いつかなかったので、こう答えます。


「怖い人なんていません。ヒゲの似合う優しい男子なら、一人だけ」


 すると姉ヶ崎先生はクスクス笑って、
「あらら。ハリオってば……。ふーん、そうなんだ」
 なんだかよくわかりません。ハリオって、誰?
 呆気に取られたままの私をもはや気にしていないように先生は続けて呟きます。
「貴女のクラスって、本当にいいクラスなのね。そっかー優しいんだー。いいなー」
 子供みたいに羨ましがってる姉ヶ崎先生だけど、一体何を羨ましがってるの?
とてもいいクラスだとは私も思いますが、先生の言いたい事はどうにもわかりません。

 そのあとすぐチャイムが鳴ったので、疑問を残したまま保健室を出ることにしました。
まだちょっと足に刺激が来るけれど、これなら放課後には普通に歩けそうです。

117 :言葉にならない 3/3:04/07/22 21:33 ID:s.p79sOI
 と。次は化学だから移動教室でした。
体育の授業もチャイムよりそこそこ早く終わっていたらしく、教室は人の波。
教科書・ノートを机に取りにいこうとする人と、腕に抱えて出て行こうとする人。
お互いが我を通そうとしているために渋滞してしまっています。
 化学実験室は遠いから、早めに教科書類を持って先に行っておきたいんだけど……
あれだけ混み合っていると人にぶつかって庇っている足に負担をかけてしまいそうです。
どうしてみんなこんな時に限って譲り合わずにのろのろ動くんでしょうか。むー。

「あれれ? 私の化学のノートどこー?」
 塚本さんが大声で探し物をしていますが、割とよくあることなので誰も気にしません。
周防さんか高野さんが戻ってきて手伝うと一瞬で見つかるのはこのクラスのお約束です。
 ところが今日はその二人ではなく、大きな影がそちらへと向かっていきました。
 教科書もノートも既に手にしている、播磨くん。
いくらクラスに馴染んでいるとはいえ、まだ彼の道をふさぐ勇気のある人なんていません。
たちまちその隣である私の席にそのまま歩いていけるだけの空間ができました。

「お、おう塚本。ノートっていうのはその机の下に落ちてる奴じゃねえのか?」
 ぎこちなく喋る播磨くん。忘れ物でもなさそうだし、なんで戻ってきたんでしょうか。
後ろを付いていっただけで簡単に席に戻れたので化学の授業に必要なものを揃えて……と。
「ホントだ。ありがとー播磨くんっ! これで遅刻せずに済むよー」
「いいってことよ。じゃあ俺はこれで行くわ」
 そう言ってすぐに立ち上がる播磨くん。また十戒のように道が開けていきます。
 ―――え!?

 播磨くんが何のために自分の席に戻ってきたのか。
 ひょっとして、ひょっとすると。いえ、そんなことはないとは思うんだけど……。
歩きにくくしていた私が、人ごみの中を無理して歩かずに済むように?
 ……こんな事されたら、他の人なんて目に入らなくなりそうです。 
 
《おわり》

118 :114:04/07/22 21:34 ID:s.p79sOI
普通ならこういう時は女友達が色々とフォローしてくれるものなんですけどね。
隣子の友人関係って恵ちゃん以外は全部名前のないモブなんですもん!

119 :Classical名無しさん:04/07/22 22:00 ID:Rt66OSF.
>>118
GJ。だが隣子は誤解をしt(ry
こうして播磨はまだ一人、おなごを落としたのであった。合掌。

120 :Classical名無しさん:04/07/22 22:12 ID:7VBN8m9c
やばいマジでGJ!
久々の隣子SSに感激です。この情報の少なさでここまで書けるとは上手すぎ。
人気投票に向けてプッシュされたのはお姉さんのような気もしますが、
だがそこが良い。缶ビール(・∀・)イイ!
隣子一人称も凄く可愛さがでてますよ。

121 :Classical名無しさん:04/07/23 00:24 ID:fab4xAPk
しかしホント(゚д゚)ウマー

122 :Classical名無しさん:04/07/23 07:22 ID:zjD0eHxM
はじめまして。
SS書くのは初めてなんですが、
とりあえず八雲SSを投下してみます。
拙い文章ですが、どうぞよろしくお願いします。

123 :彼女の想い:04/07/23 07:23 ID:zjD0eHxM
「はぁ……」
 思わずため息を吐いてしまう。夜、自室で一人になった時、自然と今日あったことが思い出されてしまった。
 今日の午後、バイト先に姉さんたちが来た。それはいい。ただ、その時に、私とあの人が、その……付き合っている、と誤解されてしまった。
 あの人のことを思い出す。どこか怖そうな雰囲気がするけど、本当はとても優しいあの人を。
 初めて会ったのは、あの人がクーラーを直しに家にやってきた時だ。それ以前にも姉さんのクラスで見かけたり、キリンさんの飼い主があの人だったりとしたけど、はっきりと会ったと呼べるのはあの時だろう。
 でも、別にその時何かあったわけではない。伊織を助けてくれたりもしたが、その時はただあの人の心が視えないということに興味を持っただけ。


124 :彼女の想い:04/07/23 07:25 ID:zjD0eHxM
 私があの人のことを意識しだしたのは、そう――二学期になって、あの人が飼っていた動物たちのことでの騒動の時だろうか。
 あの時、あの人は動物たちを必死になって逃がそうとしていた。そこに、あの人の優しさが感じられた。そんな様子を見ていた私の口からは、思わずあの人の名前が漏れていた。
その時の私は、あの人のことを無意識に「先輩」ではなく「さん」と呼んでいたのだ。後で気付いたが、私があの人の名前を口にしたのはこの時が初めてだった。
 それから、私はどうも少し変になったようだ。

125 :彼女の想い:04/07/23 07:27 ID:zjD0eHxM
 結婚式のお芝居の時には、私は男の人が苦手だというのに、相手の新郎役が気になっていた。無意識に、もしかしたらあの人がなってくれるのでは、という期待を抱いていた。
乱入してきたあの人が私の事を誰かと勘違いしていると気付いた時は、あの人が探している相手ではないことを告げることがなかなか出来なかった。
 あの人の漫画を見た時には、「また読んでもらいたい」という言葉に自然と嬉しくなっていくのを感じていた。
姉さんがあの人から貰ったお礼の色紙を見て「誰から貰ったのか」という問いには、思わず「ヒミツ」と答えていた。
 あの人の「キスしてもいいか」という言葉には、漫画の事だと分かっていても動揺しないでいることは出来なかった。
 どんどんあの人に惹かれていくのが自分でも分かっていた。
 そして今日、あの人とのことが誤解されてしまった。


126 :彼女の想い:04/07/23 07:28 ID:zjD0eHxM
 原因は私。あの人のジャージの名札を直していた所を沢近先輩に見られたのだ。その光景を傍から見れば私とあの人が付き合っていると考えても不思議じゃない。
少なくとも、私があの人に好意を持っているように思われるだろう。そしてそれは間違いじゃない。
 姉さんたちにあの人と付き合っているのかと問い詰められて、正直に話したけれど結局私とあの人が付き合っていると誤解されてしまった。
それは姉さんたちの誤解でしかなかったけど、私とあの人が付き合っているなんて、単なる誤解とはいえそう思われるのは決して悪い気がしなかった。
――愕然としたあの人を見るまでは。

127 :彼女の想い:04/07/23 07:31 ID:zjD0eHxM
 姉さんたちは気付いていなかったけど、あの人は姉さんたちが来るよりも早くお店に来ていた。なので当然騒いでいた姉さんたちの話が聞こえていたわけで。
 私との関係が誤解されたあの人は、まるでこの世の終わりとでも言われたかのように茫然自失となっていた。
 あの人にとって、私との関係が誤解されては困るのだろう。きっと、特定の誰かに、私と付き合っていると思われたくなかったのだ。
一体誰だろうか。沢近先輩? 姉さん? それとも他の人?


128 :Classical名無しさん:04/07/23 07:45 ID:bJk2OcoY
支援?

129 :彼女の想い:04/07/23 07:53 ID:zjD0eHxM
「はぁ……」
 再びため息が漏れる。思考を切り替えるように布団に入った。
しかしそれでもあの人のことが頭から離れない。あの人の顔が頭に浮かぶ。動物たちを守ろうと必死になったあの人。結婚式で抱きかかえられて間近に見たあの人。いくつもの顔が浮かぶ。
でも――最後に浮かぶのは、誤解されて愕然としたあの人の顔。
――決めた。明日になったら誤解を解こう。まずは姉さんに。そして沢近先輩たちには姉さんから誤解を解いてもらう。当事者である私からよりも、姉さんからならすぐに誤解が解けるだろう。
これであの人が、もうあんな表情を浮かべる事も無い。――でも、誤解が解けてしまうということが、なぜか少し残念に感じてしまう。
そんな想いを振り払うように、眠りに就こうと目を閉じた。でも、いつもは簡単に訪れる睡魔が、今夜に限ってなかなか訪れる事はなかった。


130 :Classical名無しさん:04/07/23 08:01 ID:zjD0eHxM
とりあえずこれで完了です。
一応#88と#89(だっけ?)の間の夜、ということになります。
♭12を見て、あの話で初めて八雲が播磨の名前を呼んだということに気付いて、書いてみました。
SSというより八雲の心情についてといった感じの話です。

拙いというか、ちょっと変な文でないだろうか、と心配になりますが。

131 :Classical名無しさん:04/07/23 08:10 ID:bJk2OcoY
>>130
乙カレー
八雲の心境としてはかなり原作に近いのではないかと思います。
そして、初投稿なのにこのレベル。着眼点もなかなかいいです。
GJ!


132 :Joyful, Joyful:04/07/23 08:12 ID:nUoXiSLg
「下んねぇことしてんじゃねぇよ」
 言いながら引きずり起こした男の顔を殴り飛ばす彼の姿を高野晶は、感情の浮かばない冷ややか
な瞳で眺めていたのだった。


 Joyful, Joyful


 きっかけは些細なことだった。バイトからの帰り道、肩がぶつかった。ただそれだけ。
 いや、正確には、ぶつかってきたのだ。
 因縁をふっかけられ、最初は聞こえないフリをしていた晶も、男達の囁き声を聞いて足を止める
ほかなかった。
「メンドくせぇから、ここでやっちまおうぜ」
 振り向いて見た男達の目に宿る卑猥な輝きに、晶は心底うんざりする。女と見れば性欲と繋げる
ことしか出来ない手合いだろう。
 じっと観察する。年の頃から見れば、彼女とそれほど変わらないだろうか。辺りに人影は無い。
それが彼らを付け上がらせているのだろうが、晶は逆に好都合だと考えた。
 五人、か。心の中で彼女は呟く。これぐらいなら……楽勝だ。戦うにしても、逃げるにしても。
 晶は身構えたが、しかし、その拳も蹴りも揮われることはなかった。
 何故なら、
「おい、てめぇら、何してやがる?」
 その言葉と共に、一人の男が吹き飛ばされたからだ。
 点滅する街灯の明かりの中に浮かぶ人影。見覚えのあるシルエットに、彼女は目を細める。
「……播磨君じゃない」

 突然に現れたごつい男、そしてそのパワーを目の当たりにして、一瞬、腰が引けた男達だったが、
数を頼みに襲い掛かる。
 むろん、それは間違いではない。潰された男がいるとはいえ、一対四。そうそう負けるはずがな
い、と考えてもおかしくはなかった。
 間違いだったのは、相手を普通の不良だと考えていたことだろう。

 文字通りの、瞬殺。並んで横たわる五つの体。

133 :Joyful, Joyful:04/07/23 08:13 ID:nUoXiSLg
「で……大丈夫か」
 ぽんぽん、と手をはたいて播磨が尋ねてきたのに、晶は両手を広げて答えた。
「大丈夫よ」
 それから倒れている男達に近づかないようにして、播磨に近付いて行く。見ようともしないのは、
恐怖したからではなく、もはや関心を失ってしまったから。
「ありがとう。助けてくれて」
 冷静なその口調と表情に、播磨は怪訝そうな顔をする。
「? どうしたの?」
「ああ、いや。襲われた割には慌てたって感じじゃないからな」
 その彼の言葉に、晶はわずかに肩をすくめて見せただけ。無言のままその場を後にしようとする
彼女を、不思議そうに見ながら彼もその後を追う。
「おい、送ってくぜ」
「あら、悪いわよ」
「またああいう奴らに絡まれるかもしれねぇだろ」
 そ。小さくそう答えて晶は、彼の同行を許したのだった。

 歩きながらふと、晶は隣に並ぶ彼の顔を見上げる。
「……? 何か俺の顔についてるか?」
「ついてないの」
 その晶の答えに、播磨は首をかしげる。
「ヒゲ」
 続けた彼女の言葉に、今度は彼は困ったように笑ってから、
「無い方がいいんだろ?」
「塚本さんにそう言われたんでしょう?」
 疑問に、疑問形で答えた瞬間。
 播磨は盛大に転んだ。気持ちの良いぐらいに、思いっきり。
 やっぱり面白い。心の中で呟きながら、表面上は変わらずに問いかける。
「……何やってるの?」
「うるへぇ」
 倒れた彼に、晶は手を貸して立ち上がらせる。
 その顔を見て、彼女は片眉を跳ね上げた。

134 :Joyful, Joyful:04/07/23 08:14 ID:nUoXiSLg
「ててて……あ? 何だ?」
「はい、これ」
 転がっていたそれを渡しながらも、晶の瞳は播磨の顔から離れることがなかった。
「お、悪いな……ってお前、何でそんな見つめてんだよ」
「播磨君って」
 サングラスをかけ直す彼を見つめながら、晶は答える。
「眼鏡を外したらかっこいいのね」
 突然の少女の言葉に、播磨は一瞬、驚いた顔をして見せる。だが、
「……残念だわ」
 次の瞬間には怒りの表情へと変わっていた。
「おいっ!! 残念って、何がだよっ!!」
「もっと面白い目をしてるかと思ってたのに。本官さんみたいなとか、一昔前の少女マンガみたい
なとか」
「てめぇは人を何だと思ってやがるんだっ!!」
「もうこんな時間なんだから、静かにした方がいいと思うわよ」
「くっ……」
 冷静にあしらわれた播磨が拳を握って睨んでくるが、晶は取り合わず歩を進める。
 突然の風に微かに薫る秋の匂い。少女はわずかに目を細めて、その冷たさを体全体で感じる。
「……ったく、これだから女ってやつは……」
 ぶつぶつと小さく言いながらもまた隣に並ぶ彼に、晶はふと問いかける。
「サングラス取った方がカッコイイと思うけれど。何でとらないの?」
「……てめぇには関係ねぇよ」
「そう言えば塚本さん、サングラスかけた男は苦手って……」
「言ってたのか!?」
 晶につかみかからんばかりの勢いで問いかけてくる播磨に、しかし彼女は、
「って言ってたらどうするつもり、って聞こうとしてたんだけど。もういいわ、わかったから」
「てめぇ……俺をからかってるだろう?」
 ドスのきいた声で言ってくるが、晶はただ、今頃気付いたのか、と心の中で呟くだけ。
 チラリ。横目で見れば、拳を握ったままの彼が困っているのがわかった。
 その点において、晶は播磨を見切っていたと言えるだろう。
 彼は決して、女には手を上げない。そういう性格だ、と。

135 :Joyful, Joyful:04/07/23 08:14 ID:nUoXiSLg
 ちょっと待っててくれ、そう言って路地裏に消えた後、響く破壊音。おそらくからかわれた鬱憤
を壁を殴って晴らしているのだろう。
 本当に面白い。その不器用な彼のやり方が一々、彼女のつぼを突いてくる。
「あー、くそ」
「もういいの?」
「おう、いいぞ」
 半ばやけくそ気味に言う播磨だったが、それでもしっかりと送るつもりではあるようだった。晶
の歩調に合わせて、普段よりゆっくりと歩いてくれていることに彼女は気付いていた。
「あー、それでよ」
「何?」
「お前……知ってんのか?」
「姉ヶ崎先生の所に転がり込んでいたことだったら、黙っておいてあげるわよ」
「おう、すまねぇな……待ておい、何でお前が知ってんだよ?」
 また肩をすくめて見せた後、晶は答え返す。
「塚本さんのことでしょう?」
「あのな……いやまあ、そうなんだが」
 どうも調子狂うぜ、目の前で播磨はぼやくが、やはり気にはなっているようで、言葉をつなげる。
「あー、その……皆、知ってるのか?その、俺が……」
「何人かは気付いてるんじゃない?」
 だってわかりやすいもの、播磨君。そう言いかけて、辛うじて言葉を飲み込む。あんまり追い詰
めると、からかう楽しみがなくなってしまう。
「ま、そうでない人の方が多いみたいだけど」
 思い出すのは、彼女に親しい人間達。おそらく誰も彼の想いの向く先をわかっていないだろう。
「そっか……」
 あからさまにがっくりと肩を落とす播磨を、晶はちらりと見た後、
「何なら手伝ってあげましょうか?」
 囁くように言った。
「あ? 何をだよ?」
「播磨君の恋」
 そう言った彼女の瞳が、妖しい光を放ったのを、播磨は見たような気がした。

136 :Joyful, Joyful:04/07/23 08:15 ID:nUoXiSLg
 盛大に悩むだろう。そう思っていた晶だったが、想像は外れた。
「へっ、お断りだぜ」
 ほとんど間髪を置かずに答えた播磨を、彼女はやや意外そうな目で見た。その答えは確かに想像
通りではあったのだが。
「人に恋を助けられるほど、俺は落ちぶれちゃいないぜっ!!」
 威勢良く言った彼だったが、
「そう言う割には、進展がないみたいだけど」
 晶の一言にあっという間に肩を落とし、重い溜息を吐く。その変貌の激しさが相手にしてみれば
楽しいのだと、当然、本人は気付いていないのだろう。
「男の美学、ってやつ?」
 問いかけられて、しばらく考えた後、播磨は首を振った。
「そんなかっこいいもんじゃねえよ。ま、つまんねぇプライドさ」
 ふぅん。小さく一つ、頷いて晶は歩みを止めた。
「ここらでいいわ。もう近くだから」
「そっか。じゃあな」
「ああ、そうそう」
 踵を返しかけた播磨を、晶は呼び止める。
「どうでもいいことだけど」
 前置きをしてから、
「高野晶」
「……は?」
「私の名前。どうせ覚えてなかったんでしょう?」
 冷や汗を浮かべる播磨を、鋭く見る晶、しかしその表情はすぐに和らぐ。
「今日はありがとう。助かったし、楽しかったわ」
 言って彼女はほんの少しだけ、目を細めて唇の端を上げる。
 それはよく見なければわからないほどの、ほんの小さな微笑。
「お、おう。じゃあな」
 戸惑う彼を尻目に彼女は足早に家路を急ぐ。背中に感じる視線、そして微かに聞こえた、
「何だかなぁ」
 という呟きに、晶は目を閉じて、今度こそ。
 小さく、笑った。
「ほんと、今日は楽しかったわ、播磨君」

137 :クズリ:04/07/23 08:17 ID:nUoXiSLg
 萌えスレに刺激されて突発的に書き上げた晶の話。難しい〜
 晶ファンの皆さん、ごめんなさい。

138 :Classical名無しさん:04/07/23 08:25 ID:pLXF3S0E
>>137
クズリさんの晶、キター!
でもいきなりの投稿はちょっと心臓に悪いです・・・。
出だしが出だしだけにw

139 :空振り派:04/07/23 08:36 ID:Dq4CywDI
いい作品のあとは出しづらい……。
なんとなくふと思いついたネタですが、投下します。
完全に企画物ですので本編の人間関係やサラの性格とかはあまり
気にせずにお読みください。
会話のみなので、少し読みづらいかも知れませんが。


140 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:37 ID:Dq4CywDI
『こんにちは。シスターサラの懺悔室の時間です。
 今日も迷える子羊達を楽園へお導きします。
 個人のプライバシー保護のため、本名は伏せてあります。
 今回のテーマは7つの大罪。う〜ん。重いですね〜。
 では、告白の方どうぞ〜。』

141 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:38 ID:Dq4CywDI
――怠惰の罪 Y.Tさん――
「……えっと。私、どうも授業中に度々寝てしまって……。ひどい時には学校にも
 行けなくて無断欠席になったり……。先生方にご迷惑をおかけしました……」
『授業を怠けるのはいけませんね〜』
「決して授業がつまらないとか、眠たいとか……そういうわけじゃ……」
『病院で診てもらったほうがいいかもしれませんね。
 ほら、ちょっと前に流行った”なるこれぷし〜”とかいうやつかも」
「……私、やっぱり病気なんでしょうか……。
 この間もベンチで寝込んでしまって……」
『危ないですねー。そんなんじゃ、犯されちゃいますよ?』
「……は?」
『いえ、わからないならいいです。男の人には気をつけてください』
「……はい、眠っている間に誰か投げてしまったらしくて……。
 怪我させてしまったんじゃないかと……」
『大丈夫です。そんな投げられるような人はただのケダモノですから』
「……はぁ」
『睡眠はちゃんと取ってますか?』
「朝は朝食を作ったり、弁当を作ったりで6時に起きるんですが……。
 夜は早めに寝るようにしてるのでちゃんと7時間は寝てるかと……。
 ……あ、たまに姉さんがバタバタやってて、目を覚ますことはあります」
『うーん、それはお姉さんに問題があるんじゃないでしょうか?』
「いえ、姉さんは悪くないです。きっと私が男の人の気持ちを拒絶して、
 心を閉じようとするから……。でも、最近は随分楽になったんです……」
『ほうほう、それは何故?』
「頼りになる親友ができたから……。それと、初めて側にいても心を閉じる
 必要の無い男の人に会ったから……」
『く〜、えぇ話しや……。それならきっと大丈夫ですね。
 ハイ、あなたの罪は許されました〜』


142 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:38 ID:Dq4CywDI
――傲慢の罪 K.Hさん――
「聞いてくれよ。てっきり俺と天満ちゃんは相思相愛だと思ってたのに……」
『いきなり、涙声ですね。そもそも何故、相思相愛だと?』
「いつだったか、天満ちゃんが俺のほうを惚れた目で見てたんだ」
『違う人を見てたのかも知れませんよ?』
「いや、あの視線の先にいるのは俺しかいねぇ!」
『うーん、確かにこれはかなりキてますねぇ。まさに傲慢』
「傲慢ってなんだ?」
『自分を神様のごとく振舞うことです』
「あぁ、中学のときまではそうだったな。絶対、俺は誰にも縛られねぇと思ってた。
 だがな、俺があの日、天満ちゃんに出会ってから――」
『あぁ、もう長くなりそうなのでその辺で結構です』
「ちっ。んで、それ以外にもあるんだ。海のときとか肝試しのときとか……。
 あれで俺と天満ちゃんとの距離はかなり縮まったはず!
 でも、何でだろな〜。
 確かに鈍いとは思ってたけど、俺の気持ちはこれっぽっちも……」
『あなたも相当鈍いですけどね』
「ん、何か言ったか?」
『い〜え、何も〜』
「とにかく神様でもなんでもいいから、天満ちゃんの誤解を解いてくれ!
 俺は天満ちゃん以外はどうでもいいんだ」
『神頼みする場では無いんですが……。まぁ、後悔は激しくしてるようですね。
 どうせならストレートに告白してから、華々しく散ったほうがいいと思いますよ。
 捨てる神あれば、拾う神ありとも言いますし。
 ハイ、あなたの罪は許されました〜』


143 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:38 ID:Dq4CywDI
――嫉妬の罪 E.Sさん――
「何よ。嫉妬って……。
 まるで私が誰かさんを好きって言ってるみたいじゃない」
『違うんですか?』
「ただちょっと気になってるだけよ。
 断じて、そんなことは無いわ!」
『Y.Tさんがとばっちりを受けたと聞いておりますが。
 勝手にカノジョ宣言をされたなどと……』
「悪かったとは思ってるわ。
 でも、あれは私が丸一日かけてなんとか縫った名札をいともあっさりと
 私の何倍も上手に縫い直されたから、プライドが傷ついただけよ」
『しかし、公衆の面前でフォークダンスを彼と一緒に踊ったあなたに比べれば
 Y.Tさんの方はまだそれほどの関係でも無いと思われますが?』
「フフン。甘いわね。隠れて会っているほうが怪しいと思わない?
 女の勘ってやつよ!
 それに他人のジャージの名札を縫うなんて、よほど好意を持ってる相手でも
 無い限りしないでしょ?
 私だったら死んでもゴメンだわ」
『しかし、それを言うと元々彼のジャージに名札を縫いつけたあなたも
 同じことが言えるのでは?』
「……あ」
『語るに落ちましたね……。
 女の子の嫉妬はかわいいものです。
 ハイ、あなたの罪は許されました〜』
「ちょっと……。勝手に終わらせないでよ――…(フェードアウト)」


144 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:38 ID:Dq4CywDI
――憤怒の罪 H.Hさん――
『何かイニシャルで書くとダブルエッチってやらしいですね……』
「僕には何もやましいことなど無い!
 純粋に八雲君の袴姿が見たいんだー!」
『それは健全とも言えるけど、ある意味不健全とも言えますね。
 八雲は先輩の気配を察して避けてるってこと、まだわからないんですか?』
「何? 僕の気配に敏感だと? それは……愛だな!」
『自意識過剰もそこまで行くと素晴らしいですね』
「ハッハッハ! 誉めてないぞ。サラ君」
『八雲は押しの強い男性はタイプじゃないと思いますよ』
「うぐっ。はっきりと言うな君は……」
『だいたい、例の結婚式のときも新婦を放っといて暴れだすし……。
 教会は厳粛で神聖な場所なんですよ?』
「スマン……。
 僕としたことが怒りに我を忘れてしまったみたいだ」
『まぁ、私は予想外の播磨先輩の乱入の方が面白かったからいいんですけど』
「やっぱり僕じゃ、ダメなのか……?」
『はい(キッパリ)』
「ぐはあ! こうなったら虎の穴で修行してくるしかない……。
 虎穴に入らずんば虎児を得ずだ!」
『一人で勝手にやっててください。
 くれぐれも他人様に迷惑をかけないでくださいね。
 ハイ、あなたの罪は許されました〜』


145 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:44 ID:PBsSupPc
――貪欲の罪 A.Tさん――
「私は罪深い女……かしら?」
『はっきり言ってスクランにはそういうキャラがいませんからね〜。
 で、何故そんなにバイト熱心なんですか?』
「女にはいろいろあるのよ……」
『意味深ですね……。好きな人のためなら、頑張れる。ですか?』
「ノーコメント。と言っておくわ」
『う〜ん。謎は深まるばかりです』
「どうせ作者も今更、私の話しにページを使おうなんて考えてないから」
『私もなんですよね〜。
 そういえば最近は部室で花井先輩を見かけませんね。
 播磨先輩はたまに来てましたけど』
「部室は花井君が近づいたら自動的にロックがかかるように改造してあるから」
『そ、そこまでやりますか……。花井先輩に対してはホント徹底的ですね』
「八雲が大事だからね」
『そう言いながらも実は好きな人って花井先輩のことだったりして……』
「サラさん……。一度うちにいらっしゃい。
 日本の美の厳しさというものを教えてさしあげてよ」
『……すみません。調子に乗ってました。
 ハイ、あなたの罪は許されました〜』


146 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:45 ID:PBsSupPc
――大食の罪 T.Tさん――
「私、大食いじゃないもん」
『しらばっくれても無駄ですぜ、旦那。
 すでにネタはあがってるんだよ!
 喫茶エルカドのハリケーンパフェ……。
 それを一人だけ2個も頼んでいるのをたくさんの人が目撃してるんだ!』
「(ギクゥ!)」
『しかも、妹さんをバイトさせておいて自分だけ豪遊三昧とは……。
 いいご身分ですな〜』
「あぅ〜。ち〜が〜う〜の〜」
『この後に及んでまだシラを切りますか。
 妹にあんなハレンチな格好をさせておいて……。
 ”オラオラ、妹なら私のためにキリキリ働けぃ!”
 とか言ってるんじゃないんですか?』
「ごめんなさい。白状します……。
 実は私があの喫茶店を見つけてコスチュームが可愛かったから、
 八雲と一緒に応募したの。
 そしたら……。
 ”妹さんのほうはちょっとサイズが足りないので、うちでは働けませんね”
 って言われて八雲だけ残ったの……。
『………………。
 失礼しました――。
 ハイ、あなたの罪は許されました〜』

147 :シスターサラの懺悔室:04/07/23 08:45 ID:PBsSupPc
――淫欲の罪 M.Sさん――
『最後はどうせ麻生だろ……と思ったでしょ。
 甘いんだな〜。コレが』
「誰に向かって話してんだ?
 それに淫欲ってなんだか言葉の響きが嫌なんだが……」
『も〜、Eの癖に……』
「Eじゃねぇ!」
『胸元まで開けてるじゃないですか』
「これは暑いから開けてるだけだよ。断じて締められないわけじゃないぞ」
『ま〜、その話しはいいです。
 オチに来たということはあなたが犠牲者だということです。
 わかってますね?』
「何だよ。犠牲者って……。
 ひょっとして麻生に抱きついたこと。根に持ってんのか?
 あれは他意はねぇって!」
『わかってますよ。先輩。
 今回は視聴者サービスのためです。
 さて、懺悔と言えば?』
「……オレたちひょう○ん族?」
『ぴんぽーん!』
「そんなの今時の若いもんは誰も知らねぇだろ!」
――ザバーッ。「ぅわっぷ」
『水も滴るいい女。そしてぐっしょりと濡れ、透けるブラウス……。
 う〜ん。エロですね〜』
「なんでアタシだけ、こんな目に……」
『この映像がお届けできないのが残念です。
 では、ま〜た〜来週〜。続きません』


148 :空振り派:04/07/23 08:46 ID:PBsSupPc
完了です。
連続投稿でひっかかってしまったので途中でID変わってます。
あぁ……。またしょ〜もないものを書いてしまった。
でも、しょ〜もないのが好きなので許してください。

149 :Classical名無しさん:04/07/23 09:38 ID:UsH3s6gc
>>148
GJ! 面白かったです!
天満がバイトしないのにはそんな訳があったとはw

150 :Classical名無しさん:04/07/23 09:40 ID:NfNBIbiQ
八雲だけがバイトしてる理由にワラタ

151 :Classical名無しさん:04/07/23 09:42 ID:9vGUIyyE
オモロイ・・・サラがなんかオンドゥルっぽいですがそれも良し。
しかしひょう○ん族って・・・・また古いですな・・

152 :Classical名無しさん:04/07/23 10:17 ID:JZmhiykM
妹さんの方は〜って下りはお姉さんでは?

貴方の罪は許されました〜の決め台詞にワラタ

153 :Classical名無しさん:04/07/23 10:30 ID:IkqLpKDE
>>152
天満が妹扱いされたということではなかろうかね?

154 :Classical名無しさん:04/07/23 10:48 ID:rJu0qKaQ
>>153
そういうことだろうねぇ。
普通体格が小さくて落ち着いてないやつが居たらそっちを妹と思うだろうし。

155 :Classical名無しさん:04/07/23 10:58 ID:NfNBIbiQ
修児も間違えてたしな。

156 :Classical名無しさん:04/07/23 11:22 ID:W2t16/xU
>>137
GJ!
やたら上手いんで誰かと思ったらクズリ氏でしたか。
やはり上手い人は何を書いても巧いですね。
二人のやりとりが「らしい」ですね。
締め方も良いなぁ…

157 :目次:04/07/23 13:14 ID:SgMKkMVQ
>>13 無題
>>33 My Gift to You
>>50 THE MAJESTIC
>>64 無題
>>83 Majic Night
>>99 無題
>>106 乗船前
>>115 言葉にならない
>>123 彼女の想い
>>132 Joyful, Joyful
>>140 シスターサラの懺悔室

158 :Classical名無しさん:04/07/23 13:40 ID:44iwDcsc
最後にやるだけで良いよ。
なんか流れが切れて感想とか書きづらくなる。

159 :Classical名無しさん:04/07/23 13:58 ID:r3fvOR5g
>>137
どうも、萌えスレから来ました。妄想を具現化してくれてサンクスです。
これはいい晶ですね。
クールな晶、萌えですね。不良に囲まれても余裕とはさすが。
まあ俺は晶は意外と甘えてくるよ派なんですが(ぇ
とにかく素敵な作品ありがとうございました。


160 :Classical名無しさん:04/07/23 17:50 ID:FwDYcPAg
>>137
晶SS乙です。
晶ファンとしてはうれしい限りです。
昨日キャラCD聞いて晶の声にちょっとヘコんでたので
クズリさんのSSで脳内晶を活性化させることができました。
グッジョブっす!

161 :Classical名無しさん:04/07/23 22:51 ID:IkqLpKDE
なんか頭の中に妄想が浮かんだんで書いてみました。
SSなんぞ書いたことがないので、何か基本的なところでの見落としがあるかも知れません。
とりあえず投下開始します。

162 :Classical名無しさん:04/07/23 22:53 ID:IkqLpKDE
(全く、何で私がこんなに悩まなきゃいけないのよ!)
・・・イライライラ。

(フォークダンスの時…あ、あれはそう、雰囲気につい流されちゃった、ってやつ?
そうよ。そうとしか考えられない。そうに決まってるわ!)
・・・イライライラ。

ある日の放課後。旧校舎へ続く渡り廊下を歩きながら、昨日までのことを振り返る。
(そもそも私の理想の男性像は、やさしくて品があって、教養豊かでしかもユーモアに溢れた…
そう、例えばお父様のような…い、いや、ファザコンということではなくてよ。
客観的に言って、うちのお父様のような紳士が理想だ、というだけのことであって…)
・・・イライライラ。

(…と、ともかく。少なくともあのヒゲなしみたいな、バカで単純で粗暴でバカで…
そんな男はタイプじゃないの。それはハッキリしてるじゃない。)

すうーーーっ…、はぁーーー。
深呼吸をすると、身体だけでなく、心まで少し落ち着いた気分になる。

(そうよ。落ちついて考えれば全て分かり切っていたことじゃない。
体育祭でのことはただの過ち。始めから悩む必要なんてない話だったのよ。)

…しかし。


163 :Classical名無しさん:04/07/23 22:54 ID:IkqLpKDE
「お嬢…勝ってやるよ、お前のために。」

あの言葉を言われた時、微かに胸の奥に、今まで感じたことのない感覚が襲ってきたのは確かだ。
あれが、恋…というものなのだろうか。
「そ、そんなバカな話、あるわけないじゃない!」
思わず声に出してしまった。慌てて回りを振り返るが、誰もいない。
ここは旧校舎。人通りは殆ど無い。ほっと胸を撫で下ろす。
(…そうよ。それにアイツ…て、天満の妹と付き合ってたって話じゃない…)

トクン…
少し胸が痛む。理由は分からない。


昨日、エルカドで八雲と会った時、なぜか無性にイライラして、当て付けのつもりで
「播磨と仲が良いのは八雲だ」と言ったのだが、驚くべきことに2人は本当に付き合っていたらしい。
八雲本人は「付き合っている」ことは否定し続けていたが、今まで何度も2人で会っていたのは事実らしい。
それは一般的に言って、付き合っているようなものではないのだろうか。

(何であのコ、はっきり認めないのかしら…何か、みんなには言えないようなコトでもある…とか?)
・・・イライライラ。
結局、イライラは収まらないまま、茶道部の部室に着いた。

部屋の中から人の声がする。
(晶かしら?)
そう思ってドアに近づく。…が、聞こえてきたのは男の声だった。
(こ、この声は…)
思わず息を呑んで耳を澄ませる。


164 :Classical名無しさん:04/07/23 22:56 ID:IkqLpKDE
「妹さん…今日のは、どうだった?」

その声に、女の声が答えを返す。

「あ、はい…今までで、一番、良かったです…すごく…。」



…。

………。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


(え、えええええええーーーーっ!!!!)
心臓が急激に高鳴る。手から汗が噴き出してくる。
(ちょ、ちょ、ちょっと、ど、どういうこと?!)
頭の思考回路がショートする。言葉がうまくまとまらない。
(え、こ、こんな、いくら人が少ない旧校舎の、部屋の中だからって…)
(そんな、大胆なこと、しちゃって…る…の…?!?!)

口の中が渇く。胸の鼓動が止まらない。
頭の中を様々な憶測が飛び回る。雑誌などで得た断片的な知識から、想像力で補って生み出される
虚像が、頭の中を駆け巡る。

165 :Classical名無しさん:04/07/23 22:57 ID:IkqLpKDE
目の前のドアを開ければ、一体何があったのかが分かるかも知れない。
激しい好奇心と、望まない現実を見てしまう恐怖が葛藤する。
どうしよう。どうしよう。どう…

「愛理。こんな所で何やってるの?」

後ろから突然声が掛かる。

「きゃっ!」

慌てて振り返ると、そこには晶がいた。

「…?どうしたの?そんなに慌てて。」
「あ、う、うん…え、ええと…」

あたふたあたふた。
動揺してるのを悟られまいと、思いつくままにまくし立てる。

「えっと…そ、そう!用事が終わったから晶を迎えに来たんだけど、
まだ部室に戻ってないみたいだからどうしようかなーって思ってたら、
ちょうど晶が今来たってだけよ。うん。それだけ。それだけだから。
そ、それじゃあ、またね。」

一気に勢いで話し切り、その場を立ち去ろうとする。


166 :Classical名無しさん:04/07/23 22:57 ID:IkqLpKDE
「…愛理?」

ビクッ。

「な、何?」

…私、何かおかしいことを言っちゃった?
恐る恐る、冷静を装って振り返る。

「…私を迎えに来たのに、私を置いて帰っちゃうわけ?」
「あ…。」

口がパクパクと動く…が、声は出なかった。
もう、駄目。何も考えられる状態じゃなかった。
あまりに唐突な出来事の連続に、私の頭は機能停止に陥ってしまったらしい。
「…。まあいいわ。私ももう用事は無いし、一緒に帰りましょう。」
晶はいつものように、顔色1つ変えずにそう言った。
…いや、目元が僅かに笑っていた…ようにも見えた。
私の困惑をすべてお見通しといったような、そんな雰囲気で。

(終)


167 :Classical名無しさん:04/07/23 22:58 ID:IkqLpKDE
(余談)
「妹さん…今日のは、どうだった?」

「あ、はい…今までで、一番、良かったです…すごく…。」

「そうか…まあ、ここまでうまくネームがまとまったのは妹さんのお陰だよ。ありがとな。」

「あ、いえ…私はただ、感想を言わせて頂いただけですので…」

「その感想がすげー役に立ったんだ。やっぱり妹さんのお陰だよ。

それじゃあ、そろそろ失礼するぜ。…悪いけど、俺はしばらく旅に出る。当分帰らないと思う。

漫画は旅先で完成させるつもりだ。」

「え…」

「それじゃあ、さよならだ。今まで本当にありがとうな、妹さん。」

「は、播磨さん…」

(余談 終)


168 :Tac:04/07/23 23:01 ID:IkqLpKDE
まあ、そんな感じです。
#88と#89の間を補完したような感じになればいいなあと思いまして。
基本的に原作重視で書いたつもりですが、他の人から見るとどう見えるものでしょうか・・・。

169 :Classical名無しさん:04/07/24 00:11 ID:Z1t788nA
内容は面白いと思いますよ。
あとはやっぱりその妄想を読み手に上手く伝える表現力じゃないですかね。
それと情景描写をもっともっと増やしてみるとか。
まぁ簡単なことじゃないとは思いますが頑張って下さい、書けば書くほど上手くなると思いますよ。

170 :Classical名無しさん:04/07/24 04:04 ID:z92PwtFc
エロいですね、エロはいいですね。
いやー、エロは実にいい。

171 :空振り派:04/07/24 10:11 ID:oEcaQy4M
鉛筆が勢いを増しつつあるので縦笛で対抗します。
一度HDクラッシュで消えてしまいましたが、気力と妄想力で一から書き直しました。
では、どうぞ。

172 :MY HERO:04/07/24 10:11 ID:oEcaQy4M
「よし! 昼休みになった。いざゆかん。八雲君の元へ!」
 昼休みの一コマ。八雲のクラスへ通う花井。
「花井君、毎日毎日。よく懲りないわよねー」
 相変わらず他人の恋にはうるさい沢近。
「あーいうのを千鳥足っていうんだったかしら」
「それを言うなら、勇み足だろ」
 アタシは思わず突っ込んでしまった。
「まー。そうとも言うわね。幼馴染として何か忠告してあげたらどう?」
「他人の恋愛に口出しする趣味は無いよ」
 返事があまりにも素っ気無かったので、沢近は意地悪な言葉を投げかけてきた。
「さすがにあんな男じゃあ、ヤキモチも沸かないか」
「なっ、なんで私が――」
 思わず顔が赤くなってしまった。バレては無いだろうが……。
「アイツは悪いヤツじゃないけど、そもそも恋愛感情なんて無いから」
 そう取り繕うものの、本当はそういう感情を持ったことが無いわけでも無かった。
 あれはそう、中学一年生のときのキャンプのこと――。


173 :MY HERO:04/07/24 10:11 ID:oEcaQy4M
 キャンプ場には近くに川が流れており、自由時間には泳ぐことができた。
川は小さな滝をはさんで上流と下流に分かれており、上流は特に流れが急なために
遊泳禁止となっていた。
 アタシは下流で友達と遊んでいたが、クラスの男子達から誘いがあった。
「周防さん、先輩から教えてもらった飛び込みの穴場が上流にあるらしいんだけど
 一緒に行かね?」
「おう、いくいく」
 アタシは面白そうだったので随分と乗り気だった。
「花井は来ないのか?」
「あそこは遊泳禁止だと言われただろう。危ないから行くなよ」
 花井は学級委員長として周囲の監視に務めている。
――ちぇ、相変わらず真面目なヤツ。
 花井の監視から逃れるように男子達数名と上流へ向かった。

――高ェェ。
 飛び込み台となっている岩場は水面から5メートル近くあり、実際に目前にすると
あまりの高さに皆尻込みしだした。
「お前から行けよ」
「そっちこそ、ビビってんじゃねぇか?」
 男子達は順番を押し付けあっている。このままではラチがあかない。
 アタシは意を決して、先頭を切って飛び込んだ――。

174 :MY HERO:04/07/24 10:12 ID:oEcaQy4M
 落下感覚に身を切る風が心地よい。だがそれも束の間、眼前に水面が迫ってきた。
激しい水飛沫を上げ、視界は一気に水中へと移る。水底に広がる光はどこまでも果て
しなく、しかしその変わらない明るさ故にどこまでも底が無いことを示していた。
 言いようの無い不安にとらわれ、急いで水面へと上がる。水面に顔を出してホッと
呼吸をつく暇もなく、今度は急流がアタシを襲った。

 しまった。アタシは泳げないんだった――。

 いつも行動したあとに後悔する。アタシの悪い癖だ。なんとか水面に顔を出すのが
精一杯で成す術もなく下流へ押し流されていく……。
このまま流されてしまうと滝がある。その前にところどころに出ている岩にぶつかって
気を失ってしまうかもしれない。
 アタシはパニックになりながらも、必死に急流の裂け目となっている岩の一つに
しがみつくことができた。だが、水面から申し訳なさそうに顔を出しているその岩は
苔が生えてツルツルと滑る上に抵抗する物体を見つけた川の流れは容赦なくアタシを
叩きつける。
 クラスメイトたちはどうして良いかわからずオロオロするばかり。

 もうダメだ――。
 そのとき、下流から滝をも昇らんとする勢いで遡ってくる男の姿があった――。

175 :MY HERO:04/07/24 10:12 ID:oEcaQy4M
 まるで物理法則を無視しているかのように見る見る近づいてくる。その姿は遠めから
でもわかるアタシがよく見慣れた男だった。
「花井!」
「来い、周防!」
 あと数メートルというところまで二人の距離は迫り、アタシは意を決して岩から手を
離した。呼吸はぴったり、アタシは花井の背中に乗り移った。
 花井は一瞬バランスを崩したがそれでも急流に負けず、また無駄に逆らうことなく
アタシを乗せたまま川岸へとたどり着いた。
 さきほどまでの緊張感は拭い去られ、昔と比べてまた一回り大きくなった花井の背中
に安心感を感じていた。ふと我に帰るとこの頃ふくらんできた胸がその背中に密着して
いることが急に恥ずかしくなり、慌てて離れる。
 周囲からはクラスメイトたちの拍手喝采が沸き起こった。
「学級委員長として当然のことをしたまでだ。ハッハッハ!」
 花井はそう言っていつものように振舞ったが、アタシの胸はこれまでに無い高鳴りを
感じていた。
 学級委員長として……か。でもアタシにはそれだけじゃない。花井の背中につかまった
瞬間、不安は消えた。思い返すとこういうことは一度や二度じゃない。私が羽目を外して
ピンチになったとき、必ずコイツが助けてくれた。
 コイツほどの男はそうはいない。何故、今まで気付かなかったんだろう――。


176 :MY HERO:04/07/24 10:13 ID:oEcaQy4M
 その後引率の先生達にこっぴどくしかられ、連帯責任として学級委員長の花井も
一緒に薪拾いを命じられた。
 他のみんなは食事の準備のため、アタシ達は少し離れた林の中で二人きり……。
「まったくなんで僕がこんなことを……」
 花井は口ではブツブツ言いながらもせっせと手を動かしている。
「花井、ゴメン。さっきはありがとな」
「あぁ、いつものことだ。もう慣れたよ」
「いや、そうじゃないんだ……」

――どうやら、今更ながら気付いたんだ。アタシにはお前が大事なんだって……。
 そう言おうとしたが、なかなか言葉が出ない。なんでこんなときに限って勇気が
出ないんだろう……。
 花井の顔を見つめたまま、長い時間が過ぎた。いや、そう思えただけでそんなに
時間はかかってなかったのかも知れない。
 沈黙を破るように花井の方から言葉を投げかけてきた。
「周防、お前――」
 アタシの言いたいことを悟ってくれたんだろうか、花井はアタシの肩に手を置いて
真っ直ぐ見つめていた。

――いいんだ。私の片思いでもいいから……。言ってくれ、花井……。

177 :MY HERO:04/07/24 10:15 ID:oEcaQy4M
 花井の口がゆっくりと開く……。
「別に重くなったからって気にすることは無いぞ」
 ゴス――。
「真顔で言うな!」

――前言撤回

178 :空振り派:04/07/24 10:15 ID:oEcaQy4M
完了です。
元ネタは海での会話ですね。
書き直した分、心理描写とかいろいろ見直してかなり良くなったと思います。
まだまだ他の萌え神にはかないませんが。


179 :Classical名無しさん:04/07/24 16:23 ID:mwh0D2jM
(・∀・)イイヨーイイヨー

180 :Classical名無しさん:04/07/24 17:19 ID:q/YUQsrM
>>178
GJ!
縦笛派じゃないけど普通に面白かったっす

何より、俺がIFスレでレスを返すのはこれが初めて!
俺の記念すべきレス1回目に選ばれた名誉あるSSだ!

181 :Classical名無しさん:04/07/24 20:42 ID:lBUBd1ag
>>180
おまいはいったいどんな神なんだw
>>178
GJ!読みやすかったです。これからも楽しみにしてマス

182 :Classical名無しさん:04/07/24 23:43 ID:oGnDjmJ.
桃井はるこは俺の嫁

183 :Classical名無しさん:04/07/25 00:49 ID:gFdEljq2
>>178
久々の縦笛分、補給させていただきました
どの派閥でも書けるあなたの腕が羨ましい…

>>180>>181
スマン、かなりワラタ

184 :Classical名無しさん:04/07/25 14:42 ID:XnJ/So3s
test

185 :Classical名無しさん:04/07/25 20:57 ID:5VHw//HU
誰かネタふって

186 :Classical名無しさん:04/07/25 21:30 ID:n6NDC2rU
ネタはふれないけど、ネタになりそうな質問していい?
原作では修学旅行まだしてないけど、もしするとしたら、
どこに行くと思う?
当分原作では修学旅行しそうにないんで書こうとしたけど
書けなかった。

187 :Classical名無しさん:04/07/25 21:31 ID:ox4cNqrw
ネタが欲しいか!ネタが欲しいなら

クレテヤル

1、肝試しのとき、天満をオブって走る播磨を追いかける沢近と八雲の裏話
2、天王寺にボコボコにされた播磨を探す絃子さん、その後見つけて部屋に連れて帰るまでのくだり

なかなかネタはみんなに使われているから残っているのとなるとこの程度しか

188 :Classical名無しさん:04/07/25 21:37 ID:2vzK3oy2
播磨と想いが通じ合い、恋人になったまではよかったけど、教師と生徒という立場があるのであまりベタベタできずに不満な絃子さん。
で、学校で我慢はするものの、何かにつけ播磨が沢近や八雲、姉ヶ崎先生と仲良さそうにしているのを見て焼きもち妬く絃子さん。
結局我慢出来なくなって、学校で隠れていちゃいちゃしているところを笹倉先生に見つかってあたふたする絃子さん。

こんな絃子さんが読みたいです、先生!

189 :Classical名無しさん:04/07/25 21:41 ID:KsXUl.Hs
俺も読みたいけどそういうこと言うのはマナー違反だしキリがないからやめとこう、な。
萌えスレで好きなだけぶちまけてくれ、あそこはSS職人さん達も見てるっぽいし。

190 :Classical名無しさん:04/07/25 21:44 ID:mCDTDnrw
夏だけに怪談物を書きたいけど難しいです

191 :Classical名無しさん:04/07/25 21:46 ID:7VBN8m9c
雑談も程々にな
この板は全然落ちないからまったり待とうや

192 :Classical名無しさん:04/07/25 22:03 ID:gFdEljq2
>>189
同意
クズリ氏の晶SSもあそこを見て思いついたらしいし



193 :Classical名無しさん:04/07/25 22:55 ID:2Ybe9IL2
軽い暇つぶしな作品程度にどうぞ

194 :Classical名無しさん:04/07/25 23:00 ID:2Ybe9IL2

 秋もくれる肌寒い一日の昼、塚本八雲は小学校の帰りにふと道端の日向で身をかがめている猫を見止めた。
 ふらふらとその猫に近寄り、身をかがめて覗き込む、全身が黒くて喉から胸にかけて白い毛がはえた小さな猫だった。
野良猫なのかあまりしっかりとした体つきもしていなく、よく見かける猫たちに比べたら明らかに小柄な体躯をしている。
 黒猫が気づいて、眠たげに顔をあげた。
自分よりも大きな頭が覗き込んでいるのに驚いて身をたじろぐが、威嚇の様子は見せない。よっぽど臆病なのだろう、八雲はそう考えた。
 そんな臆病な猫は、媚びるようににゃあと鳴いた。八雲が手をのばしても逃げようとしなかった。
頭をなでて喉をなでてやると、口の中でごろごろと鳴いた。

195 :Classical名無しさん:04/07/25 23:01 ID:2Ybe9IL2
仕舞いに、八雲が危害を加える事はしないと判断すると、仰向けになって無防備な腹をさらした。
 そんな懐っこい猫にたいそう気に召した八雲は、抱きかかえるとそのまま家に駆け出していた。
 八雲は誰にも悟られないようその猫を自分の部屋に入れると、手早く鍵をかけてその猫と遊んだ。
 その猫に名前はなかった。あえてつける必要もなかったのかもしれない。
八雲が呼べば来るし、向こうが呼べば八雲がいく。自分の弟ができたみたいで八雲はうれしそうに笑ってじゃれていた。
 夕食も家族に気づかれないようにそっと残して、その小さな猫に与えた。
 誰にも知られない自分だけの秘密に、八雲はなんともいえない背徳的な快感を覚えて、いつばれるかとスリルを楽しんでいた。

196 :Classical名無しさん:04/07/25 23:03 ID:2Ybe9IL2
八雲の部屋はその年の女の子の部屋としては少し殺風景だったかもしれない。
姉の塚本天満は、まさしく遊ぶを形容する少女で、親はよく、ぬいぐるみやおもちゃを買い与えていた。
友達を呼んできては、ぬいぐるみを囲んで楽しく笑っているのを扉の隙間から何度も八雲は覗いていた。
 八雲はあまりクラスメートを呼んで遊ぼうと考えた事はなかった。
勉強も運動もできて、誰からも人気があったけれど、人付き合いは疎遠だった。
勉強ができたから、親はよく図鑑や勉強をする為のテキストなどを買ってくれた。
本人もそれを望んでいた。たまには欲しいと思ったけれど、それを表して主張できるほどの自主性を持ちえていない。
 そんな彼女にとって、この猫はいわばぬいぐるみみたいなものだった。
八雲の小さな欲望を満たす良くできたぬいぐるみだった。
おいでといえば、にゃあと鳴いてくる。何かして欲しい時にはむこうがにゃあと鳴いて八雲がいく。
 ぬいぐるみより手間はかかるけれど、八雲はそれが楽しかった。
内緒でトイレも作って、ダンボールをくりぬいて小さな小屋まで作ってやった。
 姉たちには勝手に部屋に入るなと念入りに頼んで、自分と猫の空間を独り占めにしようとした。

197 :Classical名無しさん:04/07/25 23:04 ID:2Ybe9IL2
ある日八雲は学校に行くよりも、猫と遊びたくて、体調が悪いと嘘を突いて自分の部屋に閉じこもった。
 小さな猫はしきりに窓の桟を引っかいては、外に出ろと八雲に訴える。
初めは遊べばそんな気もなくなるだろうと思って、遊んでいたが次第に機嫌が悪くなるのが良く分かった。
とうとう八雲が呼んでもそっぽを向いてふてねをした。
大きな欠伸をこれ見よがしにしてみて、呼べども尻尾を振ってにゃあと鳴くだけだった。
 根負けした八雲は猫をそっと抱きかかえて、足音を殺して家を抜け出した。
 秋も北風に尻尾を巻いて、冬の足音が迫るような寒い日。八雲の腕の中で小さな猫は身を丸くしている。
あまりの寒さに驚いたのだろうか、身じろぎ一つしない。八雲の腕の中から何度か外界を眺めたけれど、すぐに頭を引っ込めてしまう。
 八雲はこの猫がどこに行きたいのかも分からないから、自分の知っているところをできるだけまわろうとしてみたけれど、寒さに負けた。
 夕暮れで、日もしっかりと傾いている。結局この小さな猫は、寒さに縮こまるだけで、外に出たいのはどういった理由なのかさっぱりわからない。
白い息を上げながら八雲は大切に自分の弟を腕の中に擁く。
 軽快に足音をならして、アスファルトを踏みしめる。小さな唇から白い息を吐き出して、普段は色の薄い頬がりんごのようにあかい。
大きくせり出す塀や並木がリズムよく後ろに流れるなか、八雲は夕焼けに追い立てられるように走っていた。
知らず知らずのうちにいつも通う通学路を走っていることに気づかない。
無意識のうちに走り、無意識に角を曲がる。横断歩道を渡り終えた頃に、見慣れた背中に足が止まった。
 姉の天満が友達と下校をしている。自分が擁いているのは大事な秘密。声をあげてしまった。聞きなれた声に振り向く姉。
 八雲は見つかるまいと踵を返した。小さな歩幅で駆け出した。天満が大きな声で何かを叫ぶ。少女の耳には届かない。小さな猫がにゃあと鳴いて八雲の腕から飛び降りた。息を呑み立ち止まって小さな猫が弧を描いて飛ぶ様を手で追いかける。
 猫は車の陰に呑み込まれた


198 :Classical名無しさん:04/07/25 23:06 ID:2Ybe9IL2
「・・・・ん」
ベッドに横になったつもりが眠っていたようだ。そう八雲は考えて身を起こしながら、目覚し時計の針を見た。まだ一時間くらいしかたってない。
「なつかしい夢。」
ポツリと独白、さみしさを帯びている。
『ああああ!!!』
何かをひっくり返すような音がして、オマケ程度に悲鳴が付いてくる。八雲は部屋から飛び出して音のした方へ向かった。
「姉さん、大丈夫?」
古い荷物がほこりといっしょにひっくり返って、その中に塚本天満が突っ伏していた。
「や、八雲、アレ知らないアレ!?」
まるでこの世の終わりの形相で必死になってほこりを引っ掻き回す。さすがの八雲もアレと言われただけでは何が目的なのか皆目見当がつかない。
「姉さん、アレって、何?」
「ほらアレだよアレ、写真入れるの!なんだったけ名前が出てこない・・・」
「えっと、フォトフレーム・・・」
「ちがう、もっとたくさん入れるやつ!」
「・・・アルバム?」
「そう、そうアルバム!!小さい頃の写真が入ってるの知らない?」
「えっと、確かこの箱の中に、」
八雲がいくつかの箱をどかすと、重みのあるダンボールとそのとなりに古ぼけた小さなぬいぐるみがあった。天満はダンボールに飛びつき残飯あさりをする犬みたいに顔を突っ込んだ。
「あった、よかった!!ありがとう八雲、これで烏丸君とルンルンル〜♪」
望みの品を手に入れて、妙な鼻歌と満面の笑顔で小躍りをする天満。八雲はなつかしそうにそのぬいぐるみに手をのばした。


199 :Classical名無しさん:04/07/25 23:07 ID:2Ybe9IL2
「あ、それ、なつかしい。確かわたしが八雲に上げたぬいぐるみだよね。ちっちゃい時に八雲黙って猫飼ってて、その猫が確か死んじゃって、八雲が珍しく大泣きしてしょうがなかったから・・・」
「・・・うん」
八雲は頬を赤らめて小さく頷いた。
―姉さん、覚えててくれたんだ。
 八雲は月明かりにその黒いぬいぐるみをかかげて眺めていた。ずいぶんと間抜けな顔をした、変な猫だった。そして、肝心なものがその顔から欠落している。
「あ、このぬいぐるみ、あの子に似てる。」
その部分を指でなぞって八雲はポツリと呟いた
にゃあ
暗がりからぼんやりと目を光らせて伊織が八雲のひざに飛び乗る。その仄かな暖かさに八雲の唇がほころびた。
「伊織、ほら、新しいお友達・・・」
八雲はそっと伊織の目の前に、間抜けな顔をしたぬいぐるみを置いてやった。途端伊織は身を翻して闇の中に身を潜めてじっと、新しい友達を眺めている。
「やっぱ驚いちゃったかな。」
伊織の意に叶わなかったぬいぐるみを八雲はあの時のように腕に擁いた。
小さな唇のほころびと、りんごのように染まった頬、あの時とは違うけれど八雲はあの時と同じような心持になる。そして心の中で小さく呟く。
―だって、この子、右目がないものね・・・

 ―Il gatto miagola―



200 :Classical名無しさん:04/07/25 23:10 ID:2Ybe9IL2
以上
萌えとは明らかに違うんで、そういう需要があったらわるかった
甘ったるいのが多いと思ったから、たまにはこういうのと思って書いてみたが・・・

201 :Classical名無しさん:04/07/25 23:13 ID:2Ybe9IL2
・・・いまさらだが、読みにくいな。
スマソ

202 :Classical名無しさん:04/07/26 00:30 ID:akVLd6TM
フラットな感じ。いいと思うよ。
箸休めってやつ?
なくても困らないかもしれないが、ときどき無性に欲しくなる。

203 :クズリ:04/07/26 01:18 ID:nUoXiSLg
 周防美琴BD記念SS、投下します。超短いけど、勘弁。

204 :Birthday... Mikoto Suou:04/07/26 01:20 ID:nUoXiSLg
 朝、目が覚めるたびに思い出すのはあの人のこと。
 ベッドから起き上がる前に、勉強机に目をやる。そこでほんの一年と少し前、確かに同じ時を過
ごした先輩は、今はこの街にいない。
 枕元で充電していた携帯電話をチェックする。
 あの人からの連絡は入っていない。
 当然だ。きっと彼は、自分の誕生日のことなど知らない。
 だがそれでも……期待に胸は震えてしまうのだ。

 幼い頃、夏休みの間に誕生日を迎えることが大嫌いだった。
 例え誕生会を企画しても、友人達は家族旅行に出かけたりしていて、来る人の数は少なかった。
 それでも来てくれた何人かの友達と騒ぎながら、ほんの少しだけ寂しい思いをしていたことも、
しかし今は良い思い出に変わっている。
 用意するのは料理とアルコール。自分の誕生日なのに、と母に呆れられながらも、料理を作って
彼女達を待つ。
 ピンポーン
 鳴るチャイムにいそいそと彼女は玄関に向かう。
 扉の向こうに待っていたのは、いつもの面子。それぞれにプレゼントを手に携えている。
 高校生にもなって誕生日パーティーなんて、と思わなくもない。
 だが友人達は、それでも集まってくれる。もしかしたらその友情が嬉しくて、そしてある意味、
幼い頃の寂しさを晴らすために、こうして開いているのかもしれないな。
 心の片隅でそんなことを思いながら、美琴は笑顔で彼女らを招き入れた。

 夕闇もとっぷりとふけ、宴の後のどこか侘しい時間を、美琴は一人、自室で過ごしていた。
 抜けきっていないアルコールに、体が熱い。その耳の奥にはまだ、縦笛の音色が残っている。
 考えてみれば、あいつは皆勤賞なんだよな。そっと胸の内で呟いた言葉と共に浮かぶのは、花井
春樹の顔。知り合ってからこれまで、彼が彼女の誕生日パーティーを欠席したことなどない。
 その事実と縦笛から、何かが心の奥から浮かび上がろうとしたが、彼女はそれを探ろうとはしな
かった。
 代わりに手に取るのは、携帯電話。
 相変わらず、連絡は入っていない。ほんのわずかに感じる失望、そんな自分に苦笑する。
「神津先輩、元気にしてるかな」
 一月もしないうちに訪れる悲しい結末を知らぬまま、美琴は想いを抱いて眠りに落ちていった。

205 :クズリ:04/07/26 01:24 ID:nUoXiSLg
 以上。周防美琴誕生日記念SSでした。
 あんまり記念になってないかもしれませんけれど……時期的にこんなところですよね、確か。

206 :Classical名無しさん:04/07/26 01:29 ID:gFdEljq2
そういえば先輩に振られたのは夏休み中でしたっけ
モノローグ調で、美琴の心情がすごく分かりやすいです

207 :クズリ:04/07/26 01:48 ID:nUoXiSLg
 すいません。もう一編いいですか?
 最初はこっちにしようと考えてたんですけれど、色々と制約事(美琴の誕生日パーティー
のこととか、先輩のこととかの縛り)に気付いてしまって、新たなのを書いたのが上のもの
でした。

 でもお蔵入りさせるのももったいないし、ということで、一足早い来年、18歳の美琴BD
SSです。
 意味不明な文章で申し訳ない。

208 :Birthday... Mikoto Suou...18:04/07/26 01:48 ID:nUoXiSLg
 日付が変わると同時に送られてきたメールに、美琴はベッドの上に身を起こす。
 誰からか、と開けてみれば、
『ミコチン、ハッピーバースデー。今度、お祝いのデートしようね〜』
 今鳥恭介からのものだった。
 呆れ半分に消そうとするが、時計を見て思い直す。
 ……こいつ、このためにわざわざ起きてたのか……意外にマメなやつ。
 そんなことを思いながら、作った返信の内容は、
『サンキュ。とうとう18になっちまったよ。デートはパス、それとミコチンゆーな』

 高校三年生の夏にもなると、悠長に誕生日パーティーとも言えなくなって、今年は何も
企画していない。それでも、
「はい、美琴ちゃん。これプレゼント」
「ほら、これ、私から。感謝しなさいよ」
「美琴さん、来年こそは私達とじゃなくて、男と二人っきりで過ごしてね」
「だー、高野、何言ってるんだよ」
 喫茶店エルカドに集まったいつものメンバー。わいわいとはしゃぎながら、美琴は改めて思う。
 この親友達と巡り合えて、本当に良かった、と。

 夕刻。美琴は道場で子供達から祝われていた。
 それぞれがなけなしの小遣いを集めて買ったのだろうプレゼントは、真白のタオル。そ
の気持ちが嬉しくて、彼女は全員の頭を撫でてやった。
 そして夜。いつの間にか酒盛りに変わった誕生日会で、彼女は一人の男をつかまえる。
「花井」
「何だ、周防」
「どうせこれ、企画したのお前だろ?」
 しどろもどろに言い訳をする彼に、酔いの力も手伝って、美琴は軽く抱きついた。
「す、周防」
「サンキュな。すげー嬉しいよ」
 でも、もう縦笛は勘弁な。笑って彼から身を離した彼女は、そのまま庭に出る。
 月を見上げながら思い出すのは、高野晶の言葉。
 来年、か。ふと胸に浮かび上がった男の面影を、彼女はそっと胸に仕舞いこんだ。

209 :クズリ:04/07/26 01:51 ID:nUoXiSLg
 先輩のことがなければ、そして美琴が誕生日パーティーを開いてなければ、別に
17歳の誕生日がこれでも良かったんですけれどね。

 まあどうしても、今鳥と美琴、女性陣と美琴、花井と美琴の絡みが書いてみたかった
んですよ。

 お目汚ししてしまい、申し訳ありませんでした。

210 :Classical名無しさん:04/07/26 02:11 ID:rYA9RhSw
>>209
GJ! どちらも楽しませていただきました*´Д`)ハァハァ
花井に軽く抱きつくミコチンに激しく萌えますた

211 :Classical名無しさん:04/07/26 02:20 ID:9vGUIyyE
「縦笛は勘弁な。」という発言に派閥争いを連想してちとワラタ。

212 :Classical名無しさん:04/07/26 08:40 ID:6UWrZDNY
周防美琴。通称ミコチン。
武道の天才だ。花井でも今鳥でもブン殴ってみせらぁ。
でも縦笛だけは勘弁な。

213 :Classical名無しさん:04/07/26 08:50 ID:rHlNNgXs
 はじめに、『嘘つきは…』及び『My Gift…』の続きを待っている方がもしいらっしゃいましたら
ごめんなさい。無理です…、書けません。
 元々一話で終わるつもりで突発的に書いたので、これ以上どう話をつなげていけばいいか、
さっぱりわかりません。ですので、申し訳ありませんが続きは皆様の頭の中で補完して下さい。

 お詫びと美琴嬢の誕生日記念を兼ねまして、ひとつ投下させていただきます。
設定といたしましては、上の二作品の後、『いろいろ』あって晴れて恋人同士になった後に
初めて迎えた誕生日当日だと思って下さい。名前で呼び合ってますし、サングラスは用済みです。
 二人とも性格が違うと思いますが、そこは恋は良くも悪くも人を変えるって事で
大目に見て下さい。
 それと、最初に書いたものが、かなりシリアスで重い話になってしまったため、手直ししたら
こんな話になってしまいました。
 そのため文のつながり、および文章全体の流れに、多々、おかしな所があると思います。
気にしないで頂けると嬉しいです。


  タイトルは『離したくない物』です


(クズリ氏の短いながら綺麗にまとめられた秀作の後に、妄想全開の拙作でスミマセン……)



214 :Classical名無しさん:04/07/26 08:50 ID:rHlNNgXs
 空を見上げると、薄い雲に覆われた月と星空が目に入る。
 日中の暑さと喧騒が嘘だったかのように涼しい風が吹き、静かだ。聞こえてくる音といえば
近所から漏れてくる団欒の声や遠い車の音、そして葉ずれの音と虫の声くらいなものだ。
 玄関先に立ち、しばらくそれらの音をなんとなく聞きながら空を眺めていると、聞き覚えのある
エンジン音が聞こえてきた。
 緩みそうになる頬を引き締め空を見上げたまま、エンジン音が近づき、あたしの側で止まるのを
待って、そっけなく聞こえるように言い放つ。
「…二十分の遅刻だぞ、拳児」
「わ、わりぃ…美琴」
 焦ったように謝罪してくる声を聞いて視線を拳児に向けると、でかい図体に似合わないすがり
つくような目であたしを見ていた。
 そんな拳児の姿にあたしは、堪えきれず笑い声を上げた―――


「昼間は悪かったな…参加できなくて……」
 バイクの後ろに跨り、背中にしがみ付いているあたしにそう言ってきた。
「いいって、どうせ誕生会にかこつけて騒いでただけだし…。普段ならともかく、そんなところで
二人揃ってたら、からかうための格好の的になってただけさ…」
 …ま、結局二人が一人になっただけでからかわれることには変わりなかったけどな……
 昼の誕生会に集まってくれた友人達の騒ぐ姿が思い出され、思わず笑みがこぼれた。
「ん、どうかしたのか?」
 そんなあたしのかすかに笑みを背中越しに感じ取ったのか、そう尋ねてきた。
「ん、なんでもない。ただ…今日のうちに拳児がこうしてお祝いしてくれるってだけで嬉しいって
思っちまっただけさ…」
「そ、そーか?」
 あたしの言葉に照れたような声をあげる拳児の背中に、さらに強くしがみ付き、目を瞑った。
 ……久しぶりだな…こうして後ろに乗るの……
 感じられるぬくもりを心地よく感じながら、今日までのことを思い出してみた。



215 :Classical名無しさん:04/07/26 08:51 ID:rHlNNgXs
 いろいろあった末、晴れて拳児と恋人同士になれたあたしは、デートしたり一緒に勉強したり、
ただ一緒に居るだけだったりと、ほとんど毎日を一緒に過ごした。
 しかし、三週間くらい前にしたデート以降、拳児とはろくに一緒にいる事ができなかった。学校で
いつも通りだったが、放課後は道場での練習や期末試験の勉強もしなければならず、一緒に帰ったり
デートしたりという事はできなかった。夏休みに入って一緒に居られる時間を作ろうとしたが、拳児の
方がはずせない用事があったらしく、会うどころか電話で話すこともできなかった。
 たった数日会っていないだけで、心配と不安と、そして寂しい思いで押しつぶされそうだった。
 その反動で、数日振りの電話で拳児に『誕生会に参加できねーけど、夜に二人だけでお祝いをしたい』
と言われた時は、すごい幸福感に包まれ電話を切った後もしばらくニヤニヤしてしまい、お袋に散々
からかわれてしまった。――親父が出かけてたのが救いだった。
 花井の道場での誕生会の最中も、夜の事を考えると頬が緩むのが押さえきれなかった。
 沢近達ははじめ不気味そうに見ていたが、拳児が居ないのに嬉しそうにしているあたしに何かを
悟ったみたいだった。会の最中、何かにつけてからかわれっぱなしだった。
 けど、からかってくる友人達を邪険にできなかった。あたしのせいで四人の関係が壊れてしまいそう
になった経緯があっても、あたしを親友と思ってくれている証だと思えたから――
 沢近とは衝突した。以前のように誤解というわけではなかったからお互いに引かず、表面上仲の良い
気まずい日々が続いた。塚本に対しても、拳児が塚本を好きだと知ってから嫉妬のせいできつい態度を
とってしまった。
 それでもこうして気を許しあえる親友のままでいられる事が嬉しかった。いつまでも親友として、
いろんなことを言い合っていけたらと思った。
 ――しかし、高野が帰り際に言った、
「まだ薬局は開いているはずだから、準備を怠らないようにね…」
 という言葉は、いくら親友だとしても、立ち入って来過ぎなんじゃないのかと思った―――
 

 

216 :Classical名無しさん:04/07/26 08:52 ID:rHlNNgXs
「着いたぜ」
 その言葉に目を開けると、既に拳児の住んでるマンションに着いていた。頭を振って気分を切り
替え、バイクを降りる。
「……刑部先生の迷惑になったりしねーか?」
「ん…ああ、それは大丈夫だ。絃子のやつなら『こんな日に邪魔するほど野暮じゃない』とか言って、
笹倉先生んとこに行ってくるって夕方頃出かけたよ」
 部屋へと向かいながらなんとなく聞くと、そんな答えが返ってきた。
 ……って事は…今夜は二人っきりって事か!?…
 そう考え期待と不安に高まる胸を抑えながら、鞄の中身を思い出す。
「何してんだ? 早く来いよ」
 気がつくと、拳児はすでに扉を開け、部屋の中に居た。
 あたしは気づかれないように小さな深呼吸を一つすると、覚悟を決めて足を踏み入れた。


 部屋に入ってリビングに行くと窓際のテ−ブルの上に小さなケーキと簡単な料理が並べられていた。
「…ホントはもっとちゃんとしたケーキと料理か、レストランを用意できれば良かったんだが……」
「何言ってんだよ、そんなことねーって。…さっきも言ったけど、拳児とこうして過ごせるだけで
嬉しいから……」
 申し訳なさそうに言う拳児にそう言ってやった。その言葉に嘘は無い。堅苦しいのは苦手だし、
拳児と一緒に過ごせると考えただけで、豪華なケーキや料理なんてそんなことは些細なことに思える。
 …それに、昼に散々食べさせられたからこれ以上食べたら後が怖ーしな……
 そんなことはおくびにも出さないようにしながら先にソファーに座り、拳児が蝋燭に火をつけて
電気を消してから向かい側に腰を下ろすのを待って、一気に火を吹き消した。
「…誕生日おめでとう、美琴…」
「…ありがと…拳児…」
 電気をつけ、グラスを軽く鳴らし乾杯をした―――



217 :Classical名無しさん:04/07/26 08:53 ID:rHlNNgXs
 しばらく今日の誕生会での様子など、他愛も無い話をしながら食事をした。あらかた食べ終わると、
拳児はジャケットのポケットから長方形の形をした何かを取り出し、あたしの方へと差し出してきた。
「…ま、なんつーか…誕生日プレゼントってやつだ…」
「……ありがとう……なあ、開けてみてもいいか?」
 拳児の了解を得て、丁寧に包装をはがす。箱のふたを開けると、中には腕時計が入っていた。
「これって……」
「この間のデートん時、これ気に入ってたみたいだったからさ……。他に喜んでもらえそうな
プレゼントも思い浮かばなかったし…」
 確かに気に入っていたが、今使っているのが使えなくなったわけでもないし、なにより値段が
値段なためにあきらめた物だった。ましてや、万年金欠状態の拳児に買える余裕があるとは思えない。
 ……つまり…しばらく会えなかったのはこのためってわけか? まったく……
 会えなかったのも全部あたしの事を想っての事だと思うと嬉しくなった。その思いも込めて改めて
礼を言うために拳児の方を見ると、目的を達成したとでも言うように、満足げな顔をしている。


218 :Classical名無しさん:04/07/26 08:53 ID:rHlNNgXs
 …なに礼を聞く前に満足げな顔してんだよ…あたしに寂しい思いをさせたくせに!…
 会えなかった間に感じた寂しさ等が思い出された。その原因の満足げな顔が癪に障ったあたしは
手を伸ばし、拳児の鼻を強くひねり上げ、すぐ離す。
「…いってーなー! なにすんだよ、一体!!」 
「なにすんだじゃねーよ! どーせこれ買うためにバイト増やしてたんだろ? まったく、何も
言ってくんなかったから心配したじゃねーか。…それに、会うことも電話で話すこともできなくて…
すげー寂しかったんだからな……」
 そう寂しそうに言うと、虚を突かれたようにハッとしてあたしを見た。そして、申し訳なさそうな
顔をして口を開いた。
「…そのーわりぃ、許してくれ…。お前が喜んでくれるだろーって事しか考えてなかった。悲しま
せる事になるなんて思ってなかった。…もう黙って連絡取れなくなったりしねーからさ…」
「……まあいいや、今回は許してやるか。…過程はどうあれ、『あたしを喜ばせるため』ってのが
嬉しかったし…」
 言葉よりも表情と伝わってくる気持ちに免じて許してやると、拳児はホントに安堵したように
ため息をついた。そして、
「いやー、ホント良かったぜ。俺にとってお前は一番頼りにしてる必要な存在だからな、お前に
嫌われたらどうしようかと思ったぜ。いやー、良かった良かった…」
 と、そう言った。



219 :Classical名無しさん:04/07/26 08:54 ID:rHlNNgXs
「…頼りに…してる?」
「ん…ああ、そーだぜ。ほら、俺ってバカだしよく突っ走っちまうからな。今回もそのせいでお前に
迷惑かけたわけだし…。
 けど…お前が居てくれれば、バカやろうとしたら止めてくれるだろーし、やっちまったらやっち
まったで今日みてーに怒ってくれるだろーしな。ホントに頼りにしてるぜ」
 意外な台詞を聞いたという思いで返したあたしの問いに、何でも無い事のようにそう答える。

 好き合ってるのはわかってた…嘘のつくのが苦手な拳児と、何度も言葉で確認し合ったから。けど、
『頼りにしてる』のはあたしだけだと思ってた。
 あたしの場合、頭脳面はともかく、拳児の肉体的な強さと真っ直ぐな心を何度も頼り、助けられてきた。
それに対して、拳児はもともと一匹狼的な男だから大抵の事は一人でしようとするため、あたしを頼って
いるなんて思いもしなかった。
 頼りにされていたという事がすごく嬉しく思うと同時に、拳児がとても愛しく思えてきた。
 それと同時に、テーブルを挟んだこの距離がもどかしく思えた。拳児と直接触れてそのぬくもりを
感じたいという欲求が湧き上がってくる。
 
 あたしは無言のままライターで残っていたケーキの蝋燭に火を付け直し、ソファーから立ち上がると
電気を消した。
「お、おい!」
 戸惑いの声を上げる拳児の側に行き、膝の間に腰を下ろし、ゆっくりと拳児にもたれかかった。
 拳児はどうしていいかわからなかったらしく、手の置き場を探してうろうろさせていた。やがて、
ゆっくりとあたしの体に腕を回し、抱きしめてくれた。
 しっかりと抱きしめられている事を確認したあたしは、体の力を抜き身をゆだねた―――




220 :Classical名無しさん:04/07/26 08:55 ID:rHlNNgXs


 …暖かい、このぬくもり……とても安心できる……
 ゆらゆらと揺れる頼りない蝋燭の炎に照らされながら、そんな事を考えた。
 世話焼きの性格と上背の高さのせいで、普段は周りから頼られている。それが嫌いなわけではないが、
頼られてばかりいる反動か、密かに、恋人ができたらこうして何もかもをゆだねて包まれるように抱き
締められたいと思っていた。(…もっとも、拳児を好きになってから思った事なので、拳児と恋人に
なれたら、が正しいのかもしれないが)
 それが叶えられた。しかし、欲張りなもので、叶えられただけでは満足できない。これからもずっと
してもらいたいと思えてきた。
 …贔屓目もあるだろうが、こうして全てをゆだねられるのは拳児だけだろうな…
 体の大きさだけで言うなら花井にもできる事だろうけど、あいつは気兼ねする必要の無い相手では
あるが、こうして全てをゆだねる事ができるの相手ではない。
 …このぬくもりは…拳児は誰にも渡さない…。このぬくもりはあたしだけが得られる特権だ…
 あたしと付き合い始めてから、その真っ直ぐな性格とただの不良じゃないことが周りにも知られた
せい(サングラスをはずしたせいもあるだろうが)で、いろんな女性に関心をそれとなく寄せられている。
沢近だってまだ完全にあきらめたわけではなく、かすかに心残りが有りそうだ。
 …今は拳児の気持ちはあたしに向いているが、とてもじゃないが油断はできない…
 このぬくもりを…なにより、拳児自身を手離さないと決意し、これからのことに思いを馳せた―――
 


221 :Classical名無しさん:04/07/26 08:55 ID:rHlNNgXs


 二人とも無言のまま蝋燭の明かりに照らされていると、不意に、開けっ放しだった窓から入り込んで
きた風が蝋燭の炎を吹き消し、視界が闇に閉ざされる。拳児は電気を付けようとはせず、再び蝋燭に火を
付けようとするが、あたしがその手を止める。
 目が慣れてくれば、窓から差し込んでくる月明かりのおかげで近くのものはちゃんと見える。それ
以外はよく見えないが、今は近くのものが見えればそれで良い。
 そのまま無言で拳児を見上げる。拳児もただあたしを見ている。目を逸らすことなく真っ直ぐに――
 雲が途切れ強くなる月明かりの中、あたしはゆっくりと目を閉じておとがいを逸らした。拳児の顔が
ゆっくりと近づいてくるのがわかる。そして―――唇を重ねた。

「愛してる…拳児」
「愛してるぜ…美琴」
 一度離れ、そう言って微笑みを交し合うと、再度近づき合う―――



  ―――――途切れる事の無く差し込んでくる月明かりが、
                 あたし達二人を祝福してくれているように感じた―――――
 

           ―――To be Continued……―――



222 :Classical名無しさん:04/07/26 08:58 ID:rHlNNgXs
 これ以上書くとエロパロ行きになりそうなんでここで終わりです。
 これくらいならセーフですよね?

 ラブラブは難しいです。
 恋人になるまでの過程を飛ばしてしまったせいでスクランの世界と別物みたいに思えました。
 三作の中で一番の駄作になってしまった気がします。

 私めの鉛筆SSを応援して下さった方々(いるかな?)今まで、ありがとうございました。
 また別の作品でお会いできれば幸いです。

 
 ちなみに、『―――To be Continued……―――』とありますが、続きません!
 二人の物語は終わってないという意味です。続きを希望しないで…
 それと、プレゼントが腕時計なのは特に意味ありません、バイトが必要なほど高価な物
 ということで選びました。アクセサリーにしようとも思いましたが、拳児と今鳥以外
 つけたことないみたいだし、格闘少女ということで却下しました。

223 :Classical名無しさん:04/07/26 10:04 ID:H6nAMYN6
乙です。恋人になるまでの過程だけ書くだけで大分違うと思います。

224 :Classical名無しさん:04/07/26 10:32 ID:gFdEljq2
鉛筆SS乙です
ただ、二人とも性格が違うような…
美琴なら付き合っても相手を名字で呼ぶと思うんですが



225 :Classical名無しさん:04/07/26 10:39 ID:c9oSbI7Y
>>224
お前の脳内設定なんか知るかよ

226 :Classical名無しさん:04/07/26 10:47 ID:9zHzwU5A
鉛筆乙ミコチン
美琴の会えなくて寂しいってところを
もっとたくさん書いてくれたら
後半ももっと盛り上がるのでは?
なにはともあれとりあえずグッジョブ!

227 :Classical名無しさん:04/07/26 11:46 ID:6UWrZDNY
間違って前スレに投下してしまいますた
こっちに投下し直します

228 :Classical名無しさん:04/07/26 11:47 ID:6UWrZDNY
「あっ、播磨」
「ん?…なんだ周防か」
「悪ぃこないだのハンカチ今持ってねぇんだ、また今度で良いか?」
「???」
「いや神社でシャーペンくくりつけたあれ」
「あーあれか、別に急がねぇからいつでも構わn…ってだからあれは俺じゃなくて」
「…いつまでシラを切る気なんだ、神サマ?(w」
「ちっ…」
「お陰でちゃんと最後まで試験受けられたよ…ありがとよ、神サマ」
「なーにいいってことよ、お互い様だしな」
「お互い様?」
「学校来なよって言ってくれたじゃねーか…俺がいなくなったことなんか
誰も気にしてねぇと思ってたから正直あー言ってくれたのは有難かったぜ」
「…そーいうもんか?」
「そーいうもんなんだよ…荷物重そうだな、持ってやるよ」
「いやいいよ別にコレぐらい」
「まぁそう言うなって…それに俺のハンカチ家に置いてあるんだろ?返してもらいに行くついでだよついで」
「お前今さっき急がないって自分で言ったばっかじゃねーかよ…」
「気にすんな気にすんな…えーっと、どっちに曲がれば良いんだ?」
「おいちょっと待てよ播磨…左だ左」

229 :Classical名無しさん:04/07/26 11:48 ID:6UWrZDNY
「それにしても大荷物だな」
「あー…誕生会の準備とかだからな」
「…誰の誕生日なんだ?」
「いや、あたしのなんだけどね…」
「お前誕生日なのか。じゃあ何かやんねぇとな」
「いいって播磨、そこまでしてくれなくても」
「…そっか、そうだな。邪魔しちゃいけねぇや」
「ん?」
「好きな人も呼ぶんだろ当然?」
「!!!お前どうしてそれを…ってそっか、お前神サマだったから全部聞いてるのか…」
「…安心しろ、誰にも喋らねぇよ」
「ありがとよ…でも先輩は東京の大学行っててまだこっちに帰ってきてねぇから」
「そうか…まぁ頑張れよ」
「あぁ」
「…オレも好きな娘のためにこの高校入ったんだよ実は」
「へー、そうだったのか」
「二年になってやっと同じクラスになれて、いろいろ必死に
アプローチとかもしてるんだけどなかなかうまくいかねぇんだよなこれが…」
「そうなのか?結構いい感じに見えたけど」
「え…そ、そうか?いい感じか?」
「あぁ、だから播磨も頑張れよ…そうだ、お前も誕生会出るか?」
「へ?」
「いや、あいつも呼んであるからさ」
「あ、そ、そーいうことか…そうだよな、お前らいつも仲良し四人ぐm…!?」(←脳裏に鬼の形相の沢近)
「…ん?どうした播磨?」
「わ、わりぃ、急用を思い出したんでオレ帰るわ。ハンカチやっぱ今度でいいし。じゃあな!」
「お、おい播磨…ったく何なんだよ」

Fin。

230 :Classical名無しさん:04/07/26 12:14 ID:yJqYgas6
鉛筆2連発とは嬉しい限りですね。

>>222
GJ!
確かに飛躍はあったけど面白かったですよ、甘かったし。
また次の投稿を楽しみに待つことにします。

>>229
こちらもGJです。
美琴の言ってるアイツってのはやっぱり沢近のことなのか。
相変わらず食い違ってる二人が良い。こういう会話しそうですよね。

231 :222:04/07/26 13:56 ID:TQ4rpY8Y
これから投稿が増えて遅レスになるかもしれないので、(記念日ですし、
これから用事ありです)
これまでで返信をさせてもらいます。

>>223
確かにそうですね。脳内設定で付き合ってることは前提としてしまったので、
播磨と付き合うまでの過程を書き忘れてました。少しでも触れればよかったと思います。
わたくしめの無能のせいです。

>>224
呼び方ですが、最初の作品(『嘘つきは…』)で、名前で呼んだほうが恋人同士らしい
という発言させてしまったので、こうなりました。
性格の違いについてはいろいろあったということで…ごめんなさい、力不足でした。

>>226
最初の書いたのではそこに重点を置いたのですが、あまりにも重い話になり、
どうやって播磨に美琴を元気付けさせれば良いかわからなくなって、断念して
しまいました。ほんとに自分の力不足と悔やみます。

>>230
ありがとうございます。次の投稿ですが、やるとしても鉛筆にならない予感が…
だって、ネタないですし…

感想くれた方々ありがとうございました。

232 :Classical名無しさん:04/07/26 15:52 ID:.iveh5xQ
播磨と美琴って普通に
相性よさそうだな

普通すぎて漫画にならないのが難点だが

233 :Always:04/07/26 16:01 ID:qmlfIyEQ
「ふう……」
 一つ小さく息をつき、机に腰掛けたままグラスの中身を空ける愛理。階下からは、遠く聞こえるどんちゃん騒ぎ。
まだまだ終わりそうにないその喧噪を聞きながら、開け放たれた窓から外を眺める。
 網戸越しのそこにあるのは、夜でもなお高く見える夏の空。流れ込んでくる夏の熱気に、卓上に置いたグラスの
中の氷が、からん、と音を立てる。
 ――と。
「不法侵入だぞ、他人の部屋に勝手に入るのは」
「いまさら隠すようなものもないじゃない」
 不意にかけられた声の主――美琴にそう返す愛理。当然美琴の方も冗談なわけで、そりゃそうか、と言いながら
笑っている。
「で、どうかしたのか? 別に調子が悪いってわけでもなさそうだけど」
「なんでもないわ、ちょっと一人になりたかっただけ。美琴の方こそいいの? 主賓がこんなところで油売ってて」
「誰も気にしないって、んなこと。それに、主賓としてはお客様の姿が見えないと心配なんだけど?」
 どこからしくないそんな冗談、考えられる可能性としては。
「美琴、あなた酔ってるでしょう」
「まだまだ、これくらい序の口序の口」
「……酔ってる人ほどそう言うのよ」
 よくよく見れば、その顔もほんのりと赤みを帯びている。先ほどとは違う溜息を、はあ、と一つついてから、
まあいいわ、と愛理。
「昼は昼であれだけ騒いで、夜は夜でまた元気よね」
「昼のは別口だろ、ありゃ。それに一番飛ばしてたヤツは最初にぶっ倒れてるしな」
「一番……?」
「花井だよ」
 その言葉に、ああ、と頷く。確かに昼間の彼は何やら妙に気合いが入っていた気がする。……もっとも、そこで
披露したのはあの何とも名状しがたいリコーダーだったわけなのだが。

234 :Always:04/07/26 16:02 ID:qmlfIyEQ
「何だったのかしらね、昼間のアレ」
「私にも分かんないよ」
 呆れた風に言ってから、でも、と続ける美琴。
「アイツのことだからさ、何か考えはあったんだと思うけど」
 そう言った表情は優しげなもの。
 それはまるで――
「へえ、ずいぶん信頼してるんだ、彼のこと」
「んー、ま、付き合い長いしね」
「なら――」
 訊いていいことなのかどうなのか。迷いつつもその疑問を口に乗せる愛理。
「――付き合うとか考えたことないの? その、彼と」
「……は?」
 一瞬何を言われたのか分からない、という顔する美琴。そして次の瞬間には肩を震わせて笑い出す。
「私がアイツと? ないない、絶対ない。何て言うかさ、そういうのじゃないんだ、花井とは」
 それに私には、と言いかけて、はっと口をつぐむ。
「『私には』?」
「いや、今のはノーカンだ。忘れろ、頼む」
「そうなんだ。ふうん……」
 いつになく必死な美琴の様子にピンときたのか、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべる愛理。
「ちょっ待て、何でもないって言ってるだろ! それにあれだ、お前の方こそどうなんだよ。山ほどしてるじゃねーか」
 その、デートとかよ、と最後は消え入りそうなその台詞、それ自体がどうしようもないくらいに地雷を踏んでいる
のだが、当の美琴はおろか、聞いている愛理さえ気づいていない。
「あれはダメね。恋っていうのはね、もっとゾクゾクするようなものなの。そう、私が欲しいのは運命的な出会いよ!」
 こちらはこちらで、最後の方は握り拳を天に突き上げていたりする。その姿はどこからどう見ても。

235 :Always:04/07/26 16:05 ID:qmlfIyEQ
「なあ沢近。酔ってるだろ、お前」
「何言ってるの。これくらいまだまだよ」
「……酔ってるヤツほどそう言うんだよ」
 いつかどこかで――ではなく、つい先ほど立場は違えど交わした会話。それに気づいた二人は、どちらからともなく
笑い出す。
 結局の所。
「何よ、二人とも酔ってるんじゃない」
「……だな」
 顔を見合わせて、もう一度二人で笑いあう。
「……んで、なんでこんなとこにいるんだ?」
 そうやって一息ついてから、最初の質問をもう一度持ち出す美琴。対する愛理は視線を逸らして夜空に向けつつ、
今度は答を返す。
「なんだかね、ちょっと前のこと思い出しちゃったのよ」
 前のこと――そう言われて思い当たるのは。
「初めてウチに来たとき、か?」
「さあ、ね」
 仏頂面でどこか遠くを見つめるようにしながら答える。
 そんな彼女の姿に、美琴は――
「……お前さ、まだなんか変な遠慮」
「冗談、そんなワケないでしょう?」

236 :Always:04/07/26 16:05 ID:qmlfIyEQ
 その言葉を途中で遮る愛理、既に表情はいつもの勝ち気なそれに戻っている。
「ただちょっと一人になりたかっただけよ」
 フン、と小さく笑いながら、最初と同じ答をもう一度返す。
「だったらそういうことにしといてやるよ」
 こちらも軽く笑ってそう返事をしてから、んじゃ先に戻ってるよ、と廊下に向かう。
 ――その背中に。
「美琴」
「ん?」
「……誕生日、おめでとう」
 何を今更、ときょとんとした表情を見せた美琴だったが、すぐにふっとそれを崩す。
「ありがと」
 笑顔でそう返し、階下へと降りていく。
 そして、残された愛理は。
「ありがと、か」
 ゆっくりと腰を上げ、空になったグラスを手に取る。表面に付いた水滴が伝える冷たさが心地よい。
「私の台詞じゃないの、それ」
 普段は見せない、そんな優しげな笑みでぽつりと呟いて、自分も階下へと向かう。
 次第に近づいてくる喧噪――それは、気負う必要などどこにもない、彼女の『居場所』でもある。
「おう、どこ行ってたんだい姉ちゃん!」
 居間に足を踏み入れるなり飛んでくるそんな声。それに小さく肩をすくめてから。
 愛理は美琴に微笑んでみせた。
 ――とびきりの笑顔で。

237 :Always:04/07/26 16:07 ID:qmlfIyEQ
誕生日に託けて誕生日関係ない話を書いてみるアレな試み。
しかも主役は沢近。
出さずに花井をどこまで絡められるか、がやりたかった筈なんですが……

238 :222:04/07/26 16:23 ID:2Sj1fL1w
先方の都合で用事がキャンセルになって時間ができたので、
>>214-221の作品のかなりの部分を改訂したいと思います。
読み直してみると、やっぱり>>226サンの指摘してくれた寂しさを
描ききれなかったことが悔やまれてきたので、それを書いてみたい
と思います。まあ、描ききれるかはわかりませんが…

まだ、2chにきて日が浅いため、同じ日に改訂版を投下していいのか
わかりません。

投下しても良いでしょうか?誕生日が舞台なので、できれば今日中に投下したいです。
午後9時までに、7,8件の許可のレス(いたずらのレスか判断しにくいため)
があれば投下します。なかったらお蔵入りします。

239 :Classical名無しさん:04/07/26 16:26 ID:2Sj1fL1w
連投すみません
>>237
GJです。女同士の何気ないようでいて親密さを感じさせるやり取り。
二人の友情を読んでて微笑ましく思いました。

240 :Classical名無しさん:04/07/26 16:36 ID:Fxxuq7bM
>>237
ID:qmlfIyEQさん、北━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
相変わらずうまいな、ッてのが感想です。目新しいことが書かれてなくても
雰囲気が出ているのがすごいなと思いました。
>>222
テキストにでもまとめて、うpしてみたら?

241 :Classical名無しさん:04/07/26 17:03 ID:HuyQrJ.Q
>>238
保管庫のBBSに投下して下さい。クズリ氏とかもそこに改訂版を投下してますよ。
それに上手い人の意見も聞けるかもしれませんし。

>>237
いつもながら上手いですね。流石に描写力が違う。
堪能しました( ´ー`)y-~~

242 :Classical名無しさん:04/07/26 17:36 ID:ETRXtsC.
>>238
ここの避難所のことね
ttp://web2.poporo.net/%7Ereason/bbs/bbs.php#4
他にも役立つスレがたくさんありますよ。まあ知ってると思いますが一応
>>237
GJ!
なんかしんみりしました。
ID:qmlfIyEQ氏の作品はいつも読みやすくて好きです。
三人称でこれだけ心理描写ができるとは。


243 :238:04/07/26 17:49 ID:4Sr.3dvo
>>241>>242
情報ありがとうございました。
保管庫専用のBBSがあることに、全く気づきませんでした。

そこで、申し訳ありませんが先ほどの午後9時まで返事を待つという発言を撤回させてもらいます。
別に改訂を投稿できる場所があるならそれに越したことはないですし、
同じスレ内にあると、混乱して見にくいでしょうしね。
コロコロ変わる発言でスミマセンでした。

>>240
返事ありがとうございました。
うpはやったことがなくてどうすればいいかわからないので、今回はBBSの方を使わせてもらいます。


ご迷惑おかけしました。


244 :Classical名無しさん:04/07/26 20:16 ID:N8iDsLgI
ゆうなのおっぱいまんまるおっぱい.....................................................

245 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

246 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

247 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

248 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

249 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

250 :Classical名無しさん:04/07/26 21:08 ID:sigU73ow
夏はわかるが正直これはどうよ?

251 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

252 :Classical名無しさん:04/07/26 21:09 ID:ox4cNqrw
飲茶がたくさん出たー
って言うか。もう良いだろ

253 :Classical名無しさん:04/07/26 21:19 ID:44iwDcsc
クラシック自体を荒らしてる奴だから言っても無駄。他スレ見てみ
スルーしかない

254 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

255 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

256 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

257 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

258 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

259 :Classical名無しさん:04/07/26 22:43 ID:kfVn1lvw
ふと、昔各所を荒らしまくった山崎某を思い出した。

260 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

261 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

262 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

263 :ゾリンヴァ:04/07/26 23:31 ID:k6U7Qw3s
ほんじゃ、突撃。
オンドゥルでエキセントリックでブラックで、且つプリティーなサラを投下。

264 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

265 : ◆vJA.zvGE :04/07/26 23:33 ID:k6U7Qw3s
麻生先輩、あんまりです。
せっかく八雲と先輩のツーショットが拝めると思ってたのにドタキャンなんて
ちょぉーっとヒドイんじゃあなーいデースカー?
やっぱり、私のお願いになんて麻生先輩は耳を傾けてくれないんですね……。
よよよよよ〜。
…… わかりました。いいです。そちらがそう出るなら私にも考えがあります。
いえ別にいいんですよ先輩にも都合というものがありますからそれはそれでむしろその方が
楽しみが増すといいますかおいしい物は後に残しておく主義というんですかとにかく先輩のあっと驚く顔が
見られると思うと今からゾクゾクしてきますああこの感覚も恋なんでしょうかそうですきっとそうなんです。


266 : ◆vJA.zvGE :04/07/26 23:34 ID:k6U7Qw3s
ジーコジーコジーコ……TRRRRR………
「播磨先輩ですか? どうもこんにちは、サラです」
「おう、珍しいな。どうした、妹さんのことか?」
「いえ、今日は違うんです。私、播磨さんと個人的にお話がしたくて、あの…もしお時間よかったら少しお話し出来ますか?」
「今からか。いいぜ、それで場所はどこにするんだ?」
「はい、私が普段バイトしてるお店がありますので、そこで……」
………。
さてさて、お次は。
「もしもし、冬木先輩ですよね。こんにちはー」
「や、こんちは。僕に何か用?」
「はい、実はかくかくしかじか…なんです」
「えっ! 麻生が新郎役を断ったって…?」
「そうなんです。ですから、菅先輩に伝えておいて下さい。麻生先輩の事、バイト先ででもこってり搾ってもらわないと気が済みません〜」
「はは、わかった。すぐにでも伝えておくよ」
グッジョブ、冬木先輩。
さあさあ、はりきって次いきましょう、次!
「やあ、サラ君じゃないか! この僕に何か用かね?」
「はい。本日は先輩に八雲の事で折り入ってお話があります。実はこれこれしかじか…」
「ぼ、僕と八雲君の結婚式を!?」
「はい、花井先輩に是非にと思いまして(ちょっと違うけど)。突然のお話しで悪いんですが○△教会まで来ていただけますか?」
「すぐに行く! 八雲君、君の為なら僕は地の果てまでだって行ける! 待っていてくれ、ヤクモーン!!」
と・ど・め。さしちゃお、うふ。
「というわけで部長、ひと芝居うちませんか?」
「オッケー」
うわあい、いつもはノリ悪いのに人の不幸話になると俄然嬉しそうな顔しますねーこの性悪女っ♪ ←決して表に出ない心の声
そんな高野部長が大好き。

267 :Classical名無しさん:04/07/26 23:35 ID:k6U7Qw3s
そんなこんなでいくつもの偶然が重なって、私の目の前には花嫁姿の八雲を抱き上げる播磨先輩と
蹴り倒されて床に伏した花井先輩の姿が。おろおろしてる八雲が可愛すぎるわ。今すぐ抱きしめたい。
代役が不幸にも花井先輩になってしまった瞬間の八雲の表情も背徳を感じてかなりヤバカッタけど、
この、事態にどう対処していいかわからないっていう顔がもう辛抱たまらんというかハァハァ。
…っと、いけない。ここで終わっちゃったらせっかくの楽しみが半減ですね。
対峙してる二人が使いやすい位置に、さりげなく機材を配置しときましょう。
首尾よく花井先輩がそれを手にとって凶器にしてます。こうも扱いが簡単だと逆に拍子抜けしちゃいますね。
播磨先輩も対抗して燭台を持ったりなんかしちゃったりして。うーん、ホントに単純。
ムキになってやり合っちゃってるお二人はしばらく放置プレイしときましょう。
冷めて素に戻った時の反応が好きなんですよねー、あれ。
じゃあ高野先輩、そろそろお披露目タイムで〜す。シークレットブーツは合ってますね。
神聖な教会にて、しめやかに執り行われる式。あぁ、部長の方が下手な男よりずぅーっとステキですよ。
…それじゃあ、式も終わった事ですしオイコミに取りかかりますか。
唖然、愕然とする播磨先輩と花井先輩。なんてイイ表情するんですかっ、もう少しで叫びだしそうでしたよ。

では、最後の仕上げに。
請求書、麻生広義様、と。
播磨先輩達が壊した器物等は麻生先輩に弁償してもらいますね。
乙女の純情を弄んだ罰、償ってもらいますからね♥

268 :ゾリンヴァ:04/07/26 23:37 ID:k6U7Qw3s
トリップになってしもた。
「#62-63 side B」がタイトルです。失礼

269 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

270 :Classical名無しさん:04/07/26 23:42 ID:V7gDCaJE
えっと・・・何だこれ

271 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

272 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

273 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

274 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

275 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

276 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

277 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

278 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

279 :Classical名無しさん:04/07/27 01:10 ID:sigU73ow
こういう香具師は煽ってもスルーしても全く効果無いのが辛いな

280 :Classical名無しさん:04/07/27 01:11 ID:q/YUQsrM
ならスルー

281 :Classical名無しさん:04/07/27 01:13 ID:sigU73ow
まぁ当然だな
職人さんも暫く作品投下控えたほうがいいかもしれない
間に挟まるといい作品も台無しになる可能性あるから

282 :Classical名無しさん:04/07/27 01:17 ID:K2Kh6IBg
これはスクリプト荒らしだからひろゆきが対策とってくれるまで終わらんよ。
長くてあと24時間ぐらい…だと思いたいが。

283 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

284 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

285 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

286 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

287 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

288 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

289 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

290 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

291 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

292 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

293 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

294 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

295 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

296 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

297 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

298 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

299 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

300 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

301 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

302 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

303 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

304 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

305 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

306 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

307 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

308 :Classical名無しさん:04/07/27 09:11 ID:3wgPPHMI
これ当分続くのかな…?
どうしてもSS投下したい場合は、俺とスクランBBSか、したらばのスクラン板にスレ立てて
投下した方がいいのでしょうかね?

俺とスクラン(仮)BBS
ttp://web2.poporo.net/~reason/bbs/bbs.php
SchooL Rumble@jbbs
ttp://jbbs.shitaraba.com/comic/1362/

309 :Classical名無しさん:04/07/27 10:06 ID:LeroM7Ss
>>263

>オンドゥルでエキセントリックでブラックで、且つプリティーなサラを投下。

 ……プリティー?


310 :Classical名無しさん:04/07/27 10:32 ID:44iwDcsc
>>308
しばらく待った方が良いよ。
そんな何日も続くわけないんだから

311 :Classical名無しさん:04/07/27 11:18 ID:KPFkojIM
>>310
夏房が発生してるから、結構続く出ない?

312 :Classical名無しさん:04/07/27 11:45 ID:49jfItVQ
かなり欠番があるな。

313 :Classical名無しさん:04/07/27 12:31 ID:o7Hv9AYQ
終わったかな?

314 :Classical名無しさん:04/07/27 13:22 ID:Rst0gMdM
もう来ないみたいだな

315 :Classical名無しさん:04/07/27 13:22 ID:49jfItVQ
とりあえず一難去ったみたいだな。
夏の間ずっとこうだったらどうしようかと思ったよ。

316 :Classical名無しさん:04/07/27 13:54 ID:H6nAMYN6
えらくレス多いなと思ったら荒らしか。
無事去ったみたいだし、神の降臨でも待ちますか?

317 :Classical名無しさん:04/07/27 14:30 ID:Rst0gMdM
荒らしの間待機していた職人さんが一気に光臨してくれれば嬉しいが
気長に待つのが一番ですな

318 :Classical名無しさん:04/07/27 19:58 ID:rD2e3wbE
女性陣の視点のSSって多いけど
播磨視点のSSって少ないよな
やっぱり書くのが難しいからでしょうか?

319 :Classical名無しさん:04/07/27 20:00 ID:e0ROVpJQ
播磨視点じゃあ正しい状況がわからんのでは?

320 :Classical名無しさん:04/07/27 20:07 ID:gFdEljq2
あの暴走、勘違いっぷりが一人称で描くには難しいんじゃないかな
確かに女性視点のSS多いけど、天満視点のSSも少ない(つーか、あったっけ?)のと同じでしょう

321 :Classical名無しさん:04/07/27 20:10 ID:Wz5HVN1w
>115 の16行目、“嵯峨野さん”と五文字分も脱字しちゃってましたね。

先に謝っておきます。今回はSSではなくマキシCDの改変です。
セリフのみで進行と言いたいところですが効果音指定だけは地の文章で。

《投棄》

322 :Track4 三匹に斬られろ 1/4:04/07/27 20:10 ID:Wz5HVN1w
「たまには神社に寄ってくかな。最近なにかと騒動が起こってどうにも落ち着かないし。
にしてもなんだか上のほうが騒がしいな。何か催しでもやってんのか?」
 群集のざわめきが聞こえていたが、やがて止む。
「おっ、時代劇のロケか。矢神神社にテレビカメラが来るなんて珍しいな。どれどれ……」


「次、シーン26。スタート!」
 カチンコの直後、玉砂利の鳴る音。
「おうおう、庶民の楽しみである富くじで私腹を肥やすためだけにイカサマをやるなんざ、
天が許してもハズレを引かされた俺が許さねえ。せいぜい覚悟するんだな」
「知られてしまっては仕方あるまい。貴様にはここで無縁仏にでもなってもらうとしよう」
「俺はいずれは万石取りの大名になろうかという男だ。こんな所で死ぬわけねえだろ!」

「ふん、浪人風情が。こちらには剣の達人がいて下さるんだ。……先生、お願いします」
「うむ」
 襖が開く。
「……上様? なんで寺社奉行の手先なんかになってんだよお前」
「おお、万石ではないか。まあなんだ。これには一宿一飯の義理というものがあってな」
「っていうと、俺とお前は今は敵同士ってことか」
「そうなるな。事情はどうあれ世話になった者をそう簡単に裏切る訳にはいかん」
「けっ、この石頭が。じゃあいくぜ!」
 何度も刀が触れ合う中で生まれる、甲高い金属音の残響。
「てい!」
「くっ!」


「すごいな…… 時代劇の殺陣ってこんなに本気で打ち合ってたのかよ……」

323 :Track4 三匹に斬られろ 2/4:04/07/27 20:11 ID:Wz5HVN1w
「ふぅ…… やるじゃねえか上様。あやうく死ぬかと思っちまったぜ」
「それはお互い様だな。一切手加減すらしてくれぬとは思ってもみなかった」
 刀を握りなおす鍔音。 

「これで終わりにしようぜ! 天上天下、念動 爆・砕・剣!!」
「よかろう! 太陽剣、オーロラプラズマ返し!!」
 轟音と共に吹っ飛ぶ二人。
「ぐはっ!!」

「ほうこれはよい。流れ者同士相討ちになってくれれば礼をする手間も省けるというもの」
「……勝手に殺されてた事にされてはたまらんな。お奉行どの」
「おお! これは失礼した。達人どのが勝ち申されたか。多分に礼金は弾まねばな」
「ふぅ。その礼金ってのは、俺にも貰えると助かるんだがな。最近懐が寂しくて敵わん」
「なっ!? ……まだ生きておったのか木っ端浪人! 達人どの、早くとどめを!」
「断る。奥義まで使ったのだからもう義理は果たしたつもりだ。これ以上は割に合わん」
「全くだ。儲けにもならんことで上様とやりあうなんて割の合わない事この上ない」
 ぱたぱたと砂埃を払う。

「義理は果たしたとはいえ、飯を奢ってくれた奴を斬るのは上様も気が進まんだろう。
どうせ堀川国広の刀身を汚すに値する輩もいないだろうから、休んでいてくれ」
「そうか。助かる」
「くぬぬ、たばかりおって…… 曲者じゃ! 皆の者参れ!」
 ばたばたと足音が境内に集まってきた。


「あれ? 今出てきたエキストラの男、どっかで見覚えが……」

324 :Track4 三匹に斬られろ 3/4:04/07/27 20:13 ID:Wz5HVN1w
「めずらしいね美琴さん。時代劇に興味があった?」
「おわっ! 脅かすなよ高野。お前も来てたのか。これ、何てタイトルの時代劇だ?」
「『続・三匹が斬られる』っていって、人気シリーズの二作目みたいだね。
塚本さんが大好きみたいだから私も連れてこられたんだけど、本人はあの調子だから」

「はぁ…… 万石ー#&9829; 生で見る役舎丸さん、格好良すぎだよー」

「万石ってのは察するにあのぼろい服の浪人だな。あいつのファンなのか? 塚本は」
「人気者らしいよ。『生の人参をかじるパフォーマンス』で拍手喝采をもらってたし」
「生の人参? 最近の俳優業ってのも大変なんだな」
「そうだね。ところであの斬られ役の武士、なんで今日はサングラスを外してるのかな」
「はあっ? 時代劇で侍がサングラスなんてしてるわけがないだろ……って、待てよ。
さっきのどこかで見たような男にサングラスを付けると…… 播磨なのか!?」
「やっぱり美琴さんのほうが鋭いね。塚本さんはヒントを出してもわからなかったのに」

「万石やっちゃえー! 今だ活人剣奥義・神剣光臨!」

「まあ、今の塚本は播磨なんて眼中にないって感じだしな。他には誰も来てないのか?」
「残念ながら誰も。愛理も連れてくればよかったよ」


「貴様等には恨みはねえが、俺と出会っちまったのが不運と思って諦めな!」
 息もつかせぬ斬撃の嵐。
「うわば!」「あべし!」「ひでぶ!」「天!?……ぐはっ」


「お、播磨も斬られたな。時代劇ではあんな風にゆっくり倒れるのがお約束なのか」
「さあ? 断末魔にどこを見ていたのかだけは想像がついたけどね」

325 :Track4 三匹に斬られろ 4/4:04/07/27 20:13 ID:Wz5HVN1w
「ハァ、ハァ……。流石に上様の奥義を受けた上での大立ち回りはきつかったかもな」
「賊は疲れを見せているぞ! 押し包んで斬り伏せよ!」

 叫び声をあげて斬りかかろうとした侍が、呻き声と共に崩れ落ちる。
「おいおい万石、そんな動きしかできんのか? 不安で拙者まで出てきてしまったぞ」
「このくらいで助けに入られてたまるか。これだから上様は育ちが良すぎて困る。
多少斬られようとイカの売ってる塗り薬で治してみせるさ。まだ大人しく休んでろ」
「治らないよ? 最近路上で売ってる分は薬草も松脂も極限まで減らした偽薬だから」

「……イカ? 今までどこにいたんだよお前! あとどこでも偽薬売ってるんじゃねえ!」
「まあまあ。それより今はこの局面を切り抜けないと。三人なら簡単でしょ?」
「イカもそう言っているんだ。ここは三匹で一気に片をつけてからゆっくりと話し合おう」
「しょうがねえな。上様は右方、イカは左方を任せた。俺ぁあの馬鹿奉行をぶん殴る!」


「はいカット! 素晴らしい演技だった。遅くなったが一旦昼飯にしよう」
 群集のざわめきがまた勢いを取り戻す。
「ふう……。まさか斬られ役のバイト中に天満ちゃんに逢っちまうなんて。運命って奴か?
サングラス外しちまってたけど、あの時の変態さんだって事はばれてたりしねえよな」
「役舎丸さーん! サイン頂けませんかー! あうっ、だめだ。人が多くて通れない」
「あの声は天満ちゃん! よし、万石のサインが欲しいなら俺が貰ってきてやるぜ!」

「休憩中失礼します」
「お、君はさっきの。いい斬られっぷりだったよ。これからもお願いしたいくらいだ」
「ありがとうございます。それで役者丸さん、この色紙にサインをお願いできますか?」
「君には先日サインをしたんじゃなかったかな? 他人の分ならお断りしてるんだけど」
「お、覚えてくださっていて光栄です! それと無理を言って申し訳ありませんでした!」
 走り去る靴音。
「くうっ! 自分の分すら持ってねえのに何でこう上手くいかねえんだよ!?」
 ―――播磨拳児、天満への想いはいつも空回り。

《おわり》

326 :321:04/07/27 20:16 ID:Wz5HVN1w
上様とかイカとかいう設定は今はもうないあのサイトから借りてきました。
マキシCDにケチをつけるつもりはありませんが三匹なら三匹出すのが筋だろうと。

327 :Classical名無しさん:04/07/27 20:35 ID:z768yxMk
天満視点SSを書けたらある意味、神

328 :Classical名無しさん:04/07/27 21:24 ID:T/dIUjZk
しょうこりもなく投下
かき尽くされてるけど・・・

329 :Classical名無しさん:04/07/27 21:26 ID:T/dIUjZk
ペンの扱いにもずいぶんと慣れてきて、ある程度の強弱をつけた線を自分のものにでき
た頃、播磨拳児は漫画に対する情熱が日に日に薄れていくのを感じていた
自分の願望を子供の想像みたいに書き綴って一端の漫画家気取りというものが、彼の心の
中で日に日に情けなく感じるようになってきたからかもしれない
漫画を書いているときの播磨は充実していた。自分の望む世界があり、願う幸せがあった。
でも、現実と照らし合わせたら虚しかった
それが、情熱が冷める大きな要因かもしれない。自分の中だけで生まれる幸せが、ただの
自己満足の自己欺瞞、播磨の周りは何も変わっていない。
―「このところなのですが、ちょっとこの展開は無理があると思います」
テーブルをはさんで座っている少女の声が播磨を現実世界に呼び戻した
「ん?あ、ああ、そうか、そうだな・・・」
素っ気ない返事に塚本八雲が首をかしげる
「それに、全体的にすごく投げやりに見えてしまいます。」
「ああ・・・」
それっきり会話が途切れてしまい、播磨が立ち上がるまで一言も言葉は浮かび上がらない。
すっかり冷めた紅茶を一気に嚥下して、カップをソーサーに置いた彼はただ黙々と帰り支
度をはじめると、八雲は何かいいたげに口を開いたがそれより先に播磨が言葉を綴る
「なんかな、ついこの間みたいに漫画に情熱が燃やせなくなっちまった。なんつうか、馬
鹿らしく思えてきたんだよ。」
独り言みたいに、呟く播磨。少女は聞こえないふりをした
 つい最近までは誰にでも恐れられていた不良で、気に入らない事があればケンカをして、
自分は神だと思っていた
 俺は俺だけのものだったはずの播磨が、塚本天満という女性に恋をした。でも、気持ち
ばかりが空回りして、勘違いや思い込みばかりの虚しい一人相撲。
そんな鬱憤を晴らす為にかき始めた漫画が今度は播磨を強く束縛している。自分の為の漫
画であるはずなのに、漫画のための自分になっている
白い原稿から生まれてくるヒロインは塚本天満そのもの。
だけれどそれは現実の少女ではなくて、播磨の中の理想
そして主人公は播磨拳児そのもの。まさしく漫画に束縛された自分だった。

330 :Classical名無しさん:04/07/27 21:28 ID:T/dIUjZk
その指摘はもっともだった。事実播磨はこの作品に全くの情熱を傾けないで、ただ、義務
的に描いた。何かを描きたいと望んだのではなくて、自分の虚しい心の隙間を埋めるため
だけに走らせたペン。トーンも使って一端の漫画家の様ではあるけれど、結局それも無駄
な出費にしか見えない。播磨は原稿をしまうと、近くのクズカゴヘ投げ込んだ。

 結局今日は播磨からのメールがこなかった。昨日言ってた漫画に対する情熱が薄れたと
いう言葉が、冗談抜きに本当のことだったのだろうか。
 いつもなら播磨がメールをくれて、屋上で漫画を読ませてもらって、漫画の推敲を二人
でやる。しかしこの日ばかりは屋上で待っていても播磨はこない。メールを送って返事を
まっていたが、着信なし、がいつまでも続く。
「あら、屋上でアイツと待ち合わせ?」
沢近愛理が屋上の扉を開けて頭を覗かせる。
「え、あ、はい・・・でも、来ません。」
「あのバカ、彼女ほかって何やってるのかしら。」
「いえ、別にわたしは、その・・・」
当然漫画のことは口にできず、付き合ってないといっても信じてもらえないし、上手な言
葉も見つからない。八雲はしどろもどろして困ったようにうつむいた。これが傍目からみ
れば、付き合ってるのを隠そうとしている仕草に見えるのだろう
「ところで最近、アイツ、何か変わったところ無い?」
沢近の何気ない質問に八雲は驚きを隠せなかった。もしかして彼女は播磨が漫画を描いて
いるのを知ってるのだろうか、そう考えた。
「ここ最近、アイツなんかヘンなのよね。ま、元々ヘンなのは仕方ないけど、それに拍車
がかかってヘンだから。」
「べつに、何も、ただ・・・」
八雲はハッと口をつぐんだ。
「ただ、なに?」
「いえ、別に、いつもと変わりありません。でも、何で先輩が・・・」
「ん、ただ、ちょっとみんなが気にしててね。」
仄かに染まった頬を隠すように踵を返して歩き去っていく沢近。八雲はそれを呼び止める


331 :Classical名無しさん:04/07/27 21:32 ID:T/dIUjZk
「あ、あの・・・」
「何よ」立ち止まりはしたが振り向きもしない
「播磨さん、心配してくれるお友達を持てて、幸せですね。」
「何バカいってるの、あんな不良に友達がいるはずないでしょ。」
肩を怒らせて屋上から消える沢近、その後姿を目で追う。唇を綻ばせて小さく笑おうとし
た。しかし着信音が邪魔をする。
―Subject, なし
―せっかく屋上で待ってくれてるのにいけなくてすまない。しばらく俺は漫画を描かない
と思う。いろいろありがとな
八雲は反射的に返信ボタンを押して返信を打ち始める
―Subject, Re:なし
―どうしてですか?播磨さんの漫画はおもしろいです。いつもたのしみに
そこまでうつと、八雲は指を止めた。自分に播磨のその決断を妨害するだけの権利がある
のか。もしかしたら、自分の面白いという一言が既に彼にとっては重荷じゃないだろうか、
色々と思考をめぐらせると携帯をしまって屋上を後にした。
 
「八雲どうしたの?そわそわして・・・」
サラが笑いながら八雲の顔を覗き込む。「もしかして、また花井先輩?」
小さくかぶりを振ってそれを否定する。サラは小首を傾げて小さく笑った。
学校の校門は賑やかに生徒たちが話に花を咲かせ、挨拶が飛び交い、風紀委員や生活指
導の教員が服装の乱れや遅刻を口やかましく録音のように繰り返した。八雲はそわそわし
ながらあちらこちらを見回している。
「誰か探してるの?」
「いた・・・」
八雲の目線の先には、播磨拳児。八雲は身を隠すようにして、播磨を伺い見た。漫画とい
う接点が無くなって、今の八雲には播磨との接点を何も見出せなかった。本当は何か言い
たかったけれど、それもすっかり忘れてしまい、逃げ出す事だけを考えていた。


332 :Classical名無しさん:04/07/27 21:33 ID:T/dIUjZk
「サラ、行こう・・・」
足早にその場を立ち去って、教室へと急ぐ。
「どうしたの、八雲、そんなに急いで。」
「播磨さんと話したくない・・・」
「あれ、ケンカしたの?」
「・・・・わからない、もしかしたら、そうかも。」
「じゃあ、仲直りしないと・・・」
八雲は足をとめた。そして呟いた
「できない、むしろしちゃいけない気がする。だって、わたしが迷惑かけてた気がするか
ら・・・」
それっきりサラとの会話も途絶えて、一時間目の授業が始まった。
 

333 :Classical名無しさん:04/07/27 21:34 ID:T/dIUjZk

 「ええ!?八雲と播磨君がケンカ!?」
「しっ、声が大きい」
廊下で立ち話をしていたのは、サラと天満、美琴に愛理
「そういえば昨日から八雲の様子がおかしいとおもったら、播磨君とケンカしてたんだ。」
「さては、アイツ屋上での約束すっぽかしたからかしら?」
含みのある笑みで沢近愛理は呟いた。
「でも、わたしが迷惑かけたって・・・」
「八雲は何でも自分の責任にしたがるからそう言ってると思うけど・・・」
「やっぱり、あのバカが悪いんじゃない。」
「どうにかならないでしょうか、なんか八雲がかわいそうで・・・」
サラが心底困った顔で呟く。一同顔を見合わせて苦笑い
「どうするもこうするも、事の真意がわからない以上どう手をうっていいのか。」
美琴は腕組みをしてサラを見据える。愛理もそれに賛成と頷く。
「そんなの、播磨くんにごめんなさいって謝らせれば?」
「あのね、それができれば誰も苦労しないわよ。それにアイツが100%悪いって決まっ
たわけじゃないし。」
「おっ、珍しく播磨の肩を持つな。」
「茶化さないで!!こっちは真剣なのよ。」「おーこわいこわい」
そんなやり取りをみて、サラは安心感をおぼえる。その日は一日中授業の合間に集まって
はそれを肴にいつものメンバーがにぎやいでいた。
 昼食の時間、八雲はいつものように屋上に立つ。こない事は分かっているけれど、一日
に一回ここに立たないと落ち着かない。何度も扉の方に目をやって、ため息をついていた。

334 :Classical名無しさん:04/07/27 21:35 ID:T/dIUjZk
 「わたしは、別に播磨さんのことは好きじゃない。みんなが思っているような感情じゃ
ない。ただ、播磨さんの描く漫画が好きなだけ。」
―本当にそうなの?
はっと、八雲は振り返る。そこにはあの少女が立っていた。
―本当に、あなたはあの人をなんとも思ってないの?
「播磨さんの漫画が好きだから、だからわたしは・・・」
―あなたはわかってない
「わたしは好きっていう感情は分かってる。播磨さんは好きじゃない。」
―ええ、確かにあなたは彼の事が好きなんかじゃないわ
「じゃあ!!」
―でも、思い違いをしてないかしら
「おもい、ちがい?」
―よく、考えてみる事ね
「え、あ、待って、思い違いって、一体。」
―他人の受け売りなんか何の役にも立ちはしないわ
「でも・・」
―自分で答えを見つけて、さもなければあなたの心はわたしのように永遠になる。ずっと、
そのまま・・・
 「あ、いたいた、やっぱりここだ。」
八雲は現実に引き戻された。
「・・・え?」
「どうしたの蒼い顔して、幽霊でも見たみたいに・・・」
かぶりを振って、冷や汗を手の甲でぬぐった。
「ううん、ただ、暑いなって。」
「そうだね、いくら秋でも、時々暑いからね。」
サラはにこっと笑う。朗らかな笑顔に八雲はほっとした。途端にどっと疲れが出てきた気
がする。
八雲とサラは階段を下りて教室に向かった。そのとき八雲は先ほどの少女がいっていた
思い違いという言葉について引っかかりを感じて頭をひねった。
「ねえ、好きじゃないってどう言う感情かな?」
「え?」

335 :Classical名無しさん:04/07/27 21:37 ID:T/dIUjZk
突然の問いかけにサラは戸惑ったが、しばらく考え込んでこう答えた
「相手のことが、嫌い、憎い、恨めしい・・・後、無関心、どちらにしてもあまりいい表
現じゃないことばばかりかな。」
―じゃあ、わたしは何。播磨さんが憎い、恨めしい、それとも嫌い。違うそうじゃない―
「どうしたの?突然そんなこと聞いて・・・」
「・・・なんでもない」
剣呑に言い放って、八雲は教室へ戻った。
 結局その日彼女は播磨の事を考えて、好きでもなければ嫌いでもないの二つを行き来し、
どちらでもないただの真ん中と結論をつけて、無理やり自分を納得させた。そうなってし
まえば、播磨の事も彼の漫画のこともすっぱりと片をつけて、気が楽になった。少なくと
も八雲の心はそう錯覚した。あとは、播磨に対して言葉を持って今の関係に決別をあらわ
せば内外共に落ち着いて眠れる。
 そうと思い立てば行動は早い。携帯で呼び出しても応じてくれないのは分かっていたか
ら、教室に行って話し合おう。なんならみんなの要る前で事を済ませれば根も葉もないう
わさもそこで終わる。これで心騒がせることもなくなっていつもの生活に戻れると八雲は
晴れやかになって廊下を駆けた。思いのほか道のりも短くて、すぐに2―Cの扉の前。
 そっと教室の扉から顔を覗かせた。授業後ではあったが、まだ時間もそう経っていない
ため大体の生徒は教室で雑談に魅入られている。
「あ、あの・・・播磨さん」
教室が一瞬静まり返り、再びどっと沸きあがる。
「播磨君、御指名だぞ!!」「うらやましい!!」「やっぱ似合わないあの二人〜!!」
男子一同からの羨望の叫びと、女性一同の様々な内容の甲高い声に包まれて八雲は逃げ出
しそうになる。
少し前まで名うての不良で幅を利かせていた播磨も、このクラスでは既にただの冷やかし
対象だった。
「・・・・・」
播磨は何も言わないで黙っている。が、クラス全体の熱が冷める頃にゆっくりと立ち上が
って八雲に歩み寄った。
八雲は廊下にいる間に何度も繰り返していた呪文をもう一度心の中で暗誦する。

336 :Classical名無しさん:04/07/27 21:39 ID:T/dIUjZk
「あの・・
「あのよ、昨日は色々とすまねえ・・・」
出鼻をくじかれた。言葉をさえぎられて八雲は口をつぐむ。播磨はそれに気づかず言葉を
続ける。
「いままで、色々と迷惑かけてわるかった。」
深々と頭を下げる播磨。あまりにもありえない光景にどよめきが伝播する。
「なんか、俺のせいで妹さんには無駄な時間使わせたし、俺たちが付き合ってるなんて変
なうわさまで流れて・・困ってるのはよく分かってた。あんなの俺の勝手な自己満足でや
ってたことで、それに巻き込んで本当にすまねぇ。」
「・・・え、その。」
「もう、これっきりにしよう。妹さんも疲れただろ、俺みたいなの相手にするのも。」
あたりが水を打ったかのような冷ややかさと静けさを得た。
「わたし・・・
「わたしは・・・
突然八雲の瞳から堰を切って涙があふれ出た。
「お、おい・・・」
サングラスの下で播磨の目が丸くなり、何か不味い事を言ったのかと必死でできの良くな
い頭を巡らせる。
くるりと背を向けると八雲は一目散に教室から駆け出してあっという間に見えなくなった。
その背中に届いたのは、轟々たる播磨に対する非難の声。しかし彼女にその声は届かなか
った。
 八雲はがむしゃらに走った。どこを駆けてるのか、どこにいるのか全く分からなかった。
 彼女の心の中は今でも播磨が『好きじゃない』なのに、これっきりにしようといわれた
ときに、心の中の霞がかった部分が騒いだ。自分から播磨が欠落して心のバランスが取れ
なくなった。不安定な心が泣く事でバランスをとろうとする
 走って泣けば少しは心が落ち着く。しゃっくりにも似た息継ぎをしながら手の甲で頬を
伝う涙をぬぐってそう言い聞かせた。

337 :Classical名無しさん:04/07/27 21:41 ID:T/dIUjZk
すぐに涙は止まったが、いつまでたっても心は騒がしい。
 手ごろなベンチを見つけて、そこに腰をおろすと深くうなだれる。
自分の望んだ結末なのに、まるで不本意なことのように心が騒いだ。きっとあれは、自分
が言い出しても同じ結末だっただろう。むしろ、自分からは言い出せなかった。あの言葉
は、塚本八雲にとって、全くもって本意とは遠くかけ離れた言葉なのだから。
「わたしは播磨さんが好きじゃない、でも、嫌いじゃない。真ん中でもない、じゃあ、な
に?」
にゃあ、とまるで八雲の独白に返事をするように聞こえた声。にゃあともう一声聞こえて
八雲は無意識にその名前を呟いた。「伊織」
すると、まるで言葉が通じたかのように、猫の伊織が八雲のひざの上に飛び乗る。
「伊織、わたしって、何かヘンかな?」
八雲は伊織に触れた。生暖かい体温が指先を通して伝わる。心の中の声もにゃあとしか聞
こえない。肯定なのか否定なのか、それも分からない。
 しばらくすると無関心を装った猫は、八雲のひざから飛び降りて、鳴いた。じっと彼女
の方を眺めて、何かを催促しているようだった。「待って、どこにいくの?」腕を引かれる
ように立ち上がり、小走りで追う。
 しばらく走ると、振り向いて八雲を待つ。近づいてきたら再び走り出してまた止まる。
まるでどこかに案内しようとしてるみたいだ。そんな奇妙な追いかけっこが続く。
 どれくらい走らされたか、普段あまり見慣れない風景が広がっている。帰れないことは
無いだろうけど、また買い物ができないだろう。そう八雲は考えて目を左右に動かした。
小さな公園で、夕焼け色に燃えていて、八雲の影がただ長く地面を覆っていた。
その中、気難しいあの猫はじっと座り込んで何かを眺めていた。伊織がそうしたのか、そ
れとも誰かがそうしたのか、クズカゴがひっくり返り、中のゴミが散乱している。
「伊織、あなたがしたの?」
八雲は腰をかがめて、伊織を見る。すると伊織は短い鳴き声を洩らして、ゴミの中から何
かを引きずる。初め八雲は汚れているから止めさせようとしたが、ふと見慣れた色の何か
であることに引っかかって伊織からそれを取り上げた。伊織もそれを狙っていたのか、あ
えて抵抗をしようとしない。八雲がそれを手にとるのを見届けると、伊織は夕焼けに消え
た。

338 :Classical名無しさん:04/07/27 21:44 ID:T/dIUjZk
幾重にも巻かれた糸を解いて封をあける
それは、八雲が投げやりと指摘したストーリー
その中のヒロインは間違いなく姉の塚本天満
主人公は、播磨拳児
―どうしてだろう、今ならはっきりと分かる
―この漫画は、面白くない―
―播磨さんの描く漫画は、ぜんぜん面白くない―
自然と原稿を持つ手に力がこもる。鬱積した感情が手元に伝わる。
八雲は播磨の漫画に触れて、次第に感じる事が一つあった。それは彼女塚本八雲にとって
の答え。ある種の羨望にも似て、たちの悪い妬みにも似ていた。唯我な考えがそのとき初
めて八雲の中に芽生える。
「播磨さんには、わたしじゃないといけない。ほかの人はダメ。だってわたしは播磨さん
を・・・」
最後の一言、これが腹の底から湧き上がったとき、唇に上る前に、身体が飛び跳ねた。
好きじゃないけど、嫌いでもない、その真ん中でもない。
広義で言えば好きにも似てる、狭義で言えば間違いなく好きとは違う言葉。それは明らか
に嫌いでも、憎いでも、恨めしいでも、まして無関心やその真ん中なんてものじゃない。
 もう一度八雲は駆け出した。学校の屋上。きっとそこで播磨がいつものように待ってく
れている。そう思った。全く根も葉もない八雲の身勝手な想像だったが、彼女はそれを信
じて止まない。
何度もつんのめって、息を飲み込んで、一分一秒でも早くゴールへ辿り着きたかった。八
雲にとってそのゴールは時間の経過と共に遠くなっていくものと錯覚した。
―早くしないといなくなる、帰ってしまう―
そんな強迫観念にも似た焦燥感が異様に高まり、もう走れないはずの身体を引きずる。
重たい足で校門をくぐり、目いっぱいの速さで階段を駆け上がる。
もうすぐ、もうすぐ
屋上へ通じる扉に手をかけてそれを振り払うように開いた。

339 :Classical名無しさん:04/07/27 21:45 ID:T/dIUjZk
あたり一面燃えるような夕日に照らされて、誰もいない。
いつもの場所に立つと、八雲はへたりこむ。突然気が抜けて、さっきまでの気迫もどこか
へ飛んでいってしまった。
感情のたがが外れて、今日で二度目の涙を流した。まるで母親とはぐれた子供みたいに、
八雲は感情を爆発させて泣きじゃくる。
まだこないと決まったわけじゃない。そう言い聞かせているにもかかわらず、虚しさばか
りが強くなる。
彼女にとっては、この場所じゃなければいけなかった。塚本八雲にとってのこの屋上が学
校にいる間の二人きりの場所だった。
 ひとしきり泣いた後、まだ濡れるまつげをしばたたかせながら、ぼっと、屋上から見え
る夕日の照らす町並みを眺めていた。
やっと気づけた感情が、今では大きな重荷だった。
「結局好きじゃない気持ちなんて、わたしには必要なかった。」
八雲は問い掛けてみた
―・・・そんなことない―
返事があった。八雲は言葉を続ける
「わたしが一人で踊ってただけ。なんだか、馬鹿みたい」
―大した気持ちね。まるで悟ったみたい―
「もういい、疲れた。」
視界がゆがむ。それを指でぬぐって歯を食いしばる。
「わたしは、もう誰も・・」
―・・・あなたは次の瞬間、その言葉を忘れる―


340 :Classical名無しさん:04/07/27 21:49 ID:T/dIUjZk
「え?
「おっまたせー」
少女の声が消えた。むしろ、かき消された。
「は、播磨さん・・・どうして?」
「ん?メールしなかったけ?新しい原稿があがったから読んでもらおうと思ってな。」
「でも、漫画はもう・・・」
播磨が口をつぐむ。サングラスの向こうの目が宙を待っているのが良く分かる
「いや、なに、描きかけがあったからついついペン入れしちまったんだ。どうせ、暇人だ
からこれくらいしかすることもねえし。だからさ、今日言った事忘れてくれ。迷惑かもし
れないけど、俺のわがままに付き合ってくれねえかな。」
播磨が頭を書きながら腰を折る
八雲は立ち上がって、ふっと笑う。その顔はやわらかい。
そして新しい原稿を手にとって、丹念に目を通す。
描きかけなんてうそなのはすぐに分かる。八雲が飛び出してから少しの時間で無理して描
いた、とてもじゃないが、漫画と呼べる代物じゃないもの。でも、播磨がどれだけ必死に
描いてくれたか八雲には良く分かった。
だけれど、どれだけの時間をかけても、どれだけ丹念に見ても、どんな作品であっても、
八雲の答えはたった一つ。もう心の中に用意されている。
「播磨さん・・・」
「おうよ」
「わたし、播磨さんの漫画、嫌いです。」
「へ?」
「面白くありません、だって・・・」

『あなた』の傍に立っているのが、『姉さん』だから


341 :Classical名無しさん:04/07/27 21:53 ID:T/dIUjZk
以上です。
投稿してから誤字を発見して恥ずかしい限り、見つけてもスルーでヨロシク
前半は内容の試行錯誤で落ち着かないけれど、後半は思ったようにかけた・・・とおもわれ

342 :Classical名無しさん:04/07/27 21:55 ID:T/dIUjZk
ちなみに題名は
Lacrima
イタリア語で涙

343 :Classical名無しさん:04/07/27 21:59 ID:e0ROVpJQ
リアルタイムで読ませていただきました
書き出しで「書き尽くされた」と仰っていますがそうは感じなかったです

GJ!

344 :Classical名無しさん:04/07/27 22:06 ID:7VBN8m9c
GJ!
仰るとおり後半が凄く良かったです。
冷やかされる播磨も新鮮ですね、意外と。(´∀`)イイ
泣き出す八雲も良く書けてましたよ。

345 :Classical名無しさん:04/07/27 22:26 ID:cqElxPqQ
GJ〜!

いいねいいね。

346 :Classical名無しさん:04/07/27 22:43 ID:rD2e3wbE
グッジョブ!!!
物語の核への入り方から終わらせ方までがうまくて
まるで映画をみているみたいです
すばらしい作品を乙です

347 :空振り派:04/07/27 23:07 ID:Il4HrCdM
前作、前々作と予想以上のお褒めの言葉をいただき、ありがとうございました。
皆様への感謝の気持ちはレスよりも作品にして返していきたいと思います。
夏ということでネタとしては既出なのですが、例のキャンプの肝試しについて
美琴ルートと高野ルートを今更ながら書いてみました。
それではどうぞ。

348 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:07 ID:Il4HrCdM
 夏のキャンプ。天満の考案により二人一組で肝試しがおこなわれた。
とはいっても、当の発案者はすでに目的が変わってるようだが……。沢近・八雲が先陣を
切り、天満・播磨も5分後に出発した。
 残るは美琴・今鳥と高野・花井。
「怖いよ〜。ミコち〜ん」
 今鳥は怖がっているように見えるが、どさくさに紛れて美琴に抱きつくつもりだ。
「どうせ、脅かし役がいるわけでもないし何も出ねぇだろ」
 美琴は肝が据わっていて、まったく怖気づく様子は無い。
「幽霊の正体見たり、枯れ尾花。怖がらなければどうということは無い」
 論理武装された花井は全く幽霊の存在を信じていないようだ。
 三者三様の姿。それを見た高野は意味ありげに含み笑いをし、このキャンプ場に
まつわる怪談を語り出した。
「愛理は怖がりだから、言わないでおいたんだけど……」
 無表情な顔を懐中電灯で照らし、暗闇に顔だけを浮かび上がらせる――。

349 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:08 ID:Il4HrCdM
「6年程前、この近くにある学校で小学生の姉妹と一人の男の子が居たの。
 姉妹は同じ男の子に好意を寄せていて、いつも三人一緒に遊んでいたわ」
「でも、子供って残酷なものね。
 ある夏の日、姉妹は肝試しに乗じて二人別々の場所で待っていた。
 男の子にどっちが好きなのかを選んで会いに来るよう、約束したの」
「その日はひどい雨で結局肝試しは中止になったのだけど、それでも姉妹は男の子が
 会いに来るのを待ってた。男の子も、もちろん会いに行くつもりだった」
「だけど、その約束が果たされることは無かったわ……。
 男の子はその道の途中で土砂崩れに巻き込まれてしまったから」
「そして、来ない男の子を一晩中待ちつづけた姉は雨に濡れたまま衰弱死したの」
「妹のほうは雷雨が怖くなって男の子を待たずに帰ったのだけれど……。
 そのまま行方知れずだそうよ」
「生きていれば私達と同じくらいの年齢だったでしょうね……。
 今もその子達の通っていた学校が廃校として、この森の奥に残っているわ」

 折りしもじっとりと湿り気を帯びるようにパラパラと雨が降り始めた――。

350 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:08 ID:Il4HrCdM
 雨が降り出したとはいえ、先に出発したペアのこともあるので残りも予定どおり出発
することにした。先に出発したのは美琴・今鳥。
 先ほどの話しがやけに現実味を帯びていたので美琴も少し不安になってきた。今鳥は
美琴の後ろから離れないよう、ぴったりとついてくる。本気で怯えているようだ。
「本当に頼りにならねぇ男だな」
「だって、本当に幽霊が出たらどうすんだよ〜」
「いいから、あんまりくっつくな!」
 ひじで押しやるようにしながら進んで行く。雨のため星明かりもなく、頼りになるの
は懐中電灯の明かりのみ……。
 鬱蒼とした森の中、じりじりと進んでいくとわずかな明かりの先に小さな足が見えた。
おそるおそる明かりを少し上に向けると髪の長い女の子が立っている。
「近所の子……じゃねぇよな」
 やっぱ幽霊か? 美琴がふと後ろを見ると今鳥はすでに忽然と姿を消していた。
「あのヤロ―、逃げやがった……」
 再度、女の子を見てみる。年齢は12歳くらいか……。しかし、年齢の割には大人びた
顔をしている。こんな夜中にこんな小さな子がいるのはどう考えても不自然なのだが、
不思議と怖い感じはしない。
「……あなた、男の子が好き?」

351 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:08 ID:Il4HrCdM
「へ?」
 あまりに唐突な女の子の質問に目を丸くする美琴。
「いや、今は……好きな男はいねぇが」
 思わずしどろもどろになってしまった。
 女の子はさらに質問を投げかける。
「多くの男の子に好かれてるのに何故なの?」
「それはアタシの気持ちとは関係ないだろ」
 こんな子供相手に大人気ないと思いながらも、美琴は少しムッとした。
「じゃあ、あなたに好意を寄せている金髪の男の子と幼馴染の眼鏡の男の子。
 もし、二人が危機に陥ったならどっちを選ぶ?」
「なんだそりゃ。選べるわけねぇだろ」
 美琴はもう相手にするのをやめようと思ったが……。
「どっちかを選べば片方は助けてあげるわ」
 そう告げる女の子から得体の知れない力を感じる。このときになって美琴は初めて
恐怖を覚えた。
「くっ。……じゃあ、幼馴染の方だ」

 ――スマン、今鳥。美琴は心の中でつぶやいた。
「わかったわ……」
 そう言って女の子は消えた。途端に雨はさらに勢いを増す。
美琴はしばらく呆然としていたが、もしや――。悪い予感が頭をかけめぐったとき、
背後に冷たい気配を感じた。
 ゾクッ。背筋に悪寒が走る――。
「ミ〜コ〜ち〜ん」
「ぎゃー! 出たー!!」
 思わず本気でぶん殴ってしまった。が、手応えはしっかりとある。
「なんだ、ミコちんも怖かったんじゃ〜……」
 そう言い残して今鳥は倒れた。美琴は仕方なく今鳥を背負って帰ることにした――。


352 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:10 ID:j/npp9Lc
 一方。花井・高野も出発していたが、早くも離れ離れになっていた。
しかも高野が懐中電灯を持っていたため、花井には数メートル先も見えない。
「クッ。高野君はひょっとして僕を脅かそうとしているのでは……」
 先ほどの高野の話しを思い出す。
「馬鹿らしい。この科学の発達した時代に幽霊などと!」
 そう自分を奮い立たせる花井に問い掛けるように森の中に声がこだました。
「私を迎えに来てくれたの……?」
「む、声はすれども姿は見えず。どこに隠れている高野君!」
 周囲を見回すと背後に女の子が立っていた――。明かりも無いので本来であれば、
そんなにはっきりと姿が見えるはずが無いのだが……。
「子供がこんなところに居ては危ない。さっさと帰りなさい」
 花井は幽霊とは思ってないらしい。
 女の子は少しがっかりして、違う問いを投げかけた。
「……あなた、女の子が好き?」
 花井はそれがどんな滑稽なことかも気付かず、力説した。
「僕は女の子が好きなのではない! 八雲君が好きなのだ!」
 女の子は呆れた顔をしている。
「ここまでストレートに答えた人は初めてよ」
「気に入ったわ。あなた、よく見るとなんとなくあの人に似ているし。
 しばらく付いていこうかしら」
 女の子は花井に真っ直ぐ向かってくる。ぶつかる――と思った瞬間。
ふっと姿を消した。カクッ――。とたんに花井は意識を失ってうずくまる。
 そして、高野がやってきた。
「まったく一人でどんどん先に行って……。少しはペースを考えてよね」


353 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:10 ID:j/npp9Lc
 花井はゆらりと立ち上がり、突然高野をがばっと抱きしめた。
「好きだ!」
「君は僕の気持ちなど気づいていなかっただろう……。だが! 今こそ言おう!!
 じ、実は僕は……!」
 花井の様子がおかしい。高野は全く動じることなく花井の首筋に手刀を叩きこんだ。
再度、意識を失った花井の首筋から女の子がふっと浮かび上がる。
「あいた〜。何するのよ」
「やっぱり……。まだ成仏してなかったのね」
 女の子は一瞬驚いた表情を浮かべたが、高野に親しそうに話しかけた。
「アキラ……。久しぶりね。幽霊の身体も悪くないわ。成長しないのが不満だけど」
 そして、自分を嘲るように言葉を吐き出した。
「私はあの人に選ばれなかった。今ではこんなザマよ」
 高野はそれを否定し、女の子をなだめるように優しく言った。
「それは違うわ。あなたが選ばれなかったんじゃない。彼は事故だったの……」
 高野の表情が少し暗くなる。
「でも生きているわ。意識はずっと戻らないけど」
 女の子も複雑な表情に変わる。
「そう……。でも私はこんな姿だから、どちらにしてもすでに意味は無いわ。
 あなたも過去に縛られる必要は無いのよ」
 しかし、高野の目に迷いはなくハッキリと意志を示すように答えた。

354 :A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM:04/07/27 23:11 ID:j/npp9Lc
「私は必ずあの人を元に戻す。海外の名医にもあたっているわ。
 これはあのとき逃げ出して、一人残された私に課せられた宿命なのよ。
 あの人を好きな気持ちは姉さんにはかなわなかった。
 だから待ってて。あの人の意識が戻れば姉さんもきっと……」
 女の子は高野の意志を受け取り、優しい笑みを浮かべた。
「ゴメンね、アキラ。全て私のわがままで起こった事なのに……」
 そう言い残して、女の子は姿を消した――。
 それと同時に空は晴れ渡り、残ったのは満天の星空。

「あれ? 何で僕はこんなところに寝てるんだ?」
 むくりと花井が身を起こす。
「何でも無いわ。さぁ、さっさと帰るわよ」
 何故よりによって、この男があの人に似てるのかしら……。そう思いつつ相変わらず
冷たい態度で花井を急かす高野だった。

355 :空振り派:04/07/27 23:12 ID:j/npp9Lc
完了です。
二度と登場しそうにない、名前のない幽霊の女の子の話しになってしまいました。
何故か幽霊の女の子と高野晶が姉妹ってことになってますが(汗
高野の謎の部分や幽霊の女の子の設定を膨らませて、キャンプ編で拾われなかった
伏線をいろいろと拾い集めて作り上げてます。
全くありえない設定では無いと思いますが、本編に無い設定なので脳内に植えつけ
ないように気をつけてください。


356 :Classical名無しさん:04/07/28 01:39 ID:rD2e3wbE
こっわー、サスペンスですね
設定がうまく消化できてていい感じだと思います

それにしても書くたびにどんどんうまくなってってますね
成長性Aぐらい

357 :Classical名無しさん:04/07/28 02:07 ID:U8dFzok6
神光臨!!!

幽霊の少女、高野晶、キャンプでの空白の出来事・・・
謎だった部分をここまで繋げるとは脱帽です!


358 :Classical名無しさん:04/07/28 02:08 ID:yJTZIkX6
>>341
八雲SSの中で一番気に入ったかも。
gj!

359 :Classical名無しさん:04/07/28 06:56 ID:Fxxuq7bM
>>341
 ラストの台詞、もうどうしようもないぐらい衝撃を受けました。
 感想としては、それだけで十分。
>>355
 うーん、正直、そこまで手放しで褒めるような作品だとは、俺は感じられなかった。
 伏線、といえば聞こえはいいけど実際単なるオリジナル設定だしね。
 いきなり展開や雰囲気が変わったので、書きたい部分だけが先走っていたように感じました。

360 :Classical名無しさん:04/07/28 08:40 ID:9GyDutc2
>>355
いろいろな設定を上手く使ってよくまとめたなぁ、と思います。
GJ!
>>359
他人の感想に文句をつけるなよ・・・感じ悪いぞ。
どういう感想を持とうが勝手だけどね。

361 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

362 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

363 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

364 :Classical名無しさん:04/07/28 13:34 ID:P5z6V56.
また始まったか…
もう終わったと思っていたのに

365 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

366 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

367 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

368 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

369 :Classical名無しさん:04/07/28 14:11 ID:lBUBd1ag
>>341
このカップリングでは、なかなか新鮮な印象を受けました。よかったです。
>>355
よく考えられた作品と思います。最後が唐突だったかな…
>>360
とりあえずなんか勘違いしていませんか…>>359は作者へのレスなのに。

370 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

371 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

372 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

373 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

374 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

375 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

376 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

377 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

378 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

379 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

380 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

381 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

382 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

383 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

384 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

385 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

386 :Classical名無しさん:04/07/28 17:31 ID:H6nAMYN6
夏だね。

387 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

388 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

389 :Classical名無しさん:04/07/28 17:49 ID:9GyDutc2
>>369
>うーん、正直、そこまで手放しで褒めるような作品だとは、俺は感じられなかった。
この一文はいらないだろ?>>356-357の感想に文句つけてるようにしか思えないが。


390 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

391 :Classical名無しさん:04/07/28 17:56 ID:H6nAMYN6
あんま好みの小説じゃないなら労いの言葉をかけるだけでいいんじゃね?


392 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

393 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

394 :Classical名無しさん:04/07/28 18:01 ID:P5z6V56.
荒らしの中からまともな文見つける間違い探しみたいになってる

395 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

396 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

397 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

398 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

399 :Classical名無しさん:04/07/28 20:08 ID:pYefCxyM
ヽ(`Д´)ノageッテンノ?sageッテンノ?ミンナハッキリ逝ットケ-!!

400 :Classical名無しさん:04/07/28 20:10 ID:bO71FDZU
>>394
NGワード使えばスッキリ

401 :Classical名無しさん:04/07/28 22:20 ID:ZCGTAP1c
夏の風物詩ってことでオッケ?

402 :white breath:04/07/29 03:09 ID:FTUeCmbc
「サラってさ、体育祭の時に応援してた先輩とは付き合ってるの?」
 
 休み時間、唐突にクラスの友達からそんな事を聞かれた。

「え? そんなことないけどどうして?」
「サラって時々告白されたりしても全部断ってるじゃない、だからもしかしたらもう彼氏がいるんじゃないかなって」
「そんなんじゃないよ。 ただまだ誰かと付き合うとか考えたことないから」

 友達の質問に苦笑気味な表情で答える。
 実際誰かと付き合うなんてちゃんと考えたことは無い。本当に好きな人ができたら別なのだろうけど。

「ふーん、じゃああの先輩は?」
「麻生先輩とはアルバイト先が同じなの、それで色々お世話になったりしてるのよ」

 少しつまらなさそうな友達に対して話す私の脳裏には先輩の姿がぼんやりと浮かんできていた。

「そうなんだ」
「まあ、お兄ちゃんみたいな人……かな」

 無愛想で不器用だが優しい先輩への想いをうまく友達に言えない私は、気づけばそんな風に例えていた。自分自身でさえうまく掴めていない想いの答えを捜し求めながら。





403 :white breath:04/07/29 03:11 ID:FTUeCmbc
「おつかれさまでしたー。お先に失礼します」

 バイトを終え、店長へと挨拶をして店を出ると、店の前にポツンと人が立っていた。街灯の光に照らされて夜の闇の中にうっすらと浮かび上がるシルエット。

「帰るぞ」

 その人物は私に向かってそう一言口にすると、くるりと背を向けてゆっくりと歩き出す。声を聞いた瞬間に誰か解った私は、慌ててその人物を追いかけた。

「待っててくれたんですか?」

 追いつきやすいように歩調をゆっくりにしていてくれたのだろう、私は横に並びかけ予想通りの人物、少し前にバイトを終え帰ったはずの麻生先輩に問いかけた。

「俺もバイトあがりだしな。ついでだ」

 なんでもない事のように言いながら、相変わらず私のペースに自然と合わせながら歩く先輩。身も凍えるように寒い冬の夜、吐く息は白く、寒さは肌に突き刺さるようだった。
そんな中で私が出てくるまで、たとえ少しと言えどわざわざ待っていてくれた事に驚き、そして嬉しかった。
 思えば、この人はいつもこうだ。不器用ながらも私の事を気づかい、時に手助け、時に見守っていてくれたのだ。その存在は家族のような居心地のよさと、安心感を与えてくれる。

「ありがとうござい……くしゅん」

 溢れそうになった気持ちをなんとか伝えようと、お礼の言葉を言おうとしたのに寒くてまるで子供のようにくしゃみをしてしまった。確かにちょっと薄着だったかもしれないけれど、いくらなんでもタイミングが悪すぎる自分が少し憎たらしかった。


404 :white breath:04/07/29 03:13 ID:FTUeCmbc
「あはは、ちょっと恥ずかしいですね」
「……ったく、ほら使え」

 恥ずかしさから顔を直視できずに言葉を漏らすと、ふわりと首のあたりにあたたかな物がかけられた。一瞬何かわからずキョトンとしてしまったが、気づくと私に先輩のマフラーをかけられていた。

「そんな、悪いですよ」
「お前に風邪をひかれると、俺が二人分働かないといけないから困るんだよ」

 思わずマフラー返そうとすると、そんな言葉と共に遮られた。その様子から、返しても受け取ってもらえないんだなと思った私は、相変わらず不器用な優しさを感じながら素直に好意に甘えることにする。
首に巻いたマフラーはとても暖かく、何か優しいものに包まれているようだった。
マフラー一つでこうまで違うなんて感じた事は初めてだったが、それが相手の優しさが詰まっているからか、先輩の物だからか、それともただの勘違いなのかは分からなかった。



 それから私たちは、何か話すわけでもなく静かに歩いていた。
もう寝静まったのか、周りの家々からはほとんど光が漏れておらず、音も聞こえてこない。冬の寒さも相俟ってか、二人の距離も自然と近くなる。
それはまるで、世界に二人で寄り添い合っているような感覚になってくる。

「お前さ、結構人気あるらしいな」
「え?」

 唐突にそんな事を聞かれ、夢のような感覚から覚め、驚きから思わず問い返してしまったが。実際は聞かれた質問よりも、先輩が私にそんな事を聞いてきたという事実に驚いてしまった。

405 :white breath:04/07/29 03:14 ID:FTUeCmbc
「俺のダチが言ってたんだよ、お前は一年の中じゃかなり人気があるって」
「どうなんですかね? 男の子から告白されたのもそりゃ数回はありますけど……」

 どうしていきなりそんな事を聞いてきたのかが気にはなったが、嘘をついたり冗談を言ってはぐらかす必要も感じなかったので事実をそのまま話した。

「ふーん、やっぱ結構モテるんだな」

 真っ直ぐ前を見ながらどこか納得いったように、それでいて今まで気づかなかったようにそんな事を呟く先輩。光の加減で影になっているその表情からは、
今何を思っているのか心の内は窺い知ることはできない。見えるのは、ただ幻想的に夜の闇に溶け込んでいく白い吐息だけ。

「気になります?」
 
 実際心の中ではどう思っているのか気になってついそんな事を聞いてしまう。いつもならここで追求などしないだろうけど、何故だか今日はこの続きが聞いてみたかった。

「そりゃ知り合いだし少しはな」
「うーん、もしかして」

 相変わらず私の方を見ないで正面を向いたまま話し動じない様子に、少し不満な私は、いじわる心が沸いてきて、からかうような口調で話しながら正面に周り込み顔を覗き込んでみる。

「何だよ」
「ヤキモチですか?」


406 :white breath:04/07/29 03:15 ID:FTUeCmbc
 突然覗き込まれ少しあわてながらも冷静な口調の先輩に対して、満面の笑みを浮かべながら聞いてみる。
言っている自分も恥ずかしくなる、おそらく顔は赤くなっているだろうが、街灯を背にしているため影になっていて見えないだろうと決め付け、思い切ってそんな事を尋ねていた。

「な、何言ってんだ」

 さすがにこれには焦ったのか、先輩はさっきまでの冷静さをどこかに無くしてしまったようにやや赤くなりながら顔をそらす。

「冗談です」

 私はその様子を見て満足し、再び横に並び歩き出した。自然と顔には笑顔が浮かんでくる。それは、冷静な先輩をからかう事に成功したからだからか、もしくは私の問いに対して慌ててくれたのが嬉しかったのかもしれない。

「あんまりからかうなよ」

 少し呆れた様な、それでも責めるような気配は全く無い。そんなやり取りに、肌に突き刺さるような寒さもいつの間にか気になくなり、いつしか心地良い暖かさに包まれていた。
 その日は結局家の近くまで送ってもらい、マフラーもそのまま貸してもらった私は、家に着くなりマフラーを付けたまま着替えもせずに眠りについた。
 

 
 夢の中、白い息が宙を舞う。それは地上から空へと降る雪のように、ふわふわと空へと溶けて広がっていく。それは白い息、それは暖かい心、空へと上る思い。
 
 マフラーの暖かさに包まれながら見た夢、私は夢の中で暖かな想いを胸に抱きしめる。次に目覚めた時、私の物語はそこから始まるから、今この想いを忘れぬように抱きしめて。


407 :蓮水:04/07/29 03:22 ID:FTUeCmbc
ということでサラ視点SSでした。
秋は文化祭に修学旅行…となればサラを出すには冬しかないか!?
とか勝手に思い、今は夏なのに冬のSS書きました。
でも投下するのも久しぶりなので夜中にこっそり投下と。


408 :Classical名無しさん:04/07/29 03:26 ID:FTUeCmbc
ってぐおおおΣ(゚Д゚||)
ちゃんとカキコできたか確認しようと思ってみたら名前書いちまってるー。
避難所では名前だして書いてたからつい癖で名前書いちまったorz
2ちゃんでは名前書いてなかったから名前書いてしまって結構焦り。
いやまあ書いちゃったのはしょうがないし、まあいいか(いいのか?

409 :Classical名無しさん:04/07/29 03:58 ID:9vGUIyyE
こんな白いのはサラじゃない!とか言ってみたり。
まぁそれはそれとしてGJ。

410 :Classical名無しさん:04/07/29 08:23 ID:NwZ5RCww
これはいい皿でつね。
GJ!

411 :Classical名無しさん:04/07/29 08:54 ID:ox4cNqrw
もうこれは白いんじゃなくてクリアだね!
GJ!

412 :Classical名無しさん:04/07/29 11:47 ID:H6nAMYN6
こんなサラも時にはありですね!
GJ!

413 :Classical名無しさん:04/07/29 12:31 ID:S6wlrCKg
むしろこれがサラだろ!
GJ!

414 :Classical名無しさん:04/07/29 12:38 ID:zn./c.CY
GJです!それにしても久しぶりに麻×サラきた〜。もっと読みて〜。

415 :Classical名無しさん:04/07/29 13:29 ID:1UyPpf1k
>>408
もうちょい改行してくれないとつらい…

416 :Classical名無しさん:04/07/29 14:12 ID:6uUAdgC2
サラが白い? ウソォ!
でもGJ!

417 :Classical名無しさん:04/07/29 14:14 ID:sqrtjyg.
麻生が美味だ!
GJ!

418 :Classical名無しさん:04/07/29 15:07 ID:emo0r/l6
>>410-413>>416-417
( ´_ゝ`)

419 :Mistake:04/07/29 18:14 ID:qmlfIyEQ
「うん?」
 早めの朝食を片付け、仏頂面で古いアルバムに目を通していた絃子は、どこか遠慮がちにゆっくりと
押された呼び鈴の音に眉をひそめる。時計の針が示すのはまだ七時台、来客があるにしてはいささか
早すぎる時間である。
「ということは、だ」
 やれやれといった表情で、けれど口の端には小さく笑みを浮かべつつ玄関に向かう。サンダルを
つっかけて開いたドア、その向こうにいたのは予想に違わず出戻りの居候。
「やあ、ようやく帰ってきた……と思ったらなんだ、随分とお疲れのようだね、また」
「……いろいろあんだよ、海の男にゃよ」
「誰が海の男だ」
 訳の分からないことを、と軽く頭をはたいておく。
「なにしやが」
「ん? 何か文句があるのかな?」
「いえ何も」
 その言葉ににあっさりと引き下がる拳児。触らぬ神になんとやら、最低限の防衛本能は身について
いる様子。
「さ、寝ぼけたことを言ってる暇があるのなら、とっととシャワーでも浴びてきたまえ。その恰好じゃ
 見苦しいったらないよ」
 ぼろぼろの上下に仄かな磯の香り、とくれば、さすがに何も言えずに従うしかない。おう、と小さな
返事を残し、バスルームへと向かう。
「まったく、余計な心配をかけてくれる」
 その姿が視界から消えてから、一人呟く絃子。
「馬鹿者め」
 口調とは裏腹の表情に、果たして本人は気がついているのかどうか。

420 :Mistake:04/07/29 18:15 ID:qmlfIyEQ
 ――数時間後。
「ほらほら、昼食だぞ」
 シャワーから出ると、疲れのせいかすぐに寝込んでしまった拳児を起こすべく、ノックもなしに部屋に
足を踏み入れる絃子。数日間主が留守だったにも関わらず、小綺麗に室内が片付いているのは当然彼女の
労働の成果である。
「やれやれ、まだ寝ているのか」
 そう言いながら歩み寄ったベッドの上には、無防備な寝顔をさらした拳児の姿。さっさと叩き起こす
つもりの絃子だったが、それを見て、フン、と小さく鼻を鳴らし、ベッドの脇に腰を下ろす。
「こうしてれば可愛いんだけどね」
 ぼやきながらその寝顔を間近から覗き込む――と。
「――んあ?」
「つっ!?」
 接近されてさすがに気配を感じ取ったのか、目蓋を上げる拳児。その思わぬ反応に、彼女らしくもなく
驚きの声をあげかけてぐっと堪える絃子。
「イトコ? 何やってんだ、こんなとこで」
「……何でもない」
「いや、んなことねぇだろ。それに何か顔赤くねぇか?」
 熱でもあんのか、と今度は逆に彼の方から覗き込んでくる。一応、彼は彼なりに心配もするのである。
「くっ……うるさいな、何でもないと言ってるだろう!」
 飛び退くようにしてその場を離れ、昼食だ昼食、と急ぎ足で部屋を出て行く絃子。訳も分からず取り
残された拳児は、俺が悪ぃのかよ、とぶつぶつ呟きながらその後に続く。

421 :Mistake:04/07/29 18:15 ID:qmlfIyEQ
 そして昼食の席に着く二人。しかし、一度狂った歯車がそう簡単に戻るはずもなく、そこに流れるのは
ひたすら微妙な空気。交わされる会話もなく、ひたすら食器の音だけが響き渡る。
「……あのよ」
「……なんだ」
 ようやく、一大決心といった様子の拳児がその沈黙を破る。
「さっきは」
 続く言葉を言い終えることさえ許されず、どこから取り出したのかはおろか、構えるモーションさえ
見抜けぬ速さでその目の前に突きつけられるモデルガン。
「拳児君」
「はい」
 そこにあるのはこれ以上ないくらいの満面の笑み。
 それ故にだからこそ、彼は動けない。
「何でもない、と言ったはずだが?」
 その言葉を聞くや否や、今度は拳児の方が絃子に負けず劣らずの速度で残った料理を胃袋に叩き込み、
即座に席を立つ。
「うまかったぜ。じゃあなっ!」
 それだけを言い残し、一目散に外へと飛び出していき、居間には絃子が一人残される。
「馬鹿者め」
 そう呟き、もはや誰もいないそこに向かって一発だけ弾を打ち込んでから、やるせないように数度首を
振る。そして飛ばした視線の先にあるのは、先刻見ていた一冊のアルバム。どのページにどんな写真が
収められているのか、空で言えるほどに見返した、彼女の――否、彼と彼女の宝物。
「いや、馬鹿なのは私の方、か」
 心の底から溜息一つ。

 ――播磨拳児、十六歳。悩み多き年頃である。
 が、刑部絃子――彼女もまた、悩み多き生活を送っているようである。

422 :Mistake:04/07/29 18:16 ID:qmlfIyEQ
……えー、萌えスレって素敵ですよね、などと思いつつ。
どうも毎度毎度こってりしてるようなのであっさり風味で。
狙い過ぎか……

423 :Classical名無しさん:04/07/29 18:30 ID:H6nAMYN6
乙です!大雨の中頑張って帰ってきた苦労が報われるSSでした!
赤面絃子さん萌えですな。GJ!

424 :Classical名無しさん:04/07/29 19:00 ID:fab4xAPk
GJ!
痺れるSSありがとう。
良い関係ですね、この二人。
絃子さんと暮らしたくなりますた。

425 :Classical名無しさん:04/07/29 19:13 ID:d1JiGx6s
>>422
超姉キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
いや、もう狙われたとおりHITしたわけですが。もっと濃くても良いくらい
細かい描写が丁寧にされていて情景が浮かんでくるようです。
とにかくGJです。やはり上手い

426 :Classical名無しさん:04/07/29 20:25 ID:GgNb2gLg
照れる絃子さんは激しく萌えるな。
GJ!

427 :Classical名無しさん:04/07/29 20:57 ID:6sGlLixk
>>402>>406
サラ×麻生もっかいやってくれ

428 :Classical名無しさん:04/07/29 21:40 ID:pTmUO3nM
>>422
ゴメン。流れを断ち切るようだけど一応言っとく



大好き。

429 :Classical名無しさん:04/07/29 23:57 ID:ZCGTAP1c
>402〜
麻生が照れるってのはどうなんだ?
なんか軽く返しそうな気がするけど。
>419〜
絃子さん可愛いっす!
ところでいとで変換してもでないんだな、絃←この字。

430 :Classical名無しさん:04/07/30 00:07 ID:rn4mODCM
429>絃⇒げん 

431 :Classical名無しさん:04/07/30 00:09 ID:rn4mODCM
みっすって書きかけで投稿してしまった

429>絃⇒げん だから、まんま読むとすごい名前になる。

432 :Classical名無しさん:04/07/30 01:13 ID:AwSs.5nM
ワロタ

433 :蓮水:04/07/30 02:42 ID:.njSfzaw
たくさんの感想をありがとうございます。
サラが素直というか白い様子が好評だったようで嬉しく思っています。
題名にも『white breath』と白がはいっているので全体的に白い感じでやってみました。

>>415
右端までいくと自動的に折り返されるので、
迷ったのですが、文の切れ目以外の改行はそれほど入れませんでした。
読みにくかったのならすいません。

>>429
いきなり言われると冷静な麻生もさすがにちょっと照れるぞ
ということでご容赦を。むしろ照れさせたサラの勝ちということで

では、ありがとうございました。

434 :Classical名無しさん:04/07/30 12:01 ID:BqRcqMFI
 体育祭も終わったある日、暮れなずむ美術教室に黙々と筆を走らせる一人の影があった。
秋の気配は日ごとに深まり、沈みゆく太陽は早くも山の帳に姿を消しかけている。

 「明かりを点ければ良いのに」
 準備室から続く扉を開けて、鼻に掛かる甘い声が告げた。
鼻腔をくすぐる甘い香りに、彼女が傍らに来たことを感じる。
 「随分、良くなったわ。でも、どういう風の吹き回しかしら? 絵を見て欲しいなんて」
 肩越しに覗き込む彼女の吐息を感じる。風に弄られた彼女の髪が一瞬目の前をよぎる。
 「ある人に、基本を学べと言われて‥‥」
 背中に彼女のぬくもりを感じる。――柔らかい――俺は、何を考えているんだ。
 「そう‥‥。でも、あなたには足りないものがあるわ。わかる?」
 思わず振り向いた俺は、間近にあった彼女の顔に慌てて視線を落とし沈黙で答える。
 「‥‥‥」
 ため息とともに、彼女は腕を伸ばし、俺の手に、繊手を重ねた。そのまま、線をなぞり始める。
薄絹越しに伝わる量感を肩に感じ、俺の意識はキャンバスから飛びそうになる。

 「あなたって、本当に鈍いのね」
 気が付くと、手を止めた彼女は、俺の瞳を覗き込んでいた。
 「へ? なんスカ?」
 「こんな子が、あの人のお気に入りだなんて‥‥」
 彼女の手が、俺の頬を挟む。むせ返るような花の香り。
 「え? え? 先生、何を?」
 「黙って‥‥」
 落ちた絵筆が床にあたり、どこかへ転がっていった。
 「むぅっ――ぷはぁ。い、いきなり何をするんですか」
 笑顔を浮かべながら、彼女は髪をかきあげた。
 「気にしないで、少し意地悪がしたくなっただけよ」
 「‥‥‥」
 「このことは、刑部先生には内緒よ。絶対にね」
 夕闇の中、白い微笑みだけが浮かび上がって見えた。

435 :Classical名無しさん:04/07/30 12:03 ID:KIo1LA2.
 彼女の行為を反芻しながら家路についた。――わからねぇ――なんだってあんなことを。
呼び鈴も押さずにダブルロックの錠前を回す。扉を開けたとき、初めてドアアームに気付いた。
物音に気付き、駆け寄ってくる足音 
 「おかえり拳児君。遅かったじゃないか」
 「んあぁ‥‥」
 玄関に鞄を投げ出し、生返事をしつつ靴を脱ぐ。くそ、まだ顔が火照ってやがる。
 「どうしたんだ? 熱でもあるのかい?」
 「なんでもねぇよ」
 顔を合わせたくなくて、つい乱暴な口調になってしまう。早く部屋に入ろう。
体を入れ替えながら、早足で廊下を進む。
 「良くは無い。ん?」
 無理やり首に手をかけて俺を振り向かせやがった。いいかげん死ぬぞ。
近ずいてくる顔が美術教師と重なって、俺の動揺は頂点に達した。
 「ば、馬鹿、そうやって熱測るなって、何度言ったら‥‥」
 いつものように、額を当てる、その予想は裏切られた。
絃子の鼻がうごめき、空調が運んだ移り香を嗅ぎつけた。
 「――エタニティ、この香りは‥‥」
 手から力が抜けたその瞬間を俺は見逃さなかった。
 「飯は良いよ。俺はもう寝る」
 身を翻し、一路自室を目指して歩き始める。
 「待ちなさい拳児君。君に尋ねたいことがあるんだが」
 氷点下の声が、俺の足を釘付けにした。のろのろと振り向く。
 「私の特技を知っているかい?」
 きらめく瞳に凝視され、俺は意識が遠のくのを感じた。

436 :Classical名無しさん:04/07/30 12:28 ID:ox4cNqrw
萌えスレ見たらこれで終わりっぽいから
GJ!この後の播磨がどうなったか
知りたい気もするが(予想は付くが)
そのときの絃子さんの顔まさに鬼神でしょうね
しかし、オネーさんズは美味しいですな!

437 :Classical名無しさん:04/07/30 13:25 ID:cM4nZAoU
>>434-435
短いながらもGJ!
笹倉先生がほのかに黒くて良いですね。

438 :Classical名無しさん:04/07/30 13:43 ID:VjxWznHg
別スレに続く....のか?

439 :Classical名無しさん:04/07/30 16:39 ID:Ur5yrgpw
現在エロパロにて投稿が続いております

神GJ Σd(´д`*)

440 :ゆか:04/07/31 02:03 ID:nLbTtTtE
弦子に萌え燃えだあいーん

441 :Anastasia:04/07/31 02:07 ID:z6izOCY.
夏も終わり、かといって残暑が終わったわけでもない秋の入り口。
その日、ピョートルは気怠い物想いにふけっていた。
その後起こる惨劇も知らずに…。

School Rumble ♭n Anastasia

身支度をして、靴を履き、鏡で見る。
少しだけ緊張しているのはいつもと会う場所が異なり、
約束の場所が喫茶店ではなく動物園だということだろう。
「いってきます…」
すでに姉は出かけているがいつもの習慣で声に出し、
塚本八雲は家からの一歩を踏み出した。

442 :Anastasia:04/07/31 02:08 ID:z6izOCY.
「やぁ〜、えらい目にあった…。でも万石さんに、
あの万石さんに切っていただけるなんて…くぅ〜」
町中でのドタバタをやり過ごし、なんとか動物園に辿りついた
播磨拳児はキリン舎前のベンチで一息ついていた。
今日は月末の休日。財布に余裕などない。
いつもは喫茶エルカドで八雲に原稿を見てもらっているのだが今日は違う。
喫茶代を節約するためにここで待ち合わせをしているのだ。
「ま、動物園代はかかっちまうがコーヒー代に比べたら安いし…。
なによりお前達に会えるしな。な、ピョートル」
キリンの無垢な瞳に話しかける播磨だった。

そのピョートルは人に知られぬよう静かにため息を吐いていた。
(ご主人様がきてくれてうれしい…でも…)
播磨には気づかれぬようそっと視線を彼方のほうにむける。
そこには白と黒の毛皮で覆われた「彼女」がいた。
白と黒の2色の体毛…。ふかふかした毛皮…。ぴんとした尻尾…。
(ご主人様や厩舎係の人達がが彼女のことアナスタシアって
呼んでるの知ってる…。
でもそれしか知らない…。彼女と話してみたい…)
再びため息をつくピョートルだった。

443 :Anastasia:04/07/31 02:09 ID:z6izOCY.
「お嬢様、本当にお一人でよろしいので?」
「くどいわね、中村。帽子」
「…わかりました。閉園間際に迎えをよこします」
沢近愛理は帽子を受け取り、矢神動物園前に降り立った。
白の帽子に白のワンピースが彼女のすらりとした姿態によく似合っている。
動物を見ていると不思議と心が和む。
憂鬱なことがあるとき、動物園でひとり時間を潰すことは愛理の
日課のようなものだった。
料金を支払い、チケットを受け取りつつ視線を上げ、案内板を見る。
どこから巡るか、考えるのが一番楽しい一時ではあるが今日は違った。
(なんで、なんであの子がいるの――!)
ストレートミディアムのヘアスタイルに華奢ながらスタイルのいい後ろ姿…。
友人の妹、塚本八雲であることは間違いなかった。
とっさに木の後ろに隠れる愛理。普通に考えれば挨拶の一つも
しておけばすむ話だろうに、一度隠れてしまった以上彼女の矜持がそれを許さない。
それも狭い園内のこと。八雲に見つからぬよう、いつの間にか
あとをつけるはめになってしまった。
パンダ舎、シマウマ舎、ホワイトタイガー舎の前を通り過ぎ八雲の
向かった先には――播磨が。
(なんで、あの子とヒゲがこんなところで――!)

444 :Anastasia:04/07/31 02:09 ID:z6izOCY.
「こ、こんにちわ…」
「すまないな、妹さん。こんなところまできてもらっちまって」
「いえ、動物園なんてひさしぶりですし…デ…ピクニックみたいで楽しめます…」
「そ、そうか?それでさっそく見て欲しいコレなんだけどよ…」
「は、はい…」
(なに話してるの――)
愛理の隠れている木陰から二人のいるベンチまで目測20メートル。
とぎれとぎれに会話が聞こえてきても判別できるまでにはいたらない。
聞こえないとなるとかえって気になるのは人の定め。
見つかる危険をおかしてももう少し近づいてみようかしら、と愛理が
悩んでいたその時、その叫び声は響いた。

「アナスタシアが逃げたぞー!!!」

その時振り返った3人の見たものは――

キリン舎に向かってまっしぐらにかけてくるホワイトタイガーだった――。

445 :Anastasia:04/07/31 02:11 ID:z6izOCY.
「ちょっと待ちたまえ、高野君!」
某レコード会社本社。キャラクターCD部門課長須藤高広は思わず声を荒げた。
「なんだね、この『以下、阿鼻叫喚。20分に渡る八雲の悲鳴』というラストは!」
「あら、須藤課長も八雲のファンでしたか?」
「そういうことをいっているんじゃない!」
会議室に似合わぬ高校の制服で煎茶を啜る女――それは高野晶だった。
「そもそも沢近君の出番が多すぎる!これでは八雲編とはいえないではないかっ!」
なにをいわれようとも柳に風。涼しい顔でお茶を置く晶。

446 :Anastasia:04/07/31 02:13 ID:z6izOCY.
「そもそも、『CD4枚のドラマ部分の連携』という難しい企画を
立てておきながら、1枚目の不評に耐えかねて脚本家が逃げる
という失態を招いたのは貴方方の責任…。
それを『キャラクター達をもっともよく知る友人である』という理由で
ゴーストライターを頼んで来た方は貴方達ですよ?
しかも高校生であるという理由だけで薄給で。
これでは利にあわなくありませんか?」
薄い笑みを浮かべつつ淡々と語る晶に須藤はぐうの音もでない。
「なにが望みだ、高野君…」

447 :Anastasia:04/07/31 02:14 ID:z6izOCY.
「キャラクターCDの高野晶編、一条かれん編、サラ・アディマエス編、
刑部絃子編の発売と私の書いた脚本に対する純利から
印税10%の報酬…。それが条件です。」
「それはいま決められない…上層部と相談しないと」
「いいのですか?発売日はせまっていますよ?」
「う、ううっ…」
「わかりました、このお話はなかったことに」
「わかった、条件を飲む!だから書いてくれ!」
そのとき須藤は自分が高野晶という人材を選んだことを神に呪った…。

448 :Anastasia:04/07/31 02:17 ID:z6izOCY.
後日、茶道部。
八雲とサラがいつものように茶道部の扉を開けると、少々異様な光景を目の前に広がっていた。
床に散乱した紙と写真。いつもお茶を飲む机でノートパソコンと向き合う高野晶。
写真は茶道部や合宿、その他行事ごとに撮った八雲や美琴、愛理の写真であるようだ。
「ど、どうしたんですか〜、これ?」
写真を踏まないように慎重に机に近づこうとするサラ。
「なんでもないわ…いま一段落したところ…。サラ、お茶をいれてくれる?」
はーい、と素直に頷き水を汲みにいくサラ。
八雲はお茶が飲めるようにと晶と床に落ちた写真と紙を拾いはじめる。
紙には姉や八雲、姉の友人達の個人データが書き連ねてあるようだ。
(なんに使ったんだろう、これ…。私しか知らない姉さんの
ことまで書いてある…。部長っていったい…)

449 :Anastasia:04/07/31 02:16 ID:z6izOCY.
ふと、目を上げると微笑みを浮かべた晶と目があった。
「そうそう、八雲には大分助けられたのよ、ありがとう…」
「え、えっとなにもしてないですけれど…」
そんなことないのよ、と首を振った晶はポケットから小さな紙切れをとりだした。
「お礼といってはなんだけれど、名画座で明後日までやっているの。
よかったら観てみて?」
晶から手渡された2枚のチケットに書いてあるタイトルは英語で

  「Anastasia 」

と書かれていた。好きな人とでも観にいったらいいわ、との晶の言葉に
想像したのはサングラスをかけたあの人の―――

「はーい、お茶、入りましたよー」
はっと気が戻る。でもまだ頬が熱い。
晶とサラは八雲の変化に気がついていないようだ。
ほっと一息、息を吐いて八雲はいつもの日常に戻っていった――。

450 :Anastasiaって想像したら:04/07/31 02:20 ID:z6izOCY.
こんな話になりました。
しかも史上初SS書き。初公開。むっちゃ恥ずかしいです。
SSの文法とかちょっと無視していて読みづらいところもあると思いますが
ご指摘、ご感想お待ちしています。

451 :Classical名無しさん:04/07/31 02:24 ID:JZmhiykM
タイトルのアナスタシアって聞いて某ゲームの女性思い出した俺は

もうだめぽ

452 :Classical名無しさん:04/07/31 03:11 ID:q/YUQsrM
>>450
悪くなかった。欲を言えばもっと意外性が欲しかった。

453 :Classical名無しさん:04/07/31 06:36 ID:BHUs28vo
いや、普通に面白かった、グッジョブ!
外しかたがどことなくスクランっぽくていい。
播磨のマンガオチを思い出したよ。
文章も読みにくくはないので初書きならもう文句なしですし、素直に脱帽です。

それにしてもこれは晶SSに、なるのかなぁ?

454 :空振り派:04/07/31 12:54 ID:WBSPqmE.
今更ながら初イチさん。編み込み補完です。
昔にイチさんが編み込みしてたり、してなかったりという話しが出ていたの
を思い出して、それを元に書きました。
#58前後の話しです。
それではどうぞ。

455 :HEAVENLY CREATURES:04/07/31 12:55 ID:WBSPqmE.
「ハァ……」
 すでに夏休みが終わろうとしていた。
 ベッドに横たわり何度となくため息をつく……。この夏、偶然学校で今鳥君と出会い、
また一緒にバイトをしてその優しさに触れることができた。男女の付きあいというものに
縁遠かった私をデートにまで誘ってくれた。
 ただ、そのことだけが嬉しくて肝心な内容については何も決まっていない事に気付いた
のは家に帰ってからだった。
「バカだなぁ……、私。連絡先の一つも教えてないなんて……」
 あれから、学校でもバイトでも今鳥君と会うことは無かった。
 学校の連絡簿に載っている自宅の電話番号にかければ、話しができるかも知れない。
そう思いついたものの――。
 まだ、そんなに親しくないのに迷惑かも……。それにご両親が出たら……?
など色々と考えてしまい受話器に手をかけて何度も思いとどまった。
 そして悩んだ挙句に部活やバイトの疲れに襲われ、気付かないうちに眠っている。
そんな毎日を繰り返していた。
 でも明日から新学期――。また今鳥君に会える……。
 期待に胸をふくらませながら、私はほどなく眠りについた。


456 :HEAVENLY CREATURES:04/07/31 12:55 ID:WBSPqmE.
 翌日――。普段より一時間早い目覚め。
てきぱきとジャージに着替え、日課のロードワークをこなす。
 夏も終わりに向かい、身を切る風が冷たく心地良い。朝の空気がいつもよりも新鮮に
感じられる。今日はとても体調がいい。
 心地よい疲れをシャワーで洗い流し、自室に戻って鏡台の前に座る。
お父さんが去年の誕生日に買ってくれた鏡台。これまで人に見られるということをあまり
意識しない私はその鏡をほとんど覗いたことは無かった。
 ――今日、学校で会ったら今鳥君はどう思うだろう。
そう考えると初めて自分を良く見せたいという気持ちが湧き上がった。
 引き出しの奥にしまっておいた化粧セットを取り出す。お母さんが誕生日に化粧の仕方
というものを教えてくれた。使ったのはそれ一度きりでまだ一人でしたことは無い。
おそるおそる口紅を塗る。手が震えて何度となくはみ出してしまった。そしてアイライン
も塗ってみたものの、何だか私の顔じゃないみたい……。あまり不自然にならないよう、
ほんのかすかに残した。

457 :HEAVENLY CREATURES:04/07/31 12:55 ID:WBSPqmE.
 化粧をすることに限界を感じた私は次に髪に手をあててみた。何の変哲も無いショート
カット。
 どうしよう……。――そうだ!
 弟の好きなゲームのポスター。そこにあった同じショートカットのきれいな女の子を
思い出した。それを真似て、片側だけの編み込みを作る。鏡を見ながらの作業はたまに
左右が混乱して難しい。苦戦することおよそ30分。
 鏡に映った自分に向かって笑顔を作る。
 ――うん、悪くない。
 最後に学校の皆がやっているようにスカートの丈を短くしてみた。でも、思った以上に
恥ずかしい……。とても皆のようにはできない。我慢できるギリギリのところまで短く
するにとどまった。
 そこにやっと起きてきた弟がからかうように言った。
「お母さ〜ん。姉ちゃんが色気づいた〜」
「コラ、姉ちゃんをからかうんじゃないの!」
 私は軽くたしなめながら、とりあえず弟に認められたことに安心して家を出た。


458 :HEAVENLY CREATURES:04/07/31 12:56 ID:WBSPqmE.
「おはよう」
 久しぶりに会う友達と挨拶を交わす。友達は私を見てびっくりしている。
 ――やっぱり、変だったかな……。
ちょっと不安になったけど、友達の反応は予想以上に好感触だった。とても嬉しい……。
 教室は久しぶりのクラスメートの再会に湧き上がっている。
 今鳥君はまだ来ていない。私は教室の入り口が見えやすいように窓際へ移動した。
友達と話しながらも、教室に入ってくる一人一人を目で追う。
 今鳥君に会ったら何を話そう……。
 まずデートの話し、それから――。夏休みの間、ずっと考えていた話題を予行演習の
ように頭の中で繰り返す。
 時間は刻一刻と過ぎていく。それでもなかなか今鳥君は来ない。
 何かあったんだろうか?
 次第に不安が募り、教室の入り口をじっと見つめる……。
 そして、始業直前になった頃。
「オハヨー」
 ――来た。
 教室に入ってくるなり、今鳥君は大きな驚きの声を上げた。
「おぉ〜。髪型変えたんだ〜」
 今鳥君が気付いてくれた……。思わず顔がほころぶ。でも、すぐにそれは私のぬか喜びだ
とわかった。よく見ると今鳥君の視線の先は私ではなく……。周防さんの方を向いていた。
 ――え?
 私の目の前で今鳥君が周防さんに親しそうに話しかけている。夏休み前はそれほど親しい
ように見えなかった二人が……。
 すぐにHRの時間になり先生が話しを始めたが、私の耳には全く入らなくなった。
 何故、今鳥君と周防さんが……。私はその疑問ばかりが頭の中でループしていた。


459 :HEAVENLY CREATURES:04/07/31 12:56 ID:WBSPqmE.
 長いHRが終わり、放課後になって再び教室は活気を取り戻した。
 それでも私はしばらく自分の机から動けないでいた。
今鳥君は今も周防さんに話しかけている。じっと様子を窺う私に追い討ちをかけるように
友達が仕入れた情報を伝えに来た。
「今鳥君と周防さん、やけに仲良くなったと思ったら夏休みに一緒に海に行ったんだって」
 その事実に私の絶望は決定的なものになった……。
 周防さんが羨ましい……。美人だし、スタイルもいいし……。性格もさっぱりしていて
男子からも女子からも好かれる。私なんかじゃ、かなわないな……。
 結局、今鳥君と言葉を交わすこともなく家に帰った。初めて部活もサボってしまった。
今朝、私を手伝ってくれた鏡を再び覗き込む。そこにはせっかくの化粧も意味をなさない
ほどの暗い顔が映っていた。
 ――私。ナニ期待してたんだろ。
 化粧を落とし、編み込みをほどく……。トレーニングに打ち込んでいるときの素の顔に
再び戻っていた。
 さらに翌日――。また、昔の格好に戻った私。友達はがっかりして理由を尋ねたけれど、
私は答えることができなかった。
 今鳥君は相変わらず、私には話しかけてこない。
 ――デートのこともやっぱり忘れてるのかな……。
 うつむいて廊下を歩いているとドンと誰かにぶつかった。

460 :HEAVENLY CREATURES:04/07/31 12:58 ID:WBSPqmE.
「ごっ、ごめんなさいっ」
 あわてて顔を上げるとその相手は周防さんだった。
「いいって。それより編み込みやめたのか? せっかく可愛かったのに」
 周防さんが誉めてくれたのに私は何故か嬉しくなかった……。今鳥君が今、一番関心
を持っているのはこの人……。私は勇気を振り絞って質問してみた。
「あ、あのっ……。今鳥さんと仲良いんですか?」
「え? ありゃ、あのバカが一方的に話しかけてきてるだけだ。むしろ、迷惑だよ」
 ため息をついて答える周防さん。
「アンタもあんな男とはあまり関わらねぇことだ。バカが感染るからな」
「いえ、私は別に……。それと今鳥さんの事をあまり悪く言うのはやめてください!」
 私は思わず反論してしまった。
「そ、そうか。すまねぇ」
 周防さんは少し驚いて素直に謝ってくれた。
 この人は嘘を言う人じゃない。ということは今鳥君も私も今は片思いということ。
まだ私はあきらめちゃいけない……。いつか今鳥君が私に振り向いてくれるまで……。
「ありがとうございましたっ」
 私は思わずお礼を言い、何が何だかわからないといった表情の周防さんを背にして
再び歩き出した。
 教室に戻ると黒板に今鳥君と私の名前。明日は二人で日直当番……。これはきっと
神様が与えてくれたチャンスかもしれない。
 もう一度、勇気を出して今鳥君と話してみよう――。

461 :空振り派:04/07/31 12:57 ID:WBSPqmE.
完了です。
萌えのほうに重点を置いて書いたのは初めてなので、まだまだ力不足ですが……。
タイトルは邦題だと「乙女の祈り」なんですが、原題のままだと何だか異生物のよう
で嫌だなぁ……。と思いつつも今鳥の視点からしたら、原題のイメージのほうだろう
ということでネタとしてそのまま採用してしまいました。
イチさんの「知ってる」にはグッと来たので成就して欲しいところです。


462 :Classical名無しさん:04/07/31 13:13 ID:L2E4sP2.
sage

463 :Classical名無しさん:04/07/31 13:42 ID:JZmhiykM
イチさん作品の傑作としか言いようがないな。GJ!!
ここではイマイチコンビは不評だけど一部では絶大な人気があるらしいが…
何とも頑張ってほしいところ。

464 :Classical名無しさん:04/07/31 15:58 ID:RopKxP9E
>461
乙女の祈りはタイトルとは裏腹に
「少女二人が自分の妄想に囚われて母親を殺害するまで」
を描いた黒い映画だからなぁ(w

どっちかっつーと黒サラSSに相応しいタイトルかもしれませぬ。


465 :Classical名無しさん:04/07/31 17:12 ID:1.Qbaq2I
まぁ、タイトルネタに内容はあまり関係無いけどね。

466 :クズリ:04/07/31 18:00 ID:nUoXiSLg
 何だか久しぶりに書いた気がします。やや意味不明な話になってしまいましたが、
投稿させていただきます。

 Is this LOVE?


467 :Is this LOVE?:04/07/31 18:00 ID:nUoXiSLg
 夜の空を見上げるたびに、少女は思う。
 いつか己がそこに至る日が来るのだろうか、と。

 Is this LOVE?

 その場所に少女が留まるようになってから、幾度、年が巡ったかを当の本人も覚えていない。
 すでに彼女が数えるのをやめてから久しかった。
 少女にとって今日という日は、いつか見た『あの日』の焼き直しに過ぎない。
 延々と繰り返される毎日、その中で人の所作は変わることなく、ただただ先人と同じように悩み、
苦しみ、生きて、時に死んで、やがて巣立っていく。
 この、矢神という土地を。
 少女は少女のまま、太陽が昇りやがて沈むのを、星が瞬きやがて消えるのを、月が輝きやがて霞
むのを、ただ眺めていた。
 そう。
 ただ眺めていた。
 それは見るという意思ではなく、思いを馳せるという心でもなく、飽くという情すら磨り減った
後に残る枯れ切った体と瞳、その動きに過ぎない。

 この場所に彼女が一人、留まっているその理由はただ一つ。
 答えを知っている……あるいはこれから知ろうとする女性がいるからに他ならない。

『答えて……あなた男の人がキライ?それとも好き?』

 長い時の中に漂い、世界をさまよい続けて、様々なものを少女は見てきた。
 綺麗なものもあれば、汚いものもあった。
 忘れてしまったものもあれば、忘れられない思い出もあった。
 やがてこの矢神という土地に流れ着いた頃、彼女はただ一つのことだけに興味を抱くようになっ
ていた。

『これだけ長く生きてもわからないわ。私、ずっとこの姿のままだから。大人になれないから』

 それは、恋という名の想い。

468 :Is this LOVE?:04/07/31 18:01 ID:nUoXiSLg
 夕の闇が少しずつ太陽を覆い隠していき、薄暗くなっていく教室に灯が入る。
 旧校舎に留まり、すでに冷め切った紅茶のカップを手にしていた塚本八雲は、数度の点滅の後に
付いた蛍光灯の灯りに一度、天井を見上げた。
 そして一つ、
「ふぅ」
 溜息を吐く。

『播磨先輩と付き合ってたんだって?』

 親友の言葉が八雲の頭の中を、ぐるぐると回り離れない。
 美しい唇からこぼれるのは、小さな溜息ばかりで、そのどれもがどこか陰鬱であった。
 澄んだ色の紅茶の水面に映る自身の顔に、八雲は目を細める。
 そこに浮かぶのは、ただ困惑に揺れている少女であり、また己を責める幼さを宿した瞳だった。

『播磨先輩は沢近先輩とつきあってるんだと思ってたよ』

 どうしてこうなったのだろうか。
 一人残った部室で八雲は、沈黙に囲まれながら途方にくれる。
 そもそも彼女は、別につきあっているなどと誰かに言った覚えは無い。
 確かに、彼と……播磨とはよく会っている。
 しかしそれに他意はない。少なくとも彼にそのつもりはないだろう。もしそんな想いがあるのな
らば、彼の声が視えるだろうから。
 ……微かな違和感。
 胸の奥に感じたそれが何かを、八雲は探るが見つからない。

『天満……それはこのコよ』

 金の髪も美しい彼女の言葉の意味と意図を、八雲は掴みきれなかった。
 何故? 心に浮かぶのは、疑問符ばかり。
 あの人は何故、そんなことを言ったのだろうか。
「それはその子が、彼を好きだからでしょう?

469 :Is this LOVE?:04/07/31 18:02 ID:nUoXiSLg
 聞き覚えのある声に八雲は、顔を上げた。

「久しぶり。八雲」

 宙に浮かぶのは、以前に美術室で邂逅した幼い少女の幽霊だった。

「どう?いつか聞いた答えは出たかしら?」
「貴方は……」
 微かに目を見広げる八雲の前に、彼女はふわりと舞い降りる。
「答えて……あなた男の人がキライ?それとも好き?」
 いつかと同じ問いかけに、八雲は答えることが出来なかった。

「うぅ……」
 少女の黒髪が、八雲の体を拘束する。だが前とは違い、それは乱暴で加減がなかった。
「あなた、言ったわよね」
 黒曜石と見間違えんばかりの輝きを放つ瞳が、八雲の顔を覗きこむ。

『今はわからない……だけど私も、きっと誰かを好きになる……と思う』

 思い出さされた言葉に、八雲は困惑したまま少女を見つめ返した。
「あの時は、わからなかった。じゃあ今なら……わかるのかしら?」
 問いかけと同時に、少しずつ艶髪が彼女の柔肌を締め付け始める。
「くる……しぃ……」
 身動きがとれないまま、喉から苦しげな吐息を漏らす。
 必死に四肢に力を込めるが、ピクリとも動かない。それほどに幼き娘の髪に込められた力は強か
った。
「どうなの?答えてよ」
 間近に見る少女の瞳に、感情はない。ただ深い漆黒が瞳の奥に広がるばかり。

 殺される……!

 思った瞬間、八雲は薄れ行く意識の底から現れた人影の名前を呼んだ。

470 :Is this LOVE?:04/07/31 18:03 ID:nUoXiSLg
 播磨さん……

 それは声にならない叫びだった。
 首を絞められたままの彼女が漏らしたのはただの呻き声でしかなく、意味をなさない空気の震え
が生まれたに過ぎなかった。

「やっぱり、ね」
 満足そうにそう呟くと、少女は八雲を束縛から解いた。
 崩れ落ちるように床にしゃがみこみ、彼女は肺に新鮮な空気を取り込もうと荒く息をつく。
 その瞳に、少女の小さな足が映った。強く脈打つ胸を服の上から抑えながら、八雲はゆっくりと
視線を上げていった。
 唇に、小さな笑みが浮かんでいた。どこか満たされたような雰囲気が、眦に現れてもいた。
「あなたは、その播磨という人のことが好きなんだわ」
「……え?」
「叫んだでしょう? 助けを求めたでしょう?」
「それは……!!」

 絡み合う視線。
 その向こうに八雲は、少女の心を視た。

『ねぇ、――君のこと、好きなの?』
『え? ……よくわからない』
『……そっか。でも、――君は、好きだって言ってたよ』
 二人の幼い少女がいた。顔は見えない。ただ声が聞こえてくるばかり。
 だがそれでも、その二人が幼いということが、八雲にはわかった。
 場所は……駅のプラットホームだろうか。
 三番線に列車が参ります。危険ですから……
 かすれたアナウンスが聞こえてくる。
『わかんない。だってよく知らないんだもん』
『私が先に好きになったのに』
『え?』
 トン。

471 :Is this LOVE?:04/07/31 18:03 ID:nUoXiSLg
 それは小さな一押し。
 純粋で無邪気な殺意。
『キャァァァァァァッ!!』
 悲鳴が響いた。
 残された少女は、点々と返り血を浴びた姿のまま、愕然と己の手を見つめていた。
 その顔は、しかし、微かに歪んでいた。
 笑みの形に。

「好きってそういうことでしょう?」
 そう言った彼女の顔が、プラットホームから落ちていく少女の顔と重なった。

 次の瞬間、八雲は少女を胸にしっかりと抱きしめていた。

「……八雲?」
 唐突な彼女の行動に、怪訝そうな声をあげる少女。だが八雲は、その手に、腕にこめた力を緩め
ようとはしなかった。
 いや、むしろなおさらに強く引き寄せ、頭をかき抱いた。
「どうして」
 自然と零れ出す涙を拭うこともしないまま、八雲は彼女の耳元でそっと囁いた。
「どうして、好きって気持ちを知りたいの?」
「誰かを好きになったことがないからよ」
 幼い声、だがとても深く、内にたくさんの想いが込められている。八雲はそんな風に感じていた。
「この姿のまま、大人になれないまま、ずっと世界をさまよってきた」
 抱きしめられたまま、少女はゆっくりと語り出した。
「他のことはわかるの。色々と見てきたから」
 少女の体に、ぬくもりはない。むしろ冷たいほど。
 彼女が幽霊だということを、八雲は改めて思い知らされる。
「でもわからない。好きという気持ちだけは」
 その声音は何も変わっていない。なのに、何故か八雲の耳には、かすれて聞こえた。
 まるで少女の心の震えを伝えてきたかのように。
「誰もその力から逃げることが出来ない。どんなに冷静な人でも、好きという気持ちにとらわれた
ら、変わってしまう」

472 :Is this LOVE?:04/07/31 18:10 ID:nUoXiSLg
 外から見ているだけでは、わからないの。
 そう続けた後、少女は軽く八雲の体を押して、身を離す。
 ほんのわずかな距離を挟んで見詰め合う二人。
「わからないの、それがどういう気持ちなのか」
 八雲の頬を伝う涙を小さな手で拭いながら、少女は言った。
「だから、知りたかった。教えて欲しかった。好きになるっていうのは、どういう気持ちなのかを」
「……私に?」
「あなたは『枷』をはめられた人間だから……私と同じように」
 それが自分の力のことを指していると気付いて、八雲は眉を曇らせた。
「八雲。あなたは人を、男の子を怖がっていた。心が視えてしまうから」
 じっと少女は、八雲を見つめる。
 嘘を許さないその真っ直ぐな瞳から、彼女は目をそらすことが出来ず、身じろぎ一つしないまま
見つめ返す。
 静まり返る空間、漂う緊迫感に空気がきしむ。
「それでもあなたは言ったわ。いつか誰かを好きになるって」
 自らの言葉に小さく八雲が頷くのを視てから、少女は続ける。
「そして、好きになったんでしょう? あの播磨という人のことを」
 ザワリ
 八雲の胸の奥を、何かが通り過ぎた。
 それは熱くて、そして痛く、だが決して不愉快ではない想い。
「それは……」
「あなたは、自分が死にそうになった時、彼のことを呼んだ。それが好きということではないの?」
 切り込むような少女の言葉に、八雲は己の心と向き合い、問いかけた。

 私……
 播磨さんのことが好きなの?

「わからない」
 素直な気持ちを、八雲は口に出した。
「え?」
 問い返してくる少女、その瞳を、八雲は見つめ返した。
 惑いながら、それでも精一杯、まっすぐに。

473 :Is this LOVE?:04/07/31 18:11 ID:nUoXiSLg
「わからない。好き……なのかどうか」
「どうして? 彼があなたにとって、一番、大事な人なんじゃないの? 最後に会いたいと願う人
じゃないの?」
 また、鋭い叱咤に似た少女の声に、八雲は一瞬、身を震わせるがそれでも、目をそらそうとはし
なかった。
 もしそうしてしまえば、それは逃げたということだと、本能が叫んでいた。
「そういうことじゃ、ないと思う。好きっていうのは……」
 彼女が思い浮かべていたのは、姉、塚本天満の無邪気な笑顔だった。
 烏丸という少年のことを好きだという彼女が、彼のことを話す時はいつも、とても幸せそうな顔
をする。見ている八雲までが、心暖まるほど。
「じゃあ、どういうことなの?」
 静かに少女は問いかけてくる。
 八雲は目を閉じて、答えを探す。それはきっととても身近にあるものだと、何故か八雲は感じて
いた。
「好きって、いうのは……」

 姉が見せる、純粋な幸福の微笑。
 愛理が見せた、鋭くそして複雑な表情。
 その二つは、実は表と裏なのだと、八雲の直感が囁いた。

「その人の側にいて、楽しいと思えること……だと思う」
 八雲の答えに、少女は無言、そして表情も浮かべない。
 ただじっと、彼女を見つめている。続きを促されているのだと気付き、八雲は必死に言葉を探す。
「だけど、もしもその人の心が自分を向いていなかったら、辛く思ってしまう。それが……」
「好き、という気持ちだというの?」
 頷く八雲は、しかし全く自信など持てなかった。
 だからこそ、播磨に対する自分の気持ちがわからなかったのだ。もしも本当に、彼のことを好き
ならばこんなにも、迷うことなどなかっただろうから。
「それじゃ、あなたにとって彼はどういう人なの?」
 問いかけてくる少女に、八雲はわずかに首をかしげた後、
「憧れ……だと思う」
 小さくそう答えた。

474 :Is this LOVE?:04/07/31 18:11 ID:nUoXiSLg
 動物という接点しか、最初はなかった。ただ漠然と、優しい人だとしか思わなかった。
 違う点があるとすれば、彼の心は他の人と違って視えない、ということだけ。もっとも、それだ
けで珍しいと言えば珍しいのだが。
 それから漫画の批評を頼まれるようになり、少しずつ彼と過ごす時間が増えていった。
 だが、だからと云って好きだと感じたことはない。
 彼の人柄、優しさ、そして動物達との交わりを見つめているうちに、惹かれている自分に気付い
てはいた。
 しかし、それは例えばサラのような友人に感じるようなものでしかない。
 あんな風になりたい、そう感じることがあるような思いを、八雲は憧れという言葉でしか表せな
かった。

「憧れ……」
 小さく頷く八雲を瞳の端にとらえながら、少女は窓の外を眺める。
 ゆっくりと舞い落ちる鮮やかな黄に色づいた葉を、彼女は目で追っていた。
「ならあなたがもし誰かを好きになったとしたら、どんな想いを抱くのかしら?」
 問いかけの形をしていない問いかけに八雲は、ふと浮かんだ言葉を口にする。
「焦がれ……」

 一緒にいたい、とか。
 自分のことだけを見つめて欲しい、とか。
 他の人を見ないで欲しい、とか。

 手を汚してでも自分だけのものにしたい、とか。

 きっとそれは、焦がれと言うのだろう。八雲はそう思う。
 そして彼女がまだ感じたことのない想いでもある。

「焦がれ……か」
 ふわり。
 少女が宙に浮き、ワンピースの裾がかすかにはためいた。
「確かに私がまだ、知らない想いだわ」
 そして彼女が、小さく笑ったような、そんな風に八雲は見えた。

475 :Is this LOVE?:04/07/31 18:12 ID:nUoXiSLg
「八雲、また、会いに来るわ」
 少しずつ光に包まれていく少女に、彼女は目を細めながら、だが視線を外そうとはしなかった。
「いつか、あなたが憧れではなく、焦がれを感じる頃に。その時にもう一度、聞くから」

『男の人が好き? それともキライ?』

「待って!」
 徐々に体が透き通っていき、今にも消えそうな少女を八雲は呼び止めた。
「何?」
「あの……」
 そこで八雲は絶句してしまう。
 どう言えばいいというのだろう。自分を殺した相手を許してやれ、などとよく知りもしない自分
が言ってもいいものか、どうか。
 焦がれ。それは純粋ゆえに残酷なのだと、どう伝えればいいのか。
「あのね、八雲」
 迷う彼女に、どこか呆れたような声で少女は言った。
「それ、私じゃないわよ」
「……え?」
「言ったでしょう。色々なものを見てきたって。あなたは私の心を視て、それが私のことだと思っ
たかもしれないけれど……そうじゃなくてそれも、私が見てきたことの一つ」
「……本当に?」
 最後の問いかけに、少女はただ小さく微笑んで見せただけで、答えなかった。

 もはやその姿の大半を隠した太陽の、最後のきらめきが投げかけられて、八雲はゆっくりと目を
覚ました。
 呆とした頭で考える。今のは、現か幻か?
 答えは出ない。ただ確かに、彼女が導き出した答えだけは胸の中にあった。
 播磨さん。
 そっと、胸の奥で小さく呟く。生まれてくる、暖かなぬくもり。例えるなら小さな冬の焚き火。
 この気持ちがいつか、燃え盛る日が来るのだろうか。八雲には、わからなかった。
 だけど、今は、それでいい。
 矢神坂を歩いて下りながら、彼女は、そんな風に考えるのだった。

476 :クズリ:04/07/31 18:16 ID:nUoXiSLg
 以上です。
 本当は、季節ネタで怪談とか書きたかったんですけれど、何かこんなことになってしまいました。

 ネタはいくつかあるんですが、まだ熟しきっていないんですよね。また長編とか連載になるのは
どうかと思うので……SSって難しい。

477 :Classical名無しさん:04/07/31 18:22 ID:cMlOS8mU
リアルタイムで読ませてもらいました。
相変わらず上手いですね。
幽子さん続出で夏らしいですな。
でも、471で怖すぎてちょっと引いてしまいました。
連載はじっくりと待っているのでゆっくり暖めてください。

478 :Classical名無しさん:04/07/31 22:18 ID:5VpeNRsA
投下させていただきます

479 :While waiting for him :04/07/31 22:19 ID:5VpeNRsA
カチン
 決してそうぞうしいわけではないが、静かでもない店内にグラスのぶつかる
音が響き渡る。刑部絃子はぶつけたグラスにゆっくりと口をつけた。一方の
笹倉葉子は一口でグラスを空にすると、手近のウェイターにおかわりを告げた。
 二人は地下にあるジャズバーふうの酒場にいた。本格的なジャズを流すの
ではなく雰囲気を味わうだけの店だが、それでも多少客層を選ぶのかその辺の
居酒屋などと比べて静かに、それでいてあまり周りを気にすることもなく酒を
飲むことができた。
 元々は体育祭が終わった打ち上げということだったが、絃子と笹倉の二人には
体育祭とはあまり関係の無い行事である。要は飲むための口実である。二人は
最初、新任の教諭である姉ヶ崎妙を誘おうと考えていたのだが、先に彼女を誘って
いた2-Dの担任である谷の顔を見てそれはとりやめた。もっとも谷はその後、
どこから聞きつけたのか面白がった他の教諭たちに押しかれられていたので二人
きりとはいかなかったようだ。
 あまり騒がしいのを好まない二人は彼らに同行する気もおきず、彼らとは別に
こうして二人で飲んでいた。


480 :While waiting for him :04/07/31 22:20 ID:5VpeNRsA
 笹倉は運ばれてきた二杯目を二口で空にするとふたたびおかわりを告げた。
「どうしたんだい? 今日はやけにペースは速いね」
 飲む量こそ多いものの、どちらかというと大人しい飲み方をする笹倉らしからぬ
ペースに絃子が尋ねた。
「そんなことないですよ〜」
 そういう笹倉の口調はどこかおかしく、何かあるのかそれとも早くも酔いが
回っているのかもしれない。
 絃子は不審に思いながらも追及せず、自分のグラスに口をつけた。
 その後、とりとめのない会話を交わしている間も笹倉のペースはおとろえず、
しばらくした頃にはかなり酔っ払っていた。それでも笹倉は飲みつづけ、会話も
続けられていった。
 内容はやはり体育祭についてのことが中心となり、やがてリレーでの播磨の
ことについて会話は流れていった。
「播磨君は目立ってましたねぇ〜」
「いい恥晒しと言うんだよ、あれは」
 冷たい口調とは裏腹に薄く微笑みながら絃子は言った。
「口元、笑ってますよ?」
 笹倉が悪戯な表情を浮かべながら言った。絃子が反射的に口元に手をやると
笹倉の笑みはいっそう深いものになった。
「まぁ、あんなに愉快なものはそうそう観れるものではないからね」
 そう言って絃子は少しバツが悪そうにする。
「刑部さんは播磨君に厳しいですよね」
 笹倉はグラスに残っていた酒を一気にあおり、言った。
「素直じゃないですもんね」

481 :While waiting for him :04/07/31 22:21 ID:5VpeNRsA

「何がだね?」
「そうやってとぼける所とかが。本当は播磨君が好きなくせに」
「そりゃ、好きだとも」
「そんな強がり言わなく……あら?」
 絃子がさらりと言ってのけたことのあまりのあっさりっぷりに笹倉の頭が
混乱する。
そして言葉の意味を理解すると呆けたような顔になった。
「なんだね、その顔は?」
「いや、あんまり簡単に言うんで拍子抜けしちゃいましたよ」
「一体、何を期待してるのか」
「恥かしくて赤くなりながらも意地になって否定する刑部さんが見たかったな〜、
なんて♪」
「……」
「というのは冗談でして」
 無言で突きつけられた銃口から発せられる圧力に笹倉はあっさりと屈する。
笹倉の言葉に絃子が懐に銃をしまう。
「で、好きっていうのはどういう意味でです? 家族として? それとも異性
として?」
 銃口が取り除かれ調子を回復したのかグッと身を乗り出し笹倉が詰め寄る。
その勢いに絃子は思わず後ろにのけぞってしまう。
「それはもちろん家族として、だよ」
 笹倉の様子にいささか戸惑いながらも絃子ははっきりと答えた。それを聞いた
笹倉はハァ〜とこれ見よがしに大きな溜息をつく。

482 :While waiting for him :04/07/31 22:23 ID:5VpeNRsA
「これだから素直じゃないって言うんです」
「何が言いたいんだい?」
 絃子の視線がわずかに苛立ちの色を帯びる。だが、笹倉はその視線を真正面
から見据えた。
「私には、そうは見えないってことです」
 そう言うと、景気付けといったように新たに運ばれてきたグラスを一気に飲み干す。
「刑部さん、フォークダンスで播磨君が沢近さんと踊ってた時、自分がどういう
顔してたのかわかってないでしょう。」
 笹倉はそこで言葉を切り、絃子の顔を見つめた。絃子もまた何も言わず笹倉を
見つめていた。その顔は、笹倉でなければ気づかないほど僅かに、痛みに耐える
かのよう歪められていた。
「置いてきぼりにされた子供みたいな顔してましたよ。あんな顔、初めてみました。
……いつもはこんなに強情に隠すのに」
 そう言って笹倉は腕をのばし絃子の頬に手を添えた。絃子はその手を押しのけ
言った。
「拳児クンは塚本さんが好きなんだよ、何年も前からね…」
 笹倉はゆっくりと首を横に振った。
「塚本さんが播磨君に振り向くことはきっと無い。だから、安心して観ていられる。
違いますか?」
 絃子は一瞬鋭く睨みつけた。だがすぐに力なく目をそらした。笹倉は構わず続ける。
「でも沢近さんは違う。もし、沢近さんが播磨君のことをちゃんと好きになって告白
でもしたとしたら……播磨君は揺れるでしょうね。自分に好意を持ってくれる相手に
冷たくするなんてできそうもないですから」
 絃子は無言のままグラスへと手を伸ばした。その指先はかすかに震え、ぎこちなく
グラスを掴んだ。掴んでからそのグラスが空であることに気づき、苛立たしげに置き直す。
「自分に正直になりましょうよ。播磨君のことが好きならなんで何もしないんですか!」

483 :While waiting for him :04/07/31 22:24 ID:5VpeNRsA
「彼は従姉弟だ。そして教え子でもある。それに……、それに私自身よくわかって
ないんだよ」
「恋じゃなくたって愛があればいいんですよ! 刑部さんが男の人を好きになる
なんて最初で最後かもしれないんだからやれるだけのことしなきゃ!」
 笹倉が拳を振り上げて力説する。
「従姉弟だからなんだって言うんですか、法律だって認めてるのに何を恐れる必要が
あるんです!」
 そこまで叫ぶとうっと呻き、口元を押さえて俯いた。
「大丈夫か?」
 絃子が心配そうに尋ねるが笹倉は片手を突き出して絃子を制止すると、もう片方の
手で口元を抑えたまま青い顔をして立ち上がり、そしてよろよろと歩き出すとそのまま
化粧室へと消えていった。
 フラフラと足元のおぼつかない笹倉を心配しながら見送っていたが、無事化粧室まで
たどり着くと絃子は小さく息を吐いた。
 笹倉が立ち去ると絃子はウェイターにおかわりを頼み、それを待つ間彼女の言った
ことについて考えた。
 自分の播磨拳児への想いはやはり男女のものというよりは家族愛に近いんじゃない
だろうか。それというのも人を好きになるとはこんなものなのか、この程度なのだろうか?
という疑問があるからだ。人を好きになるとはもっと熱くてもっとすごい力なんじゃない
だろうか、と思うのだ。それこそ性格はもちろん人の生き方すら変えてしまうほどの力が。
 塚本天満のこととなるとどんな他愛のないことにも一喜一憂し、大騒ぎする播磨を見て
いて思うのだ。これが人を好きになるということなのだと。彼は塚本天満に恋をしてから
というものどんどん変わり、成長している。まだまだ子供で、抜けていたりだらしの無い
ところも多いが、それでも昔からは考えられないほどだ。自分のなかにあれほどの想いが
あるようには思えない。

484 :While waiting for him :04/07/31 22:26 ID:5VpeNRsA
 しかし、それでも異性に対してこれだけの好意を抱いたのは初めてであることには
変わりない。
 もし、仮に自分が彼の従姉弟でなかったとしたらどうしていただろう?
 いや、従姉弟でなかったとしたら自分のような冷血な女が彼の良さなど気づくことなど
なかっただろう。
 そこまで考えて絃子はフッと自嘲の笑みを漏らした。
 こんな仮定を考える時点で、自分の本当の気持ちを表しているようなものかもしれない。
なにが家族愛だ。こんな天邪鬼の考えることなど、当てにはならない。
 コトリと新しいグラスがテーブルに置かれ、ウェイターが口を開くことなく去っていった。
それに口をつけ思う。
 おそらく、彼女の言うことが正しいのだ。いつだって自分以上に自分を理解してくれて
きた彼女の言うことの方が。
 だがそれでも…いや、だからこそか……。
 フラフラと出来たてのゾンビのような足取りで笹倉が戻ってきた。よろめきながらも
椅子に腰掛けると自重を支えることすら困難なようにテーブルに突っ伏した。その顔は
土気色で完全にアルコールにやられていた。
「大分参っているようだね」
 無理なペースで飲みつづけたことの皺寄せがここにきて一気にやってきているのだ。
笹倉は返事をせずう〜っと唸るのみだった。
 笹倉が絃子に言ったことは教師として、常識ある大人として褒められるものではない。
従姉弟で教え子で8つも年下の男と恋仲になれとそそのかしているのだ。どうかしている
と言っていい。


485 :While waiting for him :04/07/31 22:27 ID:5VpeNRsA
もしかすると、それを言うためにアルコールの力を借りる必要があったのかもしれない。
最後の方のテンションは彼女らしからぬものだった。
 逆にいえば、それだけ強く笹倉が絃子のことを考えているということだ。世間体や常識
を一切無視してでもそうするべきだと想われているということだ。
 自分はそれ程思い詰めているように見えるのだろうか、と絃子は思う。
「わらしはぁ〜」
 テーブルに突っ伏したまま笹倉が喋りだした。頭をごろんと回し、テーブルに頬を
くっつけながら絃子が視界に収まるよう向き直る。今にも瞼がくっつきそうな顔で、
それでもどうにか絃子の目をみつめようとしている。
「わらしは、刑部さんの味方なんれす」
 舌の回らぬ口調で、ゆっくりと言い含めるように言った。
「播磨君れも塚本さんれも沢近さんれもらくて、刑部さんに幸せになって欲しいん…」
 そう言うと力尽きたのか瞼を閉じ、すーすーと寝息を立て始めた。絃子は笹倉を
じっと見つめていた。その眼差しはひどく穏やかで優しかった。
「そうやって想ってくれてるのはすごく嬉しい。 本当だよ?」
 絃子は眠っている笹倉の髪を優しく撫でながらささやくように言った。
「でもね、やっぱりダメだと思う」
 絃子は手を止めると、そう呟き哀しげに微笑んだ。
「私は拳児クンの味方だから」


486 :While waiting for him :04/07/31 22:30 ID:5VpeNRsA
酔いつぶれた笹倉をどうにかタクシーに乗せ、ようやく家に帰った時にはすでに
12時を過ぎていた。酔いと眠気でふらつきながらもどうにか玄関を家に入ると、
絃子は妙な違和感を感じた。
 電気も灯けられていない真っ暗な家の中を見つめながら絃子は違和感の原因探った。
静寂と暗闇に身を浸しながら絃子はふっとあることに気づいた。
 空気が動いていないのだ。既に12時を過ぎている。同居人である播磨はとっくに
部屋で眠っているのかもしれない。だとすれば空気が動いていないのも納得できる。
 しかしそれでも違和感は拭えなかった。手探りでスイッチを見つけ明りをつけ、
リビングの中を見渡す。リビングは出かける前と何ら変わってはいなかった。そして
それが寸分違わず変わっていないことに気づく。そして違和感の正体に気づいた。
 熱がない。家の中の温度は外気と全く変わらず、人の体温が感じられないのだ。
「拳児クン、いるかい?」
 絃子は播磨を呼んでみるが返事はない。半ば結果を予想しながらも播磨の部屋を
ノックする。
「拳児クン、入るよ」
 絃子がドアを開けると、やはりそこには播磨の姿はなかった。12時を過ぎた今に
なっても播磨は帰ってきていないのだ。
 そのまま部屋の中へと入り播磨のベッドの上に腰を下ろした。今日はバイトも
無かったはずだ、これほど遅くなるとは何かあったのかもしれない。一応連絡を取る
べきと考え携帯に電話をかけてみるが、機械的な声が電波が届かないことを告げるのみ
だった。
 何度か掛け直してみるがやはり繋がらず、電話をすることを諦めた。まぁ小さな子供
でもないし、そう思い直し立ち上がろうとした。だが酒気のせいか足に力が入らず
よろめき、そのままベッドの上へと倒れこんだ。
 横になるとそれまで大人しかった睡魔が首をもたげ、急激に眠りへと誘われた。
布団に頭を半ばまでうずめ、その柔らかさの前にもはや立ち上がる気力を失っていた。
 薄れてく意識の中、絃子は播磨の匂いと幻のぬくもりを感じていた。


487 :While waiting for him :04/07/31 22:31 ID:5VpeNRsA
 目を覚ますと、窓からは日が差し込みすでに夜は明けていた。寝起きのボンヤリと
した頭で周囲を見まわすと、絃子はここが自分の部屋でないことに気づいた。
「夢……じゃない。いや、やはり夢か…」
 ここが播磨の部屋で、そして播磨がいないことに気づき、昨夜自分があのまま寝入
ってしまったことを思い出した。
 絃子はのそのそと布団から這い出し、リビングへと向かった。リビングは昨夜の
様子は昨夜と全く変わってはいなかった。
「拳児クン?」
 たった一人の部屋の中、声が空しく響く。
 朝になっても播磨は帰ってはこなかった。

488 :While waiting for him :04/07/31 22:33 ID:5VpeNRsA
 フーッと絃子は今日何度目になるかわからない溜息をついた。机には書きかけの
書類がおかれ、その下には白紙のままの書類が何枚も重ねられていた。手にしていた
ペンを放り出し、背もたれに体重を預けると、ギシリと嫌な音をたてた。
「どうしたんですか? 元気無いですけど」
 背後から声をかけられ、振り返ると心配そうな表情をした笹倉が立っていた。
笹倉の視線が書きかけの書類へと移ると僅かに眉をひそめた。
「仕事溜めるなんて珍しいじゃないですか、何かあったんですか?」
「ああ、ちょっとね…」
 歯切れの悪い口調に笹倉が訝しがる。職員室は多くの教師が授業で出払っていたが、
それでも話をするには場所が悪い。絃子は周りをちらりと見やると、後で話すよと
小声で言った。
「わかりました。では、またあとで」
 笹倉はそれだけで納得したように小さく頷き言った。笹倉が離れるのを見送ると
絃子は再び大きく溜息をついた。
 せめて放課後までには目の前の紙切れをどうにかしなくては。

489 :While waiting for him :04/07/31 22:33 ID:5VpeNRsA

 放課後二人は美術準備室にいた。ここならば人の出入りはほとんどなく、安心して
話すことができる。
「それで、何があったんです?」
 笹倉は椅子をひき、絃子の正面に座ると柔らかな声で尋ねた。絃子は言いにく
そうにしながらもゆっくりと切り出した。
「それが……拳児クンが一昨日の夜から帰ってきてなくてね」
 結局、播磨は二人が飲んだ次の日になっても帰っては来なかった。電話もいまだ
繋がることはなく、播磨は目下行方不明の状態だった。
 絃子がそう言うと笹倉はさもあらんといったように大きく頷いた。
「そうですか、それで刑部先生は心配で心配でたまらないわけですね」
「……妙に嬉しそうに見えるのは気のせいかな」
 険しい顔でそう言うと、笹倉はヨヨヨと大げさに泣き崩れるようにしな垂れた。
わざわざハンカチまで取り出し、いかにもといったように目元を拭う。
「酷いです、私だって播磨君のことは心配してるんですよ!?」
「……」
「ただ、それはそれとしていい傾向だなって思ってるだけで」
 カチリ
 いつの間にか手に握られた銃の撃鉄が上げられる。
「ごめんなさい」
「うむ」
 シャツの袖口に銃がしまわれ、笹倉がホッと肩を撫で下ろす。そして気を取り直
したかのように真面目な顔で絃子へと向き直る。
「おふざけはまぁ置いといて。実際のところ心配してるんですよね?」
「それはまぁ、ね。しかし……」
 そこでいったん言葉を切り、まっすぐに笹倉を見つめた。
「酔った上での戯言というわけでは無かったのだね」

490 :While waiting for him :04/07/31 22:35 ID:5VpeNRsA
「当たり前です。冗談半分で言えることじゃありませんし」
「さっきのおふざけは何かね」
「あれは愛嬌ですよ」
 そう言うと笹倉はゴホンと小さく咳払いをした。仕切りなおしということだろう。
「私は、刑部さんにとって播磨君が一番お似合いだって思うんです。播磨君にとって
は必ずしもそうとは限りませんけど」
「……どうしてそう思うんだい?」
「刑部さんは播磨君にだけは甘えられるじゃないですか。私が見てた限りじゃ御両親
にだってあんなに甘えてなかったですよ。無茶言ったり、頼ったり、私にだってして
くれないのに。ちょっと妬けちゃいます。それに播磨君といる時、播磨君のことを
話してる時の刑部さんは素敵ですよ」
 それだけ二人の関係が自然だってことです、そう言うと笹倉は立ち上がりたくさんの
絵が並べられた棚の中から白い布に包まれた一枚の絵を抜き取った。
「芸術家なんて勝手気ままに自分の好みとか感性だけで作品を創っているように思われ
がちですけど、そんなことはないです。この絵なんかもそう」
 そう言って絵を包む布を取り払った。その絵はどこかの森を描いたごくごく普通の
風景画だった。生い茂る木々とそのなかでも一際大きい中央に据えられた大木、そして
その葉々の合間から降り注ぐ神々しいまでの光が描かれていた。キュビズムを得意と
する笹倉には珍しく写実主義的な繊細で微細なタッチは見る者にはっと息を呑ませる
ような美しさがあった。
「これ前に選考に出して落ちちゃった絵なんですけど、私は気にいってるんです」
 いい絵だと思いません? そう言って絵を掲げてみせる。美術には詳しくないが
絃子は素直に綺麗だと感じていた。絃子が頷くとそれを待っていたかのように笹倉は
でもね、と続けた。
「私、本当はこういう写実的なのって好きじゃないんです。美術ではあっても芸術
じゃないんじゃないかって気がして。だけど、この風景を見たときどうしても絵に
したくなって、それにはこの形が一番だった。そういう風に物事には例えそれが自分
の好みとか周りの考えとかとずれていても一番ピッタリくる、そういう形っていうの
があると思うんです」

491 :While waiting for him :04/07/31 22:37 ID:5VpeNRsA
「そういう物の前じゃ、私の好みとか他人の評価とかは大した問題じゃないんです。
この風景が素晴らしい物であるためにはこの形であることが重要なんです」
 そこまで言うと一旦言葉を切り、柔らかな口調で続けだした。
「私は刑部さんと播磨君にそんなふうな印象を感じるんです。二人が一緒にいることで、
お互いがより良くなれるようなそんな関係。刑部さん播磨君と暮らすようになってから
元から素敵だったのにもっと素敵になっちゃって。私は昔の播磨君のことよく知りません
けどたぶん播磨君も刑部さんといるようになって変わったんじゃないですか?」
「私がどう変わったかなんて知らないけど、拳児クンは確かに変わったよ。でもそれは私
じゃなくて塚本君の影響だよ。恋する若者は成長するものらしいね」
 しかし、笹倉はチッチッチとばかりに左右に指を振った。
「確かに塚本さんの影響は大きいと思いますけど、きっと刑部さんが考えてる程じゃ
ないですよ。だって播磨君、肝心の塚本さんのことほとんど解かってないんですから。
塚本さんのために今の播磨君になったなんて言うのは少し無理がありますよ。成長する
ための原動力にはなったと思いますけど、その力でどういう風に成長したかは刑部さん
の影響だと思いますよ」
 そう考えると播磨君が刑部さんがお似合いに思えるのも当然かもしれませんね、その考え
がよほど気に入ったのか口元に手をあてて楽しそうに微笑んだ。
 そんな笹倉を絃子は口を開くことなくじっと見つめていた。いっそ冷徹にすら見える
眼差しが何を表しているのか、絃子を知る笹倉にはよく解かっていた。困惑、動揺、それに
わずかな恨みがましさ。
 なにがあったのかはわからない、だが彼女はあれからとうとう自分の気持ちを理解し
認めたのだ。誤魔化すことを止め好意をはっきりと認識したその上で、想いを押さえ表
には出さぬと決めたのだ。そして苦労して埋めたものを掘り起こおこそうとしている
笹倉を責めている。半ばまで掘り起こされてしまったものを扱いあぐね、動揺している。
 そのことがわかると笹倉はフフッと小さく微笑んだ。その微笑の意味を理解できず、
絃子はわずかに訝しげな顔をする。


492 :While waiting for him :04/07/31 22:39 ID:5VpeNRsA
「ちょっとは素直になってくれてたんですね」
「君のせいでな」
 むすっとした絃子の言葉に笹倉はいかにも嬉しそうに微笑んだ。それこそ自分の狙い
どおりだとでも言うように。
「だけど、それでも結論は変わらなかったよ。変えるわけにもいかない」
 自分の感情がどうあろうと、やはり立場というものは必ずついて回る。なにより播磨の
ことを思えばそれが一番良い選択だと思えた。身近な存在だからこそ、一歩間違えば自分
の気持ちは播磨の負担となりかねない。例え播磨が塚本天満にフラれたとしても、それから
先も播磨にはこれまでの数倍の長さの人生と、数十倍の広さの行動範囲が待っているのだ。
当然多くの出会いがあり、きっと彼ならばたくさんの素敵な女性と出会うことだろう。
 絃子の答えを意外にも笹倉はゆっくりと頷き肯定した。
「刑部さんが素直になってくれたなら、私はそれでいいです。後はどういう結果になって
も刑部さんが自分で考えてだした結論だと思うから、きっと後悔だけはしないでくれるって
信じてますから」
 それに、に小さく呟き悪戯げな表情を浮かべ続けた。
「あんまりしつこく言っても逆効果ですし。刑部さん天邪鬼だから」
 クスクスと笑う笹倉に憮然とした表情を浮かべる。そして諦めたように肩をすくめると
絃子は席を立った。
「あら、行っちゃうんですか?」
「ああ、そろそろ行かないと。まだ書類も残ってるしね」
「播磨君、早く帰ってくるといいですね」
「全くだ。これ以上掻き乱されるのはゴメンだよ」
 絃子はそう言って歩き出したが扉の前で立ち止まり振り返った。
「参考までに。さっきの絵はどうして選考に落ちたんだい?」
「構図が平凡すぎるそうです。自然すぎて逆に面白みがないとか」
 そう言った笹倉の声は静かだったが、妙な迫力が感じられた。落選したことを気に
しているのかもしれない。絃子は何と言っていいかわからず、ただ頷いただけで部屋を
後にした。

493 :While waiting for him :04/07/31 22:45 ID:5VpeNRsA

 学校も終わり、特に用事があるわけでもなく後は家に帰るだけだというのに、絃子は
当ても無く街の中をぶらついていた。通りかかった店にフラリと立ち寄っては、何を買う
わけでもなく冷やかして終わる。そんなことを何軒も繰り返すうちに、シャッターの下り
た店がちらほらと目につくようになった。
 もうこんな時間か、そろそろ帰らないとまずい時間だというのに一向に足が進まない。
悔しいことだが理由は解かっている。理由が無いのだ。帰る理由が。
 昨日も今と全く同じ行動を取っていた。昨日もどうしても真直ぐ帰る気になれず、
寄り道を繰り返していた。そしてネオンすら消えかけた頃に、結局家へと戻った。そして
家に着き、玄関を開けた時に気づいてしまったのだ。誰も居ない孤独な空間の冷たく固い
空気に包まれた時、これは自分の家ではないと感じてしまったのだ。
 そして気づいてしまった。自分の気持ちを。今までは、身近にありすぎて気づいていな
かったのだ。今ならば拳児クンの気持ちが少しはわかる、人は手の届かないものこそを
求めて心を揺り動かすのだ。彼が塚本天満のわずかな行動に一喜一憂するのもそれが手の
届かないものだからこそなのだ。そして今、拳児クンは自分の手の届かないところにいる。
彼がいないことに動揺し、怯え、帰りを待ち望む自分は彼を愛している。
 家族なのだから心配するのも帰りを待つのも当然だ、そうも思った。ずっと見守る対象
だと思っていた。しかし思い起こすのは傍若無人な自分の態度を、悪態をつきながらも
いつだって誠実に優しく受け止めてくれていた彼の姿だ。見守っているつもりが、本当は
支えられていたのかもしれない。

494 :While waiting for him :04/07/31 22:46 ID:5VpeNRsA

 いつの頃からか、絃子にとって家とは≪播磨がいる家≫という意味にすりかわってしま
っていたのだ。そして今もあの寂しい場所に居たくないと、行くあてのない子供のように
彷徨っていた。とはいえこのまま帰らないわけにもいかなかった。
 結論は変わらない、笹倉にはああ言ったものの正直なところ強がりな感は否めなかった。
自分は本当に弱くなった、その不甲斐なさを噛み締めながら一歩一歩足を踏み出す。たかが
家へと帰るだけのことにこれ程の労力を必要とするなどとは考えもしなかった。これでは
彼がいなくなった時自分はどうなってしまうのか、先が思いやられる。
 きっとしばらくすればまた元の自分に戻れるのだろうが、それまでは苦労することだろう。
先のことを考えてこれからはもう少し距離を置いたほうがいいのかもしれない……。
「ま、それも帰ってくればの話だが……」
 どうにか家までたどり着き、ドアを前にして絃子は一人ごちた。
 ドアを開け中に入ると、静寂がまるで刃物のように突き刺さる。家の中に播磨の姿は無く、
今日も彼は帰ってくることはなかった。
 早々とシャワーを浴び、ベッドに入るがまるで寝付けない。どうにも落ち着かず疲れて]
いるはずだというのに目は冴える一方だった。かといって眠らなければ体は保たない。
 こんなところまで昨夜と同じだった。昨日もなかなか眠りにつくことができず,大変な
苦労をした。
 絃子は荒々しく布団を被り、半ばやけくそ気味に眠るための気合をいれた。なんとしても
眠り、克服しなくてはならない。
 距離を置くべきなのだから。

495 :While waiting for him :04/07/31 22:48 ID:5VpeNRsA

 ホームルームを終え、放課後に入ると同時に絃子は眩暈に襲われてその場に膝をついた。
絃子の様子に心配したサラと八雲がすぐさま駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「ぁ、ああ、大丈夫。ちょっと寝不足で眩暈がしただけだ」
 心配そうな表情をしている二人に絃子は何でもないように告げた。
 昨夜は結局わずかな間しか眠ることができず、圧倒的に睡眠が不足していた。さらに寝不足
とは別に体調を崩していることも確かで、体調は最悪と言えた。今まで保ったのは絃子の持つ
仕事への責任感と心配をかけまいとする気遣い、そして間接的とはいえ播磨の不在が理由で
倒れるわけにはいかないという意地によるものだった。だがそれも放課後になったことに
よって気が抜けてしまったのだ。
 絃子は立ち上がるともう一度二人に大丈夫だと言って聞かせた。二人はなおも心配そうに
していたが仕方なく引き下がった。
 二人が居なくなるのを見送ってから絃子は大きく息を吐いた。二人にはああ言ったものの、
正直なところあまり大丈夫とは言えない。どこかで休憩したいところだが、二人には大丈夫と
言った手前、茶道部でとなると余計な心配をかけることになる。
 順当に考えればこういった場合保健室が一番だった。絃子が保健室のドアを開けると、保険の
教諭である姉ヶ崎が出迎えた。
「あら、刑部先生どうしたんですか?」
「少し体調が悪いもので…、よければ少し休ませて貰っても構いませんか?」
「ええ、どうぞどうぞ」
 姉ヶ崎に促されるまま中へと入る。保健室の中には姉ヶ崎意外には誰もおらず学校の中でも
奥まった場所にあるこの部屋は、時折校庭から聞こえる生徒達の声が響くだけでひどく静かだ
った。

496 :While waiting for him :04/07/31 22:53 ID:5VpeNRsA
「ちょっといいですか」
 絃子の前に立った姉ヶ崎はそう言うと、手を絃子の額に当てた。
「ちょっと熱っぽいですね。それに顔色も良くないし…、近頃あまり眠れてないんじゃない
ですか?」
「確かにちょっと睡眠が足りてないかもしれません」
 うっすらと苦笑いを浮かべながら言った。
「なんでしたらもう放課後なんですし、今日は切り上げて早めに帰ったほうがいいんじゃ
ないですか?」
 帰る、どこに、あの家にだろうか。それは嫌だ、少なくともこんな気持ちのまま帰るのは
嫌だった。今のままではあの部屋の広さに、冷たさに、耐えられそうもない。
「それが、そうもいかないので……」
 そんな個人的な理由を言えるわけもなく、言葉を濁して答える。
「そうですか…、それじゃせめて少しぐらいは休んだほうがいいですね」
 姉ヶ崎はそう言うと絃子をベッドの方へと案内した。絃子が横になったのを確認すると、
仕切りのカーテンに手をかけ半ばまで閉めた。
「ここ閉めときますね、何かあったら呼んでください」
 穏やかな笑みを浮かべ仕切りの中に頭だけだしてそう言うと、静かにカーテンが閉められた。
 カーテンに切り取られ孤立した空間の中で、絃子はまた眠れないのではないかと不安になった
がそれはすぐに杞憂であると解かった。すぐに瞼が重くなり、とても目を開いてなどいられない。
 目を閉じると、暗闇の中で浮かび上がる光景があったが、それが自分の考えたことなのか
それとも夢なのかも判断することができぬまま、意識は薄れ遠のいていった。

497 :While waiting for him :04/07/31 22:54 ID:5VpeNRsA
 目を開いたときにはここがどこなのかをすぐに理解できていた。腕時計を見るとあれから
1時間半ほどしか経ってはいなかったが、眠気は随分と解消されていた。しかし体調はさほど
回復せず、意識がはっきりしたぶんだけ、自分の体調がどれほど悪化しているかを正確に把握
することができた。
 ベッドから身を起こし立ち上がると、足元がおぼつかずカーテンの柱に掴まり体を支えなけ
ればならなかった。今日の放課後までよく保ったものだと、自分の意地の張りように感心する。
 物音に気づいたのか、姉ヶ崎がカーテンを開けひょいっと中を覗き込んできた。
「起きたんですね。体調はどうですか?」
「少しはマシになりましたよ」
 一応良くなったことは良くなった。まだまだ完調には程遠いというだけで。
 姉ヶ崎はあごに指をあて何かを考え込むように俯いていたが、やがて思い至ったように顔を
あげまっすぐに絃子を見つめた。
「あの、少しお話したいことがあるんですけど構いませんか?」
「? ええ、構いませんが」
 何事だろうか、そう思いながらも絃子はもう一度ベッドの上に座りなおした。
 姉ヶ崎は一呼吸置いてから、ゆっくりと切り出した。
「ハリオ…、じゃなくて播磨君が帰っていないそうですね」
「っ何故それを!?」
 姉ヶ崎の言葉に驚愕に目を見開く。驚き声を荒げる絃子とは対照的に姉ヶ崎は落ち着いた
声のまま言葉を続けた。
「昨日、笹倉先生に聞かれたんです。播磨君がウチにきてないかって」

498 :While waiting for him :04/07/31 22:55 ID:5VpeNRsA
絃子はハッと思い至った。以前同じように播磨がいなくなったとき、その間偶然
知り合ったという姉ヶ崎の元で世話になっていたと、本人の口から聞いていた聞いて
いたのだ。今回も同じように姉ヶ崎のところにいるという可能性は十分に有りえた。
 そんなことにも気づかないとは、本当に自分はどうかしている。
 だが、播磨と自分が従姉弟同士で同居しているということは、そのときに姉ヶ崎にも
話したのだから自分にも何か一言連絡があってもいいのではないだろうか。それが今まで
無かったということは私には言えない何かがあったということか。
 ザワリと、不快な何かが胸の内で蠢いた。
「播磨君、私のところにも来ていないんです。それでちょっと心配になっちゃって……」
 ざわつく心がピタリと静まった。そしてあまりの情けなさに笑いたかった。泣きたかった。
何を考えているんだ私は? 姉ヶ崎のところに播磨がいると考えてしまった時、心をよぎった
のはあまりにも醜い嫉妬だった。
 そしてまた失望も感じていた。結局播磨の行方は依然として解からぬままだった。期待との
落差と自己嫌悪が絃子の気力を削ぐ。
「そうですか、ウチの従姉弟のことで余計な心配をかけてしまってすみません」
 頭のどこかのまだ正常な部分が半ば自動的に冷静な応対をしていた。しかし心は乱れ、
疲れきりまるで働いていなかった。
 元々感情の起伏が乏しい性格であることから大きな心の動きに不慣れであり、そのうえ
今まで経験したことのない様々な種類の感情の揺れに振り回され続けたことによって、
過負荷を起こし停止してしまっているのだ。

499 :While waiting for him :04/07/31 22:57 ID:5VpeNRsA
 それから先は何を話していたのかほとんど覚えてはいなかった。体調を崩し熱でボーっ
とした頭と疲弊しきったまるで役立たずの心では会話を覚えていることさえ難しかった。
 ただ途中姉ヶ崎がひどく驚いた顔をしていたことと、最後にはとても穏やかな笑みを
浮かべていたことだけが記憶に残っていた。
 随分長い間話していたようで時計を見るとかなりの時間が経っていた。姉ヶ崎と分かれた
あとは、既に夜も遅くなろうとしていたことと体調が良くないこともあり真直ぐに家へと
帰った。
 ドアを開けると暗闇が待ち構えている。足を踏み入れるとまるで奈落へと踏み出すような
錯覚すらおぼえる。電気をつけ、照らし出された無人の空間に溜息をつく。静寂がまるで
質量を持ったかのようにのしかかり、僅かな体力すら奪ってゆく。
 最後の気力を振り絞り部屋までたどり着くと、絃子はシャワーすら浴びずに力無くベッド
の上に倒れこんだ。
「早く帰ってきてくれないか、拳児クン。わたしはどうにかなってしまいそうだよ……」
 それは祈りにも似た呟きだった。

500 :While waiting for him :04/07/31 22:59 ID:5VpeNRsA
 おぼろげな意識の中絃子は何か物音を聞いたような気がした。一瞬意識が引き戻されるが
物音はそれきり聞こえない。意識が再び沈んでいこうとしたその時、今度ははっきりと聞こえた。
 鍵が差し込まれるときの金属の擦れる音、そして鍵が回され金具の外れる音が。
 その音の意味に気がつくと絃子は跳ね起きベッドから飛び降りた。熱と急に動いたことに
よって強い眩暈を覚えたが構わずに玄関へと向かう。
 そしてリビングから玄関へと通じるドアの前で立ち止まった。玄関の方には確かな気配。
 何を言おうとしている? しようとしている? 
 会うことに言い知れぬ不安があった。だが逸る気持ちが一人でに足を踏み出させていた。
 船員が着ていそうな青と白のストライプのシャツに白いズボンといういでたちの播磨が
そこにいた。
 播磨の姿を目にした瞬間、絃子の胸の中ではありとあらゆる想いが凄まじい勢いで湧き
上がった。そのほとんどは言葉にできない想いであり、残ったものは言葉にしてはいけない
想いだった。
 それでも何かを伝えたくて、開きかけた口からは声にならない吐息がこぼれるが、形に
することはできなくて、もどかしさに顔を歪める。
 たくさんの想いを呑みこんで、ようやく口にできた言葉はあまりにも平凡な言葉だった。
「……おかえり、拳児クン」
「あ〜、その…ただいま」
 ばつが悪そうに少しだけ顔をそむけながら播磨は言った。
「少し、日に焼けたかな?」
「そうかもしれねぇ」
 そう言うと二人は口を開かずお互いをじっと見ていた。そうしている間にも絃子は凍えた
手を暖める時のような、ジンジンとした暖かい痺れのようなものを胸の内に感じていた。
 安心したせいかそれとも喜びのためか、ともすれば震えてしまいそうな声を抑え、努めて
平坦な声で言った。
「こんなところで話すのもなんだ、まぁ上がりたまえ」
「おぅ」

501 :While waiting for him :04/07/31 23:00 ID:5VpeNRsA

 二人はテーブルを挟んで向かいあうようして座っていた。二人の前にはそれぞれ湯気
を立たせたコーヒーカップが置かれていたが、口をつけた様子もなく二人は神妙な面持ち
で互いを見つめていた。
「一体何があったのか、もちろん話してくれるんだろうね?」
「やっぱ話さねーと駄目か」
「どうしても嫌だと言うなら強制はできないが、その時は……」
 私に心配をかけ続けることになるだろうな、と心の中で呟く。だが播磨は別の解釈をし、
一種の恫喝と捉えたようだった。
「くそ、わーったよ。話せばいいんだろう?」
 絃子に促されて播磨はゆっくりと今までのことを語りだした。体育祭のフォークダンス
で沢近愛理と踊ったことによって想い人である塚本天満に自分が好きなのは沢近であると
勘違いされたこと。その後、天満や沢近ら仲良しグループ4人らと喫茶店で偶然居合わせた
こと。そのうえ彼女らの会話の中で何故か自分が天満の妹である塚本八雲と付き合っている
ということにされてしまったこと。間接的とはいえ天満にフラれたも同然であり、傷心の旅
として一年間戻れないことを承知でマグロ漁船に乗ったこと。さらにその漁船の中で幹部で
ある大谷に絡まれたこと、時化に遭遇し海に落ちた大谷を助けるため海に飛び込んだこと、
かつて同じように漫画を描いていた船長の激励にあい陸にもどることになったことまで話した。

502 :While waiting for him :04/07/31 23:02 ID:5VpeNRsA
「と、まぁそんなわけだ」
 話終えたことで一息ついたのか播磨の緊張が緩む。力が抜け緩んだその瞬間に強烈な一撃
が播磨の頬を打った。その威力にたまらず椅子から転げ落ちる。
「ふざけるな!!」
 絃子は激昂のあまりに震える声で叫んだ。あっけにとられ呆然とする播磨の胸倉をつかみ
引きずり立たせる。
「何も言わずに出て行く奴があるか! 戻って来れなかったらどうするつもりだったんだ!?」
 それは怒りというにはあまりにも悲痛な叫びだった。
 一年。
 その船長がいなければ一年もの間播磨は帰ってこなかったかもしれないのだ。もしかしたら
在り得たかもしれないその可能性を想像するだけで怖くて堪らなかった.
 知らず知らずのうちに涙が溢れ頬を伝う。絃子は播磨の肩に顔をうずめるようにして
咽び泣いた。
「一年も……私がどんなに心配したと思ってるんだ! 私がどんなに……」
 寂しかったっと思ってるんだ、その言葉は発せられることはなかった。体調を顧みること
なく興奮したせいか靄がかかったように目の前が暗くなっていく。腕から力が抜け、体を
支えることもできず播磨にもたれかかるようにして倒れこむ。播磨が慌てたように自分の
名前を呼ぶのが聞こえたが、それに応えることはできず意識は闇に沈んでいった。

503 :While waiting for him :04/07/31 23:03 ID:5VpeNRsA
 気がつくと絃子はベッドに寝かされていた。額に冷たいものを感じ、手をやると濡れた
タオルが乗せられていた。
 その時ドアが開けられる音がした.お盆に薬ビン、水の入ったコップとボウルをのせた
播磨が入ってきた。
「お、気がついたか?」
 播磨はそう言うとお盆を床に置き、ベッドの脇に腰を下ろした。
「ったく、すげ―熱があるのに暴れやがって。おかげで心配しちまったじゃねぇか」
 播磨は薬とコップを手に取ると絃子のほうに、ほれといって差し出した。
「どーせイトコのことだ、薬も飲んでねぇんだろ?」
 確かに飲んだ覚えはなかった。絃子が薬とコップを受け取ると、その間に播磨は額の
タオルをボウルに浸けて冷やしなおす。タオルを絞る播磨の横顔を見やるとその左頬は
手形の形に真っ赤に腫れ上がっていた。
「…さっきは取り乱してすまなかった」
「んー、いや、いいってことよ。言われてみりゃ俺も勝手が過ぎたって思うしよ」
 絃子が薬を飲み終えると播磨は空のコップを受け取り、冷やしなおしたタオルを絃子
の額に乗せた。絃子は目を閉じ少しの間、その心地よい冷たさを感じていた。
 そしてお互い口を開くこともなく、静かに時間が流れていた。先程のことがあるので
二人とも少し気まずく、そして気恥ずかしくなかなか動き出すことができない。
 それでも沈黙は痛くない。むしろ、やさしい。互いが互いを思いやる気持ちが場に
満ちている。絃子は乾いてざらついた心に何かが沁みとおっていくのを感じていた。

504 :While waiting for him :04/07/31 23:05 ID:5VpeNRsA
 絃子は播磨に片方の手をさしのべた。そしてベッドに手をついていた播磨の手をそっと
引き寄せその背に自分の手のひらを重ねた。播磨の手は堅く大きく厚く、そして暖かった。
それに比べて絃子の手はあまりに小さくか細かった。
 播磨は何も言わなかった。やがてこの静けさを壊さぬように、絃子がそっと口を開いた。
「なんだか、君はずいぶん頼もしくなった気がする」
「そうか? だとすりゃ師匠のおかげかな」
「そうだとも。その船長に感謝しないといけないな」
 そして再び短い静謐が訪れた。二人は手を引き戻すこともなく、そのままの姿でいた。
「こうしていると、まるで私のほうが子供のようだ」
「確かにそんな風に見えるかもな」
 播磨が小さく穏やかに笑いながら言った。
「私は今年で四捨五入したら30になってしまったよ」
「あ〜、まぁそうだな」
「なのに、こんなふうに手を触れ合っている。子供みたいに」
「……」
「誰かが見たら、ひどく滑稽に見えるかもしれない」
「そうか?」
「そうだとも」
 世界は、しんと静まり返っていた。静寂の中、変わろうとしているものの気配があった。
それは僅かな痛みと不安と心地よさをともない、絃子のなかで塗り替えられていく何か
だった。
 どれくらいそうしていたのかわからない。やがて絃子がポツリと言った。
「滑稽にちがいないさ…」
 小さく穏やかな声でありながら、その声は確信めいた何かを含んでいた。


「いい大人の私が」
 年下で従姉弟で教え子の君を
「こうして手を繋いでいるだけで」
 こんなにも
「・・・・・・ドキドキしているよ」
 愛しく感じている

505 :While waiting for him :04/07/31 23:06 ID:5VpeNRsA
「イ、絃子!?」
 顔を真っ赤にし狼狽する播磨をよそに、絃子は手を離すとサッと布団を深く被って
しまった。
「私はもう寝ることにするよ」
「え、あ、あぁ」
 動揺冷めやらぬ播磨は生返事を返すものの、その場から全く動くことができない。
「いつまで、そこにいるつもりだい?」
「あぁ、そ、そうだな」
 ようやく気がついたというようにいそいそと立ち上がる。そんな播磨の背中に向かって
絃子は布団から半分だけ顔を覗かせ、悪戯っぽく笑いながら言った。
「それとも、一緒に寝ようか?」
「ば、ば、ば馬鹿言ってんじゃねえ!!」
 耳まで赤くしながら播磨は怒ったように部屋を飛び出そうとした。そんな播磨の様子
を笑いながら見つめている絃子の頬もまた僅かに朱に染まっていた。
「拳児クン」
 呼び止められ播磨はドアの前で足を止めた。播磨が向き直ると絃子はうってかわって
真剣な、悲壮にも見える表情をしていた。
「もう、勝手に出て行ったりはしないよな……?」
「…ああ、それは約束するぜ」

506 :While waiting for him :04/07/31 23:07 ID:5VpeNRsA
「で、それからどうなったんですか?」
 笹倉と姉ヶ崎の二人は身を乗り出し、声を揃えて絃子に詰め寄った。
「どうって…、それだけだが」
 絃子と笹倉と姉ヶ崎の三人は姉ヶ崎の家に集まっていた。播磨が帰ってきた日から
2日間、絃子は熱が引かず学校を休んでいた。学校に姿を現した播磨を見て、二人は
一体播磨に、絃子に何があったのかを聞きたくてうずうずしていたのだ。
 絃子が学校にやってくると二人は真っ先に絃子の元にやってきて事情を聞きたがった。
笹倉はともかく姉ヶ崎までと絃子は思ったが、絃子が保健室で休んだあのとき、絃子は
ボーッとして何を話したのかよく覚えていなかったが、どうやら聞かれたことに対して
何から何まで正直に話してしまっていたらしい。
 誰にも知られたくないあんなことや、笹倉しか知らない、また笹倉さえも知らない
そんなことについて姉ヶ崎の口から聞かされたとき、絃子は驚愕に青ざめたものだった。
 播磨に対する想いも当然のように知られており「私もハリオのこと好きですけど、
刑部先生があんまりいじらしくて可愛いから、刑部先生ならまぁいいかなーって」
などと言われてしまった。一体どんなことを喋ってしまっていたのか、絃子は自分の
ことながら不安になった。
 絃子のいない間に笹倉と姉ヶ崎は“絃子の秘密”という共通項をきっかけに仲良く
なっており、せっかくだから話をするなら姉ヶ崎の部屋で飲みながらということに
なったのだった。

507 :While waiting for him :04/07/31 23:12 ID:5VpeNRsA
 すでにテーブルの上にはたくさんの空き缶空き瓶が並べられており、二人の絡みよう
は酔っ払いのそれだった。
「それだけなんですか、キスの一つや二つぐらいしてないんですか?」
「そうそう、せめてそれぐらいしてますよね〜〜?」
「他にか、そうだな……」
 絃子はうっすらと少し照れたように、それでいてとても嬉しそうに微笑みながら言った。
「お互い、前よりも少し優しくなった気がするな」
 絃子がそう言うと、二人は揃って盛大に溜息をついた。
「奥手もいいですけど限度があるんですよ?」
「駄目ですよもっと積極的にいかないと、ハリオは絶対押しに弱いタイプですから!」
「そんなんで嫁き遅れても知りませんからね」
「そうそう、そんな調子じゃ私がハリオ貰っちゃいますよ?」
 などなどと、二人揃って口々に勝手なことを言い放つ。決して悪意があるわけではなく
むしろ絃子が示した前進を喜んでくれていることは解かっている。だがそれでも幾つかは
カチンとくるものがあったりして
「うるさい! 大きなお世話だ!!」
 と怒鳴ると二人はシュンと静まり返ってしまった。
 今度は絃子が溜息をつき、諭すように口を開いた。
「私は変わったけど、結局状況は何も変わってないんだ」
「え〜、だって告白したも同然じゃないですか?」
「彼は鈍いんだよ、ちょっと信じられないくらいに」
 絃子が溜息まじりに言うと、あ〜っと二人は納得したように声をあげた」
「それに考えなきゃいけない問題もたくさんあるしね」
 そう、問題はある。従姉弟同士、教師と教え子という立場は何ら変わることはない。
播磨は播磨で塚本八雲との誤解を今だ解くことができずにいるし、クラスメートである
沢近愛理との因縁はまだまだありそうだ。なにより、本人はフラレタと言っているが
塚本天満のことをそう簡単に諦められるわけではないだろう。

508 :While waiting for him :04/07/31 23:15 ID:5VpeNRsA


 そう、状況は何も変わっていないのだ。変わったのは自分だけ。そしてその状況を正確に
見定めたうえで思う。勝算は我に有り、と。
 何故なら、いつだって一番そばにいるのは自分なのだから。


                <了>

509 :Classical名無しさん:04/07/31 23:17 ID:ox4cNqrw
GJ!
リアルタイムで見ました。
絃子さんがとてもいいよー!
私も絃子さんが一番勝率高いと見てます

510 :While waiting for himno:04/07/31 23:27 ID:5VpeNRsA
>509
早速感想ありがとうございます。



511 :Classical名無しさん:04/07/31 23:34 ID:C/PfKB3.
いやいや福眼です!

絃子さんのいじらしさ、サイコーっす!ありがと〜!

512 :While waiting for him の人:04/07/31 23:37 ID:5VpeNRsA
と、こんな感じで絃子さんSSでした。

書いている際中に話が迷走してしまって大変でした。
ごッそりと削ったり付け加えたりを繰り返したので
今でも全体の流れがいびつになってないか不安です…

拙いSSですが、楽しんでいただけたら幸いです。


513 :Classical名無しさん:04/07/31 23:50 ID:4Bk7trPk
長編オツカレです。
長いのに全然気にせずに一気に読めました。
播磨と絃子さんの微妙な距離が激しく良かったです。
GJ!!

514 :Classical名無しさん:04/08/01 00:02 ID:Z1t788nA
大作お疲れさまです。
まさにネ申ですな。
絃子さんの葛藤をこれだけしっかり描けているSSは初めて読んだような気がします。
しかも播磨を想う健気な絃子さんがまたずば抜けて萌えます(*´∀`)
これは本当に凄い。やられました。GJ!

515 :ゆか:04/08/01 00:03 ID:nLbTtTtE
いとこさんまじサイコーだあいーん!激萌えだあいーん!萌えすぎて抜いちゃった!えへっ!

516 :Classical名無しさん:04/08/01 00:29 ID:K2Kh6IBg
しかしこれはクるなぁ
GJ!

517 :Classical名無しさん:04/08/01 00:43 ID:2/xo3W9.
GJ!
このSSのその後を想像するだけで萌え死ぬんですが。
あの手この手で播磨を誘惑する絃子さんハァハァ。
頼むから続き書いてください。ガチで。

518 :Classical名無しさん:04/08/01 00:57 ID:a.w0frZc
GJ!
絃子さんの心理描写が非常によかったです。萌え。
漏れも是非続きが見たいです。

519 :Classical名無しさん:04/08/01 01:21 ID:UW6tuzNA
な、ナンデスカこの萌え萌えなイトコさんは・・・
凄いのキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

520 :Classical名無しさん:04/08/01 01:47 ID:/nQLm1XI
このSS読んだおかげで今日は素晴らしい一日が約束された気がする
徐々に弱っていく絃子さんも堪らんでしたし、笹・姉もしっかり絡んできたし…ああ、もう
お姉さんズ最高!絃子さん最高!!
次作楽しみにしてます。GJ!×∞

521 :Classical名無しさん:04/08/01 02:07 ID:lBUBd1ag
感動した
GJというか、良い作品をありがとうございました!次回サクも期待です。

522 :Classical名無しさん:04/08/01 02:15 ID:tFs88qtg
久々に良いもの読んだよ。
GJ

523 :Classical名無しさん:04/08/01 09:47 ID:UoJclIlA
こ、これは…
萌え萌えや〜!

524 :Classical名無しさん :04/08/01 11:12 ID:SgMKkMVQ
句読点の後にスペースを、そして改行のタイミングでもっと読みやすくなったと思います。

525 :Classical名無しさん:04/08/01 12:15 ID:6mBrOjVc
>524
句読点の後にスペース?
普通はつけんと思うがなぁ。あと、かちゅーしゃ(画面サイズ800*600)とか
じゃなくて、IEあたりでみると、綺麗に改行が決まってる。



526 :Classical名無しさん:04/08/01 16:43 ID:NKXAfzns
普通に読みやすいし、そういうの抜きにして引き込まれる文章だとオモタ

527 :Classical名無しさん:04/08/01 17:03 ID:6gDXhV6E
>>476
お疲れ様でした
夏にふさわしい、ちょっとホラー入ってるいいSSですね。
少女に(*´д`*)ハァハァ

>>479
先生sキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
いやぁ、もう絃子先生(*´д`*)ハァハァですね。
表現も上手いし楽しめました
お疲れさまでした


|-`)。oO(最近絃子先生ネタが多くていいなぁ…(

528 :While waiting for him の人:04/08/01 18:58 ID:5VpeNRsA
 感想ありがとうございます。
 なかなかに好評のようで小踊りしています。

>517 
 続編は今のところ考えていませんが、何かいいのが思いついたら
書くかもしれません。

>524
 改行は多少気をつけたのですが、525さんが言っているように環境
やサイズで変わってしまうのかもしれません。句読点後のスペースは
あまり見かけたことがなかったので使いませんでした。横読みという
ことで普通の小説とは読みやすさが変わってしまったかもしれません。


529 :Classical名無しさん:04/08/01 21:13 ID:CQK2hG1U
というか句読点の後にスペースが入ってるSSを見たことが無いんだが
スペースを入れると何かメリットでもあるのだろうか?
解像度の影響が少ない、とかそんなんだと手間に比べてかなり微妙すぎるな…。

530 :Classical名無しさん:04/08/01 21:24 ID:2ZBRP2KM
句読点が多いから気になっただけじゃない?
感嘆符のあとにスペース入れるってのはあるみたいだけど、句読点には入れないでしょ。


531 :Classical名無しさん:04/08/01 22:33 ID:9qKq8I02
スペース入れるのは、半角のカンマとピリオド使う場合でしょ。
理系の論文みたいな。

532 :Classical名無しさん:04/08/01 23:57 ID:xeBahMLc
苦痛でしかない

533 :Classical名無しさん:04/08/02 00:03 ID:xeBahMLc
スマン誤爆った

534 :Classical名無しさん:04/08/02 00:49 ID:P5z6V56.
>>532は理系の論文が苦痛でしかないと言ってるように見えなくは無い

535 :Classical名無しさん:04/08/02 01:17 ID:05xBrkYc
既に言い尽くされた言葉だが、これ以外に相応しいものが見当たらない。
グッジョブ!
こんな絃子さんもいいなあ。

536 :Classical名無しさん:04/08/02 01:20 ID:NGcZ6oVc






http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g25306518







537 :Classical名無しさん:04/08/02 02:10 ID:TwmDFvLk
おーくしょんて

538 :Classical名無しさん:04/08/02 03:27 ID:q/YUQsrM
最近絃子SS多いなぁ。旗やおにぎり、鉛筆や縦笛、黒白サラも読みたいねー。

539 :Classical名無しさん:04/08/02 11:25 ID:NfNBIbiQ
オレは最近、超姉こそが、スクランの本道なんじゃないかって
気がして仕方ないんだ・・・・・・

何か・・・何かにオレの頭が侵されている・・・・お子様ランチ派
だったはずなのに・・・・・・

540 :Classical名無しさん:04/08/02 11:52 ID:noDBl/t.
>>539
それは良い傾向だな。
まあそれだけ絃子SSは力作が多いということか。

541 :Classical名無しさん:04/08/02 12:26 ID:H6nAMYN6
>>539
SSに左右されるよね。おれは黒サラ以外見えないし。
夢にまで出てくるし。

542 :Classical名無しさん:04/08/02 19:29 ID:Qyf03dGQ
絃子って本編での出番が少ないわりには人気あるの?

543 :Classical名無しさん:04/08/02 20:01 ID:fab4xAPk
あるよ

544 :Classical名無しさん:04/08/02 20:57 ID:ox4cNqrw
正直、分からん
ひとつ分かることは絃子さん一筋は少ない

545 :Classical名無しさん:04/08/02 21:34 ID:w/bXhgW.
一筋派ですが何か?

546 :Classical名無しさん:04/08/02 21:48 ID:ox4cNqrw
じゃああの十数人の一人ですね

547 :Classical名無しさん:04/08/02 22:06 ID:9u9mt3js
絃子さん一筋が少ないとか決め付けはあかんよ。
十数人とかも良く分からんが、まあこの話はこのくらいにしとこう。
誰が人気あるのか、とかいう話は荒れるし。
大人しく職人を待とう。

548 :Classical名無しさん:04/08/02 22:09 ID:ox4cNqrw
そうですね。すみません
これ以上言うと問題ありますかもんね
おとなしく待ちます

549 :Classical名無しさん:04/08/02 23:24 ID:q/YUQsrM
夏なのに微妙な危うさを保ちつつ良スレですね。
職人さんキボンヌ

550 :Classical名無しさん:04/08/03 10:16 ID:8RdXldk6
初投稿です。先人にならって書く前に挨拶。
恋愛要素全くない話なんでここの住人の需要は無いかもしれんが…

551 :Classical名無しさん:04/08/03 10:21 ID:8RdXldk6
 行楽日和となったある秋の日曜日、播磨拳児は動物園にいた。かつて共に過ごした仲間達に会う為に。
たまに動物園で会う事がある彼の想い人、塚本天満の妹、八雲は今日は来ていないようだ。
その代わり、行楽日和とあってたくさんの家族連れで賑わっている。
 かつて彼が世話をしていた動物達は、皆すっかりこちらの生活に適応していた。
愛想良く振る舞い芸までこなす彼らに、子供達は沸き、たくさんのご褒美を与える。
彼はそれを少し離れたところで見ながら、一人笑う。それは安心故の自然な口元の緩み。
 やがて彼はキリンのコーナーに着いたが、着いた途端彼は一匹のキリンの歓迎を受ける。
ピョートルだ。彼はその長い首をさらに長くして播磨が来るのを待っていたらしい。
丁度お昼時なので辺りに人はいない。播磨は安心してピョートルと話が出来た。
 たくさん話をして、そろそろ彼が帰ろうとした時、ピョートルはプレゼントがある、と播磨を引き止めた。
ピョートルがすぐ裏にある崖から何かを咥え、播磨に手渡した。何かの手の骨のようだ。
「ま、蛇の皮だってお守りになるんだから、これも持ってりゃいい事あるかもな、ありがとよ。」
そういって彼は別れを告げた。誉められたピョートルは嬉しそうに見送った。
骨をハンカチで包む。彼は、裏山の猿の骨とくらいに思っていた。
だがそれは、人骨だった。


552 :Classical名無しさん:04/08/03 10:22 ID:8RdXldk6
 帰りに寄ったファミレスで、彼は黙々と漫画を描き始めた。突然話を思いついたのだ。
いつもより数倍手が進む。これは早速お守りの力なのだろうかと、彼はピョートルに感謝した。
いつにもない自信作。まだトーンなど全く手をつけていなかったが、早速見てもらいたかった。
もちろん、八雲にである。彼にとってただ一人、漫画を見てもらえる人。
 メールで呼び出してから15分後、八雲は少々息を切らしながらやってきた。
同じ頃播磨は、このファミレスでは彼女の家から少々遠かった事を思い出しており、申し訳なさそうな顔をしていた。
彼女に詫び、そしてとりあえず彼女の分のコーヒーを頼む。
「こんな遠い所に申し訳ねえ。妹さん、お詫びと言っちゃなんだが、何でも好きなもの頼んでくれよ。」
播磨はそう言うが、彼がそんなに金銭的にゆとりがないのを八雲は知っている。
八雲は一番安いランチを注文した。

 「…妹さん、もしかして怒ってる?」
少し心配そうに播磨に尋ねられ、見ていた漫画を下に置き、八雲は慌てて否定した。
だが、彼女の雰囲気はいつもと違った。妙にそわそわしているのだ。
彼女の様子が変な理由が思いつかず、彼もだんだん不安になってきた。
 八雲はここに来たときから、違和感を感じていた。
いつもなら聞こえない思念…播磨からの思念が聞こえるのだ。
彼女は困惑した。今までは聞こえる事はなかったというのに。
だが、コーヒーをすすり落ち着いて聞くと、それは彼のものではないことが分かった。もっと、幼いような…。
だったら、誰なのだろう。確かに播磨の位置からそれは聞こえるのだ。
「…で、妹さん、このページなんだが…」
不意に、播磨の声が届く。一瞬どきっとしながら八雲は答えた。
「…どう、思う?」
彼が続ける。よほど彼にとって自信があったページなのだろうか。
それでも彼女はいつものように冷静につっこんだ。
彼はあからさまに肩を落としつつも、それでも八雲の話に真剣に耳を傾けていた。


553 :Classical名無しさん:04/08/03 10:23 ID:8RdXldk6
 大体漫画を見終わった頃。時間は1時間程経過していた。
「そういえば妹さん、今日ピョートルからプレゼントを貰ってさ」
播磨は今日ここに来てから初めて漫画以外の話題をもってきた。
「多分…猿の骨と思うんだけど…」
そう言うと彼はバッグを開け、ハンカチを取り出した。一段と思念が強まる。
「これこれ。あいつが裏山で見つけたらしくてさ」
ハンカチを開けると、手のものだとはっきり分かる、小さい骨がころがっていた。
あ、あの、これ…言いかけた所で八雲は止めた。この思念…猿のものでない事は明白だ。明らかに人のものなのだ。
だが彼女にはそれが言えなかった。思念と言って伝わるはずがないし、人骨と言われれば驚くだけだ。
そして、この骨の持ち主は、生前彼女に好意を抱いていた人物。それが何故骨に?
彼女はだんだん混乱してきた。播磨がそれを見て慌てている。何か食べたいものはないかと聞いてくる。
もういいです、大丈夫です…。彼女はそう言って帰った。播磨はそれを心配そうに見送るほかなかった。


554 :Classical名無しさん:04/08/03 10:24 ID:8RdXldk6
 スーパーに寄って、家に帰り着く頃には、八雲はだんだん骨の持ち主の事を思い出してきていた。
まだ彼女が小さい子供だった頃だ。彼女はいつも姉の天満と一緒だった。
そのころから天満はどこか抜けている所があり、八雲は心配でよく天満と行動を共にした。
活発な天満に対して大人しい八雲。だがある日、彼女は一人の男の子と出会う。
男の子が苦手な彼女が珍しく普通に話せる相手だった。だが不思議な事に、天満にはその少年の姿が見えない様だった。
八雲は毎日その男の子と遊んだ。とても楽しかった。初めての男の子の友達ができて嬉しかった。
 そんなある日…運命の日。
「ねえ、今日の夜、一緒に動物園の裏山に行かない?」
男の子は八雲を誘った。夜の裏山にはカブトムシやクワガタがたくさんいるという話を彼からよく聞かされていた。
だが、彼女は断った。その日は姉とお祭りに行く約束をしていたのだ。
彼女は何度も謝った。そして別の日にはきっと行こう、と言った。
「…そっか。じゃあ、いいや。」
彼は残念そうに話すとそのまま何処へと走り去った。八雲は必死に追いかけたが、ついに見つかる事はなかった。


555 :Classical名無しさん:04/08/03 10:24 ID:8RdXldk6
 彼女は台所に立ち、夕食の支度をしていた。
「たっだいまぁー!!」
天満が帰ってきた。また友達と遊んで帰ってきたのだろう。いつものようににこやかだ。
おかえり、と声を掛ける。天満はさっそく今日の夕飯何、と聞いてきた。
カレーだと答えると、天満は歓声を上げて自分の部屋に飛んでいった。
 再び台所が静かになると、彼女はまた骨の持ち主の事を考えていた。
あれから、彼と会うことはなくなってしまった。いや、会えなかったのだ。
彼女はその幼い足をひっきりなしに動かし、彼を探した。
彼と遊んだ場所、近所の小学校、そして裏山も。
だが、彼が見つかる事はなかった。彼女は彼のせっかくの誘いを断ってしまった事を申し訳無く思った。
だが、今日また逢えたのだ。きっとあの時見た彼は、幽霊だったのだろう。ずっと昔にあの裏山で亡くなった子供の。
そして彼は私の事を覚えていてくれた。だからあの手から思念が感じられたのだ、と。
 テーブルにカレーとサラダを並べる。天満が入ってくる。何気ない日常。
だが八雲は、いつもより嬉しそうに姉の話を聞いていた。


556 :Classical名無しさん:04/08/03 10:25 ID:8RdXldk6
 同じ頃、播磨は自分の家にいた。リビングでは絃子が新聞を広げている。
「時に拳児クン、またあの裏山で死体が上がったそうじゃないか。」
ふーん、と素っ気無い返事をする播磨。彼は漫画の構想で忙しいのだ。
続ける絃子。
「君が今日も行って来た動物園の裏山だよ。また女の子の死体が見つかったそうだ。
死亡したのが2,3ヶ月ほど前らしい。祭の真っ只中だ。
毎年それくらいの時期に必ず行方不明になる女の子が出るからな、この町は。」
播磨は素っ気無い返事しかよこさない。それでも絃子は続ける。
「警察は猟奇殺人だと考えているようだな…しかし、あの動物園の裏山でなあ。」
これだけ今日行って来た場所の近くで大変な事があったと言う事を強調しても、播磨は大した反応を見せなかった。
あまりにつまらない従姉弟の反応に、絃子は喋るのをやめた。だが彼女の脳裏に、近所のスーパーで聞いた主婦達の噂話が甦っていた。
 毎年祭の1ヶ月程前に、決まって一人の女の子が男の子の幽霊を見るらしい。
そして仲良くなり、祭の日の夜男の子に裏山に誘われるのだそうだ。
だがその男の子は昔祭の日に裏山で崖から転落して死んだ幽霊だそうで、女の子を誘い出しては殺しているのだそうだ。
それが、毎年発生する行方不明事件の真相だ、と。
 
 何故一人しか見えないはずの幽霊の事を主婦達が知り得るというのか。
所詮は噂話だな、と絃子は笑った。
 と、不意に絃子の背筋が凍った。何かの気配を感じ、慌てて後ろを振り向いた。
そこにはぼーっと漫画の事を考える播磨の姿と、無造作に投げ捨てられた彼のバッグが転がっているだけだった。
彼女は播磨に自分はもう寝る事を告げ、布団に入った。
だがその夜、彼女は一晩中悪夢にうなされる事になる。


557 :Classical名無しさん:04/08/03 10:25 ID:8RdXldk6
 翌日、まだ朝6時というのに塚本家ではいつものように八雲が弁当を作るため台所に立つ。
今日の目玉は鶏の唐揚げだ。八雲は慣れた手つきで下ごしらえを済ます。
油が十分にあたたまる。肉を入れる。ばちばちと激しい音を立てる。
彼女は揚げた肉を置く為の新聞を用意することを思い出し、手近な新聞を使うことにした。
揚がった肉を新聞に乗せる時、彼女はその新聞が昨日のものだという事を思い出した。
まだ、自分が読んでいなかったという事も。
油が染みる。昨日のテレビ欄に、天気予報に、
少女の死体が出たという記事に。
油が染みる。


558 :Classical名無しさん:04/08/03 10:29 ID:8RdXldk6
死体の一部からでも思念を感じられるとか、動物園の裏山とか完全な脳内設定スマソ。
あとタイトルいるのかな…そういうの考えるの一番苦手。

559 :Classical名無しさん:04/08/03 10:48 ID:DiCbNuw6
>>558
お、おつかれ〜((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル…

560 :Classical名無しさん:04/08/03 11:23 ID:gFdEljq2
こ、怖……
話の展開は凄く良かったです。引き込まれました

ただ、あえて言わせてもらうなら
少々読みづらかったです。

行間が少なかったり、何度も文末が同じな所があったり




でも、面白かったですよ

561 :Classical名無しさん:04/08/03 12:27 ID:2eCujtKI
油が染みるくだり、良いですねぇ。
絃子さんが呪われませんように。

ところで、
>彼の想い人、塚本天満の妹、八雲
これだと
播磨の想い人 = 塚本天満の妹 = 八雲
って意味になっちゃいますよ。

562 :Classical名無しさん:04/08/03 14:08 ID:9vGUIyyE
読んでいて、なにか書きなれないようなぎこちなさと
妙に惹きつけられるような表現が同居している不思議なSSだった

次の作品も是非読みたいと思った。
期待します。

563 :クズリ:04/08/03 16:01 ID:nUoXiSLg
 暑い……うだりそうです。クズリです。
 最近、海に行ってないなぁ、ということで、突発的妄想を一つ。
 こんな絃子さんが見てみたい、ということで。


『Summer』

564 :Summer:04/08/03 16:02 ID:nUoXiSLg
「暑い……な」
「そりゃあ、夏ですからねぇ」
 燦々と降り注ぐ陽射しに目を細め、空を見上げながらぼやいた絃子の言葉に、葉子は律儀に返答
してみせる。
 軽く肩をすくめた後、絃子は遠くに響く潮騒に耳を傾けた

「刑部先生、久しぶりに遊びに行きませんか?」
 きっかけは、夏休み前の職員会議の後の葉子の一言だった。
「ん?ああ、そうだね。たまにはいいかもね」
 そう頷いてしまったのが運のつき、だったのかもしれない。
 翌日には彼女は、宿から行くまでの切符、何から何まで手配を終えてしまっていた。
 しまった、そういえばこういう奴だった。
 彼女が突発的に見せる行動力のすさまじさを忘れていた絃子は嘆くが、すでに時は遅い。
 何よりも、葉子の本当に楽しそうな顔を見ていると、今更断るのも悪いように感じられて、絃子
は彼女の案を受け入れたのだった。

「……で、俺は何でここにいるんだ?」
 そう言ったのは、二人の後ろを荷物を抱えて歩いて付いていく播磨だった。
「まだぶつぶつ言っているのかい?男らしくないぞ、ケンジ君」
 振り向いて言った絃子の顔を、播磨はにらみつける。が、涼しい顔で彼女は、その視線を受け流
して見せた。
「だいたい、いい話じゃないか。バイト三昧でデート一つしない夏に、宿代交通費もろもろタダで
海に来れるんだぞ?」
「……そりゃあまあ、そうなんだけどよ」
 どうも胡散くせぇんだよな。そう呟く彼の頭に、絃子はどこから取り出したのかモデルガンを突
きつける。
「何か問題でも?」
「いや、何も」

565 :Summer:04/08/03 16:03 ID:nUoXiSLg
「まあそれはそれとして」
 言いながら絃子は、葉子の方に振り返る。
 今日の彼女は、鎖骨の見えるVネックの白いノースリーブシャツに、上品な花柄の入った膝丈の
フリルスカート。相変わらず可愛い、とは絃子の感想だった。
「すまないね、葉子。こんなバカを連れてきてしまって」
「あら。私は全然、構いませんよ」
 言って透き通るような笑みを見せた後、葉子は続ける。
「播磨君、こう言ってるけれど絃子さんが言ってたのよ、播磨君も一緒じゃなきゃ嫌だって」
「……は?」
 まじまじと見つめてくる播磨に、絃子は冷たい視線を投げかける。
「虫よけには君ぐらい人相悪い男がちょうどいいからな」
「けっ、どうせそんなこったろうと思ったぜ」
 拗ねたように言って彼女らを追い越し、播磨は足早に先を急いだ。
 残された女二人は、彼の逞しい背中をまぶしそうに見送った後、爽やかな笑顔を互いに向けなが
ら会話を交わす。
「本当に、素直じゃないんですよね、絃子さんって」
「葉子……後でゆっくりと話し合おうじゃないか」
「モデルガン没収した後ならいくらでも。でないと、昔の話のあることないこと、言いふらします
からね」
「……いい友達に恵まれたものだな、私は」
「褒めたって、何にも出ませんよ?」

「……で、何してるんだ、おめぇはよ」
「何度も言わせるな。日焼け止めを塗れ、と言っている」
 ビキニタイプの黒の水着、そのブラの背中のホックを外し、絃子は純白の背中の全てをパラソル
の影にさらしている。
「あのな……そんな恥ずかしい真似が出来るかっ!!だいたい、笹倉先生に塗ってもらえばいいじ
ゃねぇか」
「葉子なら、ほら、あそこ」
 胸元に可愛らしいリボンのついたオレンジのワンピースの水着を着た彼女は、すでに海の家へと
退避し、かき氷をほお張っている。
「うーん、美味しい」

566 :Summer:04/08/03 16:04 ID:nUoXiSLg
「葉子は泳げないうえに、暑いのが苦手だからな」
「じゃあ何で海に来てんだよっ!!」
「楽しいからさ、決まってるだろう」
 その楽しさの半分が実は、親友である自分をからかうことにあることは、絃子にはお見通しであ
った。今も、気付かないふりをしているが彼女の意識がこちらに向いていることは明白だ。
 わかっていて、あえて絃子はその企みに乗ってやることにした。
 それは一つに照れたりしてからかわせないためでもあり、もう一つは自分の密かな欲求を満たす
ためであった。
「ということだ。塗れ」
「だから何で命令形なんだよっ!」
「女の柔肌に触れさせてやろうと言っているんだ。感謝されても、嫌がられる筋合いはないが」
「けっ、誰がてめぇの」
 バンッ
「女に恥をかかせるのは、最低な男だぞ」
「ま、前触れもなしにモデルガンぶっ放すなんて、卑怯じゃねえかっ!! マジ痛かったぞ!?」
「そういうものだ、女というのは。さあ、塗れ」
「わかった。わかったから、銃を突きつけるのは止めてくれ」
 不承不承と言った感で日焼け止めを受け取った彼は、明後日の方向を見ながら背中に手を伸ばし、
塗り始める。
 彼の手が、自分の背中に触れている。ただそれだけのことで、頬が緩んでしまいそうになるのを、
絃子は必死でこらえた。
 そして、照れ隠しに、
「ケンジ君」
「あぁ? 何だよ」
「前も塗ってくれないか?」
「ば、ば、ば、バカ言ってんじゃねぇっ!!」
「フフフ、冗談だよ、冗談」

「絃子さん、楽しそうでしたね」
「何を言ってるんだ、葉子。私は別に」
「あ、播磨君、私にも日焼け止め」
「私が塗ってあげよう、葉子」

567 :クズリ:04/08/03 16:09 ID:nUoXiSLg
 以上です。
 妄想全開ですね。すいません。

 最近、構想しているのが時代劇なスクランなんですが……資料が足りない_| ̄|○
 というか、そんなSS、需要があるのかなぁ、と思ったりもしますが。

568 :Classical名無しさん:04/08/03 16:11 ID:zoInkdB2
GJ
ところで、お泊りですよね?
エロパロスレで続きをお待ちしております。

569 :空振り派:04/08/03 16:53 ID:5Eqqqsqc
意外と少ない播磨主人公のSSを書いてみました。
これも企画物なので本編のストーリーは抜きにしてお楽しみください。
では、投下します。

570 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:54 ID:5Eqqqsqc
 体育祭翌日、旧校舎の茶道部部室で事件は起こった。被害者の名前は烏丸大路。
そして、第一発見者の名前は塚本天満。俺の最愛の女だ。
 天満ちゃんは被害者を発見後、ちょうど茶道部室に立ち寄ろうとしていた俺にしがみ
付き、泣き崩れている。これは俺のクレバーな一面を見せつけるチャンス!
 天満ちゃん! 君のために必ず犯人を見つけ出してみせる!

 まずは捜査の鉄則その1。第一発見者を疑え! だ。
 ま、億が一にもそんなことはありえねーだろうが。
「塚本……。落ち着いて答えて欲しい。君は何故、茶道部部室に?」
 天満ちゃんの涙を指でそっとぬぐう。
「ひっく……。八雲に今日の晩御飯の材料を聞こうと思って……。
 1−Dに行ったら、サラちゃんが『八雲ならもう茶道部へ行きましたよ』って。
 それで来てみたら、烏丸くんが……。うわ〜ん!」
 今、これ以上聞くのは無理みたいだな……。
 烏丸についてわかっていることはカレー好きということくらい。とにかく目立たない
やつだ。あと俺だけが知っていることだが、二条丈という名前で漫画を書いている。
それと認めたくないが烏丸と塚本は仲が良いらしい。天満ちゃんは動機の点から見ても
まず除外して良いだろう。となるとまず怪しいのは茶道部の部員だな。
 たしか、高野、サラ、妹さん。そして、顧問は絃子……か。

571 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:55 ID:5Eqqqsqc
 捜査の鉄則その2。とりあえず現場検証だ。
烏丸はうつぶせに倒れていて、口には少量の血の跡がある。俺には検死の知識は無いが
毒殺であることは明らかだ。まだ暖かいところから、死後そんなに時間は経っていない
ようだな。またテーブルの上にカップは置いてない。どうやら犯人によってすでに片付け
られたらしい。証拠を残さないとは用意周到な犯人のようだ。
 茶道部に関係する人物なら烏丸にお茶を勧め、その中にこっそりと毒を仕込むという
のもワケねぇ。よし、聞き込み開始だ!

「あー。皆に集まってもらったのは他でもねぇ。本日、茶道部で2−Dの生徒、烏丸大路
 が毒殺されたらしい。犯人を探すために協力してくれ」
「……本当に死んでるの?」
 相変わらず冷静な高野。妹さんとサラは真っ青になっている。
「播磨君。これが事件だとすれば早々に警察に連絡しなければならないんだが……」
 近寄って確認しようとする絃子を止める。証拠をもみ消されては困るからな。
「しばらく待て。もし、犯人が校内のものだったらマスコミにも叩かれて困るだろう?」
 我ながらもっともらしい理由だ。警察に手柄を横取りされてたまるか!

 まずは絃子か。まさか、俺と天満ちゃんの恋をサポートするために烏丸を……。
なんて面倒くさいことをするやつじゃないな。
「イト、先生……。放課後から今まで何処に?」
「職員室で高野君と備品の買出しの打ち合わせをしていたよ」
「えぇ、間違い無いわ」と頷く高野。
 ということはまず、この二人はアリバイ成立だな。動機の面からも考えにくい。


572 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:55 ID:5Eqqqsqc
 だが、高野は謎の多さなら烏丸といい勝負だからな。この女ならば毒も入手しかねん。
「お前、部長だろう? 毒を用意しておくことは可能なんじゃないか?」
「私を疑ってるの? 八雲やサラを危険な目にあわせるわけないでしょう」
 もっともだ。誰かが間違えて使わないとも限らねぇ。それにこの女には動機が無い。
加えて、やるなら人目につかないところでやる。そういう女だ。
「それに茶葉は部の備品だから、毎日チェックしているわ。この体育祭の間、使用された
 形跡はゼロよ」
 意外とマメなヤツだ。だが、おかげで被害者の口にしたものと毒は外部から持ち込まれ
たことがわかったわけだ。

 次はサラだ。一部で黒い噂もささやかれている。あの笑顔の裏に悪魔の一面が隠されて
いたのだろうか?
「……サラは教室にいたんだよな?」
「え〜。私を疑うんですか?、烏丸先輩を見たのも今日が初めてですし」
 たしかにそうだ。この二人には接点が無い。
 それに天満ちゃんは部室に来る前にサラに会って、そのまま寄り道せずに来たらしい。
現在、旧校舎へ入る道は一箇所。距離的にも離れているため、気付かれずに追い抜いて
犯行をおこなうのは難しいだろう。


573 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:56 ID:5Eqqqsqc
 最後は妹さんか。天満ちゃんの身内だし、俺も大変世話になっている。性格的にも犯人
とは考えにくい……。だが、天満ちゃんから聞いたサラの証言から言っても、そのとき
部室にいた可能性が高いのは妹さんということになる。姉の知り合いということで烏丸の
ことを知っていても不思議ではない。姉の話しを聞いているうちに烏丸のことが好きに
なって、もしくは姉を烏丸に取られたくなくて……。というのも考えられなくはない。
「……妹さん。塚本がサラに会うより先に部室に向かったそうだが、何処に?」
「……あの、お手洗いに……」
 ありふれた理由だが、嘘を言っているとは考えにくい。
「烏丸のことは知っているか?」
「……えぇ、姉さんからよく……」
 いきなり、天満ちゃんが自慢げに語った。
「今日も烏丸君に食べてもらうカレー。八雲に作ってもらったんだ」
 何ィ! うらやましい。って作ってるのは妹さんか。
 待てよ……。倒れていた場所からお茶に毒が仕込まれたと思い込んでいたが、実は
カレーに遅効性の毒が仕込まれていたという可能性もあるな。となると天満ちゃんか
妹さんが怪しいということになるではないか!
 天満ちゃんにしても、烏丸に自分よりカレーを選択されたというショックで……と
いう可能性が無くもない。

574 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:56 ID:5Eqqqsqc
 むぅ。茶道部の部員はほぼシロだったし、こうなると容疑者は天満ちゃんと妹さん
の二人ということに……。待て待て、ここは一旦部外者の線から考えてみるべきか?
茶道部以外で茶道部に出入りしている人物。
そして、動機がありそうなヤツというと……。
 俺……か? いやいや、んなワケねぇだろ。
 しかし、今日に限っては俺も自信がねぇからな。ちゃんと考えておかねぇと。
まず、俺の今日一日の行動だが……。学校に来て朝一番に例の相合傘にムカついて、
屋上に行ったよな。それから、花井のヤローが笑いに来たのでぶちのめしてやった。
その後、天満ちゃんにお嬢との仲を勘違いされてハートブレイクショットを射たれる。
 それから……。何てこった! 放課後のチャイムが鳴るまで記憶がねぇ!
そもそも何で俺は茶道部に向かってたんだっけ?
 俺のアリバイを証明する人間は居ないし、動機は烏丸と天満ちゃんの仲に対する嫉妬
ってことで充分じゃねぇか。
 おいおい、探偵が犯人だなんてしゃれになってねぇぞ。いくら何でもそれはねぇだろ。
烏丸なんてすでに存在を忘れていたくらいだし。

575 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:57 ID:5Eqqqsqc
 そうだ。そういえば花井も茶道部員でもないのによく部室周辺をうろついてたじゃ
ねぇか。茶道部に入れてもらえない腹いせに……ということもありうる。屋上でぶち
のめした後、いつの間にか居なくなってたしな。
「よし。花井をここに呼べ!」
「ハッハッハ! 話しは全て聞いていたよ」
 呼んでくるまでもなく、花井は部室に入ってきた。
「早ぇよ。ずっと外にいたのか……?」
「あぁ、八雲君を待っていたのだ!」
 ということは事件発生時も近くにいたな……。
「お前、いつから居た?」
「放課後のチャイムが鳴った後、すぐにここに来て。それからずっとだ。
 塚本君が来るまで、また君たちが戻ってくるまで人の出入りは全く無かったぞ」
 バカ正直なヤツだ。つまり花井には犯行のチャンスがあったということじゃないか。
「メガネ。この前のキャンプでスパイスの調合をしていたな。毒もお前が調合したん
 じゃないだろうな?」
「この僕がそんな卑劣なマネをすると思うか?」
 だが、普段まともそうなヤツに限って逆上すると何をするかわからんからな。
これで容疑者は天満ちゃん、妹さん、俺、花井の四名に増えた。
 決まりだな。アイツしかいない――。

576 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:57 ID:5Eqqqsqc
 その時、ガラっと茶道部のドアが開いた。
「晶、いる〜?」
「あれ? 愛理、今日は休みじゃなかったの?」
 何だって? そういえばコイツには今日、会ってなかったな。
あの机の落書きを見たら真っ先にとんできそうなのに……。それにコイツなら財力に
モノを言わせて毒を入手することもたやすいはず。
 それに捜査の鉄則その3を思い出したぜ。犯人は再び現場に戻る! とな。
「お嬢……。何故、学校を休んだんだ?」
「そ、そんなことアンタに関係無いでしょ」
 クッ。ガードの堅いヤツだ。ここはゆさぶるしかねぇ。
「そういえば、塚本と烏丸の仲を嫉妬していたという話しを聞いたぞ」
「過去の話しでしょ。それに私が好きなのは……ゴニョゴニョ」
 む。今、重要なことを言おうとしてたぞ。もう一息だ!
「あ? 聞こえね〜な」
「言えるわけないでしょーが!」
 ぐはっ。アッパーカットを食らってしまった。だが、この後に及んで隠すところが
ますます怪しい……。

577 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件:04/08/03 16:57 ID:5Eqqqsqc
 そろそろ容疑者も出揃ったことだし、ここらへんでシメるとするか。
「間違い無い! 犯人はこの中にいる!」
「犯人は……」
→「お嬢……、お前だ!」
 「妹さん……、君だ!」
 「メガネ……、貴様だ!」
 「認めたくないが……塚本だ!」
 「……俺だ!」

578 :空振り派:04/08/03 16:58 ID:5Eqqqsqc
解決編は少し間をおいて投下します。一応、全ルート用意してあるのでどれか
一つを選択してみてください。
なお、正解が一つ。BAD ENDが一つあります。

579 :Classical名無しさん:04/08/03 18:46 ID:53fOg8l6
「……俺だ!」 に一票。

580 :空振り派:04/08/03 19:18 ID:5Eqqqsqc
では、「……俺だ!」ルート行きますね。
一応、2レスあるので間に挟まらなければ良いですが。

581 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜俺?ルート〜:04/08/03 19:19 ID:5Eqqqsqc
>>577 の続き
「犯人は……」
→「……俺だ!」
「えぇ〜!?」と天満ちゃんが驚きの声を上げる。
 認めたくないが、俺の今日一日の記憶が無い。そして動機も充分。
ただ一点ひっかかるのは俺に毒を入手する知識も金も無いというところだが、精神不安定
だった俺が、高野やサラあたりにそそのかされなかったとも限らねぇ。
「自首してくる……」
 天満ちゃんに詫びる言葉も無い。もうシャバには居られねぇ。
「まだ、アンタが犯人だって決まったわけじゃないでしょ?
 ちゃんと説明しなさいよ。理由の何如によってはどうとでもなるわ」
 涙目になって引き止めようとする沢近。そして、俺を心配そうに見つめる妹さん。
「播磨さん……」
「俺、網走で漫画書くよ……」
 妹さんにそう言い残し、立ち去ろうとした時――。

「逃げちゃダメだ……」

582 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜ENDルート〜:04/08/03 19:20 ID:5Eqqqsqc
 え? 今言ったのは誰だ?
と振り返ってみると……。被害者はむっくりと起き上がった――。
「あれ? 何でお前生きてんの?」
「死んだフリごっこ……」
 んが。開いた口がふさがらねぇ。俺の推理は何だったんだ……。
「……じゃあ、その口の周りについてるのは?」
「……トマトケチャップ」
 紛らわしいコトすんじゃねぇ! くっ、天満ちゃんの前じゃなかったらぶん殴ってる
ところだ。
「ゴメン、播磨君。私の早とちりだったみたい」
 いや、天満ちゃんは全然悪くねぇ。全ての元凶は烏丸のヤローだ。
「ということは、この事件の犯人は私だね! てへっ」
 さっきまでの泣き顔がどこへやら。天満ちゃんはすっかり満面の笑顔になっている。
「これにて、一件落着〜」と天満ちゃんが得意げに締めくくった。
 って、テメーが言うか? あーでも、カワイイな! ちくしょう。

                              <END>

583 :空振り派:04/08/03 19:25 ID:5Eqqqsqc
1ルート完了です。
残りはまた後ほど……。
レスリンクを張るので職人様も気にせず投稿してください。

584 :579:04/08/03 19:26 ID:53fOg8l6
やっぱり、烏丸死んでいなかったか・・

GJ。他のも見てみたい。

585 :空振り派:04/08/03 19:32 ID:5Eqqqsqc
>>579さん、レス早いですね。
お待たせしてすみません。

似たりよったりですが、それじゃあ誰も選ばなさそうな花井ルートをさっさと投下しますね。

586 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜花井ルート〜:04/08/03 19:33 ID:5Eqqqsqc
>>577 の続き
「犯人は……」
→「メガネ……、貴様だ!」
「何? ……言うに事欠いて、この僕だと?」
「放課後ずっと茶道部近辺にいたのはオメーしかいねぇんだよ」
 おそらくカレーのスパイスをダシに烏丸に毒を盛ったのだろう。
「クッ。たしかにそのとおりだが……」
 だが予想外なことにコイツを弁護する声が上がった。
「違います。播磨先輩! 花井先輩は犯人じゃありません」
「サラ君……」
「だって……、高野先輩が設置していた監視カメラにずっと映ってますから。
 中には入っていません!」
 そこには妹さんを待ち伏せて、顔が緩みきっている花井が映っていた。これを変態と
言わずして何と言おうか。末代までの恥だな……。だが、少なくとも烏丸殺害の容疑は
晴れたわけだ。
 これで、この時間帯に烏丸に接触した人間はいないということがはっきりした。
となるとやっぱり遅効性のカレー毒だったのか? 事件は振り出しに戻った。と思った
その時――、またもや意外な人物から声が上がった。

「犯人はこの中にいる……」
>>582

587 :Classical名無しさん:04/08/03 20:11 ID:XuwTJe8g
俺天満が殺したんだと思ってた。八雲が作ったカレーに天満が余計なものを入れてそれがとどめに・・・って感じで。
ってかこのスレじゃスクランキャラを死なせたり殺しをさせたりはタブーと思ってたのでこのSSはありがたい。
これでこころおきなくやれる。

588 :空振り派:04/08/03 20:16 ID:5Eqqqsqc
>>587
いあ、誰も殺してませんが……(汗
確かに天満なら悪意なしでやりそうですけどね。
そろそろ沢近ルート投下します。

589 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜沢近ルート〜:04/08/03 20:20 ID:5Eqqqsqc
>>577 の続き
「犯人は……」
→「お嬢……、お前だ!」
「なっ、何で私が!」
「さっき問い詰めたとき、口籠ったのが怪しい。犯人でなければ答えれるはずだ。
 さぁ、吐け!」
 俺はずずぃっと迫った。
「くっ。私が好きなのは、ハ……」
「ハ?」
 よく聞き取れなかったので耳を近づけてみる。
「ハリ……ケ……」
「2−Dのハリーマッケンジーのことか? そうか……疑ってスマン」
「違うってば!」
「違うのか?」
「そうよ。あんなキザなヤツじゃなくて、もっとバカなヤツのことよ」
「……ハリケンポリマー?」
「もうっ。わかってよ。バカァ!」
 真空飛び膝蹴りを喰らわして、沢近は走り去っていった。
 俺の勘違いだったらしい。何が何だか……。とその時――。

「旧校舎は涼しくて寝やすい……」
>>582

590 :Classical名無しさん:04/08/03 20:24 ID:XuwTJe8g
あ・・・なんか587のレス今読み返すとめちゃめちゃやばいな。
決して黒いSSを作るつもりはありませぬ。

あと>>569
おもろい。続きが楽しみ。

591 :Classical名無しさん:04/08/03 20:26 ID:RopKxP9E
>590
うん……なんかすぐにでも凌辱拷問殺人SS書く気満々って
書き込みだった(w


592 :空振り派:04/08/03 20:30 ID:5Eqqqsqc
>>590
ありがとうございます。SS頑張って作ってください。
んでは、これ以上ひっぱってもアレなので残りを投下しますね。

593 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜八雲ルート〜:04/08/03 20:32 ID:5Eqqqsqc
>>577 の続き
「犯人は……」
→「妹さん……、君だ!」
「……え?」
「弁当箱を出しなさい」
 俺はずずぃっと迫った。
「……はい」
 妹さんが差し出した弁当箱のカレーはほとんど残ったままだった。やはり――。
「……あ、あの。今日は食欲が無くて……」
 その弁当箱をつかみ、匂いを嗅いでみる。変な匂いはしない。とても美味そうだ。
そういえば、今日も昼飯は抜きだった――。俺は我慢できなくなり、皆が呆気に取られ
ている前で一心不乱に貪った!
「ふ〜。美味ェ!」
「……あ、ありがとうございます」
 妹さんは何故か頬を染めている。って、しまった! 毒が入ってるかも知れねぇって
いうカレーを食べてどーする! だが、幸いにも身体はなんともないようだ。
「……そんなにお腹が減ってたのだったら、播磨さんの分も作ってきますから……」
「すまねぇ」
 あぁ、また俺の勘違いか……。そう思った時――。

「カレーの匂い……」
>>582

594 :空振り派:04/08/03 20:34 ID:5Eqqqsqc
最後にすでにわかっていると思いますが、正解ルートを投下します。

595 :迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜天満ルート〜:04/08/03 20:35 ID:5Eqqqsqc
>>577 の続き
「犯人は……」
→「認めたくないが……塚本だ!」
「えぇ〜!?」
 俺としたことが、天満ちゃんの涙に心を奪われて肝心なことを見逃していた。
「何故なら、被害者は……こうして生きているからだ!」
 被害者はむっくりと起き上がった――。
「……おはよう」
 そう、烏丸は単に寝ていただけなのだ。
「そして、この口の周りについているのはトマトケチャップ!」
 決まった! 何てスマートな解決なんだ……。
 これで天満ちゃんは俺に惚れた!
「え〜ん。烏丸君、生きてたんだ。良かったよ〜」
 と俺の胸に飛び込む天満ちゃん――。スカッ。あれ?
俺じゃなくて烏丸に……。ぐぶぁ!
ひょっとして今回の被害者はオレデスカ……。
 そして、俺は烏丸の替わりに床に倒れた……。

                          <BAD END>

596 :空振り派:04/08/03 20:37 ID:5Eqqqsqc
完了です。
ということで一応、正解ルートは天満でした。かつ、BAD END……。
初の試みなので読みづらかったかも知れません。
こんな事にほぼ一日使って大丈夫なんだろうか、俺……orz
謎解きにも何にもなってませんが、さすがに烏丸を死なせるにはしのびないので。
これは一応、王道展開になるのかな?

597 :Classical名無しさん:04/08/03 20:43 ID:fab4xAPk
>>596
前のSSから一時間も開けずに投下したあげく
自分は好きなだけ時間をあけて小分けにして投下するとは
ちょっとやりたい放題やりすぎじゃないのかな。
投下するならまとめて投下してくれよ。
余りにひどすぎる。少しは他の人のことも考えろ。

598 :空振り派:04/08/03 20:57 ID:Mpm.nezE
>>597
本当にすみません。確かにやりすぎでした。
他の人の邪魔をするつもりはなかったんですが……。
もう二度とやりませんので。

599 :空振り派:04/08/03 20:58 ID:Mpm.nezE
>>597
本当にすみません。確かにやりすぎでした。
他の人の邪魔をするつもりはなかったんですが……。
もう二度とやりませんので。

600 :Classical名無しさん:04/08/03 21:08 ID:Zf1bFSJE
>>597
まあまあ。リアルタイムで見てた俺は楽しめたよ。

それにしても、前の人が書いたすぐ後に投稿はいかんってのはそうかも。俺も気をつけよう。

601 :Classical名無しさん:04/08/03 21:25 ID:TVNE8ieg
>>599
確かに間をあけて投下します、というのはやめたほうが良いと思います。
このような形式のSSを投下したいと思うのなら、分岐点で

「お嬢……、お前だ!」 >>○○へ飛んでください

「妹さん……、君だ!」 >>○○へ飛んでください、

というような形をとり、続けて投下したほうが良かったのではないかと。
そうしないと、あなたの解答編を待っている間はSSを投下するのはもちろん
前のSSへの感想も書きづらくなってしまうと思います。

あと、投下間隔についてですが、
これも基本的に個人の良識で良いと思いますが
さすがに昼間に1時間も空けず、というのは酷過ぎたかも。
それに上述の理由で、戻って感想を付けるという
のもやりづらい状況になっていましたし。
なんにせよもう少し気を使う、ということで…

602 :Classical名無しさん:04/08/03 21:36 ID:TVNE8ieg
>>567
GJ!
ほのぼのでかつ萌える、というのは良いですね。
絃子さんと葉子さんの関係もありそうな雰囲気。
まあ頬が緩んでしまう絃子さん最高ということで。
時代劇スクラン、是非読んでみたいです。

603 :Classical名無しさん:04/08/03 21:40 ID:9JzQ69yQ
まあ、でもさ、次から気をつければいいんだし´∀`)マターリ行きましょうや。
失敗は成功の母。同じ失敗をしないために>>597さんや、>>600さん、>>601さんもアドバイスしてくれたんだし。

次からもっと頑張ってくださいな空振り派さん。 期待しています。SSは面白かったので、大丈夫かと

604 :Classical名無しさん:04/08/03 21:49 ID:M6aBZISQ
自分もそう思います。これからも面白いSSを期待しています。

605 :Classical名無しさん:04/08/03 22:15 ID:ygzTW1Js
面白い試みだったと思う。
間を開けたい理由もわかるし。
既出だけど、人がいない時間帯に連続投稿して
Adventure Book風味に仕立てれば良かったでしょうね。

あるいは、解答編を別スレに誤爆しておくとか。

606 :Classical名無しさん:04/08/03 23:40 ID:bgwCzjtk
>>571
2−Cですよー

お二方ほど「酷すぎる」という表現を使ってますが、
ちとトゲトゲしいですなぁ。
悪意をもってのことじゃないんだから、
相手のことを慮って、
もうちょっとマターリとアドバイスしてあげましょうよ。


607 :Classical名無しさん:04/08/03 23:44 ID:2eCujtKI
>605 あるいは、解答編を別スレに誤爆しておくとか。
それはいくらなんでもダメだろ。他スレに迷惑かけてどうするよ。

608 :Classical名無しさん:04/08/03 23:57 ID:C63lvSs6
ま、問題提起したという意味でよかったんじゃないの?

>>605
>あるいは、解答編を別スレに誤爆しておくとか。
他スレに迷惑をかけるのはあまりにナンセンス

609 :空振り派:04/08/04 00:10 ID:OY7VmuiE
>>606
誤記、気付きませんでした。指摘ありがとうございます。

かなり落ち込みましたが、(エラーで二重投稿になってるし……)
皆さんからいただいたご意見を参考にまた次回、がんばります。
今後、気をつけますのでヒラにご容赦を……。ではまた次回作で。


610 :Classical名無しさん:04/08/04 02:49 ID:qKu1I.fM
>>567
激しくGJ!!
本当に最近の絃子分は凄まじいものがあります。
最後の行の絃子さんに一番萌えたw

611 :Classical名無しさん:04/08/04 05:46 ID:NjmpXF46
空振り派さんはいろいろ面白いことをしてくれるし
初期の頃のSSより面白くなってるしで
個人的に楽しみにしてるんで次もがむばれ

あと、ワーイ絃子さん祭りサイコー

612 :Change the world:04/08/04 11:08 ID:qmlfIyEQ
「それで、何の用なの? 晶。わざわざこんなところでなんて」
 そう言って、こんなところ――校舎の屋上を見回す愛理。味も素っ気もないコンクリートの床、所々に
ある何かのタンク、安全対策の柵に金網のフェンス、目に入るものと言えばその程度。強いて言うならば、
あとは空。白く煙った青色をまとい、どこまでも遙か彼方にあるような遠い秋のそれ。
「いいの? このままで」
 そんな空を背にして晶が問うたのは、その一言。
「……何がよ」
「あら、言っていいのかしら」
 淡々と告げられる言葉は、けれど愛理にとっては鋭い刃。一投ごとに追いつめられていくという現実を、
それでも彼女のプライドは認めない。だから何の話、ととぼけてみせる。
「ねえ、愛理」
 そんな仕草に、晶は彼女にしては珍しく溜息を一つ。
「立ち止まっていても何も変わらないと思わない?」
「――」
「少なくとも、私の知っている沢近愛理はそんなしおらしい娘じゃないんだけど」
 それだけ、と結んで、晶は愛理に背を向ける。その視線の先、フェンス越しの景色には街並が広がる。
囲われているのは果たしてどちらか、そんな益体もないことを考えながら愛理の返事を待つ。
 どの位そうしていたか、やがて愛理が口を開く。
「しおらしい、ね」
 ――その口調はどこか吹っ切れたようにさばけていて。
「分かったわよ。言えばいいんでしょう?」
 ――気がついてしまったから。
「私は――沢近愛理はね」
 ――理由なんて一つも分からないけれど。
「播磨拳児が好きなのよ」
 きっと、と最後に付け加えたのはなけなしのプライドなのか。それはともかくとして、ようやく自分の
中の想いに名前を付けた彼女に、ほんの少しだけ笑みを浮かべてから振り返る晶。

613 :Change the world:04/08/04 11:08 ID:qmlfIyEQ
「どう、これで文句は」
 ないでしょう、という言葉の途中で、ばさり、と何かを取り落としたような音がする。何よいい所で、
と愛理が向けた視線の先には。
「なっ――!」
 呆然と立ち尽くす播磨拳児その人。足下には先程の物音の原因だと思われる分厚い封筒が落ちている。
そして当然のように、時間が凍った。三者三様、それぞれの沈黙が続いて。
「じゃ」
 それをあっさりと破ったのは晶だった。軽く片手を上げ、足早に屋上の出口へと向かう。
「じゃ、って……ちょっ、待ちなさいよ晶!」
「愛理」
 その声にも振り向かず、扉に手をかけたままで告げる。
「いつまでも回り道してるわけにもいかないんじゃない?」
「晶……」
 その言葉だけを残して晶の姿は屋上から消える。残されたのは、一組の男女。
「――はめられたわ」
 未だ呆然としている拳児とは違い、もはや開き直るしかないと思っているのか、さばさばとした表情の愛理。
どこか投げやりにそう呟くと、つかつかと拳児の傍に歩み寄る。
「ちょっと、いつまで呆けてるのよ」
「ぬおっ!? お、おう」
 その声にようやく我に返ったのか、慌てふためいた様子で封筒を拾い、じりじりと後退る拳児。それを見て、
あらためてなんでこんなヤツに、という思いを深くする愛理だったが、仕方ないじゃない、と小さく首を振る。
「結局、理不尽なのよね」
「は?」
「いいの、こっちの話よ……それで」
 きっ、と射るような眼差しで見据える。

614 :Change the world:04/08/04 11:09 ID:qmlfIyEQ
「アンタはどうなのよ」
「……俺?」
「そうよ。私の、私の気持ちはもう言ったんだから、アンタの方を聞かせなさいよ」
 聞かなくても分かるけど、という言葉はプライドにかけて飲み込んで、顔を真っ赤に染めて尋ねる愛理。
 対して、答える必要なんてねぇだろ、という声が拳児の頭の中に響く。義理もなければ借りもなく、むしろ
貸しの方が多いのではないか、という相手。確かに、答える必要はない。
 それでも。
「俺は」
 結局の所、播磨拳児とはそういう男なのである。良くも悪くも。
 したがって。
「俺が……俺が好きなのは――」
 後には引けない戻れない。
 敵前逃亡は士道不覚悟と心得よ――
「――塚本なんだ!」
 決死の思いで放った言葉。しかし、それを聞いた愛理は特に反応を見せない。
「そう。やっぱりそうなんだ」
「……おい。なんだやっぱりって」
 この俺の天満ちゃんへの想いは知られてねぇはず、と思わず問い返す拳児。

615 :Change the world:04/08/04 11:09 ID:qmlfIyEQ
「だからあの娘でしょう? 塚本八雲」
「いやそうじゃな」
「黙りなさい。ああもう、これなら聞かなくてもよかったじゃない!」
 さらに深くなった誤解の根を正そうとしても、もはやその言葉は届かない。バカみたい、と天を仰いだ
愛理は、続く言葉を一気にまくし立てる。
「いい、覚えておきなさいよ、アンタは私を振った男第一号なんだからね。私はそんなヤツがいたことなんて
 絶対忘れないし、アンタが忘れたりしたら承知しないんだから」
 だからね、とそこで一呼吸。
「せいぜい幸せになりなさい」
 ふん、と。不格好ながらも拳児の前で初めて笑って見せてから、またしても呆然としている彼を置き去りに、
颯爽と身を翻して歩を進め、振り向くことなく階下への扉をくぐる。
 そして、その扉を後ろ手に閉めてから。
「ホント、バカみたいじゃないの」
 一言そう呟いてから、階段を降り始める――と。
「……っちゃあ」
 そこにはよりにもよってなのか、当然なのか、逆に階段を登ってきた八雲の姿。その先にあるのは屋上しか
ないわけで、つまりはそういうことで、と思考が頭の中で空回りし始める愛理は、それでもどうにか言うべき
言葉を探して。
「ま、貴女も頑張りなさい」
「先輩……?」
 きょとんとしている八雲を残し、とんとんとん、と先程とは違うどこか軽い足取りで降りていく愛理。一方の
八雲は、どういうことなのか分からないながらも、少なくともそう言ったときの彼女には悪意が感じられなかった
ことだけは理解して、もう見えはしない背中に小さく一礼をして、再び階段を登り出す。
 その先で何があるか。それはまた、別の話。

616 :Change the world:04/08/04 11:09 ID:qmlfIyEQ

 ――翌日。
「おはよう」
 寝不足の目をこすりながら――理由は問うまい――登校してきた愛理は、それでもいつもの笑顔を浮かべて
クラスメイトと挨拶を交わす。
「あ、おはよう愛理ちゃん」
「よう、今日は遅かったじゃねぇか」
「……おはよう」
 いつものように天満の周りに集まっている面々に声をかけられ、私にもいろいろあるのよ、と意味深な視線を
送ってくる晶から目を背ける……と、そこには当然ながら拳児の姿。
 瞬間、二人の間で時間が止まる――
「おはよう、」
 ――が、今度は彼女自身がそれを打ち破り。
「播磨くん」
 そう言った。
「……あん?」
「……何よその顔。なんか文句でもあるわけ?」
 ほんの一瞬だけ流れた友好的な空気は、一呼吸としないうちにいつもの険悪なそれへと変わる。交わされる罵声
はもはやこのクラスにとって日常の一コマ、気にする者もいないままに流れていく。
 結局の所、世の中というものはそうそう劇的に変化するわけでもなく、ただ小さな変化が人知れず小さく積み重ね
られていくもの。どんな大きな変化もそうやって起きるのだ、と、そんなことを考えながら。
 ただ一人その変化に気がついている晶は、小さく微笑んだ。

617 :Change the world:04/08/04 11:11 ID:qmlfIyEQ
この調子じゃ誕生日まで保たないですよ?、と流れを無視して沢近。
しかもここまでやると既に沢近じゃないんじゃないか、という悪い見本。
さばけたいい女、というのはやはり美琴の役割なのか……

618 :Classical名無しさん:04/08/04 11:24 ID:uQ1Awcc.
こんにちは。SS投下します。
なおこのSSは分校のスクランお絵描き掲示板の
茶々木 涙氏『No.2398 暑中見舞申上げ候 』に
インスパイアされて書き上げました。
SSを書くことを承諾してくださった茶々木氏にお礼を申し上げます。
よろしければ絵をご覧になりながら読んでください。

619 :618:04/08/04 11:32 ID:uQ1Awcc.
うわぁ、>>612-617さんすいません…。
リロードし忘れていました…。
時間がかぶりすぎるのもあれなので、
夜に投下し直します。すいませんでした。

620 :Classical名無しさん:04/08/04 11:32 ID:e0ROVpJQ
ジョルノが日本に晶を迎えにきて、それをどうにかする話キボン

621 :Classical名無しさん:04/08/04 11:33 ID:4I/b5mq.
>>617
久々に沢近キタ━━━━━(。A。)━━━━━!!!!
これからまた一転二転しそうな終わり方がイイですね。
あくまで強気でクールに通す沢近が新鮮でした。
GJ!

622 :Classical名無しさん:04/08/04 15:27 ID:5KNlj64U
>>617
プライド高い沢近。久々に堪能できました。
特に最近補給者が少なかったので良かったです。
GJ!

623 :Classical名無しさん:04/08/04 17:18 ID:e6HCTU3U
潔い沢近もいいですな
本編の沢近さんは少々よくわからなくなってる
まあスクランらしいと言えばそうなんだが

624 :洋芥子ラゴンPW,N「\f」:04/08/04 17:21 ID:of5HbQ8M
いずれにしてもフタをあけてみなけりゃわかりゃないと
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 
                                                                                                 


625 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

626 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

627 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

628 ::04/08/04 18:52 ID:R06xiNEU
何これ?

629 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

630 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

631 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

632 :Classical名無しさん:04/08/04 19:29 ID:rukTX7OU
>>628
なんだかよく解かりませんがNGワードは便利ですよ

633 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

634 :Classical名無しさん:04/08/04 20:13 ID:UDuhbRRw
FF11とか言ってるからIF11になんかひっかかってんのかと思った

635 :Classical名無しさん:04/08/04 20:15 ID:iWY3xgYs
>>628
夏特有の現象。
まぁ、夕立みたいなものです。

636 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

637 :Classical名無しさん:04/08/04 20:30 ID:ZAx/nGFQ
>635
そう言うと俄然風流に思えてくるな。

638 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

639 :Classical名無しさん:04/08/04 20:58 ID:n7zyK1jY
>>617
GJ!
change the world 自体も大好きです。

640 :Classical名無しさん:04/08/04 20:59 ID:OAA5JufY
>567
絃子さんがイロッポイヨー。相変わらず素晴らしいSSでした。
時代劇SS、楽しみにしています。
(にしても資料に苦労する時代劇物って…平安物か?)

>569
純粋におもしろいし、楽しめました。また期待しています。

>617
すべてを見通す女、晶がいい風味でした。
あと、地の文章が上手いですね。見習いたいです。

641 :Classical名無しさん:04/08/04 21:35 ID:OAA5JufY
こんばんわ、>>618改め午後の抹茶です。
昼間に予告したSSを投下します。
重ねまして茶々木涙氏にはお礼を申し上げます。
なお、萌えは少ないです。たぶん。ではどうぞ。

642 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:36 ID:OAA5JufY
「浴衣〜、浴衣〜、夏祭り〜」
「姉さん、動かないで…」
 塚本家、居間。そこでは浴衣を着付けられ中で浮かれている塚本天満と
四苦八苦しながら姉に着付ける塚本八雲、そして一足先に浴衣を
着付けられ二人の様子をくすくす笑いながら見守るサラ・アディマエスの姿があった。
「はい、姉さんできたよ…。着崩さないように気をつけて…」
「ありがとう、八雲。ゆ〜か〜た〜、くるくるゆ〜か〜た〜」
 ほっと一息つく八雲とさっそく変な歌を歌いながらくるくると踊る天満。
天満の山吹色の地に赤い花花模様の浴衣に草色の帯が目にもまばゆい。
 八雲の青の縞地に紫の花模様の浴衣、サラのピンクの大輪の花模様と3人が並ぶと華やかなことこの上なかった。
「おつかれさま、八雲。にしても浴衣ってほんと素敵よね。イギリスに
持って帰りたいな」
 でも自分では着れないから八雲も持って帰らなくちゃならない
けどね、とニッコリと笑うサラ。なにを隠そう三人の浴衣は八雲の
お手製なのだ。
 特にサラの浴衣は二人が仲良くなった記念にと一緒に生地を
選びにいった特別な品だった。

643 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:37 ID:OAA5JufY
「じゃ、早速でかけよー!」
「姉さん、部長と沢近先輩と周防先輩は…」
「晶ちゃんと愛理ちゃんは現地集合、美琴ちゃんは用事があって
これないんだって」
「あら、残念ですね」
 わいのわいのいいながら出発する天満たち。今日は矢神神社の
夏祭りの夜。花火大会ほど大きくないながらも、テキ屋の出す
出店のほかに町内の人たちの手作りのお店などもあり、この街の
夏の風物詩だと言えた。

「わー、まだ5時だっていうのに人がいっぱいだ〜」
「ほんとですねー」
「姉さん、はぐれないように気をつけて…」
 祭りの夜は早い。矢神神社を中心に放射状に広がった出店の
群れは早くも賑わいを見せはじめていた。
「で、塚本先輩。待ち合わせ場所ってどこなんですか?」
「んー、お祭りの夜はどこも混むから美琴ちゃんのうちにいこうって
ことになっているんだけど。美琴ちゃんのうちは神社から近いし」
「じゃ、いきましょうか」
 からころと美琴の家への道を歩く三人。しばらくすると美琴の家が見えてきた。
ピンポーン、とチャイムを鳴らす天満。
「はーい」
「あ、美琴ちゃん、こんばんわー」
「こんばんわー」
「おーっす」
「お邪魔します…」
 三人を出迎えたのはシンプルなデニムのワンピースに身を包んだ
周防美琴だった。

644 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:38 ID:OAA5JufY
「あー、浴衣じゃないんだねー。残念ー」
 美琴ちゃんの浴衣姿が見たかったのに、とぷーっと膨れる天満。
「なんで今日はこれないんですか?」
とサラ。
「んーと、あたし花井んとこの道場で子供たちに稽古つけてるだろ?
その子供たちを花井と二人で夏祭りにつれていくことになっちまってな。
悪いな、天満。期待に添えなくて」
 片手で謝る美琴。その時、再び玄関のチャイムが鳴った。出迎えにいく天満たち。
「きたわよ」
「…こんばんわ」
 周防家の玄関に立っていたのは薄紅のレースの夏着物に身を
包んだ沢近愛理と藍の絞りの生地に紫の帯の浴衣を着た高野晶だった。
 愛理は普段二つに結んでいる髪を下ろして結い上げ、さらに
うっすらと化粧をしているので一見誰なのかわからない。ただで
白い肌に薄紅色が映え、うなじが美しい。和服を着慣れた浴衣姿の
晶も当然のように似合ってた。

645 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:39 ID:OAA5JufY
「わ〜、二人とも綺麗〜」
「ほんとですね」
「本当にお綺麗です…」
 それぞれに賞賛の言葉を述べる天満とサラと八雲。が、しかし。
「なー、沢近だけなんで夏着物なんだ?」
 当然のようにつっこみをいれる美琴。言われてみれば、単衣に
裸足の面々と比べると襦袢に足袋を着込んだ愛理は一人浮いている。
「こ、これは昼間に叔父様の画廊のオープニングパーティがあって
その帰りだから…それにうちでは夏といえばこれで…」
 もごもごと口ごもる愛理。本当の理由は他にあったようだと察しは
ついたが晶と八雲はあえてつっこまなかった。
「でも愛理ちゃん、それじゃ暑くない?」
「で、でも着替えもないし…」
「大丈夫、あたしの浴衣貸すから着替えていったら?丈は…ちょっと長いかもしれないけれど調節きくし、下駄もまあ履けないことはないだろ」
「ちょ、ちょっと…」
「そうと決まったら着替えだね…」
 晶はすっくと立ち上がり、愛理をずるずると隣室へひっぱっていった。
「だからこのままでもいいってば…ぁ、ぁん、晶くすぐったいわよ!
どこ触っているのよ!」
「こうしないと脱げないでしょう…ほら髪が乱れるから暴れない」
………10分後。
 紺地に黄色のトンボ柄に赤い帯の愛理が出来上がった。
「可愛いよ、愛理ちゃん!」
「う〜ん、意外に似合っているな」
「なによ、意外にって」
「ちなみに最近はミニスカ浴衣、ゴスロリ浴衣もあるらしいよ」
「ミニスカ浴衣の沢近先輩って見てみたいかも」
 口々に愛理の品評会を始める5人とこそばゆくて落ち着かない愛理。
無理もない。彼女の人生において他人の服を借りて着る機会など
めったにないのだから。しかしこういう庶民的な柄も案外いい、と
口には出さないが密かに気に入ってた愛理だった。

646 :「夏祭りの夜に -a beginning- 」:04/08/04 21:40 ID:OAA5JufY
「姉さん、そろそろ出かけないと…」
「あ、もう5時40分?美琴ちゃん、待ち合わせ時間平気?」
「うちらの待ち合わせは花井の道場に6時だから、まだ大丈夫かな。
でもそろそろ出かける準備しようか」
「ごめんなさい、周防先輩。ばたばた騒いじゃって」
「いーっていーって。そっちこそ早く出かけないとお祭り終わっちゃうぞ」
「じゃ、そろそろでかけましょうか…」
「…いってくるわね、美琴」
「…いってらっしゃい」
 あの花火大会の後だ。愛理と美琴の間に複雑な視線が交差する。
それでも気持ちよく送り出してくれる美琴を愛理は尊敬の意を込めて
眺めた。そしてくるっと4人の元へと振り返る。からころと下駄の音が
耳に涼しい。
 さあ、行こう。

        ―― 祭 り の 夜 が 始 ま る ――

647 :午後の抹茶:04/08/04 21:48 ID:OAA5JufY
と、いうわけでイントロダクションでした。
祭りSSではなく浴衣SSという異色なものになってしまいました。
それでいいのか、自分。
(個人的に水着より浴衣に萌えるたちなので…)
本編は考えていたら思っていた以上に長くなりそうなので、
連作、という形でぽちぽち投下したいと思います。
第一弾、天満編は茶々木様に捧ぐべく待機して
いますので明日の晩にでも投下できるかと。
どうぞお待ち下さい。

648 :Classical名無しさん:04/08/04 22:38 ID:v/YCvD9w
花井なら子供の世話より八雲を選ぶと思うのは自分だけか…?

何はともあれGJ! 

649 :Classical名無しさん:04/08/04 23:57 ID:PLcor/jo
浴衣SS乙w
本編のほう、楽しみに待ってます。
ゴスロリ浴衣って初めて聞いた。そんなもんあるのか・・・。

650 :Classical名無しさん:04/08/05 00:29 ID:2jKxYbNk
こんなんですな
ttp://www.rakuten.co.jp/bodyline/515854/516253/594644/

651 :Classical名無しさん:04/08/05 00:55 ID:MSEFQ4/U
GJ浴衣SS!

……私も近日中に投下予定ですが、パクリではないのでご容赦を。

652 :Classical名無しさん:04/08/05 02:43 ID:LdPcornU
明けてからにするつもりだったんですが、蒸し暑くて眠れないので今投下します。
時系列としてはお姉さん抱きつきと体育祭の間くらいとお考えください。

653 :Ritalin 202:04/08/05 02:47 ID:LdPcornU
「……とゆーワケで、コレは新作の下書きなんだ。毎度悪いがよろしく頼む!」
「わかりました……では…」
「うん? 妹さん、なんか顔色良くねえな。大丈夫か?」
「え……そうですか?」
「無理はいけねえよ。なんなら今日はやめても──」
「いえ……大丈夫です。……原稿、いいですか?」
「あ、ああ。……それじゃせめて座ろうや。立ちんぼよりかマシだろ」

そう言って、播磨拳児はガクランを脱いで床に敷き、
困惑する女子生徒──塚本八雲を、そこへなかば強引に座らせた。
播磨はその隣に直に腰を下ろす。秋の屋上のコンクリート床は、予想以上に冷えていた。
無言で原稿を読み進める八雲をちらちらと盗み見しながら、

(フッ……今回はギャグマンガに初挑戦してみたが、我ながら会心の出来だ。
 ページをめくる度に腹を抱えて笑い転げる妹さんの姿が目に浮かぶぜ……)

などと相も変わらず勝手な妄想に浸っていた播磨だったが、ふと異変に気づいた。
いつのまにかページをめくる音がやんでいる。いつもなら読み終わるとすぐに意見を出してくれるのだが───
何かつまらないミスでもやっちまったんだろうか……?

「……えっと、妹さん?」

恐る恐る横を向いた播磨が見たものは───原稿を持ったまま、静かに寝息を立てている八雲の姿だった。

「な!? か、完全熟睡!? ま…まさか……このマンガ、寝るほどつまらねえってコトなのか!?」

654 :Ritalin 202:04/08/05 02:52 ID:LdPcornU
自信作をまるごとスルーされた衝撃に、播磨は完膚なきまでに打ちのめされた。
なんだ?ナニがいけなかったんだ?徹夜で生み出したギャグがことごとく滑るなんてあり
えねえいやしかし最初に見てもらったときもやっぱり自信のあったぺーじがかんぜんスル
ーされたしだんこうしゃのたんとうにはダメだしされたしやっぱりおれみてえなはんぱもの

「────っ!いやちょっと待て!」

無限ループに落ちかけた意識を引き戻したのは、八雲が腰を下ろしている自分のガクランだった。

「そういえば今日の妹さんは調子悪そうだったじゃねえか!
 大丈夫なんて言ってたが、それは俺に気をつかって……くっ、すまねえ妹さん!」

またしても自分の中で事態を都合よく完結させる播磨。
もっとも、彼は八雲の癖───『いつでもどこでも寝てしまう』癖など知る由もなかった。

「そうと判ればこうしちゃいられねえ。妹さん!起きてくれ!保健室に行くぞ!」

播磨は八雲の肩をゆすった。が、起きる気配は全くない。
仕方なしに、頬を軽く叩いてみる。やはり反応はなく、八雲の寝息は規則正しいままだった。

「参ったな……こうなりゃ抱えていくしかねえか。妹さん、ちっとガマンしててくれよ」

八雲の肩と膝を抱え、抱き上げようとした、その時。

「!?」

視界が180度回転した。かつて想い人に投げられた時のような、宙に浮く感覚。
実戦で鍛えた反射神経が、腕に後頭部を庇わせる動作を命じたが───
右腕は手首を抑えられ、左腕は奥襟を取った相手の腕に邪魔された。
播磨は瞬間的に顎を引き───ほぼ同時に背中が床に叩きつけられた。衝撃で瞬時、呼吸が止まる。

「な……なァにィィィ!?」

655 :Ritalin 202:04/08/05 02:59 ID:LdPcornU
まさに一瞬だった。抱き上げようとした次の瞬間、播磨は八雲の袈裟固めで完璧に押さえ込まれていた。

「い…妹さん、コレは一体どういう……って寝てるよオイ!」

八雲は先ほどと全く様子が変わることなく、静かに寝息を立てていた。
言うまでもなく彼は八雲のもうひとつの癖───『寝てる間に近寄った者を投げ飛ばす』癖など知る由もなかった。

「と、とにかくこの体勢を何とかしねえと……ム、ムネが……ってあれ?……外れねえ……」

寝技が完璧にきまってしまえば、脱出は極めて困難になる。おまけに八雲の両腕からは何故か力が抜けていなかった。
目と鼻の先にある顔は実に安らかな寝顔であるのに。そう、文字通り目と鼻のすぐ近くに…!?

「う、うわっ!やべえ!いっ妹さん、起きてくれーっ!」
「う……んん……」

播磨は自由になる左腕で八雲の上着を掴み、何とか顔を離そうとした。
が、上着がずれて肩口まで脱げた状態になってしまい、八雲の首が下に少し傾いた。
吐息が頬に直接かかり、播磨の唇のすぐ横には八雲の小さな唇が───

「そっそれはマズイ!いくらなんでもマズイ!こうなったらムリヤリにでも外し───!?」

656 :Ritalin 202:04/08/05 03:01 ID:LdPcornU
ひたすら暴れる播磨の耳に、その音は唐突に飛び込んできた。
ドアの向こうから響くのは、複数人と思しき足音と、聞き覚えのある声また声。

「……八雲君が屋上にいるというのは本当かね?」
「ええ、用事があるからってお昼を早めに切り上げてましたから」
「ホント懲りねえ色ボケだよ、まったく」
「そろそろ1-Dも花井禁止にすべきかしら…」
「英理ちゃんも八雲に何か用事?」
「私はヒゲに話があるのよ……って何よその笑い!」

播磨の脳はかつてないほどのスピードで回転し、現在の状況を正確に把握した。

床に敷かれたガクラン。
その上で折り重なる、着衣の乱れた二人の男女。
男の腕は女の背中に回され、女の腕は男の首に巻きついている。
互いの顔と顔はくっつきそうなほど接近して……

自分の顔から血の気が引いていく音を、播磨は確かに耳にした。        

ガゴン

金属製の重い扉がゆっくりと開く。
秋のやわらかい日差しが天満たちの目を一瞬眩ませた後、皆の視界に映ったものは───

(了)

657 :Classical名無しさん:04/08/05 03:05 ID:LdPcornU
以上です。最近本誌での播磨があまりに悲惨なので、
播磨救済シリーズと銘打って書き始めたのですが……何か本編と同じようなノリに。

658 :Classical名無しさん:04/08/05 03:11 ID:Ur5yrgpw
一番最初の行

>「……とゆーワケで、コレは新作の下書きなんだ。毎度悪いがよろしく頼む!」

"下書き"が"下着"に見えた OTZ
播磨デザインの下着を試着するヤクモン('A`)マンセー

ところ投げはわかるとしても寝技に持ち込むとはw
ヤクモンなかなかやるな

659 :Classical名無しさん:04/08/05 07:04 ID:RFXPsMDw
本編でありそうな展開GJ!

660 :Classical名無しさん:04/08/05 09:37 ID:X.lI2CdI
>>657
(*´Д`)GJハァハァ

起きた時の八雲の反応が見たいw

661 :Classical名無しさん:04/08/05 09:39 ID:PLcor/jo
床がコンクリのときの柔道は最凶ですよ。
播磨vs天満のときは畳、花井vs八雲のときは土
だったから、これは一番痛かっただろうなw
と言って見る。
しかし、お姉さんのときと同じく見た目には八雲から抱きついている
のがせめてもの救いか・・・。てか、毎度播磨は受けなんだな。
面白かったです。GJ!

662 :Classical名無しさん:04/08/05 10:53 ID:6sGlLixk
>>656沢近の名前が違うな正しくは愛理だ

663 :Classical名無しさん:04/08/05 12:06 ID:FwDYcPAg
八雲の寝技って……
ヤヴァイ、はなぢが出てきますた
グッジョブ!

664 :Classical名無しさん:04/08/05 13:00 ID:Wa45xBg6
その後が非常に気になる!
良い作品でした!GJ!

665 :午後の抹茶:04/08/05 15:12 ID:BkR2NNmE
こんにちは。午後の抹茶です。
予告していた祭りSS天満編、投下しようと思います。
なおこのSSは「夏祭りの夜に -a beginning- 」>642-646の
続編になっていますのでそちらもあわせてご覧下さい。
分校のスクランお絵描き掲示板のNo.2398 暑中見舞申上げ候 』で
インスピレーションを与えてくださった茶々木涙氏に重ねてお礼申し上げます。

666 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:13 ID:BkR2NNmE
 矢神神社、夏祭り。花火大会の後のこの小さな祭りは地元の人々の
ささやかな潤いの場として年々賑わいをみせていた。子供は親と、
恋人は恋人と、共に出かけさざめく。そして、祭りの夜に祈るのだ。
 いつまでも、一緒にいられますように、と――。

   【夏祭りの夜に -tenma side-】

「たこ焼き、焼きそば、今川焼き、いか焼き、あんず飴、やきもろこし〜」
「ってほんと、よくそんなに胃袋に入るわね」
 生まれて初めてあんず飴を食べるという難題をクリアし終えたばかり
の沢近愛理は、りんご飴を舐めながらけったいな歌を歌う塚本天満に
つっこみをいれた。もちろん当の天満は柳に風だ。天満の妹、
塚本八雲は八雲で姉がおろして2年目の浴衣に染みを作りはしないか
はらはらしながら見守っていた。天満の浴衣は彼女が知っている
だけで4枚目だ。そのほとんどは破る、染みを作るなど姉の粗相に
よる失態で浴衣としての役目を終えていた。高野晶は涼しい顔で
かき氷を食べている。サラ・アディマエスはとある事情により焼きそばの
ところでそうそうにリタイアしていた。
「ね〜、愛理ちゃん。次はどこへいく?」
「お腹もふくらんだし、境内にむかってみたいかな…」
「じゃ、いきましょうか…」
いつもは長い境内の階段も祭りの夜ともなれば足が軽い。4人は
裾捌きも鮮やかに階段を上っていった。

667 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:15 ID:BkR2NNmE
 矢神神社、境内。いつもは深閑としたこの境内も夏のこの日ばかりはと
賑わっている。狛犬には子供が登り、屋台では恋人たちが興にはしゃぐ。
そんな光景が矢神神社をいつもとは違う景色に見せていた。
「なにから回ろうかな〜。ね、八雲」
「う、うん。そうだね…」
「金魚すくいに亀すくい、ヨーヨーつり、くじ引き、輪投げに射的…あれは?」
と、晶が指を指した方向には『怪奇!へび女』の文字もおどろおどろ
しい見せ物小屋の姿が。3人は一様にぶんぶんぶん、と首を振る。
そう、好きなのに…とつぶやく晶。そこへ
「やあ、塚本君たちじゃないかね?」
と聞き慣れた声が話しかけてきた。

668 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:16 ID:BkR2NNmE
「あ、刑部先生…」
「笹倉先生もいらしていたんですか?」
 そこには景品でいっぱいになった紙袋を抱えた刑部絃子と大きな
ピンクのビニール人形を抱えた笹倉葉子の姿があった。
「うわ〜、笹倉先生大きな人形ですね〜」
「うふふ、くじ引きで当たったのよ」
「運がお強いんですね…」
「刑部先生、この景品の山はどうされたんですか?」
「あそこの射的でとった。あそこは穴場だぞ。とりやすい」
「部長、後で行こうと考えているでしょう…?」
「…わかる?」
 夏休みという長期休暇であわなかった者同士。加えて祭りという
環境。話も弾む。
「で、君たちはどこへいこうとしていたんだ?」
「えっと、決まっていなくって…」
「なら、あそこはどうだ?」
と絃子の指を指した先には『恐怖!お化け屋敷』の文字が。
くるっと後ろを振り向く天満。ひくっとひきつる愛理。心持ち眉毛の
下がる八雲。あくまで無表情の晶。
「大丈夫よ、そんなに怖くないから」
「そうそう、私たちも行ったし。それにあそこなら…ただだぞ?」

669 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:15 ID:BkR2NNmE
「…本当ですか?」
 ここへきて初めて目の色を変える晶。心持ち生き生きとしている。
「本当だ。受付のミイラ男に『刑部絃子より伝言。この4人は君の
つけにして入れてやりたまえ』と言ってみたまえ。入れるから」
「行きましょう」
「ええっ、ほんとうにいくのー!」
行く気まんまんの晶とすでに半泣きの天満。そこへ
「ねぇ、おばけ屋敷って…そんなに怖いの?」
と愛理がいささかまぬけなことを聞いてきた。
「愛理ちゃん、知らないの?お化け屋敷はね、すごーくすごーく
怖いところなんだよー!」
「し、失礼ね、私だって知っているわよ!ただ、日本のお化け屋敷には
入ったことがないだけで…」
「先輩、姉さんの言っていることは多少オーバーですから…」
ムキになる愛理とフォローにならないフォローをする八雲。それを
見つめてくすくすと笑う絃子と葉子。
「ま、行っても行かなくてもいいが楽しめることだけは確実だと思うぞ?」
「それじゃ、皆さんまた秋にね」
そういって二人は祭りの雑踏に消えていった。そして残された四人は
「い、行くの…?」
「行くわよ!」
「八雲も行くわよね?」
「は、はい…」
と、結局行くことになった。

670 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:16 ID:BkR2NNmE
 決戦の地、お化け屋敷前。という風情の美女四人組。が、楽し
そうなのは一人だけ。あとは三者三様に浮かない顔をしている。
「あら、愛理…いまさらおじけづいた?」
「そ、そんなわけないでしょ!」
「姉さん、そんなに怖くないから…」
「そんなことないよー、ちっちゃいとき入ったときすっごく怖かったもん!」
どうやら天満は小さかったときの体験が多少トラウマになっているようだ。
だが受付にいるのは…やたら体格のいいミイラ男。
「なんかあの人怖いよ〜。そう思わない、愛理ちゃん?」
「こ、怖いと思うから怖いのよ!ほら、天満行きなさいよ!」
「え〜、私が行くの〜!」
「お化け屋敷はすでに始まっている…」
と晶はあくまでマイペース。
おそるおそる受付に近づく天満。なるべくミイラ男を見ないようにしながら
絃子にいわれた台詞を思い出す。
「え、えーっと…『刑部先生より伝言。私たちを貴方のこねで入れてください』!」
するとミイラ男は無言でこくっと頷き、入り口のカーテンを開けた。
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、入るわよ」
「れっつ、ごー」

671 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:18 ID:BkR2NNmE
 お化け屋敷内部。そこは未知なる領域。何者かが現れても
おかしくない魔界。だが迷路になったその空間にはいまだなにも
現れていなかった。
「なにもあらわれないね…」
「なーんだ、拍子抜け」
「これなら怖くないですね…」
「油断は禁物…」
ほっと安堵する三人。ただ一人晶だけはあくまでも冷静だった。
「だいたいこういうのって恋人同士で入るものじゃない?女四人で
入ってなにが楽しいんだか…」
「私は結構楽しいです…」
「えー、そうだなー。でも私も烏丸君と入れたらもっと楽しいかも…」
暗がりの中で照れ笑いする天満。すると突然
『ドゴンッ』
となにかを殴ったような音が聞こえてきた。

672 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:19 ID:BkR2NNmE
「え…?」
「なに、いまの」
「き、気のせいよ、気のせい」
が、立て続けに
『ゴスッ』『バキィッ』『ガスッ』
という音が続けざまに聞こえ
てくるにつれ、、四人の(正確には三人の)恐怖は徐々にふくれあがっていった。
「な、なによ、あれ…」
「なんでしょう…」
「だんだん音がちがづいでぐるよ〜」
「いや、あれはたぶん恐らく…」
「恐らくって、なに!」
「いわないで〜、あぎらぢゃ〜ん」
「姉さん、しっかり…」
『ドバヴギャァー!』
「「キャー!」」
カシャッ。閃く閃光。その中には朦朧とした姿の男がうかび上がった。
『や、や〜め〜ろ〜』
「「キャー、キャー、キャー!!!」」
カシャッ、カシャッ。再び閃く閃光。
「いやー!胸さ〜わ〜ら〜れ〜た〜!」
ばりばりばりっ!相手の顔面をここぞとばかりに引っ掻く天満。
「ね、姉さんしっかり…」
「キャー、キャー、キャー!!!」
壊れた機械のように叫び続ける愛理。
「もう嫌だ、出る〜!」
「あっ、姉さん!」
一人脱兎のごとく駆け出す天満。そしてお化け屋敷にはパニくる
愛理、愛理にしがみつかれて戸惑う八雲、そして晶の三人が残された。

673 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:20 ID:BkR2NNmE
「はぁはぁはぁ…。どうしよう…、勢いで階段駆け下りちゃったよぅ…。
でも戻ったらお化け屋敷が目に入るし…ううっ」
 化け屋敷での恐怖から三人とはぐれてしまった天満。
 境内に戻れば見つけてもらえる可能性も高くなるし、なによりお化け屋敷の
前まで戻れば三人が天満を待っていることもあり得るのだが、あれだけ
怖い思いをした後とあってか目に入る範囲ですら近づきたくないらしい。
「しかたない、八雲に電話してむかえに…って携帯落としてるー!
はぁっ…。なんだか踏んだり蹴ったりだよ…」
 肩を落としてため息をつく。人間ついてないときはとことんついて
いないものであるが、それにしても今夜の天満は報われていなかった。
「どうしようかなぁ、この後…ってあれ?あの人だかりなんだろう?」
 彼女のピコピコ髪がぴょこぴょこと動く。参道の真ん中あたり、町内会の本部の隣にその人だかりはできていた。天満は持ち前の
小さな体を生かしてすいすいと人だかりの前に出る。
「はいはい、ちょっとごめんなさいよっと…って、あー!烏丸君!」
「あ、塚本さん…」
そこには『二条丈似顔絵会』と書かれたのぼりと、少女漫画風から
写実風、浮世絵風から北○の拳風まで様々な似顔絵に囲まれた
烏丸大路の姿があった。


674 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:21 ID:BkR2NNmE
「烏丸君、なにしているの…?」
「似顔絵会…。町内会の人に頼まれて先着20名に描くことになった…」
 話しつつも烏丸はシャッ、シャッと目の前の相手の特徴を捉え、
それを線にする動きをやめることがない。だがちょうど一人描き
あがったようだ。絵を目の前の青年に手渡す烏丸。
「塚本さん、あと一人で描き終わるからちょっと待ってて」
「うん…」
 最後に描かれるのは10歳ほどの髪の長い少女だった。夏なのに
白の長袖のワンピースを着て、とても不思議な瞳の色をしていた。
二人はなにか会話をしている。でも天満は二人の会話が耳に
入らないほど夢中になって烏丸を見つめていた。
(烏丸君、きれい…。烏丸君って夜が似合うんだな。美術の時間は
見つめられるのが恥ずかしくて見つめることなんてできなかったから
嬉しい…。そういえば、私夜に烏丸君と会うの初めてだ…。あーん、
私の浴衣変じゃないかなー。ちょっと着崩れているかも…。こんな
ことなら八雲の言うとおりにして、踊ったりするんじゃなかったよー…)
「…かもとさん、塚本さん。終わったよ…」
「は、はいっ!」


675 :【夏祭りの夜に -tenma side-】:04/08/05 15:23 ID:BkR2NNmE
 目を上げると烏丸がそこに立って、ただ立っているだけなのに
天満は心がときめいた。
「で、どうしたの?お祭りなのに一人でいるなんて…」
「え、えっとね、妹や愛理ちゃんたちとはぐれちゃって、
携帯も落としちゃって連絡がつかなくて途方にくれてたの…」
「そう…。なら、一緒に探してあげようか?この人混みの中で女の子が
一人で出歩くのは危ない…」
「えっ…ほんとに?」
「うん…。僕のお店はもう終わったから」
と振り返る烏丸。天満が肩越しにお店のほうを覗くと、町内会の
人たちの手によってすでに片づけが始められていた。
「じゃ、じゃあオネガイシマス」
どことなく緊張しつつぺこっと会釈する天満。なぜか口調まで不自然に
なってしまう。
「じゃあ、手を貸して」
右手を差し出す烏丸と意味がわからず首をかしげる天満。
「またはぐれるといけない…」
「………!!!」
天満がその意味に気がつくのと顔が火を噴いたように赤くなるのが
同時だった。
「どうしたの?」
(ごめん、八雲、愛理ちゃん、晶ちゃん。今日は私の人生で最良の日だ…)
差し出された右手に震えていることを気取られないように左手を
載せると烏丸の暖かい指にそっと包み込まれる感触がした。
(この時間が、いつまでもいつまでも続きますように…)
天満は心の内で星に祈ると、山吹色の浴衣の袖を翻して烏丸と歩き始めた。

676 :午後の抹茶:04/08/05 15:30 ID:BkR2NNmE
以上です。さて私の天満に萌えられるという人はどれだけいるのかっ!
それ以前に天満SSというのは需要があるのかぁっー!
なんだか踏み絵を踏んでいる気分です。
烏丸は難しいし、天満は動きすぎるし、女の子4人+女性2人の
会話に至っては死ぬかと思いました。
SS通算3作目なのにもう死にそうになっている自分っていったい…。
SS作家さんってほんとすごいよ…。気軽に書き始めるんじゃなかった…。
とりあえず美琴編、晶編が書けるまで生き残りたいと思います。

677 :Classical名無しさん:04/08/05 15:45 ID:6sGlLixk
>>676まあまあ  天満はもともと範疇外なので萌えれない

678 :Classical名無しさん:04/08/05 16:20 ID:2eCujtKI
天満ルートはそこで終わってもまあ良いとして、
お化け屋敷残留組のその後と、サラの事情とやらが知りたいな。

679 :Classical名無しさん:04/08/05 20:30 ID:ZCGTAP1c
やっぱミイラ男はあの男だろ?

680 :Classical名無しさん:04/08/05 20:54 ID:qojWfj5U
連載なんだよな、じゃあストーリーの感想はまた今度で…。

烏丸の出るSSひさびさに見ました、
でも播磨が出ないと寂しいですね。
続きもがんばってください。

681 :Classical名無しさん:04/08/05 21:16 ID:T748BThI
SS2作目投下します。
怪談物書いたつもりですがあんまり怖くないかもしれないです

682 :IF肝試し:04/08/05 21:17 ID:T748BThI
肝試しの時間。それぞれペアを組み廃校の前に集まった面々
「しかしよくこんなとこ見つけたな」
「うん、昼に八雲探しに行ったとき見かけて覘いてみたんだ。肝試しにピッタリだと
思ってね」
「天満にしてはイイチョイスね」
「ひどーい」
などとワイワイ話しをしていた。今鳥などはコワーイなどと言って美琴に抱きつこうとし肘を喰らっている。
八雲くーんと恨めしそうに呟く花井をよそに一人思案顔の晶
「どうかしたんですか? 高野先輩」
「うーん。何か引っ掛る」
「晶でもこうゆうのは苦手なのね」
「いや、まー嫌な感じはするけど、何かを思い出せないだけ。でも思い出せない位だから大したことじゃ
無いだろうけど」
「んじゃそろそろルール説明するね。って言っても口の字型の校舎を右回りに回ってここに戻って来るだけなんだけど。
それじゃー1組目行ってみよー」
「沢近先輩震えてません?」
「そ、そんなわけないでしょ! あなたこそ大丈夫でしょうね?」
沢近×八雲ペアが出発しその他の面々もあとに続いた。残ったのは播磨×天満ペア
「さて、播磨君勝負の時よ! 私たちのルールは先に叫び声を上げた方が負けよ! わかった?」
「オーケーだ。天……塚本も怖くなったら遠慮せずに俺に頼ってくれ」
「むぅーバカにしてー」
「いや、あの、そんなつもりじゃ……ってか雲行き変わってきたな」
 今まで闇を裂いていた月の光は漂う暗雲に隠れていた。
「こりゃひと雨くるかもな」
「えー、んじゃ急いで行こうか」
「おう」
 勝負なのにとことん軽いノリで2人は廃校に入った。


683 :IF肝試し:04/08/05 21:18 ID:T748BThI
――こりゃホントに真っ暗だな。しかもグラサンのせいで余計に視界が悪いぜ
と考えていると後ろの方でドターンと派手に天満がコケた。
慌てて駆け寄ろうとした播磨だったが
「――こっちよ……」
先ほどまで後ろに居たはずの天満が播磨のすぐ隣にいて右手を手を引いた。
「あれ、塚本。いつの間に……」
疑問も一瞬持ったが天満ちゃんと手を繋いだ! という快挙に気付いてニヘラ顔で引かれるまま廊下を右に進んでいった。


684 :IF肝試し:04/08/05 21:19 ID:T748BThI
痛た、スノコに躓いちゃった。懐中電灯点けないとこ危ないねこりゃ」
返事はない。パッと懐中電灯を点けて周囲を見回すもそこに播磨の姿はなかった。
「逸れちゃった? いや、そういえば今は勝負の真っ最中。脅かそうとしてるんだな播磨君。そうはいかないよ!」
叫ぶも全く反応がない。外はとうとう雨が降り出したのか、窓ガラスに雨粒の当たる音だけが響く。
――うぅ、怖い。考えてみたら私ってこうゆうの凄く苦手だった。でも八雲の為にお姉ちゃんがんばるから……
「おい、塚本」
「うひゃぅ!」
「うお、なんだよいきなり」
振り返ると美琴を初め先に出発したメンバーが揃い踏みだった。
「なんだ、美琴ちゃんか。ビックリさせないでよ」
少し涙目になりながらもホッとした表情を浮べる
「そりゃこっちの台詞だ」
「あれ? なんで皆左の廊下から帰ってきてるの?」
そう。彼女らは皆左の廊下から帰ってきた。右回りで回るのだから右の廊下から帰ってくるはずである。
「あぁ、少し進んだら行き止まり、とゆうか立ち入り禁止ってテープが貼ってあって注意書きに
『この先崩落の危険』ってなことが書いてあって、足元も危ないし雨も降り始めたから引き返してきた」
「えー、そうだったの。ごめんね。ちゃんと調べてなかったよ」
「気にしなくていいわよ。それより帰りをどうするかよね。しばらく雨宿りでもしていく?」
「そだねー、濡れるのヤだし。でもなんかちっとも雨上がりそうにないんだけど……」
今鳥が言った次の瞬間雷が轟いた。雨脚は強くなるばかり。


685 :IF肝試し:04/08/05 21:20 ID:T748BThI
「あ、思い出した」
「ん? 何を? 晶ちゃん」
「今の雷で思い出したの。ここのキャンプ場をネットで調べてるとき、掲示板にこの廃校のことが書いてあった」
「へー、ここ隠れスポットなんだな。でなんて書いてあったんだ?」
「話ていいの?」
「む、もったいぶるとこを見ると怪談か? 丁度いいじゃないか。肝試しもあまり盛り上がらないまま終わってしまったし、
雨が止むまでの暇つぶしにもなるだろう」
「そう……では」
コホンと軽く咳払いをし、花井から懐中電灯をぶん取って顔の下から光を当てながら晶は語りだした。
「掲示板にはこう書いてあったわ」


686 :IF肝試し:04/08/05 21:20 ID:T748BThI
ある日私たちみたいにキャンプに来た若いカップルがこの廃校を訪れたそうよ。もともと2人には地元で
子供のころからこの廃校で友達とよく遊んでたんだって。2人にとって思い出の場所だったんでしょうね。
でも折角キャンプに来たのにずっと雨続きでね、帰りの日せめて思い出を振り返るのにって雨の中この廃校に2人はやってきた。
恋人よろしく仲良く手を繋ぎながら、よくこの教室で遊んだ、この教室は俺のだった、とか子供の時のことを思い出しながら
左回りに廊下を歩いていった。
そして運命の部屋の前に来たの。そこは体育用具置き。子供のころどうしても扉が重くて開けられなかった場所。
その部屋は非常ドアのとこに無理やり後付された職員手作りの部屋だったそうよ。非常ドアだからとても重かったけど
大人になった今になってやっと開けられる場所。
中に入ってみると特に変わったものは無かった。体育用具がほどんど残されていた以外は。トビ箱、ハードル、平均台。
その他もろもろの授業で使うような道具。子供の時にはとても謎めいた部屋だったけど大したことなかった。って思ってると
グラリと部屋が揺れた。この廃校裏手はガケになっててその部屋はガケの直ぐ手前に作ってあったの。長雨で地盤が緩んでたのと
合わせて2人の体重で崩れかけてきたんでしょう。男の方は直ぐに部屋から出たけど、女の方は用具に引っ掛って用具の下敷きに
なってしまった。腕を伸ばしてもドアから少し出る位。男は慌てて女の腕を引っ張ったけど抜ける様子はない。お互い手を握り合って
なんとか抜け出そうとしたけど、部屋はどんどん傾いていく。もう駄目だと男は手を離そうとしたけど女が「助けて」と手を離さない。
このままでは2人ともガケ崩れに巻き込まれる。そう思った男は……


687 :IF肝試し:04/08/05 21:21 ID:T748BThI
「――どうしたと思う?」
「……」
「とても重い非常ドアをね。彼女の腕にぶつけて外そうとしたのよ。苦痛の叫びをあげながらそれでも彼女は手を離さなかった。
彼はさらにドアを叩きつけた。死にたくない一心で夢中になってね。何度も何度も。彼女の叫びを聞きながら。
やがてブチッて彼女の腕が千切れた。その瞬間部屋は彼女と共に落ちていった。校舎には息を切らす男と
彼の右腕をまだ握っている彼女の左手だけが残ったの。
そのあと彼はね、彼女の左手をなんとか毟り取って捨てて、事故として彼女がガケ下に落ちたって連絡したの。
死体は直ぐに見つかったけど、どこを捜しても彼女の左手だけは見つからなかったんだって」
――流石天満ちゃん。この俺もちっぴりブルっちまうほどのストーリーテラーだぜ。それにしても天満ちゃんの手冷たいな。
顔はよく見えないがきっと自分も怖がってるんだな。しかしなんで自分まで怖がってまでこんな話を……
そうか! わかったぜ天満ちゃん。俺は絶対に君の手を……
「おっと」
「どうしたの?」
「いや、なんでもねー。ちょっと蜘蛛の巣に引っ掛ったんだ」
「さぁ、皆待ってるわ。早くいきましょう」
「おう」
播磨は蜘蛛の巣を……『立ち入り禁止』と書かれたテープを払い天満に手を引かれてさらに漆黒の闇の中を歩く。
廊下の埃を被った大鏡の傍を通った時、雷鳴が轟き2人の姿を鏡に映した。そこには播磨とその手を握る左手だけが映されている事に
彼は気付かなかった。


688 :IF肝試し:04/08/05 21:22 ID:T748BThI
外は大雨となり木が叫び声をあげている。6人は水を打ったように静まり返り晶の言葉を待った。
「その後その男は二度とこのキャンプ場に来ることはなかったそうよ。それからとゆうものこんな雨の日にこの廃校を訪れた男は好きな
女の子と何故か出会うんだって。その子に手を引かれて付いていくと例の非常ドアのとこまで来る。道すがら女の子にその話を聞いた男は
慌てて逃げようとするんだけど、どんどん引き込まれていく。このままではってとこで話の通り女の子の腕に非常ドアにぶつけ様とすると
……」
パチンッと晶は指を鳴らして
「THE END。留め金が壊れてて勢い余ってガケに真っ逆さま。実際ガケの下にある川の下流に今までに何人か死体が上がってるそうよ」
これでおしまいと晶は灯りを消した。
「あれ? 皆そんなに怖かった?」と尋ねる。
確かに塚本姉妹は互いに手を取って震えてるし、沢近は顔が引き吊り、美琴は頭抱えて唸って、今鳥は顔面蒼白、花井だけは無表情だが
膝が笑いまくってる。
「話は確かに怖かったわ。だけど晶。何も感じないの?」
「なにが……」
と言いかけて気付いた。夏だとゆうのに凍えそうに寒い。そのくせ手はビッシリ汗を掻いているのだ。
ゾクリとしたがこんな物は気の迷いの所為だと思った。
「濡れてもいいから、早くこんなとこから出ましょ。なんか気分が悪い」
「そ、そうだな。なんつーか気持ち悪くなっちまったよ」
「男性陣に意義はない」
「あ、でも播磨先輩は?」
八雲に言われ天満が
「あ……、入り口で逸れちゃった……」
近くで雷が落ちた


689 :IF肝試し:04/08/05 21:22 ID:T748BThI
 延々と闇の中を歩く播磨。闇は廊下が永遠に続いてるかのように見せ、雨は窓を狂ったように叩き、
風は稲妻を呼び木々を泣かす。そんな中播磨は
――天満ちゃんよく真っ暗な中スイスイ歩けるなー。目がいいんだな。
と感心していた。
クスッと天満が笑った。
「ん? なんか俺可笑しなことした?」
「なんでもないわ。さぁ着いた。皆あのドアの向こうで待ってるよ」
直ぐに無表情に戻り足を止めた。
 ドアは分厚い金属製でやや下の方に黒い何かがこびり付いている。
その黒い部分を見ていく内何故か赤く見てて来る。


690 :IF肝試し:04/08/05 21:23 ID:T748BThI
「おー、やっと着いたか。さぁサッサと行こうぜ」
今度は播磨が先行しようとして慌てて天満は言った。
「話聞いてた?」
「おう、もちろん」
「そ、そう。じゃあいきましょう」
 天満は播磨の手を引っ張り先に中に入った。続いて入ろうとした播磨が見たものは何も無い。扉の向こうは
直ぐにガケになっていた。気付いた瞬間天満は谷に吸い込まれそうになる。
「うお!? 塚本!」
慌てて引っ張り上げようとするが天満とは思えないほど重い。逆に播磨の体が引き摺られていく。
「うおー! 塚本! 絶対引き上げてやるからな!」
「あなた、本当に話聞いてたの?」
「もちろんだ! 君の気持ちは痛いほど伝わってきたぜ! こんな事態になっても絶対に手を離さないでねってことだろ!?」
「……」
そうこうしている間にもさらに播磨の体は外に引き摺られていく。
――クソ、なんで上がらねぇ! もっと体鍛えとくべきだったか。俺はどうなってもいいがなんとしても天満ちゃんだけは!
「あなた死ぬのが怖くないの?」
「怖いさ。だが君が居ない世界の方がもっと恐いんだ! 天満と死ねるならむしろ本望だ!」
しかし播磨ももう駄目だと思った時、ふと引き込まれる力が無くなった。唐突に雨が止み雲の間から月がでる。
見ると天満が泣いている。いや、天満ではなく知らない女だった。
「彼にも……彼にもそう言って欲しかった」
零れ落ちる涙が月の光で煌いている。
「そして本当は……こう、したかった」
彼女はふと手を離す。すると非常ドアも音も立てず彼女と共に谷の闇に消えた。

その後、捜しに来た天満たちが、呆然と佇む播磨に声をかけた。
振り返ると同時に今まで握っていた白骨が手から滑り落ちた。

おしまい


691 :Classical名無しさん:04/08/05 21:30 ID:T748BThI
相変わらず文章力がなくお目汚しすみません
と言うか別にスクランじゃなくても良かった気もしてきました
なんとか読んでいただけるためもう少しマシなのを書けるようにがんばります

692 :Classical名無しさん:04/08/05 21:39 ID:ox4cNqrw
GJ!
怖いかはともかく、理屈ぬきに面白いが
最後の播磨の言葉はちっと播磨じゃねぇと言いたい
播磨には心底馬鹿な発言のほうがかっこいい

693 :Classical名無しさん:04/08/05 22:03 ID:NCePL43w
面白かったです。
こういうのも私は好きですね。
私も最後の播磨の台詞が、それと改行も少し気になりました。
次回作に期待させてもらいます!!

694 :Classical名無しさん:04/08/05 22:53 ID:e0ROVpJQ
他の人も言ってるとおり「怖いさ。〜〜」の辺り台詞は気になったけど、行動としては播磨らしくていいです!
GJ!

しかし、本編でこんな展開があったら霊の子に憑かれたりしそうだな、播磨は・・・
そして、連れて帰ってみたところ沢近と弦子さんに… (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
怪談よりよっぽど怖そうだ

695 :Sign:04/08/06 00:18 ID:gra.6tTE
 ――夏休み最後の日。

「本当にどうもありがとうございました。感謝の言葉も……」
「いや、俺たちの方こそ黙ってて貰って」

 ぺこりと。お互いに頭を下げる。
 ――結局、腕だけになった少女の骨は彼女の両親に届けることにした。
 議論は結構分かれた。
 放り捨てて行こうというものもいたし、校舎の近くに埋めてしまえばいい
のでは、という案も出た。
 喧喧諤諤。
 最終的に、播磨が決めた。
「この女の子の、お父さんとお母さんに持って行ってやろうじゃねぇか」
 と。

 持っていた着替えに丁重に骨を包んだ播磨は、晶の手を借りて当時の新聞
記事を読み、そして彼女の両親と連絡を取った。

 ――白いワンピースの少女がいる。

 両親はとっくに諦めていた彼女の腕が出てきたことを喜び、その代わりに、
警察には彼らのことを黙っておいてくれた。
 播磨は少女の両親に「できれば線香を上げさせてもらいたい」と頼み、二人
は快諾した。
 そうして今、播磨は彼女の墓と向かい合っている。
 手を合わせ、目をつむり、彼女の冥福を祈っていた。
「さて、と……」
 少女の両親の車で送ろう、という誘いを固辞して播磨は墓地出口に停めて
いたバイクに乗る。
「あの」
 声をかけられた。

696 :Sign(2):04/08/06 00:28 ID:gra.6tTE
 ――白いワンピースの少女。
「何でぇ? ……じゃなくて、何か用ですか?」
 墓地から出るなり、言葉遣いがぞんざいなものになった自分を愚かしく
感じながら、播磨は応じた。
「いえ。……わたし、その、えっと……妹です」
「誰の?」
 無言で、少女は墓地を指差した。
「ああ」
 あの人の妹さんか。
「この度は……」
「いえ、ずっとむかしむかしのお話ですから」
 苦笑い。
「あー……いや、俺にとっちゃぁついこの間の話だからな」
「そうですか? ……そうですよね。あの、えっと……」
「ああ、播磨。播磨拳児」
「播磨さん、一つご質問があるんですけどよろしいですか?」
「何スか?」
「どうして――手を離さなかったんですか? 姉さんの」
「……いや、だって。その、俺がほ、惚れた女だと思ったから……かなあ」
「じゃあ、惚れてなかったら……手を離していたんですか? 例えば、
あなたと一緒にいた、女の子たちとかだったら」
「どうかな……」
 ワンピースの少女が、すそをぎゅっと掴む。
「その時になってみねぇと分からねぇけど、多分離さなかったと思うぞ」
「……ど、うして?」


697 :Sign(3):04/08/06 00:29 ID:gra.6tTE
「そういう事をする人間に、天満ちゃん――いや、こいつは俺が惚れてる
女の子の名前なんだけど――が好きになってくれるはずねぇからよ」
「……」
「だから、例え相手が別の女だろうが天王寺だろうが今鳥だろうが
手は離さなかった、と思うぜ。……ま、花井は別だな。アイツなら自力
で脱出できらぁ」
 そう言って播磨は笑った。
 少女も笑っていた。
「そっかぁ……播磨さん、すごいです」
「そうかぁ?」
「はい、その天満ちゃんって娘も絶対惚れちゃいます!」
 播磨の鼻の下がデレェと、だらしなく伸びた。
「それじゃわたし、そろそろいきますね」
「おー」
 バイクのキーを捻り、エンジンを吹かす。
「さようなら、播磨さん。……逢えて、良かった」
「おう。――腕、戻ってよかったな」
 最後の台詞に、慌てて少女は腕を抑えた。
 それとほとんど同時に、播磨はバイクを発進させる。
 一度だけミラーを覗いたが、もう既に少女の姿は煙のように消えていた。
「……よかったな」
 最後にそう呟いて、播磨は一層バイクを加速させた。
                                          ――了





すいません、>690さんのアフターストーリーを勝手に書いてみました。
個人的趣味で爽やかエンディングに。

698 :IF肝試し書いた者:04/08/06 00:41 ID:0M9HfNZ.
おぉ、私の話なんかに続き話書いてくださってありがとうございます
こんなスッキリした終わらせ方なんて思いつきもしませんでした
ともかく感謝です

699 :Classical名無しさん:04/08/06 01:50 ID:7R1qc0/A
ええ、話や
こういう雰囲気の怪談って俺は好きだな
お二方GJ

700 :Classical名無しさん:04/08/06 02:26 ID:6sS8Vu9E
>>690
怪談話いいね。もっと読んでみたいな。
ただ出来れば「世にも奇妙な物語」みたいに
後味の悪い話は止めて欲しいなー

701 :Classical名無しさん:04/08/06 04:34 ID:BHUs28vo
夏にぴったりな怪談グッジョブです

天満との勝負って、そんなんだったんだな、納得

702 :Classical名無しさん:04/08/06 11:48 ID:I0xHgXL.
良い話やなぁ…。
こういう話は好きよ。その後のアフターストーリーも、違和感が殆ど感じられないし…。
GJ!!

出来れば、女の子の手を引いてる時に、播磨が『海の男はよ』の唄を歌うシーンが、オレ個人では欲しかったな。

播磨「似たような事が前にもあったような…確か、マグロ漁船に乗ってて…ハッ!?
   そうだ、こんな時は歌うんだ!!」

『海の男はよ』を唄いながら、引っ張り上げようとする播磨…。
勿論爽やかな笑顔で。

…時系列が狂うのは承知の上なんだが。
こういうのはダメなのだろうか…。



703 :Classical名無しさん:04/08/06 12:13 ID:C63lvSs6
>>702
妄想はSSにして表現しる

704 :風光:04/08/06 15:11 ID:lsQKtqyQ
はじめまして。風光と言います。
早速ですがSS投下させてもらいます。
一応SSは今までいくつか書いてはいるのですがこういった場に書き込むのも
初めてであればスクランのSSを書くのも初めてでかなり不安です。
拙い文章だとは思いますがよろしく。
ちなみにタイトルは『Singin'in The Rain』です。

タイトルに『Singin'in The Rain』、邦訳『雨に唄えば』の名を冠した物語。
その名の通り雨の降ったある日のお話です。
まもなく開演致しますのでしばしの間、お付き合いくださいませ。

705 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:15 ID:lsQKtqyQ
――放課後
 ポツポツポツ……ザァァァー
「ちっ、降ってきたか」
 麻生広義はそう毒づくと雨宿りが出来る場所を探して走り出した。

            『Singin'in The Rain』

「やっぱ傘持って来るべきだったな」
 意外に最近の天気予報はよく当たるらしい。
 一応天気予報は確認してはいたのだが朝、雲一つない青空が広がっていたため
大丈夫だろうと傘を持たずに家を出、結果見事に降られてしまったのだ。
「たく、折り畳みぐらい持ってくべきだったな」
 そうは言っても後の祭り。
 麻生は少しでも早く雨風を凌げる場所を探して走り続けた。
 サアアーーッ
「おっ、あそこで良いか」
 適当な店の軒先を見つけ麻生は慌てて駆け込んだ。
「ふぅー、やばかったな」
 彼は呟きながら持っていたハンカチで軽く服についた雨を払った。
 あと少し雨に濡れていればぐしょ濡れになっていたことだろう。
「けど止むのか、これ」
 天を仰ぎ見ながら呟くが、空はどんよりと雨雲が広がっており
一向に止む気配がなかった。
「夕立だと良いんだが……いや、その考えは都合が良すぎるか」
 軽く溜め息をつきながら目線を落とすと髪を掻きむしり彼は呟いた。
「仕方ねぇ、そうすっか」
 ある程度待っても雨の勢いが弱まらなかったら走って帰ろう、
そう考えて麻生は再び深く息を吐いた。

706 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:19 ID:lsQKtqyQ
「どうぞ」
「あん?」
 その声に反応して顔を上げると目の前に傘が差し出されていた。
「お前か」
「はい、こんにちわ、麻生先輩」
 傘を差し出した人物は麻生の一年後輩でありバイト仲間のサラだった。
「先輩。傘、ないんですか?」
「ああ、見ての通りな。んでお前は何してんだ?」
 傘を指で差しながら麻生は訊ねた。
「見ての通り先輩を傘の中に入れているんですよ」
「んなの見れば分かる。俺が言いたいのは何でそんなことしてるのかってことだ」
 いきなり傘を差し出されて戸惑ったのか、麻生の口調はいつもより少しだけ強かった。
 けれどサラは気にした様子もなく質問に答えた。
「先輩が雨宿りをしていたからですよ。だから傘がないのかなって思って……」
 サラはにっこりと笑顔を浮かべながら軽く傘を掲げた。
「……それは何だ? ……もしかして入って行けって事か?」
 嫌な予感を覚えて麻生は訊ね返した。
「もしかしても何もそういうことですよ。傘がないなら一緒に帰りましょう」
 全く邪気のない笑顔でサラはそう提案した。
「断る」
 しかし麻生はその提案をナノ一秒で却下した。
「え〜、何でですか?」
 サラは信じられないと言った面持ちで質問した。

707 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:24 ID:lsQKtqyQ
「当たり前だろ。お前、男が女の傘に入れるか?」
「え〜、先輩もそう言うの気にするんですか?」
「当然だろ。そもそもお前こそ人に見られたら誤解されるぞ。迷惑だろ、そう言うの」
 自分が冷やかされるのは……まぁこの際無視しても
サラに対してあることないこと噂が飛び交うのは嫌だった。
「気にしませんよ、そんなこと」
 けれどサラはきっぱりとそう言い切った。
「気にしろ」
 麻生は呆れながら溜め息をついた。
「普通は気にしますけど先輩だから良いんですよ」
「……なんでだ?」
 その違いが麻生には分からなかった。
「むぅ〜、そう訊きますか?」
 何故かいきなりサラの機嫌が悪くなってしまった。
「なに急に怒ってんだよ」
 理由が分からなかった。
「知りませんっ」
 サラはソッポを向いたままそう答えるだけだった。
「……変な奴だなぁ」
 少しは性格が掴めてきたかと思っていたがやはり分からねぇ、
そんなことを考えながら麻生は軽く首を傾げた。

708 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:25 ID:lsQKtqyQ
「はぁー、もう良いです」
 何か諦めにも似た溜め息をついてサラは言葉を続けた。
「それで入らないんですか?」
 再度サラは訊ねて来た。
「入らねぇって言ってんだろ。どうせそのうち止むだろ」
「え? ………この雨、夜半過ぎまで降るって言ってましたよ」
「なっ、そうだったか?」
 チラリとしか天気予報は見ていなかったから自信はなかったがそんな事を言っていただろうか。
「ま、まぁ、良い。なら雨が弱まったら走って帰……」
「夜になればなるほど雨足は強くなるとも言ってましたよ」
「…………」
 サラの言葉に麻生は返す言葉を失ってしまった。

709 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:28 ID:lsQKtqyQ
 ザァァァーッ
 雨は強く降り続いている。
「で、入りませんか?」
 サラの三度目の誘いの言葉。麻生はその笑顔を見ながら溜め息をついて一言。
「……入らせてくれ」
 そう答えるしかなかった。
「はい。よろこんで」
 サラは今日一番の笑顔を浮かべて頷いた。
「それじゃあ、どうぞ」
 傘を麻生の上に差し出すサラ。どうやら自分で傘を持つつもりのようだ。
「たく、ほら貸せ」
 その行動を見て麻生は軽く溜め息をつくとひったくるようにサラから傘を奪った。

710 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:29 ID:lsQKtqyQ
「え?」
「俺が持つ。……つーかお前は俺より背が低いんだから無理すんな」
 ぶっきらぼうな言い方。
 けれどその言葉に秘められている優しさに気づいてサラは胸の奥が仄かに暖かくなるのを感じた。
「どうした?」
 少し惚けたような表情を浮かべたサラを心配に思ったのか、麻生は様子を訊ねた。
「あ、いえ、大丈夫です。なんでもないですから」
「……まぁ、それなら良いが。道端でいきなりボーっとすんじゃねぇぞ」
「大丈夫ですよ、先輩」
 軽くガッツポーズを取るサラ。その様子を見て麻生は溜め息をつきながら一言。
「ボーっとしてた人間が言っても説得力ねえよ」
 そう答えて歩き出してしまった。
「わわっ、待ってください」
 サラは慌てて追いつこうと走り出した。
「冗談だ」
 そう言って立ち止まると麻生はサラの頭上に傘を差してあげた。少しでも濡れないようにと。
「むぅ〜、最近先輩、少し意地が悪いです」
「そんなことないだろ」
「そんなことありますよぉ」
「気にすんな。ほら、早く行くぞ」
「はーい」
 そして麻生とサラは二人揃って歩き出した。

711 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:30 ID:lsQKtqyQ
「けどお前、何であんなとこ歩いてたんだ?」
「へっ? 何でってあそこ通学路ですから」
「え?」
 それは予想外の答えだった。
 いや、サラの通う道なんて知らなかったのだから予想外も何もないのだが
まさか自分と同じ道を通っているとは思わず麻生は少し驚いてしまった。
「ん? 何で驚くんですか?」
「あ、いや、なに。お前もこの道を通ってるんだなって思ってさ」
「そうですよ。いっつもこの道通ってるんですから」
「ふーん、知らなかったな」
 思えばサラと一緒に帰るなどバイトで夜遅くなったときだけでこうやって放課後に帰ることなど初めてのことだった。
「先輩もこの道を毎日利用しているんですか?」
「ん? ああ、そうだな。どっか寄り道しない限り大抵この道を利用してるな」
 とは言ってもあまりつるむのを好む性質ではないのでそれほど寄り道はしないが。
「なるほど……………あっ、じゃあ先輩」
「あん?」
「今度から一緒に帰りませんか?」
「はぁ?」
 何をいきなり言うのだろうか、こいつは。
 麻生は内心溜め息をつきたくなった。
「えー、何ですか、その反応は」
「当然だろう。何が悲しくてお前と一緒に帰らなくちゃならないんだ」
「良いじゃないですか。帰り道一緒なんですし」
「そりゃそうだが……お前部活は?」
 確かサラは茶道部に所属していたはずだ。
 知り合いが部長ってこともあるがサラのような外国の人間が茶道部などと言う
和風テイストの部活に入っている事に驚いて強く印象に残っていた。
「そんなの先輩が待っていてくれれば良いんですよ」
「馬鹿かお前は。そんなことしてやる義理はないだろうが」
 麻生は冷たく言い放った。
 ただの友人と、それも女と帰るために待ち合わせをするなどと言う発想を麻生は持ち合わせていなかった。

712 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:32 ID:lsQKtqyQ
「む〜、冷たいですよ。可愛い後輩の頼みなんですから聞いてくれても」
「聞く理由がねぇよ」
 にべもない返答。
 サラは少しばかり挫けそうになったがここまで来て止めるのは癪だった。
「じゃあせめてバイトの日だけでも一緒に帰りましょう」
「バイトの日?」
「はい。帰りは送ってくれるんですし行きも良いじゃないですか」
 サラとしては最初は冗談のつもりだったがあまりにも麻生の反応が冷たいため
そのうち意地でも了承させたくなっていた。
「あれは暗いからやってるだけで出勤時間の頃はまだ空は明るいだろうが」
「う〜、……はい。……まぁ、仕方ないですよね」
 それでも変わらぬ麻生の態度にサラは渋々頷いた。
 本当は少しでも一緒にいたかったのにな、そういう想いはあったが
サラは敢えてその気持ちは口にしなかった。
 言えば今の関係が壊れるんじゃないか、そんな恐れにも似た感情が胸にあったからだ。
「…………」
 目に見えて落ち込んでしまったサラの表情。
 少し悪かったかなという思いが麻生の胸の内を掠めた。
 ……それに。
「あはは……まぁ、元から冗談のつもりで聞いていたから良いんですけどね。けど先輩。
そんな風に冷たい態度ばっかり取っていたらそのうち女の子に嫌われちゃいますよ」
 落ち込んだ表情から一変、笑顔で忠告をするサラ。
 けれどその笑顔が無理をしているようなものに見えて
麻生は知らず知らずのうちに小さく舌打ちをしていた。

713 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:39 ID:lsQKtqyQ
「……別に女にどう思われようが気にしねえよ」
「もう、そんなこと言って……」
 少し困ったような笑顔。サラという少女はいつでも明るく振舞う。
(気に食わねぇ)
 そしてそう言うところを麻生は気に入ってもおり、また嫌いでもあった。
 いつもの心からの笑顔、それは良い。むしろもっと笑っていて欲しいくらいだ。けれど無理してでも笑うことはないと思っていた。
「はぁー、おいっ」
 だから彼は行動した。イラつく理由を取り除くために。
「え? なんですか?」
「……冬」
「え?」
「冬にでもなったらこの時間でも十分暗いよな」
「え、ええ……」
 サラは麻生の言いたいことが分からず曖昧に返事を返した。
「だからそん時にでもなったら一緒に帰ってやるよ」
「え?」
 一瞬サラは麻生が何を言っているのか分からなかった。つまり、それは……。
「冬になったら一緒に帰ってくれるってことですか?」
「ん? まぁな。まだ先だがそれでも良いってんなら一緒に帰ってやっても……」
「全然問題ないですっ」
 サラにしては珍しく大きな声だった。
「あっ……」
 そして自分の行動に驚いたのか、サラは頬を赤くして顔を伏せてしまった。
「じゃあ、決まりだ」
 麻生は気にした風もなくそう答えるとこれで話は終わりだとばかりに視線をサラから外した。
「はい。フフフ……」
 そして笑みが彼女の口を形作った。それは先ほどのような無理して作ったものではなく本当に心からの笑顔だった。
「なに笑ってんだか」
 その様子を横目で確認しながらもぶっきらぼうな口調で麻生は答えた。
 けれどそう答えはしたがその笑顔が見れて彼は内心嬉しかった。
 やっぱこいつはこうでなくちゃな、絶対に口にすることはないが彼は心の中でそう呟いた。

714 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:43 ID:lsQKtqyQ
 サァァァー
「フーンフフーン♪フフフフーン♪フフフフーフフーン♪」
 さっきからサラはご機嫌な様子で鼻歌を歌っている。
「なに浮かれてんだ? ガキじゃあるまいし」
 麻生は少し呆れた口調で訊ねた。
「フーフフフーン……え? もう、そんなの先輩と一緒に帰れるようになったからに決まってるじゃないですか」
「帰れるようにってまだ先の話だぞ」
 今はまだ秋。冬になるまではもう少し時間を必要としていた。
「でも約束してくれたじゃないですか。それだけで嬉しいんですよ」
「……変な奴だな」
 いまいち分からない。こんなことぐらいで何故それほど喜ぶのだろう。
「もう、乙女心が分かっていないですね」
 ビシッと人差し指を立てて注意するサラ。その仕草はやはり子供っぽい。
「はいはい。悪かったよ」
 いつも通り気のない返事。
 そんな麻生の態度にサラは溜め息をつきながら答えた。
「はぁ、もう良いです。……けど先輩。私が雨を楽しんでいたのって
そう言う理由だけじゃなくて元々雨が好きだったからなんですよ」
「雨が? ……ますます変な奴だな」
「えー、なんでですか?」
 頬を膨らませながら抗議するサラ。その様子に苦笑しながらも麻生は言葉を続けた。
「なんでって雨を好きになる理由が分からねぇからだよ。雨なんて鬱陶しいことこの上ないぞ」
 そう言ったのは麻生の正直な気持ちだった。
 歩けば靴が濡れるし傘も差さなくちゃならない。何より外に出る気がなくなるのが嫌だった。
 雨なんて好む奴の気が知れない、それが彼が長年持っている考えだった。

715 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:44 ID:lsQKtqyQ
「そんなことないですよ。例えば……ほら、傘にポツポツって当たる雨の音。この音を聞くだけでも楽しいじゃないですか」
「……そうか?」
 耳を澄ませて傘に当たる雨音を聞いてはみたがそんな感想は一片も湧かなかった。
「そうです。もう、先輩って情緒なさ過ぎですよ」
「情緒なのか?」
 いまいち違う気がしたがサラは強引に言い張った。
「そうなんです。それに傘を差して雨の中を歩くだけでもウキウキしませんか?」
 サラは笑顔のままだったが目に少しばかり力が入っていた。
「いや、全然」
 けれど麻生はそう言ってサラの問いを再びキッパリと否定した。
「う〜」
「たく、分かんねぇなぁ。ヤなとことかねえのか? 例えば雨で靴が濡れたら嫌だろ?」
 麻生は少なくとも嫌だった。
「そんなことないですよ。水たまりとか靴でピチャピチャって踏むの楽しいですし……」
「やっぱガキか」
 その思考回路は麻生には理解不能だった。
「あ〜、先輩それは非道いですよ」
「非道くねえよ。事実を言ったまでだ」
 雨が降って喜ぶ奴は根暗な奴か子供、その認識は間違っていなかったようだ。
「むぅ〜」
 サラは頬を膨らませながら上目遣いに麻生を睨んだ。
 けれど麻生はそれを気にした風もなく軽く肩をすくめ歩き続けた。
「Ladyに対してそういう言い方はないですよ」
「言っとけ」
 なおも言い募るサラを適当にいなしながら歩き続ける麻生。
 結局それから数分間サラは文句を言い続けたが麻生はことごとくそれらを躱し、
最後にはもう良いですと言うサラの言葉と共にこの話は打ち切られた。

716 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:46 ID:lsQKtqyQ
「さてと。なぁ、ここまで来れば家はすぐだしもう良いぞ」
 それまで比較的楽しくサラと会話をしていた麻生は突然そう話を切り出した。
「え? なんでですか?」
 突然のことに戸惑いながらもサラは訊ね返した。
「お前の家、向こう側だろ。俺の家はあそこの角を左に曲がるからさ」
 数十メートル先の角を指差しながら麻生は答えた。
「えー、良いですよ。そんなに手間じゃないですし」
 当然のようにサラはその提案を棄却した。
「お前が良くてもこっちが嫌なんだよ。男の都合で女にわざわざ遠回りなんてさせられっか」
 麻生広義。良くも悪くも固い人間であった。
 そしてサラ・アデイエマスは対照的に非常に柔軟的思考の持ち主だった。
「もう、そんな前時代的なこと言わないでくださいよ。私がしたいからしてんですから」
 にっこりと笑顔で答えるサラ。けれどその笑顔には少しばかり迫力があった。
 一言で言えば反論は許さないと言った類の笑顔であり、普通の男ならすぐさま自分の意見を引っ込めるだろう。
 ……だが。
「何と言われようと、そんなことさせられねえよ」
 多少はその笑顔にぐらついたがそれでもこういう場合は意見を曲げることはないのが麻生だった。
「頑固ですねぇ」
「頑固ってわけじゃないんだがな。そもそもちんたら歩くより走ったほうが早く帰れて良いんだよ」
 在る意味それは事実だったが本音ではなかった。
 そして前時代的な考え方もまた所詮は言い訳に過ぎなかった。
 本当の理由は単純明快。単に麻生自身がサラに迷惑を掛けたくない、ただそれだけだった。
「それはそうですけど……」
 そしてその理由にサラ本人はもとより麻生自身さえ気づいていないのが現状であった。

717 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:49 ID:lsQKtqyQ
「つーことで俺はここで帰るな」
「えー、けどまだ雨降ってますよ?」
 そう言って空を見上げるサラ。けれど……。
「あれ?」
「止んできたな」
 いつの間にか雨の勢いは弱まっていた。この分だとあと数分もしないうちに完全に止んでしまうだろう。
「はぁ〜」
 麻生の持つ傘の下でサラはがっくりと肩を落としてしまった。
「まぁ、あの角までは一緒で良いからさ」
 サラがあからさまに落ち込んでいるのを見て麻生はそう言って声を掛けた。
「はい、分かりました」
 そして二人は麻生が指し示した角まで歩き始めたが……。
「完全に止んだな」
 目的地に着いた時点で雨は完全に上がってしまった。
「そうですね。はぁ〜、仕方ないです」
 そう言ってひょこっと傘からサラは飛び出した。
「お、おい」
「んー、お日様の光が見えてていい感じですよ」
 サラはくるりと麻生の方にへと向き直り笑顔を向けた。
「あ、ああ」
 しかし麻生は珍しく曖昧な返事しか返さない。
「あ、そうだ、先輩。さっきの話ですけど私が雨を好きな理由がもう一つありました」
「もう一つ?」
 麻生が怪訝な顔で返すとサラは「はい、そうです」と頷きつつ答えた。
「雨上がりの空。この光景を見るのが好きだからですよ」
 そう言いながらサラはバッと両手を大きく広げた。
 その仕草はどことなく子供っぽくもあったが雲のすき間から差し込む太陽の光に照らされたサラの顔はいつも以上に綺麗だった。

718 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:56 ID:lsQKtqyQ
「……聞いてますか? 先輩」
 ボーっとした表情を浮かべる麻生に対しサラは少しばかり口を尖らせて訊ねた。
「あ、ああ。聞いてるぞ」
「なら良いんですけど、ボーっとしちゃダメですよ」
 意趣返しの意味合いを込めてサラはその言葉を口にした。
「してねえよ」
「あはは、ホントですかぁ?」
「ああ」
 短く返す麻生にサラは小さく笑いくるりと体を反転させて言葉を続けた。
「けど先輩。さっきは全部却下されちゃいましたけど今度の雨を好きな理由も同意してもらえませんか?」
 後ろを向いたまま再びサラは問いかけた。麻生の態度から半ば答えを予想しているかのようにその顔を見ずに。
 そのサラに対し麻生は今だ差していた傘を閉じながら答えた。
「そんなことはねえよ。今度は同意してやるよ」
 素直じゃない台詞。その答えを聞いてサラはくすりと笑みを漏らした。
「たっく……」
 けれど麻生がそう答えた理由はサラの考えていたものとは少しばかり違った。
 確かに雨上がりの空は綺麗だと思ったがそれ以上にキラキラと水たまりに反射する光に照らされたサラの姿を綺麗だと思ったからだった。

719 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:57 ID:lsQKtqyQ
「チッ」
 そしてそんなことを考えてしまった自分に対し麻生は軽く舌打ちをして頭を掻いた。
(なに考えてんだか俺は)
 らしくないことを考えた自分に呆れていると不意に彼はある事実に気づいた。
「っておいっ、なんで晴れてんだよっ」
「え?」
 麻生の叫びに後ろ手に手を組み楽しげに左右に首を揺らしていたサラはピタリと動きを止めた。
「お前、今日は夜半過ぎまで雨が降るとか言ってなかったか?」
 確かにサラはそう言ったはずだ。
 ビクッ
「え、えっとそうでしたっけ? そんなこと言った覚えはないんですけど」
 麻生の言葉にサラは面白いくらいに動揺を見せた。
「言ってたよ」
 多少低い声で麻生は答えた。
「や、やですよ先輩。そんな怖い声出して」
「ならこっち向け」
 一向にこちら側を振り返らないサラに多少のイラつきを覚えて麻生は声をかけた。
「う〜、先輩の勘違いですって。そういうことにしときましょうよ」
「…………はぁ〜」
 サラの言葉にいい加減どうでも良くなってきた麻生は深い溜め息をついた。

720 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:57 ID:lsQKtqyQ
「たっく、仕様がねえなぁ」
 怒るほどのことでもないからな、そう考えて麻生は言葉を漏らした。
「えへへ……」
 麻生の答えに罰の悪そうな笑みを浮かべながら振り返ったサラの表情は次の瞬間驚きの表情に変わった。
「せん……ぱい?」
「え?」
「その肩……」
 サラが微かに震える指先で指し示す先には雨でぐっしょりと濡れた麻生の右半身があった。
「あ、ああ。……チッ」
 雨が降っているままならば気づかれなかったのにと軽く麻生は舌打ちをした。
「どうしてそんなに濡れて……」
「ああ、それは……」
 答えを渋る麻生。
 不審に思ってそのまま視線を落とすと彼が左手に持つ傘に視線が止まった。
「あ、もしか……して……」
 麻生が今持っている傘はサラの物だ。
 そしてサラの物と言うことはそれは女の子用の物と言うことと同意だった。
「……チッ」
 そこで上手く誤魔化すことが出来れば良いのだが生憎、麻生と言う人間はそう言ったことが苦手な部類の人間であった。
 だから彼は正直に事実を話した。
「……ああ、小さかったからな」
「っ!?」
 麻生の言葉にサラは小さく息を呑んだ。
 当然だろう。自分が傘の大きさを失念していたから麻生が濡れてしまったのだから。
「……気にすんな」
 もっとも麻生の言葉には大きく欠けている部分があった。
 確かにサラの傘は小さかったが普通に差している分にはそれほど濡れなかったはずだ。
 けれどそうしなかったのはサラの身体を濡らしたくなくて傘を少し大きく傾けていたからだった。
「お前の所為じゃねえよ」
 けれどその事を告げたらサラはもっと責任を感じてしまうだろう、だからこそその事は口が裂けても言わないでおこうと彼は考えた。

721 :Singin'in The Rain:04/08/06 15:58 ID:lsQKtqyQ
「けど……」
「なに、傘に入れてもらえたからここまで来んのにこのくらいの被害で済んだんだからさ」
 傘を差さずに走って帰っていたらこんな被害で収まらなかったはずだ。確実に下着までぐしょ濡れになっていたことだろう。
 けれどサラは大きく首を横に振った。
「ん?」
「違い……ます。確かにそのこと自体申し訳ないなって思ってますけど……でもそうじゃないんです」
「……じゃあなんだ?」
「……そもそも私が先輩を誘わなければ先輩、濡れなかったんですから」
「そんなこと……」
 反論しかけて麻生は言葉を止めてしまった。
 そう言えばそうだった。彼はサラの『夜半過ぎまで雨は降り続く』と言う言葉を聞いて一緒に帰ることにしたのだから。
「ふぅー」
 けれど事実は違った。見上げた空は日が差し込みサラの言葉に反して雨は上がってしまっていた。
 ……つまり、こう言う事だったのだろう。
 サラは自分と帰りたいがために態と嘘をついた、そう言う事だったのだろう。
「……ごめんなさい」
 サラは申し訳なさそうに頭を垂れた。
「チッ」
 ついた理由はよく理解らないがサラの嘘は可愛いものだった。
 なのにそんなことでこんな風な悲しげな顔をして欲しくなかった。
「気にすんなっつってんだろ。お前が傘に入れてくれたお陰でこうも早くここまで来れたんだから」
「でも……」
 理解っている。
 サラは自分がついた嘘の所為で麻生に迷惑を掛けてしまったことを悔やんでいるのだと言うことは。
「これだって乾かせば良いんだしな」
「……はい」
 頷くがサラの顔は泣きそうなままだった。
 その顔が麻生の心を酷く騒つかせる。
「はぁ……」
 サラには珍しい悲しげな溜め息。
 そして麻生が見ているのを思い出して慌てて笑顔を作ろうとした。

722 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:02 ID:lsQKtqyQ
(くそっ)
 その行為に彼はイラついた。激しくイラついた。
 ……だからその激情のまま彼女の名を呼んだ。
「サラッ」
 ビクッ
「は、はい」
 己が名前を呼ばれたことに動揺し、そしていつも冷静な麻生の初めて聞く激しい口調に驚き
僅かに怯えた面持ちで彼の顔を彼女は見上げた。
 ポンッ
「え?」
 けれど彼が行った行為はおおよそサラが予想したものとは違ったものだった。
「先輩?」
 彼のその行為はおそらく無意識に行われたものに違いなかった。
 いつもの彼なら絶対しないであろう行動。……それは。
「あ、あの……」
 サワサワ
 彼はサラの頭に右手を置き少し強めに彼女の頭を撫でていた。
「そんな顔をすんじゃねえよ。お前は別に悪くないさ」
「え……あ……」
「確かに雨は止んだかもしれねえがお前が誘ってくれなきゃ俺は今時分まで一人であんな場所に立ちっぱだったんだからな」
 言い聞かせるように普段よりほんの少しばかり柔らかい、けれど普通の人間には違いが分からないほどの口調で彼は話しかけた。
「けど雨に濡れることはなかったんですよ?」
「それでもだ。こんくらい濡れたうちにも入らねぇよ。……それに一人寂しく帰る事もなかったしな」
「え?」
 麻生の言葉にサラは信じられない面持ちでその顔を見つめた。
「寂しい、ですか?」
「ん? ああ、別に本当に寂しいわけじゃねえが一人で帰るよりお前と帰る方が断然楽しかったからな」
「え? あの、楽しかったんですか?」
「ああ、そりゃな。つーより楽しくなきゃ一緒に帰ろうなんて思わねぇよ」
 軽い嘆息と共に彼は答えた。

723 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:03 ID:lsQKtqyQ
「け、けどあれは私が強引に……」
「強引でも何でも一緒に帰っても良いって気持ちが一片もなきゃこんなことしてねえよ」
 麻生の言葉に呆然としつつもサラはそれが本心だと感じていた。
 短い付き合いだがサラは麻生がする気がないことは決してしないし
気遣いで他人に黙って従うと言うことも出来ない人だということを理解っていた。
「そう、でしたね」
 けれどサラの気持ちは晴れなかった。
 その様子を見て心の中で深い溜め息をつくと麻生はサラの頭の上に置いていた右手を強く動かした。
「あー、もう」
 グシャグシャグシャ
「わわっ! せ、先輩っ!?」
 非道く乱暴に頭を撫でられてサラは抗議の意味も込めて麻生の顔を睨んだ。
「俺はそんな顔させたくて付き合ったんでもないし
濡れてたのを黙ってたわけでもないんだから、そんな顔をするな」
「む、無茶ですよ」
「無茶でもだ。……たっく、いつもみたいになんも考えずに笑ってろ。それが一番お前らしい」
「そ、それってかなりの侮辱ですよぉ」
 少しばかり麻生の言葉に傷つきながらもサラは抗議を止めなかった。
「間違ってねぇだろ。泣き顔も落ち込んだ顔も悩んでる顔も全部らしくねぇ。お前は笑ってる顔が一番良いんだからそうしとけ」
「え、えっと……」
「泣かせねぇし落ち込ませねぇし悩ませもしない。俺がさせない。んで嫌なことあったら全部言え。
俺がそれを全て取り除く。だからお前はいつものように屈託のない笑顔を浮かべてろっ。いいな」
 その言葉は傲慢以外の何物でもなかったけれどその言葉の意味が分かってサラは嬉しくなった。
「はぅ〜」
 けれど同時にかなり気恥ずかしかった。
 麻生の言葉は聞きようによっては告白とも受け取れないこともない言葉だったからだ。
「あん? なに赤くなってんだ?」
 しかしながら麻生自身はそのことに気づいていない様子だった。

724 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:05 ID:lsQKtqyQ
「あ、いえ、その……先輩の手が恥ずかしくて」
「俺の手?」
 そう言われて麻生は己が右手の場所を目で追った。
「って、す、すまん」
 サラの頭を撫でていたことに今更ながらに気づき慌てて彼は彼女の頭から手を離した。
「あっ……」
 その事実にサラは残念そうに声を上げた。
「わりぃ。その……な……」
 罰が悪そうに麻生は目線を逸らした。
「いえ、別に。………じゃ、じゃあ先輩。私ここで帰りますね」
 その場に留まっていたら何か変なことを口走りそうでサラは慌てて頭を下げた。
「ああ。……って、待て。これ持ってけ」
 麻生は左手に持っていた彼女の傘を差し出した。
「あ、はい、すみません。ずっと持ってもらってて」
 麻生から傘を受け取りサラは深々と頭を下げた。
「いや、気にすんな」
「それじゃあ帰りますね」
「ああ」
「ではまた今度」
「おう」
 そして麻生の返事を聞くが早いかサラはその場から去って行ってしまった。

725 :Singin'in The Rain:04/08/06 16:06 ID:lsQKtqyQ

「はぁ〜〜〜」
 サラの姿が見えなくなったところで麻生は今だ濡れたままの塀に手を付き深い溜め息を吐いた。
「いくらなんでも年頃の女の頭を撫でるか、普通」
 彼は自分の信じられない行動に自己嫌悪に陥っていた。
「嫌がられてはなかったと思うが……けどなぁ」
 と、無用の心配をしばらくの間、彼は繰り広げていた。

 一方……
「えへへへへへ……」
 サラはにやけそうになる顔を抑えることが出来ないでいた。
「名前を呼んでもらえた上に頭まで撫でてもらっちゃった」
 バイト先で知り合いそれなりに経つが今日してもらったことはどれも初めて事ばかりだった。
「しかもあんなこと言ってもらえたし……フフフフ……」
 握った傘をぎゅっと抱き寄せサラは一人で笑みを零した。
「う〜、顔が緩んで直らないなぁ」
 あのまま彼と一緒にいたなら絶対変な顔をされていたことだろう。
「……けど」
 不意に彼女は真顔になった。
「先輩に嘘をついて迷惑を掛けちゃったのはホントだし……反省しよう」
 静かに呟きこれからは出来るだけ彼には心配も迷惑も掛けないでおこうと固く彼女は決心した。
「でも……えへへ……」
 再び笑みが零れだしサラは一人浮かれ始めてしまった。

――こうして一旦の幕引きを迎えたある雨の日のお話。

                〜 Fin 〜

726 :風光:04/08/06 16:08 ID:lsQKtqyQ
と言うことで出来上がったサラ×麻生の物語。
キャラを掴めていない気もしますしこういう三人称の書き方もほぼ初めてで少し不安です。
なにより長文になってしまったことがかなりの失敗。本当は上手く纏められれば良かったんですけどね。
次があったらもうちょっと上手く書くのでご容赦を。
ってか「改行が多いです」だとか「本文が長すぎます」ってエラーメッセージに何度泣いたことか。
かなりの数リロードして投稿しながら文を書き直す羽目になってしまいました。

それでは長々とお付き合い有難う御座いました。これにて一旦閉幕とさせて頂きます。

P.S.
芝居かかった口調は態とですんであしからず。

727 :Classical名無しさん:04/08/06 16:10 ID:HUBhFNx.
GJ!リアルタイムで読ませていただきました。素晴らしかったです。

728 :Classical名無しさん:04/08/06 16:32 ID:kQe3JHXM
GJです。非常にいい作品だと思います。
ただ個人的には706のような「ナノ一秒以下」
というような表現は幼稚に見えるのでやめたほうが
いいと思います。このような良い雰囲気のSSでは
特に……。

まあSS書いたこともない人間の戯言なので気にせ
ずにこれからも頑張ってください。


729 :Classical名無しさん:04/08/06 18:12 ID:6sGlLixk
GJってなんすか?

730 :Classical名無しさん:04/08/06 18:27 ID:2eCujtKI
God's Joke の略

731 :Classical名無しさん :04/08/06 19:09 ID:SgMKkMVQ
GOOD JOBの略



732 :Classical名無しさん:04/08/06 19:41 ID:ZZflvkPQ
こないだあるSSサイトのweb拍手でコメントに「GJです」って書いたら「はじめましてGJさん」って返事が返ってきた
まだ知らんひとも結構いるのだね
それはそうと>>726 GJ!

733 :Classical名無しさん:04/08/06 20:12 ID:Q.Gktd4I
ロッテファンの俺的には今回のは
GJと書いてGREAT JOBだ。

734 :Classical名無しさん:04/08/06 20:16 ID:WiBE5f36
じゃあ鷹ファンだから
GORILLA JOHJIMA

735 :Classical名無しさん:04/08/06 22:07 ID:gFdEljq2
>>734
ワラタ

736 :Classical名無しさん:04/08/06 23:16 ID:2/xo3W9.
GJ!
初めてとか言ってるくせにキャラも良く掴めてるじゃないですかー。
雨が止むところのシーンとか、描写が凄く良かったと思います。
気になった点といえば、麻生が「チッ」って言い過ぎかなと。
雰囲気悪くなります。

737 :Classical名無しさん:04/08/07 00:48 ID:b1O9Jwvc
あえて言ってしまうと、読点が少なすぎる気が。
全編通してそういう印象なんだけど、極端なところだと、
>確かに雨上がりの空は綺麗だと思ったがそれ以上にキラキラと水たまりに反射する光に照らされたサラの姿を綺麗だと思ったからだった。
に一個も読点が入ってないのは、正直読み辛い。
いや、こういう意見もあるということでひとつ……。

738 :Classical名無しさん:04/08/07 01:43 ID:2eCujtKI
しかし文章の構成上不必要な読点は除去すべし、という意見もある。
無用な読点は馬鹿っぽいし、乱雑に打たれた読点は文章の構造自体を
狂わせてしまいもするからね。

739 :Classical名無しさん:04/08/07 02:39 ID:pPuZhESk
確かに『不必要な』読点は避けるべきだと思う。
しかし、読点が少ないのもどうかと思う。
読点があることで文章にリズムが生まれる。結果として物語に入り込みやすい。
長い文章なのに読点がないと一本調子の棒読みになりかねない。
そうなると、物語に入り込みにくく、読むことだけに必死で大して印象に残らない。
必要か不必要かの判断のしどころが難しんだけどね、素人としては。

740 :Classical名無しさん:04/08/07 02:44 ID:pPuZhESk
上の『素人』発言は、『プロの物書きではない人』という意味です。
SS作家の方々を侮辱する意味で書いたわけではありません。
誤解を与えかねないので、念のため書いておきます。

741 :空振り派:04/08/07 09:28 ID:0fNaYKGc
前回はご迷惑をおかけしました。
性懲りもなく迷探偵シリーズです。(シリーズ化するのか?)
と播磨で2作目を考えてたのですが、ちょっと詰まってしまったので息抜きに
天満を主人公に書いてみたら、予想以上に暴走してくれたので一本できて
しまいました。推理にならないのは目に見えてますが……。
では、他の職人さんとかぶらないよう様子を見て3分後くらいに一気に投下します。

742 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件:04/08/07 09:35 ID:0fNaYKGc
「伊織〜。何処〜?」
 ……いない。もうすぐ昼ご飯の時間になるというのに、今日は朝から我が家の飼い猫
である伊織の姿が見つからないのだ。
 これは私に対する挑戦だわ!
私の探偵魂に火が点いた。天才は忘れた頃にやってくる……。
そう! 天才探偵テンマの出動よ! 伊織は必ず見つけ出してみせる!
えっと、虫メガネにヒゲ、帽子、帽子……。それとシガレットチョコ。
 よし! まずは推理よ!
昼ご飯の時間になっても出てこないということはきっと伊織はさらわれて、どこかに監禁
されているに違いない……。
 ハッ! これは事件だわ!
それに伊織は人見知りが激しいから知らない人には着いて行かないはず。となると私の
親しい人間ね!
 犯人がわかったわ!
え? 早すぎるって? ちっちっち。名探偵に必要なのは天性のカンなのよ!


743 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件:04/08/07 09:36 ID:0fNaYKGc
 さぁ、犯人は……。
→播磨君よ!   >>744
 愛理ちゃんよ! >>745
 美コちゃんよ! >>746
 晶ちゃんよ!  >>747
 烏丸君よ!   >>748
(他のルートを堪能した人は……)
 もう疲れたよ〜 >>749

744 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜播磨ルート〜:04/08/07 09:36 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 とは言ったものの、播磨君どこにいるんだろ?
とりあえず公園に向かうと……居た!
「て! よう、塚本……」
 平静をよそおって挨拶を交わす播磨君。
しかし、一瞬動揺してシャツの下に何かを隠すのを私は見逃さなかった!
播磨君に近づいて服の上から感触を確かめる。さわさわ……。
「こ、これは何でもねぇんだ!」
 何かを隠している!
私はさらにシャツの下に手を入れて確認した。こちょこちょ……。
「ぶ、ぶはぁ! それはさすがにまずいって!」
 バサッ。
「あ!」
 播磨君のシャツの下から出てきたのは大きな茶封筒と紙束だった。
……な〜んだ。伊織じゃ無かったのか。
 こうしちゃいられないわ! 次よ。
「お〜ぃ、塚本〜。もっとニャンニャンしようぜ……」
>>743

745 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜愛理ルート〜:04/08/07 09:37 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 愛理ちゃんの家だ。相変わらず大きいな〜。
「あら、天満。ま〜た、変な格好して……。何の用?」
「秘密捜査よ! 愛理ちゃんの部屋をあらためさせてもらうわ!」
 ビシッと親指を立てる私。
「ち、ちょっと。私の部屋はダメよ! 親しき仲にもブレーキありって知らないの?」
 明らかに動揺している! 私は真っ直ぐ愛理ちゃんの部屋に向かった。
 ベッドの下。カーテンの裏。居ない……。
だが、ベッドの脇にある父親と思わしき男性と写っている沢山の写真立ての中に播磨君
の写真が混じっていることを私は見逃さなかった!
 虫メガネでじーっと確認するとあわてる愛理ちゃん。
「そ、それは……。いわゆる魔除けってやつよ。誤解しないでよね」
 やっぱり、写真の中にも伊織は映っていない……。
 こうしちゃいられないわ! 次よ。
「ちょっと天満! 変なこと言いふらさないでよ〜……」
>>743

746 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜美コルート〜:04/08/07 09:38 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 私は美コちゃんの家の道場へやってきた。
「お、塚本。うちにやってくるなんて、めずらしいな。何の用だ?」
 私は虫メガネで美コちゃんの身体を観察した。
――ム! 以前よりも胸がふくらんでいる。怪しい……。
 私は美コちゃんに近づき、ゆったりとした道着の上から胸を触って確認した。
「お、おぃ。やめろって! あっ……」
 ん〜。やわらかい。やはり伊織は隠れていないようだ。
「お前ら、何してるんだ……」
 そう言って出てきた花井君の足元に真新しい血痕があったのを私は見逃さなかった!
……な〜んだ。花井君の鼻血か。
道場の中にも伊織が隠れるような場所は見当たらない。
 こうしちゃいられないわ! 次よ。
「おぃ、塚本! あ、アタシはノンケだかんな〜……」
>>743

747 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜晶ルート〜:04/08/07 09:39 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 よく考えたら、晶ちゃんの家も知らないんだよね〜。
あてもなく街中をさまよっていると背後から声をかけられた。
「あら、天満。探偵みたいな格好して何しているの?」
「あ、晶ちゃ〜ん。探してたんだよ〜」
「私を? それで何の用?」
「伊織がどこにいるか知らない?」
「あぁ、それなら……」
 晶ちゃんが指をすっと指し示した。
「この道を真っ直ぐ行って2番目の交差点を左。それから突き当たりを右に。タバコ屋
 さんの角を右に曲がって、郵便ポストのある交差点を右。で真っ直ぐ行って2つ目の
 垣根のある瓦屋根の家に行ってごらんなさい」
「う〜。覚えきれない……」
「そうね。紙に書いてあげるわ」
 晶ちゃんに書いてもらった紙を頼りに私は現地へと向かった。
 え〜と、この郵便ボストで右に曲がって……と。見えた!
 ――私の家じゃん!
>>743

748 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜烏丸ルート〜:04/08/07 09:39 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
 とは言ったものの、烏丸君。どこにいるんだろ?
ここは……私の超能力の出番よ! ん〜。(ピコピコ)あっち!
「……やぁ、塚本さん」
 居た! これはやっぱり愛の力ね!
「こんにちは。烏丸君。……クロネコ見なかった?」
「……」
 無言で交差点に停止しているトラックを指差す烏丸君。
まさか! 伊織はあのトラックの荷台の中に!?
「烏丸君。ありがと〜」
 あぁ! 信号が青になってしまう。
烏丸君がくれた情報。無駄にはしない……。私はダッシュでトラックを追いかけた!
 ――10分後。
ぜぇぜぇ。やっと追いついた……。
「どうしたい? お嬢ちゃん」
「うちのクロネコが荷台の中に……」
「ん? 荷台には何も居ないよ。確かにうちはクロネコだけどな。はっはっは」
 ――クロネコヤ○トだった!
 もうっ。烏丸君のバカバカ……。でも好き!
>>743

749 :天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜解決ルート〜:04/08/07 09:43 ID:0fNaYKGc
>>743 の続き
「は〜。見つからなかったよ〜」
「……姉さん、どこに行ってたの? それにその格好……。お昼暖め直すね」
「ありがと〜。八雲〜。伊織、見なかった?」
「……昨晩、姉さんが伊織と一緒に寝るって言ってから部屋に閉じ込めてたよ……」
 台所を見ると遅い昼ご飯を黙々と食べている伊織の姿が……。振り向いて一鳴き。
「ニャ〜」
「な〜んだ。ここにいたんだ〜」
 ――こうして私のたゆまぬ捜査により、事件は解決した。
 天才探偵テンマに未解決の文字は無いのだ!
                              <END>
「……姉さん、それは違……」

750 :空振り派:04/08/07 09:44 ID:0fNaYKGc
完了です。
最近、連続投稿でよくひっかかる……orz
正解もBAD ENDも無いのですが、播磨とはまた違った楽しみ方があるかと。
正直、ルートを分ける必要は無かった気もしますが、好きなルートから読んで
いただければ。
事件の掻き回しっぷりが天才たるゆえんです。お姉ちゃんパワー?発揮気味。
そして、やっぱり晶は正しかった……。
つっこみどころが多すぎるので、最後八雲に代表してつっこんでもらいました。

751 :風光:04/08/07 17:35 ID:gvjb4pUY
GJ!……って言えばいいのかな。
ともかく面白かったですよ。
特に最後の八雲の台詞が素敵ですな。
沢近も美琴もいい感じだし……ただ播磨がなんか違う気がしたけれど、まっ、それは置いときましょ。
次の作品も期待してますね。

>>736
言われてみればちょっと「チッ」って言わせすぎたかも。
もうちょっと別の表現にしてみればよかったですね。
>>737
確かに読点をつけるべきでしたね。
本当は途中で改行していて文章もちょっと違ったんですけど「改行が多すぎます」だとか
エラーメッセージが出たためその場で書き直していたため読み返す暇が無かったのが敗因ですね。
まぁ、今度また書いてみるつもりなのでその時気をつけてみますね。

752 :Classical名無しさん:04/08/07 18:01 ID:Fxxuq7bM
>>751
専用ブラウザの導入をオススメします。
行の制限数や改行の位置などがわかりやすく、投下するのにすごい便利ですよ。

753 :xoder.rh.rit.edu:04/08/07 18:31 ID:763c3gh.
選択肢ありのSSは
リーフ図書館のthe day of multiに近いものを感じる

もしかすると同じ人が書いているのかもしれない

754 :Classical名無しさん:04/08/07 18:54 ID:6sS8Vu9E
>>753
リーフ図書館か、何もかも懐かしい…

755 :Classical名無しさん:04/08/07 19:23 ID:.D0SMK2U
>>742-749
GJ!!
笑わかしてもらいました。

756 :Classical名無しさん:04/08/07 20:46 ID:z768yxMk
>>742-749
GJ!
やっぱり天満には、ほのぼの・コメディが似合いますね。
このとぼけた空気が大好きです。

757 :Classical名無しさん:04/08/07 23:46 ID:8iICDBbw
>>742-749
GJです!
重要なアイテムをことごとく見過ごす天満が面白かったです。

気になったのは>>746ですが
道場は花井の家で、美琴はそこの師範代(先生?)だったと
思われます。

重箱の隅をつつくようですが、結構重要なことだと思いましたので
失礼しました。

758 :空振り派:04/08/08 01:12 ID:6X18evaM
仕事から帰ってきたのでちょっとだけレス。

>>751
播磨があまりにもありきたりだったのであえて壊してしまいました。

>>753
リーフ図書館って知りません・・・。ちなみにスクラン以外のSSは書いてません。
スクラン以外の掲示板もほとんど行ってません。そもそも2ちゃんねるを使い出した
のもスクランがきっかけだったから・・・。

>>757
それは気付かなんだ。今鳥とイチさんが出会った回で道場に訪問した今鳥を
美琴が迎えたので間違って思い込んでたみたいですね。

759 :Classical名無しさん:04/08/08 08:53 ID:RInbhL8g
>>752
その「専用ブラウザ」って何でつか?
教えてください・・・
漏れは「かちゅ〜しゃ」だけど、
そんなのなかった・・・

760 :Classical名無しさん:04/08/08 09:15 ID:wzNZNqco
>>759
それはひょっとしてギャグで言ってるのか…?

761 :Classical名無しさん:04/08/08 14:04 ID:wXD1UA1o

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!   
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・   
                                             
            ,. -─- 、._               ,. -─v─- 、._     _
            ,. ‐'´      `‐、        __, ‐'´           ヽ, ‐''´~   `´ ̄`‐、
       /           ヽ、_/)ノ   ≦         ヽ‐'´            `‐、
      /     / ̄~`'''‐- 、.._   ノ   ≦         ≦               ヽ
      i.    /          ̄l 7    1  イ/l/|ヘ ヽヘ ≦   , ,ヘ 、           i
      ,!ヘ. / ‐- 、._   u    |/      l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l イ/l/|/ヽlヘト、      │
.      |〃、!ミ:   -─ゝ、    __ .l         レ二ヽ、 、__∠´_ |/ | ! |  | ヾ ヾヘト、    l
      !_ヒ;    L(.:)_ `ー'"〈:)_,` /       riヽ_(:)_i  '_(:)_/ ! ‐;-、   、__,._-─‐ヽ. ,.-'、
      /`゙i u       ´    ヽ  !        !{   ,!   `   ( } ' (:)〉  ´(.:)`i    |//ニ !
    _/:::::::!             ,,..ゝ!       ゙!   ヽ '      .゙!  7     ̄    | トy'/
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、    r'´~`''‐、  /        !、  ‐=ニ⊃    /!  `ヽ"    u    ;-‐i´
 !    \::::::::::::::ヽ   `ー─ ' /             ヽ  ‐-   / ヽ  ` ̄二)      /ヽト、
 i、     \:::::::::::::::..、  ~" /             ヽ.___,./  //ヽ、 ー        


762 :Classical名無しさん:04/08/08 16:28 ID:TTBzgvBw
倉庫更新マダー?

763 :Classical名無しさん:04/08/08 17:04 ID:7R1qc0/A
そういやもう大分更新してないな保管庫

764 :Classical名無しさん:04/08/08 18:25 ID:chBl6T3c
>>752
専用ブラウザっていくつかあるみたいですけどどれでもいいんですかね。
いまいち分からないっす。

765 :Classical名無しさん:04/08/08 19:36 ID:NCePL43w
>>763
更新が待ちきれないのと合併号の悲しさから
過去ログでクズリ氏の連載SSを読んだ俺

766 :Classical名無しさん:04/08/08 19:46 ID:R4uncQhw
>>759
多分aaeditorとかのことじゃね?

767 :Classical名無しさん:04/08/08 20:18 ID:2eCujtKI
>>763
倉庫が更新されていないという単純な事実に気付くまでは
クズリ氏の新作まだー
って感じで待ち惚けていた俺。

768 :Classical名無しさん:04/08/08 22:05 ID:SHOtNNFU
>>763
更新してないくせに、「最終更新日」のみが更新されてるのって、なに?
SS保管庫で最初に見るのそこだから、更新してないのなら期待させるのはやめて欲しいですよね。

769 :Classical名無しさん:04/08/08 23:01 ID:7R1qc0/A
更新もそうだがクズリ氏のSSを一まとめにしてもらいたいんだが
あの長編をバラけさせているいると探すのも面倒なんで

770 :Classical名無しさん:04/08/08 23:22 ID:ZBauQIXs
まとめるのは暇できた時でいいので
忙しくてもがんばって少しずつでも更新して欲しいです

771 :Classical名無しさん:04/08/09 00:04 ID:e0ROVpJQ
最終更新日が勝手に更新されるのはjavaだから、っつか鯖のせい
あそこの広告アホだから

と擁護してみる
まあ、いいかげんまとめて更新してほしいのは漏れもだが

772 :Classical名無しさん:04/08/09 07:57 ID:e1uYofks
当分本編でみられそうにない一条のSSきぼんぬ

773 :752:04/08/09 10:34 ID:Fxxuq7bM
なあ、俺は事細かに説明した方がいんだろうか?
自分がこんな自体に遭うのは初めてなので、誰か助けてください OTL

774 :ほんわか名無しさん:04/08/09 11:06 ID:/KfIBzsw
専用ブラウザ導入のススメ

―2ちゃんねるブラウザの比較表(仮仮仮仮)―
ttp://www.geocities.jp/browser_2ch/index.htm
↑ココ見てから、↓ココの各ブラウザスレでの評判を見る。
ソフトウェア板
http://pc5.2ch.net/software/
2ちゃんねる用ブラウザで最強なのは?
http://pc5.2ch.net/test/read.cgi/software/1030090735/

あとは色々自分で使ってみて、使い易いと思ったのを選べばいいよん。

775 :Classical名無しさん:04/08/09 11:16 ID:eqxSnl/.
>773-774
自分の知っている範囲で補足。
janedoeの場合、本文を書き込む所にレス容量/最大レス容量と現行数/最大行数
が表示される。
その他、setting.txtの取得も可能。
……自分はLive2ch派だけど。

776 :764:04/08/09 17:32 ID:nhbMRQkU
janedoeを導入してみました。
これでSSを投下するのも楽になりそうです。
>773-775
感謝です。

777 :Classical名無しさん:04/08/09 19:37 ID:RopKxP9E
保管庫、新しく設置されたねー。
新管理者の人、よろしくー。


778 :職人のはしくれ:04/08/09 20:12 ID:ZPdsCAGQ
katju88→A bone→ゾヌ2→ギコナビと乗り換えてきましたが、Openjanedoeイイ!
ギコナビで欲しかった機能=タブ多段・板タブ・レス行数/容量表示等が実装されて
なおかつ軽い!これでスレ検索バーとサムネイル表示があれば個人的には完璧。
>775 thx! …っていうかスレ違いですね。スマソ

779 :Classical名無しさん:04/08/09 21:36 ID:UBPg7pRw
非常に短いですが、しばらく投下が無いみたいなのでリクエストにお応えして、
イチさんのSSを作りました。
投下します。

780 :AGAINST THE ROPES:04/08/09 21:37 ID:UBPg7pRw
 楽しかった……。今鳥君とのデート。塚本さんのおかげで親しくなることができた。
……でも、今鳥君が特撮好きだったなんて意外だったな……。
 ふと思い出すのは私がアマレスを始めるきっかけとなったあの人――。
あれは小学生の頃のこと。身体が小さい私は同じクラスの男子生徒から格好のいじめ
の的となっていた。
「や〜い。イチさん、イチさん。体育の成績もイチ〜」
 あの頃の私は泣き虫で毎日、泣きながら家に帰っていた。親が心配するので家に着く
と何事も無かったようにふるまっていたけれど。
 あの日も同じように男の子達に囲まれて……。私は泣きながら、逃げることもできず
に途方にくれていた……。その時だった。あの人があらわれたのは。
「お前ら、弱いものイジメはこの僕が許さんぞ!」
「なんだ、てめーは!」
 大勢のいじめっ子にもひるむ様子も無く、あの人は答えた。
「僕の名前はヤガミ戦隊、ヤガミレッド!」
 あっけに取られるいじめっ子達。
「……仲間もいないくせにいきがりやがって。皆、やっちまえ!」

781 :AGAINST THE ROPES:04/08/09 21:37 ID:UBPg7pRw
 そして、私の目の前であの人はいじめっ子たちにぼこぼこにされて……。それでもあの
人は立ち続けた。私は怖くて見ていることしかできなかったけど……。
 いじめっ子たちはそのうちに疲れて帰っていった。
「……あの……。ありがとう……。大丈夫ですか?」
「ごめん。僕は本当は弱いんだ……。でもきっと大きくなったら、テレビのヒーロー
 みたいになるんだ!」
 あの日……、私は初めて本当の強さという意味を知った。そして、それ以来あの人に
あこがれて私も強くなろうとアマレスに打ち込んできた。
名前も聞かなかったあの人……。ひょっとして今鳥君だったのかな……。
 私は運命というものに感謝した――。

782 :Classical名無しさん:04/08/09 21:37 ID:UBPg7pRw
完了。
でも、あの人……。今鳥じゃなくて花井だった可能性のほうが高いw

783 :Classical名無しさん:04/08/09 22:24 ID:idVzxxjM
一条×花井って新鮮ですね。乙です。

784 :Classical名無しさん:04/08/09 23:00 ID:JZmhiykM
そろそろ次スレの時期?
何kbいっちゃうと書き込めなくなるんだっけ?

785 :Classical名無しさん:04/08/09 23:18 ID:BHUs28vo
>>782
リクに答えてくれてどうもです
アマレス始める前のイチサンは弱かったんですかね

ここではイチサンはあんまり人気ないみたいなんで
イチサン好きは肩身がせまいっす

786 :Classical名無しさん:04/08/09 23:18 ID:hD/rm1FQ
>>784
あらら、ぼちぼち投稿しようと思ってたんだが…まずい?

787 :Classical名無しさん:04/08/09 23:28 ID:asm6xbv6
>>785
ここにはいろんな職人さんがいるので気長に待つが吉。
烏丸SSよりは可能性高いかと。

>>786
たしか以前のスレで480KB踏んだ人が次スレ立てよう
とかいう話しをしてたと思う。
まだ投稿できると思うけど、踏んじゃったら次スレよろ。

788 :Classical名無しさん:04/08/09 23:37 ID:RopKxP9E
残り41kb まだ余裕あり。


789 :550:04/08/09 23:38 ID:SDfBvCW2
>>787
書き込んだらすぐ寝る気だったので立てれるか分からん…努力はするけど無理だったら他の人頼みます。

二度目の投稿です。また恋愛要素なしですがホラーでもありません。
初投稿にもかかわらずレス頂けた皆様に感謝。

790 :Classical名無しさん:04/08/09 23:40 ID:SDfBvCW2
 サラはバイトがあるから来られなかったけど、私は今日も動物園に来た。
夏休みも残りあとわずか。その残り少ない日程を最近は殆ど動物園に通う為に費やしている。
1週間程前まで播磨さんに学校で飼われていた動物達の様子を見る為に。
まだまだ8月の終わりなのでとても暑い。私は園内の広場のベンチで一休みする事にした。
大きな木の下にあるから日を遮っていて涼しい。
私の周りでは小さな子供達の歓声が盛んに聞こえる。
播磨さん仕込みの芸を披露しているのだと思う。

…気のせいか、だんだん頭がぼうっとしてきた。
ああ、こんな所で眠るんだ―――


791 :Classical名無しさん:04/08/09 23:41 ID:SDfBvCW2
 動物達が動物園に移される前日。部室に置いた忘れ物を取りに学校へ行った私は、偶然播磨さんに会った。
播磨さんは動物達に餌をあげるようだったので、一緒にさせてもらう事にした。
生徒という主を失った体育館。でも、そこに寂しさはなかった。
キリン、ライオン、パンダ…様々な動物達が播磨さんを迎え入れる。
あっという間に播磨さんが動物達の下敷きになる。でも播磨さんはすぐに抜け出してくる。
そして慣れた手つきで餌をあげる。
獰猛そうなライオンもトラも、巨大なゾウもキリンも、皆播磨さんに懐いている。
私は、それが少し羨ましかった。

 あらかた餌をやり終えると、動物達はあちこちで遊び始めた。播磨さんは嬉しそうに眺めている。
「あの…ライオンとかトラをこの中で飼っていて、大丈夫なんですか?」
ふと頭によぎった質問をした。この中には草食動物もたくさんいたからだ。
「ああ…それなら大丈夫。あいつらちゃんと餌やってりゃ結構大人しいからな。
それに、ちゃんと俺からも言って聞かせてるし」
播磨さんの視線を追うと、ライオンを馬やカンガルーが追いかけている。鬼ごっこでもしているのだろうか。
私はこの環境がとても素敵だ、と播磨さんに言った。肉食動物も草食動物も仲良くいられるからと―――

でも、播磨さんの表情は変わった。つい先ほどまであった笑顔は消えてしまった。


792 :Classical名無しさん:04/08/09 23:44 ID:SDfBvCW2
 播磨さんは私を校内の広場に連れていった。途中で彼が買った十七茶を私に投げる。
播磨さんにお礼を言って、蓋を開ける。缶は夕焼けで少し赤く染まっていた。
ベンチに腰掛けていると、播磨さんも隣に座った。
ただ、無言のままお茶を飲む。
 播磨さんが口を開いたのは座ってから3分程経ってからだった。その頃にはお茶は残り半分程になっていた。
播磨さんは体育館の中にいた動物達の話をしてくれた。
どこでどんな風に出会ったか、一匹ずつ。

 ショックだった。密猟者に両親を殺され、日本に連れて来られたトラ。
飼い主に頻繁に暴力を加えられ、逃げ出してきた犬。
経営難の動物園で、毒殺されかかったゾウ―――
皆、とても悲しい過去を持った動物ばかりだった。
 キリンのピョートルみたいに、能天気だからそんな事忘れてる奴もいるけど、と播磨さんは言った。
私はその言葉に少し救われた。
 でも、未だに過去に受けた体や心の傷が癒えていない動物がたくさんいると言われると、再び私は落ち込んだ。


793 :Classical名無しさん:04/08/09 23:45 ID:SDfBvCW2
 「動物同士って、実は会話出来るんだよ―――」
ちょっと意外な事実だった。落ち込んだ私を見て、播磨さんは話題を変えてくれたようだった。
「野生とかだったら同じ種類同士とかじゃないと無理らしいけど、ここの連中は皆会話できるんだよ」
動物の気持ちが分かる播磨さんだからこその発見なんだと思う。
「…でも、どんなに頑張っても、人間だけは動物と会話は出来ないみたいなんだよな」

 そう言われて、それは当然なんだろうと私は思った。
責任感も無しにペットを飼う人間。
自分の利益だけの為に必要以上に動物を殺す人間。
虐待のニュースが連日流れるような社会を作った人間。
だから、人間だけは動物達の気持ちが分かる事はないんだと思う。
私が知る限りではただ一人、播磨さんを除いて。

 ひょっとしたら播磨さんも、私と同じように枷をはめられた人なのかもしれない。
私が私に好意を抱いている男の人の心が視えるように…。
私はこの力のせいで、男の人が信じられなくなりかけた事さえあった。
播磨さんだって、動物達の気持ちを理解するうちにそういった考えが浮かんだのかもしれない。
 動物達が動物園に引き取られる日、播磨さんは最後まで抵抗した。
刑部先生は播磨さんに「それはエゴだよ」と言っていたけれど、きっとそれは違うと思う。
人間に傷付けられた動物達を、他の人間に預けるなんて出来ないと思って抵抗したのではないだろうか。
最後まで動物園の人達を信じなかった播磨さんも、引き取られた後動物園に通ううちに落ち着いてきた。
きっと幸せそうに動物園で生きる動物達を見たおかげなのだろう。


794 :Classical名無しさん:04/08/09 23:46 ID:SDfBvCW2
 それにしても、私や播磨さんについた枷。何故私達なのだろう。
他の人にはない力。それは持っているからといって幸せになれるとは限らない力。
枷をはめられた私達は、これからどうすればいいのだろうか。
少なくとも今の私に出来る事。それは動物園に行って動物達の様子を見る事。
だから今日もこうして…

――――――あれ?

 肩に軽い振動を感じた。目を開けると、そこには播磨さんが立っていた。
周りを見渡す。もう子供達の姿はなく、閑散としている。
夕焼けが、動物園を照らしている。
不意に不快感に襲われた。体中が蒸したように暑かった。ずっと外で寝ていたせいだろうか。
私はハンカチで額の汗を拭った。
「妹さん、もうすぐ閉園時間らしいんだが…」
播磨さんの言葉を聞いてはっとした。時計を見ると、閉園まであと5分しかなかった。
私は播磨さんと出口へ走った。閉園時間丁度に出口を駆け抜けた。
ますます体が暑くなり、私は汗を拭った。
と、出てすぐに近くの自販機で買い物をしていた播磨さんが私に缶を投げた。
あの時と同じ十七茶。でも播磨さんは笑っている。
私も笑う。汗をかいた顔のままで。
夕焼け空ももうすぐ終わり。セミは鳴き止み、星が瞬く―――


795 :550:04/08/09 23:47 ID:SDfBvCW2
こんな感じで。
またタイトル考えてません。みんなつけてるから内心不安ですが…
もしいるなら前作を含めて誰かつけてもらった方が早いかもしれないw

796 :Classical名無しさん:04/08/10 00:20 ID:mq9i9a3E
>>795
乙です。
場面転換の部分はちょっと違和感を感じますが、なかなか重みの
ある文章ですね。
あとは設定以外にもう少しキャラの魅力が引き出せればもっと良く
なると思います。
まぁ、たいしたことは言えませんが、次回作も頑張ってください。

タイトルはなんか繊細な感じがするので、THE GLASS MENAGERIE
(邦題:ガラスの動物園)とかどうでしょう。動物園続きで心の枷が
大きなテーマになっているみたいなので。
まぁ、映画の内容はあまり関連性無いですが。
タイトルなしはやっぱりインパクト弱いですからね。

797 :Classical名無しさん:04/08/10 00:27 ID:idVzxxjM
>795
素敵なSSでした。乙です。

798 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
 窓から射し込んでくる夕陽が部屋の中を染める。赤、と表現されることの多いその光だが、実際
晩秋のそれはむしろ金に近い色合いをもっている。直視すれば目もくらむような、ともすれば真夏の
陽射しより強烈なその光の中で、晶は一人、活字に目を走らせていた。
 元より活動内容などあってなきに等しいこの部活、部室に誰もいないことさえ珍しいことではない。
そもそも彼女を除けば、定期的に顔を出すのさえあとはサラと八雲くらいなものである。それでも
曲がりなりにも部活として成立しているのは、やはり顧問の手腕ということになるのだろうか。
 ともあれ、そんな部活である。晶自身も特に目的があってそこにいるわけでもなく、切りのいいところ
まで、と考えながらさらにページを繰っているところに。
 ――とんとん。
 遠慮がちなノックの音。茶道部の知名度、加えて場所を考えると、決して来客の多い場所ではない。
そこにわざわざ訪ねてくるとなると、往々にして友人関係、そしてそうなると一々ノックをするような
こともなし、とわずかに訝しげな表情をつくる晶。
「どうぞ」
 そうは言っても、警戒してどうなるものでもなし、と取り敢えず扉の向こうに声をかける。一拍置いて、
その向こうから現れたのは。
「――やあ」
 花井春樹その人だった。持ち前の律儀さから、出入り禁止を申し渡されて以来部室には足を踏み入れ
なかったその姿――もっとも、入ってこないだけでその近くにいることはよくあったわけだが――に、
期せず晶の口から、珍しい、という言葉が洩れる。当の春樹本人もそれが分かっているのか、若干申し訳
なさそうな様子で入り口に立ったまま。

799 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
「どうぞ、遠慮することはないわ」
「……そうか。ではお邪魔させてもらうよ」
 晶のその一言でようやく部屋に入ってくる、そんなところにも見える生真面目さに、そういうところが、
と思う彼女だったが、その行き過ぎたまでの実直さを殺してここを訪れた心中をおもんばかって、皮肉は
さしあたって胸の中に留めておく。
「何か飲む? 一通りのものは揃っているけど」
「いや、構わないよ」
 社交辞令のような挨拶、まずそれを交わしてから本題へ入る。
「それで、何の用かしら」
 その問に、一度目を閉じてから大きく息をする春樹。何かを決心したような表情で、下ろした目蓋を
上げてから告げる。
「八雲君のことなんだが」
 瞬間、すっ、と細められる晶の瞳。しかし、先を促すようにその口は沈黙を保ったまま。
「こうなってしまうと今更、の話になってしまうんだろうな。僕自身そう思う。だが、言って おかなくては
 ならないことだ」
 ふっ、と小さく自嘲気味の表情。
「彼女には――そして君にも随分と迷惑をかけたと思っている。謝ってどうなるものでもないのは分かる。
 それでもこのままにはしておけなくてね」
 すまない、そう言って頭を下げる。対する晶は黙ったままそれを見つめている。そんな静寂がしばらく
続き、やがて春樹が顔を上げる。
「それだけだよ」
 その表情は、先程とは違って晴れやかな、思い残すことは何もないような笑顔。

800 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
 けれど。
「ねえ、花井君」
「何かな?」
 晶の言葉がそれを穿つ。
「あなたはそれでいいの?」
 春樹の顔から笑顔が消える。そして現れるのは、苦悩に満ちた表情。
「……僕は」
 人の想いというのものは、それほど簡単に変わるものではない。故に納得出来るはずもなく、また彼自身
そのことがよく分かっている。続けるべき言葉は無数に心の奥底で渦巻いている――が。
「僕は、それでいいと思っているよ」
 それでも、彼は笑った。どうにもならないことを、どうにもならないこととして受け止めるように。
「そう」
 その答を聞いた晶は、短く返事をしてからおもむろに立ち上がり、部室の外へと向かう。
「高野君、どうしたんだ? 何か僕がまずいことでも……」
 慌ててその後を追う春樹に答えず、廊下に出たところで足を止め、くるりと壁に向き直る。そこにあるのは、
いつぞや彼女自身が貼った一枚の紙。

801 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:07 ID:qmlfIyEQ
「これはもう、いらないわね」
 呟いて、『花井の立入を禁ず』、そう書かれた張り紙を一息に破り捨てる。
「高野君!?」
「サラに聞かなかったかしら。うちのモットーは出入り自由よ」
 驚く春樹にも、淡々と対応する晶。その後で、それに、ともう一つ付け加える。
「今のあなたなら、八雲のいい先輩になってもらえると思ったんだけど。無理かしら?」
 試すように、わずかに笑みを浮かべた表情で問いながら、片手を差し出す。
「当然だ」
 対する春樹も笑顔で応え、その手を取ってしっかりと握手を交わす。
「それじゃ、この件に関しては休戦ということで」
「ん? 何か言ったかな?」
「コッチの話。それで、要件はもう終わりかしら?」
「ああ。時間を取らせて悪かった」
「いいわ、別に。今度はあの娘たちもいるときにでもいらっしゃい」
「そうさせてもらうよ」
 まだ覚悟が決め切れていないのか、苦笑いにも似た顔でそう言って去っていく春樹。それを見送ってから、
これはこれでよかったのかしら、と部室に戻る晶。いつのまにか夕陽は地平線の向こうに消え、宵闇が遠く
忍び寄ってきている。
「まあ、頑張りなさい」
 残照に彩られた空の端を眺めつつ、晶はそう呟いた。

802 :Dawn of a New Day:04/08/10 01:09 ID:qmlfIyEQ
あえて八雲暴走特急ではない花井を。
……これだけ物分かりよかったら、最初から問題ないのは気にしない方向で。
と言うか本編の花井はどうなることやら。

803 :Classical名無しさん:04/08/10 01:36 ID:c27PO8bE
>>802
乙です。
本編の花井もこれくらいになれれば…
情景描写が美しいですね。

804 :Classical名無しさん:04/08/10 01:43 ID:c27PO8bE
立てました
スクールランブルIF12【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1092069593/l50


805 :550:04/08/10 09:06 ID:9w3Jm22k
>>756
THE GLASS MENAGERIE ですか・・・いいですね。
映画ろくに見てない自分では絶対思いつかない。

806 :Classical名無しさん:04/08/10 12:07 ID:mq9i9a3E
自分も映画ほとんど見ないけど……。
映画 原題 〜キーワード〜
とかでググって見れば? 結構見つかるよ。

807 :550:04/08/10 13:36 ID:9vK2ekgI
>>806
いい事聞いた・・・ありがd

808 :Classical名無しさん:04/08/10 16:55 ID:Fxxuq7bM
サンクス、助かった。
というか、レス容量、全ての専用ブラウザに表示されているわけじゃないんやね。

809 :Classical名無しさん:04/08/11 03:33 ID:7R1qc0/A
そうか…もう、あれやんないんだっけ

810 :Classical名無しさん :04/08/11 09:44 ID:SgMKkMVQ
>>13 無題
>>33 My Gift to You
>>50 THE MAJESTIC
>>64 無題
>>83 Majic Night
>>99 無題
>>106 乗船前
>>115 言葉にならない
>>123 彼女の想い
>>132 Joyful, Joyful
>>140 シスターサラの懺悔室
>>162 無題
>>172 MY HERO
>>194 無題
>>204 Birthday... Mikoto Suou
>>208 Birthday... Mikoto Suou...18
>>214 離したくない物
>>228 無題
>>233 Always
>>265 #62-63 side B
>>322 Track4 三匹に斬られろ
>>329 Lacrima
>>348 A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM
>>402 white breath
>>419 Mistake
>>434 無題
>>441 Anastasia
>>455 HEAVENLY CREATURES
>>467 Is this LOVE?
>>479 While waiting for him


811 :Classical名無しさん :04/08/11 09:55 ID:SgMKkMVQ
>>551 無題
>>564 Summer
>>570 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件
>>581 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜俺?ルート〜
>>582 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜ENDルート〜
>>586 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜花井ルート〜
>>589 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜沢近ルート〜
>>593 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜八雲ルート〜
>>595 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜天満ルート〜
>>612 Change the world
>>642 「夏祭りの夜に -a beginning- 」
>>653 Ritalin 202
>>666 【夏祭りの夜に -tenma side-】
>>682 IF肝試し
>>695 Sign
>>705 Singin'in The Rain



812 :Classical名無しさん :04/08/11 10:04 ID:SgMKkMVQ
>>742 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件
>>744 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜播磨ルート〜
>>745 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜愛理ルート〜
>>746 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜美コルート〜
>>747 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜晶ルート〜
>>748 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜烏丸ルート〜
>>749 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜解決ルート〜
>>780 AGAINST THE ROPES
>>790 THE GLASS MENAGERIE
>>798 Dawn of a New Day


813 :Classical名無しさん:04/08/11 13:13 ID:cWK007Rg
テメエラ胸ノ話スンナ。ミーノ竿、スゲエコトニナッチマッタゾ

814 :Classical名無しさん:04/08/11 21:13 ID:PjRewOSg
目次サンクス。これで読み直すのが楽だ。
しかしひと月もせずにスレを消費し切るSSスレってのは読んでて嬉しいもんだね。

815 :Classical名無しさん:04/08/13 03:46 ID:17NVtdkE
<noTaitol>
#
「…今日も寒いわね―――」
もう雪がチラついてもおかしくない季節
窓から見える風景は灰色に染まってている
「イヤだな…」
『まるで、いまの私の心のよう』
『やれることはすべてやった、それなのに』
『まだ、諦め切れない…のかな』
「好きな女がいる―――」それがアイツの答えだった
いろいろ引っ張りまわした
自分の心も伝えた
初めてのkissも…
それで振られたのだから、仕方がない
『泣くつもりはなかったんだけどな』
気丈でいるつもりだった、いつも通りに振舞うはずだった
いまにも降り出しそうな暗く低い雲をみるとあの日を思い出す
後輩の女の子、友達の妹―――あのコが傷ついたのもきっと自分のせい
自分の嫉妬から巻き込んでしまった…だけどあのコもアイツのことを…
こんな日だった、あのコの涙を見たのは
『だから、じゃないけど私は泣かないつもりだったのに』
まだ泣いてすがる事もできるかもしてない
この身体だって…
だけれどもわかる、そんなことをすればアイツは本気で嫌悪するだろう
『だから、もう未練はないんだから!』

「ハァ――」
もう何日同じことを繰り返しているのだろう
「雪、降らないかな」
カーテンの合間から静かに空を見上げ続ける


816 :Classical名無しさん:04/08/13 03:54 ID:17NVtdkE

教室にいると無意識に目で追ってしまう…
視界に捕らえてしまうと逃げ出したくなる
あいかわずサングラスをしているその表情はわからない
その視線がどこを見ているのかわからない
『見られたくない』
視線を気にしたとき、逃げ出したくなる自分が悔しい
美琴も晶も…そして天満も、自分を心配してくれる
「大丈夫?」「元気だして」「男はヤツだけじゃないって」
言われる度に「もう、大丈夫だから」笑顔で答える 作り笑顔で…
だから余計に心配かけてしまうのだろう

「ごちそうさま」
「お嬢様…もう少し召し上がられては…」
食事が喉を通らない、もとより食欲なんて――無い
家の者が喉を通りやすいものや好物を用意してくれるけれども
「ごめんなさい もういいわ」
静かにテーブルを離れる

「なんでこんな寒い日にマラソンなのよ」
「なんでだろうなー」
私のぼやきにたいして気にしてなさそうに美琴が答える
「まぁ、体は暖まるって」
『ポン』と肩を叩かれスタートしていく

「ハァ――ハァ――」
『やっぱり体力落ちてるな』ここのとろの不摂生が身にしみる
『…………』
『あれ?』
突然、世界が真っ暗になって―――

817 :Classical名無しさん:04/08/13 03:56 ID:17NVtdkE
♭-a
視線を感じた…
『……お嬢』
いつもは気丈な背中が、小さく見える
意識して俺を避けているのがわかる
『まあ、当たり前か』
だが、もう少しうまく、やさしく言ってやることは出来なっかたのだろうか
『―――あなたのことが好き』
正直、驚いた。何を言われたのか一瞬どころかしばらく理解できなかった
言葉の意味を理解したとき、また俺を振り回すためにからかっているのだと思った
だから―――
『泣かしちまうとは…』
あのコのときもそうだった…とても大切な人だったのに
『女心とか色恋沙汰ってのは!』
『ちっ』
そんな口上で逃げる自分にイライラする

『!』『――!!』
「あん?どーしたんだ」
タラタラと走って(歩いて)いる前のほうに人集りが見える
「沢近さんが倒れたんだって」
通り過ぎるクラスメートの会話が聞こえる
「…あのバカ……」
だが、足は動かない
目の前の人集りに近づけず人々の動きを目で追うしかできない


818 :Classical名無しさん:04/08/13 03:58 ID:17NVtdkE
再び保健室の扉が開く、とそこから
「廊下で騒いじゃダメじゃない」
保健室の前なんだから―と見知った女性が顔を出してきた
「ほら、周防さんはなにか飲み物はやく買ってきて」
「うっ―――けどっ」
『大きな声出さない。彼女怯えちゃうでしょ…』
ハッとする、そこまで俺はアイツを傷つけているのか――と
「…わかりました」
周防は渋々ながら俺から離れ、睨みつけてから廊下を走っていく
『………』
お姉さんと目が合う
「ほら、ハリオも…」
「お嬢は――」
しかし言葉は遮られ、お姉さんは横に首を振る
その瞳は優しく、けれど寂しそうに…
『いまはまだそっとしてあげて――』
そんな風に云っているようだった

819 :Classical名無しさん:04/08/13 04:02 ID:17NVtdkE
♭-b
「日が暮れるのもはやくなったな」
下校の時刻が過ぎ、低い雲の所為もあってあたりははやくも薄暗い
「あ…」
「ん?」
廊下を曲がり、階段に差し掛かったとき、彼女と出会った
「…こんにちは」
「あ、ああ」
お互い緊張しているのがわかる
次の言葉が出てこない
『………』
こんなことになるつもりはなかった…もっと気軽に話のできるままでいたかった
『それは、俺の我儘、身勝手だろう』
「妹さんもいま帰りか?」
「いえ…部活の途中です」
「…そう、か。じゃあな…部活がんばれよ」
『恩を仇で返す…そのものだ』
だけれども彼女の心はそんなところにはなかった
俺の気持ちに気付いても、なお想いを寄せてくれたのだ
『逃げることしかできないのか、俺もアイツと同じか…』
「播磨さん」
呼び止められた
「…ごめんなさい。元気がないようだったので……つい」
「そうか。元気なさそうか、俺」
『分かっちまうのか、な』
「相変わらず、隠し事はできないな」
軽く笑ってみせる、と――ちょっと困ったように彼女も表情を緩ませた
「気持ちは――想いは伝えましたか?」
『チクリ』
胸が痛んむ…俺はまだ自分の想いを伝えていない
勝負は判りきってしまっているから

820 :Classical名無しさん:04/08/13 04:03 ID:17NVtdkE
「…播磨さんらしくないです…いえ、播磨さんらしいのかもしれません。けど」
「立ち止まったまま、その場で苦しんでいる播磨さんなんて……」
「見ていたく…ありません」
「ちゃんと一歩を踏み出して…ほしいです」
言われた…このコにしては珍しくまっすぐと見詰められながら…言われてしまった
返す言葉もない
「そうだな」
下を向いていた顔が上がる
「あいかわらず、端的な意見を言ってくれるな。妹さんは」
「……」
ちょっと困らせてしまった
「サンキュ。まったくそのとーりだぜ」
「ほんと、妹さんにはかなわねーや」
おどけて見せよう…そして胸を張ろう
「いつもありがとな」
手を上げ別れの挨拶をする
「はい…がんばってください…」
彼女はやわらかく微笑んでくれた

『そう、俺自身前に踏み出さないとな』
彼女たちを傷つけて、自分だけ安全なところで傷つくのを恐れていたなんて―――
「俺は播磨拳児だぜ」
『そうだ、俺は肩で風を切っていればいいんよ』
冷たい風が久しぶりに心地よい……

821 :Classical名無しさん:04/08/13 04:04 ID:17NVtdkE
『伝えたいことがあります。屋上で待っています。―――播磨拳児』

始業前の学校
その校舎の屋上で播磨拳児はひとり、立っていた
『封筒の中身は確認した。入れた下駄箱も間違いはない』
『いままでのような冗談みたいな間違いは無い!――はず』
ちょっと不安になる
「否!彼女は来る」
彼女はもう登校しているであろう時間
もはや後に引くことはできない
『ギィ』
屋上の扉が開く音、そしてその先に―――
「ごめなさーい。遅くなっちゃたかな」
彼女は来た
「どうしたの?急に――」
相変わらず場の雰囲気を読んでいない様子だ
「……塚本」
「うん?」
「いや、天満ちゃん!」
遂に来た。この時が。
玉砕しようが返り討ちに遭おうがもはや関係ない
この想いを伝える。それだけだ
「この学校に入る前、中坊のとき、俺は君に出会った」
「そして、君とこの学校で同じ刻を過ごすため俺は必死に勉強した(中1の教科から)」
「おかしいだろ?俺みたいな不良が女の子ひとりに…」
「だが本気なんだ!俺は――」
「俺は君のことが!」

822 :Classical名無しさん:04/08/13 04:05 ID:17NVtdkE
ズキッ』
胸が軋む…目の前に思いを寄せ続けた少女がいるというのに
いま、痛みとともに違う少女が脳裏をよぎった
『なんで―』
「俺は―!」
「俺は…」
胸が痛い…いや、心が痛い
「……」
「……」
「播磨君?」
訝しげに彼女が聞いてくる
「え?あ…」
『俺はなにを考えているんだ、目の前にいるじゃないか』
「大丈夫?」
「あぁ」
怪しくも思うだろう…いま告白の瞬間、いきなり胸を押さえて微動だにしなくなるのだから
「播磨君。あのね…その…」
「気持ちはとっても嬉しいよ」
「え?」
「だって、自分のためにがんばって同じ学校に来てくれたなんて」
「それに…なんとなく、そうかなって思うときもあったし…」
「…」
「だけど私、大好きな人がいるの」
『あぁ、知っている』

「八雲や、愛理ちゃんのこともあったけど」
「播磨君のこと、悪い人じゃないって思ってる」
「…だって、八雲が好きになった人だもんね」


823 :Classical名無しさん:04/08/13 04:08 ID:17NVtdkE
「でも、ちゃんと告白してくれなかったね」
『ズキッ』
「うっ」
そうだった…心を、覚悟を決めてきたというのに
「あっ、ごめんね。責めてるとか、そういうのじゃなくて…えっと」
「告白のとき…播磨君の心にいたのは私じゃない。違う人っだったんじゃないかな、って」
「…」
「ね?」
小首をかしげ、可愛らしく微笑む
『この姉妹は…まったく』
『完敗だ。もとより勝負になっちゃいねぇ』
姿勢を正す、まっすぐ目の前の少女をみる
「まったく、そのとおりだよ」
俺は、いま笑っているんだろうな

「悪いな、時間取らせちまって」
「ううん。全然オッケーだよ」
「そうか」
「そんじゃ俺は仕切り直ししてくるか!」
踵を返し校内へと駆け出す
「うん!がんばれーファイトー」
いつもの明るい彼女の声に後押しされて…
…一秒でも早く、この想いを伝えるために、走る

824 :Classical名無しさん:04/08/13 04:10 ID:17NVtdkE
ending
『ドドドドド――』
一気に階段を駆け下りる
向かうのは教室
もうHRが始まっているのだろうか生徒の影も見当たらない
『ガダンッ』
勢いよく扉を開く
クラスメートの視線が集まるのがわかる…が
『なりふりかまっちゃいられねーっての』
教室を見回す…
見回さなくてもひと目で見付けられる…美しい金の髪
扉の音に驚き、一瞬こちらを見るがすぐに視線を逸らしてしまう
『チクリ』
胸が痛む
他の2人の友達と話をしていたのだろう
その友人たちが俺の視線に気付き睨みつけてくる
『仕方ないか』
意を決し、歩みを進める…アイツのもとへ
「…お嬢」
隣へ行き声をかける
目の前の少女が肩を震わせているのがわかる
クラス中の空気がどよめく
『俺たちのこと、みんなが知っていたのか…が』
気にする必要は無い
「お嬢」
耳を塞ごうとする
『ズキリ…』
『コイツはこんなにも弱く、こんなに小さかったっけ』


825 :Classical名無しさん:04/08/13 04:10 ID:17NVtdkE
「話を聞け、お嬢」
「―っ!」
なおも続ける俺に周防が食って掛かろうとする
高野が押し留める
「晶!」
「……」
だがその視線は鋭い…
どちらにしろ構う必要は無い

「こっち向け、お嬢」
硬く身を縮めて動く気配は無い
「…ったく」
「いま、塚本に告白してきた」
『どよっ』
皆が驚く
「いや、結局はできなかったんだがな」
「…おめーには、参ったよ」
サングラスを外す、そして机の上に置く
「人の恋路邪魔しやがって―――」
「!!」
「…おまけに人の心まで持っていきやがって」
「!」
大きく肩が跳ねる
まだ、顔を上げる気配は無い
『ふう』
しゃがみ込み視線を下げる頭の位置を同じ高さにする
「まったくよぉ、いざ告白しようとしたら、おめーの顔がチラツキやがるし」
「心が…俺の心が告白する相手が違うって言いやがるんだ…」
「好きな相手が違うってな…」
「顔を上げろ、お嬢」
サングラスを外して見るその髪はとても美しい
だからいま、その顔を直に見たいと思う

826 :Classical名無しさん:04/08/13 04:12 ID:17NVtdkE

ゆっくりと顔を上げる少女…視線を合わすのが怖いのか下を向いている
その瞳は濡れ、頬に一筋涙がつたう
「お前の告白、真正面から受け止めることができなかった…すまねえ」
「だが、あのときから俺の想いが始まったんだ」
「お嬢…俺は、お前のことが好きだ」
ハッと俺の顔を見る
『驚いてやがるし…無理も無いだろうけどな』
こっちも顔が熱くなっている、だが照れている暇は無い
「もう一度言う、俺はお前が好きだ!」
今度こそ、その瞳を見つめながら、視線を逸らさずはっきりと言えた
「…いいの?」
「ん?」
「信じて…いいの?」
「ああ、もちろんだ」
きっと俺は微笑んでいるだろう
いままでで一番、俺らしくない優しい笑顔で…

―――――――――

827 :Classical名無しさん:04/08/13 04:14 ID:17NVtdkE
ageちまうは、一本抜けるは、ゾヌは言うこと聞いてくれんわ・・・最低だ
すまん

828 :Classical名無しさん:04/08/13 04:18 ID:uTlJ88VI
GJ!!

829 :Classical名無しさん:04/08/13 05:34 ID:17NVtdkE
>>817>>818の間にくるはずだったモノ・・・置いときますね

保健室の前
「ったく。なにやってんだ俺は」
来たはいいが、何をしたいのかまるでわからない
「ふんっ」
自分はあまりにも滑稽で笑いが出そうにもなる
『ガラッ』
扉が開き、中から出てきたヤツと目が合う
「…なにやってんだ」
目の前のオンナが言いながら睨みつけてくる
こちらの返答しだいでは殴り懸かってくる、そんな雰囲気で
「…アイツは…お嬢は大丈夫なのか?」
「くっ!」
「いまさら!テメーに用はないだろう!!」
『そうだな…そのとおりだ』
「とっとと消えやがれ!」


830 :Classical名無しさん:04/08/13 10:11 ID:jmK3k85U
GJ!
沢近が(・∀・)イイ!
クラスの全員の前で告白とは流石播磨、やることが違いますね。
王道的な旗SS楽しませて頂きました。

831 :Classical名無しさん:04/08/13 18:58 ID:/x42xZNo
>>815-826>>829
乙です。
長い文章だけど、きれいにまとまっていました。
ただ、播磨が天満から沢近に想いの対象を変えた過程が
読みづらかったのと、
天満の性格設定が少し不自然(そんなに鋭くないと思った)
なのが、少々気に掛かったぐらい。
それ以外はGJ!!

832 :Classical名無しさん:04/08/13 23:59 ID:OkkR/XRM
出先で埋めを兼ねて何か書こう、と思っていたら先を越されました。
ので、前スレ同様適当に絃子ネタでちょこちょこ。

「あ、刑部先生。……聞きました? あの噂」
「ん? 何の話かな?」
「何のって……播磨君に決まってるじゃないですか」
「彼の? それはまたロクでもない話だろうね」
「あの……知らない振りしてません?」
「だから何をかな。私は彼が塚本君と付き合ってるなどと……」
「……」
「……」
「……」
「……あー、こほん。それで何の話だったかな」
「だからその噂の話なんですけど」
「フン、所詮は噂だろう? だいたい、アレにそんな甲斐性が」
「でも、屋上でよく会ってるみたいですよ。二人きりで」
「……何?」
「あら、これは知らなかったんですね」
「噂だよ、全部噂。根拠なんてないに決まってる。それじゃ、私は急用を思い出したので帰る」
「え? ちょっと、刑部先生! それに帰るって、そっちは屋上……」

833 :Classical名無しさん:04/08/14 10:32 ID:fn86/Of2
絃子さん(*゚∀゚)=3

834 :Classical名無しさん:04/08/16 13:51 ID:tqkc1bdI
夏祭りの続きマダー?

835 :Classical名無しさん:04/08/18 19:44 ID:2eCujtKI
>834
次スレに投下されますた

836 :Classical名無しさん :04/08/18 20:27 ID:SgMKkMVQ
>>815 無題
>>832 無題

837 :Classical名無しさん:04/08/18 21:59 ID:17NVtdkE
タイトル付けないとまずかったのか?
すまん…

838 :Classical名無しさん:04/08/18 22:40 ID:ZPdsCAGQ
>>837
>836は目次でしょ。IDで検索してみそ

839 :Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「今帰ったぜ」
「ん、おかえり。今日は遅かったな」
 どうということもない、普段通りのやりとり。ちっと学校でな、などと居間にいる絃子に一声かけてから
部屋に戻ろうとした拳児だったが。
「――ちょっと待て絃子」
「うん? 何かな、今少々忙しいんだが」
 その足がぴたりと止まる。理由は視線の先、絃子が忙しく目を走らせている――
「何でお前がそれ読んでやがるんだ」
「いや、君の部屋に行ったら机の上に置いてあってね」
 そう言って彼女がひらひらと示して見せたのは、紛うことなき拳児の原稿。
「他人の部屋に勝手に入ってんじゃねぇっ!」
「……あのね拳児君、悪いけどここは私の家だよ。大体、最近ロクに掃除もしないで閉めきっているから、
 衛生管理の一つもしてあげようと思ったんだがね」
「そりゃ悪かったけどよ……でもそれとこれとは別だろ」
「読まれて困るものを描いてるのか、君は……っと、まあ確かに困るだろうね、これは」
 まったく、と溜息をついてから、拳児にそこに座るように促す絃子。
「最後まで読んでからと思っていたが、丁度いいから今話しておこうか」
「んだよ、絃子にゃ関係」
「ああないよ、そんなもの。だから言わせてもらうんだ」
 有無を言わせぬ強い口調に鋭い眼光。いつもの悪ふざけとは違う、その本気の態度に拳児も渋々と腰を下ろす。

840 :Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「……で、なんだよ」
「このヒロインの少女だが……モデルは塚本君だな?」
 最初から核心を突いてくる問に、答えられない拳児。
「沈黙は肯定と見なすよ。さて、そしてこっちは君だ。間違いないね?」
「……悪ぃかよ。俺が何しようと勝手だろ?」
 ふてくされたようなその返事を聞いて、ハ、と小馬鹿にしたように笑い飛ばす絃子。
「悪いか? そんなの悪いに決まっているだろう! ……拳児君、君はどうしてマンガを描いている?」
「そりゃこいつをやりとげりゃ俺は……」
「変われる、とでも? 本気でそう考えているならおめでたいとしか言いようがないな」
「なっ!? 絃子、テメェ言っていいことと悪いことってのがあるだろうが!」
 そこまで言われてはさすがの拳児も激高するが、それでも一歩も引かない絃子。
「だから言ってるんだよ。いいか拳児君、どれだけ君がこのマンガに情熱を注いだところでね、これは
 塚本君じゃないんだ。それぐらい分からない君じゃないと思うが?」
「っ……それは」
「『それは』何だ。文句があるなら言ってみるといい。どうだ、早くしろ!」
 答えられない拳児に絃子はさらにたたみかける。
「こっちの男もそうだ、君がこんなに恰好いい男か? ほら、何か言ってみろ。私の言ったことを否定
 してみせてくれよ」
「……俺は」

841 :Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「なあ、確かに君は抜けてるところは山ほどあるし、空回りすることなんてしょっちゅうだよ。それでもね、
 そのひたむきさだけは、いつも十分褒められるものだと思うんだ。でもこれじゃただの現実逃避だ」
 そこで一息ついてトーンダウンする絃子。
「いろんな噂が流れているのは知っているよ。まあ、君のことだからどれも何かの勘違いだとは思うよ。しかしね、
 そんな噂が流れる、ということは、君は塚本君に対して何のアプローチもしていない、ということだ」
 違うかな、という言葉に力なく頷く拳児。
「だったらこんなことをしている場合じゃないだろう? 彼女がいるのはマンガの中じゃない、現実の、君のクラス
 の、君の隣の席に座っているんだ。もたもたしている暇なんてないと思うんだが?」
 言うべきことを言い終えた絃子は、頬杖をついて拳児を見つめる。
 そして、その視線を正面から受け止めて。
「すまねぇ、絃子。行ってくるぜ」
 そう口にしてから転がるようにして家を飛び出していく拳児。
「……そこでいきなり極端なのが君らしいけどね」
 ぽつんと残された絃子は一人苦笑い。
「どうせ今回もどこかで何かしら失敗するんだろうけどさ、何もしないよりはマシだよ、きっと」
 立ち上がって玄関の戸を閉めつつ、届かない背中にむかってそう呟き、居間に戻ってあらためて原稿を手に取る。
「まあ、でもよく描けているのは確かだよ。それは認めよう」
 くすりと小さく笑ってから、ちらばったそれをまとめ直し、絃子は拳児の部屋へと向かった。

842 :Guardian angel:04/08/19 20:59 ID:qmlfIyEQ

某スレ見て切り口変えてみたりしつつ、違う方向にやりすぎてみる試み。
……ってまだ埋め終わりませんか。むむ。

843 :Classical名無しさん:04/08/19 22:38 ID:0D.TtIWM
>>842
GJ!
絃子さん(・∀・)イイ!

844 :Dead Stock Paradise:04/08/22 17:00 ID:ZPdsCAGQ
「部長、質問があるんですが」
「何?」
「部長は誰にでも無難な人当たりなのに、何で花井先輩だけにはキツいんですか?」
「かわいそうじゃないか……って?」
「いえいえそれ自体は全然OKなんですが、何か理由でもあるのかなって思って」
「……そうね、だいぶ前の話になるけれど……」
高野晶は緑茶をちびりと飲むと、ぽつり、ぽつりと語り始めた。


その女の子はガンプラがとても好きでしたが、
親には「もっと女の子らしいものにしなさい」と言われ、なかなか買ってもらえませんでした。
そこで女の子はなけなしのお小遣いを貯めて、自分で買いに行きました。
ところが模型店には行列が出来ていました。はやる気持ちを抑えて女の子は最後尾に並びました。
ドム、強化新型グフ、ホワイトベースなど人気商品がまたたくまに売れていきましたが
女の子の狙いはただひとつ、1/60スケール量産型ザクでした。
事前に買っておいたムギ球を仕込んでモノアイを光らせるのを楽しみにしていたのです。
ところが、女の子の番まであと一人という所でザクは完売してしまいました。
最後のザクを買ったのは、女の子の前に並んでいた、メガネをかけた眉の太い男の子でした。
残った商品はいくらもありませんでした。人気商品のザクは全スケール完売の状態でした。
女の子は泣きべそをかきながら家路につきました。
仕方なしに買った、アッグとドダイYSの箱を抱きしめながら……


「むーっ、ガンプラはよく知らないけど花井先輩ひどいですね!
 八雲にもよく言っとかなくちゃ!今後1-Dにも出入り禁止ですっ!」
(別に花井君かどうかはわからないんだけどな……まあいいか)

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